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第2章 変わり始めた関係

第28話 心の中でごめんなさい ~優香SIDE~、~美月のあのね帳~

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~優香SIDE~

 その日の夜。
 晩ご飯を食べてお風呂にも入って、そしてパジャマに着替えた私は、自室のベッドで布団を頭まですっぽり被って甲羅に入った亀のようになりながら、暖かい暗闇の中で今日という日のことを思い返していた。

 いや思い返すというよりは、反省をしていたというか。

「や、や、やっちゃった~~!」

 なにをやっちゃったかって、

「美月をだしにして蒼太くんを誘っちゃったよ~~!」

 ということだった。

 自分の心に嘘は付けないから正直に言おう。
 私は純粋無垢な妹の美月を利用してしまった。

 美月はよくできた子なので、蒼太くんが来るように無理にせがんだりはしない。

『蒼太おにーちゃんが来る時は絶対に教えてね! 遊びに行かずに待ってるから!』
 とは言われていたけれど。

 だけど早く連れてくるようにおねだりされたことは、1度たりともありはしなかった。
 さすが美月。
 身内というひいき目を抜きにしても本当によくできた妹だ。

 だって言うのに――!

「美月が会いたがってるって言って、蒼太くんをおうちに呼んじゃったよぉ~~……」

 はっきり言おう。
 これはズルだ。

 美月の名前を出せば蒼太くんが断れないであろうことを見越した上で。
 蒼太くんが美月を可愛がっていることも分かった上で。
 私は最近どうにも気になってしょうがなかった蒼太くんを、家に呼んでしまったのだ。

 ああもう!
 私ってばなんてハレンチなことを――。

「ほんの出来心だったの……蒼太くんともっと仲良くなれたらいいなって思って……そしたらつい……。でもそんなの全部言い訳にしかならないよね……」

 本来なら美月にも蒼太くんにも、嘘をついたことを謝って然るべきだ。
 だけどそれで蒼太くんに嫌われてしまったらと思うと、私は謝ることがどうしようもなく怖くなってしまうのだった。

 なにより「なんでそんなことをしたんだ?」と問われたら、私は答えることができないから。
 蒼太くんのことが気になってたからつい出来心でやっちゃった(てへっ、――なんて面と向かって言えるわけがない。
 言えるわけがなかった。

「うん、このことはもう私だけが知っている秘密としてお墓の中まで持って行こう……」

 だけどその代わり。
 もう2度と美月を使って蒼太くんを誘うような真似はしないと、私は自分の心に固く誓ったのだった。

「でも蒼太くんが楽しんでくれていたみたいだったから、それは良かったかな」

 蒼太くんは最初こそ慣れないロールプレイングに四苦八苦していたみたいだった。
 けれど次第に慣れてきて、途中からは楽しそうに三角関係で二人の女性に挟まれてあたふたする男性を演じてくれた。

「おかげで美月はずっとすごく楽しそうだったもんね」

 もちろん私も楽しかった。
 まるでいつも見ているドラマの登場人物になったみたいだったから。

 なにより「あれ」だ。
 あれとはもちろん『俺は優香が好きなんだ!』という蒼太くんの言葉。

 もちろんただの演技にすぎない。
 現実の私を蒼太くんが好きというわけではない。
 あくまでおままごとの役の中でのセリフだ。

 とはいえ、じっと目を見つめられながら力強く宣言されてしまった私は、胸がどうしようもなく高鳴ってしまったのだ。

 やっぱりこの気持ちは恋……だよね?

「うー……、顔とか態度に出てなかったかな? すごく頑張ってポーカーフェイスをしてたんだもん、大丈夫だよね?」

 私はそうだと信じて布団から顔を出す。
 掛け布団をすっぽりかぶっていたので、いい加減息が苦しかった。

「終わっちゃったことは仕方ないよね。だけど今日のことを秘密にする代わりに、私も変わらないと。異性として好きとかそういうのは別にして、気になるんだったらちゃんと自分の意思でアプローチしないとだもん」

 それが私なりの反省だった。

「うん、明日はがんばろっと! がんばるぞ、おー!」
 私はまだポカポカしている胸に右手のひらをそっと当てながら、強い決意を胸にいだく。

 そしてそのまま、どうしようもなく湧き上がってくる幸せな気分で胸をいっぱいにしながら眠りについたのだった――。



~あのね帳(姫宮美月)~

先生、あのね、今日は、そうたお兄ちゃんがおうちにあそびにきました。

そして、美月とお姉ちゃんで、そうたお兄ちゃんのとりあいをしました。

そうたお兄ちゃんは美月とおつきあいをしていますが、お姉ちゃんともおつきあいをしているからです。

ドラマみたいでたのしかったです。
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