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第3章 学園のアイドルと過ごす日々

第33話 早起き成功!学園のアイドルと一緒にバス通学。(2)

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「それ分かるよ。普段ルーティーンにしてることでも、なんとなく変えたくなる気分な時ってあるよな」

「だ、だよね~」

「俺もさ、昼は量が多めでコスパ抜群の『日替わりA定食』を食べることが多いんだけど」

「あ、それ時々聞くかも。カレシがいる子がね、
『うちのカレシって、量が多いからっていつも日替わりA定食を食べてるの。なんか可哀想だから今度お弁当でも作ってきてあげようかな』
みたいなことを言ってたような」

「男子的にはやっぱり質よりも量だからな。ご飯は基本ガッツリいきたいから」

「ふふっ、男子って本当にビックリするくらいいっぱい食べるもんね。お弁当箱もすごく大きいし。こんな感じで」

 優香が両手で空中に巨大な楕円を描いた。
 長径が40センチくらいある。

 さすがにそこまで巨大な弁当箱を持ってくる男子を見たことはなかったけど、「すごく大きいよね!」っていう気持ちを優香的に表現したんだろうな。

 優香のなんとも可愛らしい姿に、俺は朝からほっこりさせられたのだった。

「まぁ俺たち男子からしたら、女子の弁当箱の小ささのほうがビックリなんだけどな? そんな少量だと、おやつとしても足りないだろって割とマジで思うし」

 優香の真似をしたってわけでもないんだけど、俺は両手の人差し指と親指を合わせて小さな輪っかを作って、女子の弁当箱の小ささを表現してみた。

「お互いに不思議がってるのが面白いよね」
 口元に軽く手をやりながらクスクスと笑う優香。

 何気ない仕草も優香がやるとあまりに可憐すぎて、特徴のないブレザー制服でバス通学をしているだけなのに、まるで優香の座る席だけドラマの1シーンにでもなったみたいだ。

「でもそれでも時々無性に、ちょっと割高で量も少ないけど、汁物もついて見るからに美味しそうなB定食も食べたくなるんだよなぁ」

 いつものルーティーンをちょっとした気分で変えるのは、別に何の不思議でもない。

 だから優香が俺と朝会えることを期待してわざわざリップを変えてきた――なんてことを思ったりすることは、もちろんありはしなかった。
 そりゃあ「そうだったら嬉しいな」くらいは思うけどさ。

「でも蒼太くんがこっちの方がいいって言うなら、これからはこっちのリップにしてみようかな?」

 人差し指で軽く自分の唇をなぞりながら、おずおずと上目遣いで聞いてくる優香。

「うーん……ファッションとかさっぱりな俺の適当な意見よりも、優香の意見を優先した方が絶対にいいと思うぞ?」

 それに俺は苦笑いを返した。
 下手に俺の意見なんて参考にしたら、ぶっちゃけ参考になるどころかマイナスになる可能性があるからな。

 もちろんどんなリップをつけようが、優香の美少女度が大きく下がることはないだろう。
 それでも自分から進んで優香の足を引っ張るような真似だけは、したくはなかった。

「そうはいっても男子の意見は貴重だもん。私、仲のいい男子って蒼太くんの他にはいないから、こういうことなかなか聞けないし」

「ま、素人の意見もそれはそれで参考にはなるかも? その意見を採用するかどうかはまた別の話だしな」

「じゃあそれも踏まえた上で、明日からはこのリップにするね。蒼太くんのために――なんちゃって。えへへ……」

 はにかみながら優香の放ったその一言に、
 ごふぁっ!?
 俺は思わず奇声を発しそうになった。

 ちょ、今の反則だろ!?
 よく俺、口に出さずに心の中だけで押しとどめたよな!?

 優香みたいなS級美少女に照れた様子で『蒼太くんのために』とか言われたら、全国津々浦々の蒼太くんは間違いなく自分に好意があると勘違いするぞ!?

 俺も蒼太くんなので、危うくひどい勘違いをしかけたんだけれど。

 そこはそれ。
 自分が『優香の妹を助けた恩人枠』カテゴリーであることを思い出して、なんとか理性的に踏みとどまることができた俺だった。

 ふぅ、やれやれ。
 危うく「女の子の冗談を真に受けて、自分に好意があると勘違いするイタい男子」になってしまうところだったぜ……。

「急に静かになって、どうしたの蒼太くん?」
「ごめん、なんでもないんだ。心の中で弱い自分と戦っててさ」

「えーと、ちょっと意味が分からないかも……?」


 この日から。
 俺は時々早起きして一本早いバスに乗って、優香と一緒に通学するようになった。

 いやほんと時々しか起きれなかったんで、優香にはすごく申し訳なかったんだけど。
 でも俺ってば、朝は本当に弱いのでそこは許して欲しい……。
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