上 下
116 / 175
第7章 優香のお泊まり大作戦

第115話 優香の初体験

しおりを挟む
 ストレッチを終えた後、俺は優香を自分の部屋へと案内した。

「ここが俺の部屋です。それではどうぞお入りください」

 俺は緊張のせいで、謎に丁寧な言葉遣いになってしまいながら、優香を自室へと招き入れた。

「ふわっ……ここが蒼太くんのお部屋」
「一応、散らかってはないと思うんだけども」

 元々あんまり物を買ったりもしないので、たいして散らかりようもないのが幸いしたかな。
 健介の部屋に遊びに行くと漫画とかラノベとか物がいっぱいあって、掃除が大変そうだなとか思ったことを、ふと思い出した。

 でもテスト勉強しに行った優香の部屋は本当に綺麗に整理整頓されていたから、あのレベルから見ると、俺の部屋も散らかっているように見えるかもしれない。

 しまったな。
 優香がお風呂に入っている間に、チョッパヤで部屋の掃除をしておけばよかった。
 見栄ばかり張るのは良くないだろうが、これくらいの見栄ならむしろ張るべきだろう。

 だっていうのに、なぜ俺はしなくてもいい筋トレを無駄に熱心にやっていたのか……。
 部屋掃除のことすら思い至らないとか、いろいろとテンパりすぎだろ。
 普段は筋トレなんてまったくしないのにさ。

「私、男の子のお部屋に入るのって初めてかも」
「そ、そうなんだな」
「うん。そういう機会がなくて。えへへ、初体験しちゃった」
「お、おう」

 最後は小さな声で恥ずかしそうに呟いた優香に、俺は頷くことしかできなかった。

 だって上目遣いで『初体験しちゃった』とか言われちゃったんだぞ!?
 そんなもん思春期の男子高校生のお年頃な胸の中は千々に乱れて、何も言えなくなってしまっても仕方ないだろ!?
 
 そして、そのままプツリと会話が途切れてしまう。

「……」
「……」

 あーッと!
 ここにきて俺氏、言葉が出てこない!
 完全に緊張してしまっているぞー!
(なぜか実況風の心の声)

 しかし黙っていればいるほど、緊張感は高まっていくばかりである。

「とりあえず、優香の布団を敷かないといけないよな」
 俺はなんとか会話のとっかかりをひねくりだした。

「そ、そうだよね。一緒に寝るわけにはいかないもんね」

 ブホッ!?
 い、一緒に寝る――だと!?

『初体験』に続いて、あまりに危険すぎるワードだった。
 優花の言葉はちゃんと否定語を伴っていたのだが、俺の思春期な男子高校生ハートは『一緒に寝る』という言葉から、ついつい広げなくてもいい想像の翼を広げてしまう。

『優香、俺もう限界だ、我慢できない……』
『蒼太くん、いいよ。来て……』
『優香、痛かったら言うんだぞ』
『うん、蒼太くん――』

「――蒼太くん? 急に黙り込んでどうしたの?」
「はっ!? いや、なんでもないんだ、うん」
「そう?」
「おうよ! さーてと、そうと決まったらさっさと布団を運んでこないとな!」

 俺は心の中のセンシティブな妄想を振り払うべく、努めて元気な口調で言った。

「じゃあ私も手伝うね」
「サンキュー」

 俺と優香は客間から来客用の布団一式を部屋に運び込むと、2人で協力してセッティングを始めた。

「もうちょっとこっちに引っ張っていいかな? あと2センチくらい」
「あと2センチな、了解」

 2人向き合ってシーツの上下の端を持って敷布団との位置を合わせてから、シーツの端を敷布団の下に折り込んでいく。

 最後に掛布団と枕を置いて、たいして時間をかけることなく、寝るための準備は整った。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

処理中です...