S級【バッファー】(←不遇職)の俺、結婚を誓い合った【幼馴染】を【勇者】に寝取られパーティ追放されヒキコモリに→美少女エルフに養って貰います
マナシロカナタ✨ラノベ作家✨子犬を助けた
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第10章
第162話「ムリムリムリムリかたつむりよ!」
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「この辺りの山岳地帯って、岩山ばっかりで足場が悪すぎだろ。道なき道だし仮にあっても細いしさ」
しかもどこもかしこも脆くて崩れやすいときた。
だから歩くだけでも大変だ。
さらにもう一つ。
標高の割に異常に空気が薄く乾燥していて、すぐに息が上がってしまうのだ。
これがダブルパンチでキツかった。
「この辺りの山はどれも休眠中の火山みたいね。だから溶岩が固まった火山岩ばかりで崩れやすい地形なんだと思うわ」
「ぜぇ、ぜぇ……はぁ、はぁ……」
シャーリーの見立てに、俺は無言で頷いた。
完全に同意見ではある。
あるんだけど。
でももう疲労の度合いが濃すぎて、歩きながらだと返事をするのもしんどいんです……。
ちなみに俺は完全に手ぶらだった。
俺の荷物は全部サクラが持ってくれている。
全職業でも断トツトップの驚異的な回復スキルである『自己再生』を持ち、文字通り疲れ知らずのバーサーカーの力を完全に使いこなせるようになったサクラは、戦闘時だけでなく移動時の荷物持ちとしても非常に優秀だった。
さすがレベル50越えのバーサーカーだな。
育ちさえすれば魔法戦士と並ぶ最優遇上位職といわれるだけのことはある。
逆に、たった1つのバフ以外に何の補助スキルも持たないバッファーの俺は、手ぶらで身軽でありながら、他のパーティメンバーの移動力に完全についていけていなかった。
歩いて移動するだけで足を引っ張る。
最不遇職バッファーの異名は伊達ではない。
「はぁ、はぁ……、はぁ、はぁ……」
「ケースケ様、もう少し歩くペースを落としましょう」
地元の猟師さんに描いてもらった地図を片手に先頭を歩いていたアイセルが、見かねて立ち止まると心配そうに俺の方を振り向いた。
「いいや、もうかなりペースダウンしてもらっているのに、ここからさらにペースを落とすのは絶対にダメだ。ぜぇ、はぁ……持ってきた食料にも限りがあるし、目的の古代神殿遺跡までたどり着けなくなる。はぁ、はぁ……最低でもこのペースは維持しないと」
先頭のアイセルが止まったことでパーティ全体も停止し、なので俺は膝に手を置いて身体を支えながら、喉から絞り出すように答えた。
「ですがケースケ様はそろそろ限界ではないかと思います」
「それはそうだけどさ……」
「うんうん、私もそう思うし。ケイスケはもう無理! ムリムリムリムリかたつむりよ!」
「うぐ――っ」
俺はよほど疲れて見えるんだろう。
アイセルに続いてサクラからも強烈にダメ出しを喰らってしまい、俺はぐうの音も出なかった。
それにしてもいくら歩くのが遅いからって「かたつむり」は酷いだろ。
これでも俺、一生懸命歩いてるのに……。
「でもホントものすごい悪路よね。冒険者じゃない普通の専門家が調査に向かうのが厳しいって話にも納得だわ。足を滑らせでもしたら崖下まで滑落しちゃうし」
「空気も薄いしね!」
「――ってことで、ここは秘密兵器の出番かな?」
「秘密兵器?」
シャーリーの言葉に俺は首を傾げた。
「実はね、こんなこともあろうかと思って事前に用意していたのよ。サクラ、例のアレを出してくれる?」
「はーい!」
サクラは元気よく返事をすると、背負っていた身体よりもでかいリュックを一旦降ろすと、テントの支柱を取り出してリュックの上になにやらいい感じに取り付け始めた。
そうして出来上がったのは――、
