上 下
124 / 214
第7章

第122話 バリバリサクラ

しおりを挟む
 傭兵王グレタの御霊みたまを無事に鎮魂することができた俺たちは、2日の休養をとった後、次なるクエストに挑むべく戦略会議室(屋敷の居間ね)に集まった。

「次のクエストは『精霊の森』に行こうと思う」
 そこで発した俺の言葉に、

「精霊の森って――」

 アイセルがいの一番にピクッと反応を見せた。
 だがそれもそのはず。

「ああ、今回の行き先はアイセルの故郷のアルケイン地方だな」

「やっぱり!」

 精霊の森があるのはパーティ『アルケイン』の名前の由来でもある、アルケイン地方なのだった。

「アイセルにとっては凱旋ってことになるのかな? せっかくだしアイセルの生まれた村にも寄ってみるか」

「いいんですか?」

「アイセルの故郷の近くまで行くんだし、寄らない理由もないだろ? アイセルは長いこと実家には顔を見せてないんだよな?」

「は、はい。3年前に村を出て以来、一度も帰ってないです……」

 アイセルがちょっとだけさみしそうな顔を見せた。

「だったらちょうどいい機会だ。アイセルのご両親も、すっかり有名になった娘の晴れ姿を見てみたいだろうし」

「あ、私もアイセルさんの生まれたところを見てみたいかも!」
「アタシも興味あるなぁ」

 この提案にはサクラとシャーリーも乗り気のようだった。

「じゃあ満場一致ってことで。先にアイセルの生まれ故郷の村に寄ってから、クエストに取りかかろう」

「皆さん、ご協力ありがとうございます」

 アイセルが声を弾ませて言いながら、折り目正しくお辞儀をした。

「もう、いいっていいって!」

 そしてサクラが進行役の俺を押しのけるようにしゃしゃり出てくると、俺たちを代表してそんな風に答える。
 いやみんな同じ気持ちだからいいんだけどね?

「でもでも特に何もない小さな村ですよ? 森の中の開けたところにぽつんとある感じなので、多分期待するようなものは何もないかなぁって……」

「あれ? エルフは手先が器用だから、精緻な工芸品を作ってるんじゃないのか? 王侯貴族に人気なのはたいがいが、エルフの職人が作った物だって話を聞いたことがあるんだけど」

「えっと、うちの村はいたって平凡な、やや貧しいくらいの村なので……」

「それはそれで風情があるんじゃないかしら?」
 シャーリーが言って、

「私も中央都市ミストラル育ちだから、田舎の村とかほとんど行ったことがないだよねー。だからとても興味ある感じ?」
 サクラも似たような意見を言った。

「よく考えたらシャーリーもサクラも、どっちもいいとこのお嬢さまなんだよな」
 たしか社交界で顔を合わせたことがあるとか、そんな会話もしていたっけか。

 逆に俺はアイセルと似た感じで小さな町の生まれだから、実のところ田舎の町とか村がそんなにいいとは思わないんだよな。

 だって小さな町とか村ってほんとに何もないんだよ?
 人も少ないし。

 初めてでかい街に行った時とか本気でビックリしたもん。
 人ってこんなにたくさんいたんだって。

 あと何年やれるかわからないけど、冒険者を引退した後は俺的には大きな街に屋敷を構えて、お金の心配なく優雅に暮らしたいなぁ。

「まぁアタシはお父さんが冒険者ギルド本部のギルドマスターってだけで、生粋のお嬢さまじゃないけどね。実家が裕福なのは間違いないけど」

「あ、私は生粋のお嬢さまだからね、超バリバリの」

「生粋のお嬢さまは冒険者になろうとも思わないし、超バリバリとかも言わないだろ」

「お嬢さまも普段は言うし! 差別反対だし!」

「差別じゃなくて、ただの一般論だよ」

 そんな風にいつも通りサクラと軽口を言い合っていると、でもサクラはちょっとだけ真面目な顔をして、言ったんだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...