「これって――簡易のイスか? ってことはまさか俺がここに座って、サクラにおんぶしてもらうってことか?」
「正解、さすがケイスケ! 足は遅いけど頭の回転は速いね!」
サクラがとてもいい笑顔でグッと親指を立てる。
「だからお前はイチイチ一言多いんだっての……」
しかもどこもかしこも脆くて崩れやすいときた。
だから歩くだけでも大変だ。
さらにもう一つ。
標高の割に異常に空気が薄く乾燥していて、すぐに息が上がってしまうのだ。
これがダブルパンチでキツかった。
「この辺りの山はどれも休眠中の火山みたいね。だから溶岩が固まった火山岩ばかりで崩れやすい地形なんだと思うわ」
「ぜぇ、ぜぇ……はぁ、はぁ……」
シャーリーの見立てに、俺は無言で頷いた。
完全に同意見ではある。
あるんだけど。
でももう疲労の度合いが濃すぎて、歩きながらだと返事をするのもしんどいんです……。
ちなみに俺は完全に手ぶらだった。
俺の荷物は全部サクラが持ってくれている。
全職業でも断トツトップの驚異的な回復スキルである『自己再生』を持ち、文字通り疲れ知らずのバーサーカーの力を完全に使いこなせるようになったサクラは、戦闘時だけでなく移動時の荷物持ちとしても非常に優秀だった。
さすがレベル50越えのバーサーカーだな。
育ちさえすれば魔法戦士と並ぶ最優遇上位職といわれるだけのことはある。
逆に、たった1つのバフ以外に何の補助スキルも持たないバッファーの俺は、手ぶらで身軽でありながら、他のパーティメンバーの移動力に完全についていけていなかった。
歩いて移動するだけで足を引っ張る。
最不遇職バッファーの異名は伊達ではない。
「はぁ、はぁ……、はぁ、はぁ……」
「ケースケ様、もう少し歩くペースを落としましょう」
地元の猟師さんに描いてもらった地図を片手に先頭を歩いていたアイセルが、見かねて立ち止まると心配そうに俺の方を振り向いた。
「いいや、もうかなりペースダウンしてもらっているのに、ここからさらにペースを落とすのは絶対にダメだ。ぜぇ、はぁ……持ってきた食料にも限りがあるし、目的の古代神殿遺跡までたどり着けなくなる。はぁ、はぁ……最低でもこのペースは維持しないと」
先頭のアイセルが止まったことでパーティ全体も停止し、なので俺は膝に手を置いて身体を支えながら、喉から絞り出すように答えた。
「ですがケースケ様はそろそろ限界ではないかと思います」
「それはそうだけどさ……」
「うんうん、私もそう思うし。ケイスケはもう無理! ムリムリムリムリかたつむりよ!」
「うぐ――っ」
俺はよほど疲れて見えるんだろう。
アイセルに続いてサクラからも強烈にダメ出しを喰らってしまい、俺はぐうの音も出なかった。
それにしてもいくら歩くのが遅いからって「かたつむり」は酷いだろ。
これでも俺、一生懸命歩いてるのに……。
「でもホントものすごい悪路よね。冒険者じゃない普通の専門家が調査に向かうのが厳しいって話にも納得だわ。足を滑らせでもしたら崖下まで滑落しちゃうし」
「空気も薄いしね!」
「――ってことで、ここは秘密兵器の出番かな?」
「秘密兵器?」
シャーリーの言葉に俺は首を傾げた。
「実はね、こんなこともあろうかと思って事前に用意していたのよ。サクラ、例のアレを出してくれる?」
「はーい!」
サクラは元気よく返事をすると、背負っていた身体よりもでかいリュックを一旦降ろすと、テントの支柱を取り出してリュックの上になにやらいい感じに取り付け始めた。
そうして出来上がったのは――、
「これって――簡易のイスか? ってことはまさか俺がここに座って、サクラにおんぶしてもらうってことか?」
「正解、さすがケイスケ! 足は遅いけど頭の回転は速いね!」
サクラがとてもいい笑顔でグッと親指を立てる。
「だからお前はイチイチ一言多いんだっての……」
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