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第7章

第113話 vsリヴィング・メイル(中)

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 リヴィング・メイルは、文字通り鎧をまとったゴーストのことだ。

 装備は埋葬された状態によるので様々だけど、中には上から下まで完全防備のプレートメイルの個体もいて、なにせ防御力が高いのが厄介なゴーストと言われている。

「鎧の隙間から骸骨が見えるから、ビジュアル的に結構怖いよな」

「そう? 鎧を着てて人の姿に見えるから、空中に浮いてたり透けてたりする他のゴーストより恐怖感はなくない?」

 俺と違って、シャーリーはあまり恐怖は感じていないみたいだった。

「ふむ、確かにそれは一理あるかも」

 ちなみに鎧の中の骸骨はリヴィング・メイルの本体ではない。
 あくまでゴーストは非実在型の魔獣なので、物理的な身体は持ってはいないのだ。

 なので対人戦のように鎧の隙間を狙っても効果は薄いし、そもそも通常物理攻撃が通用しないので、普通のパーティには荷が重い相手だった。
 
 しかし今やSランクパーティを引っ張るアイセルと、アイセルという最高のお手本を見ながら実戦経験を積んでメキメキ成長しているサクラの前では、そんな厄介なリヴィング・メイルですら大した脅威にはなりえなかった。

「行きます! ハアァッ!」

 進化スキルである『剣気帯刃・オーラブレード』によって超絶強化された魔法剣リヴァイアスによる攻撃は、重厚なプレートメイルであってもまったく苦にしない。

 アイセルはリヴィング・メイルとキンキンキンキンと斬り結びながら、1体、また1体と斬って捨てていく。

 さらにサクラもまたリヴィング・メイルに対して相性のいいタイプだった。

「いっくよー! うおりゃああぁぁぁっっ!!」

 一発一発がなにせ強烈なバーサーカーの一撃は、リヴィング・メイルの鎧をドガン、ボゴン、グシャンと派手な破壊音を響かせながら、ひん曲げ粉砕してしまうのだ。

 さらにスキル『精霊攻撃』によって鎧の破壊と同時にゴースト本体にもダメージを与え、こちらも次々とリヴィング・メイルを撃破していく。

「よしよし。いきなり囲まれてどうなるかと思ったけど、思ってた以上に順調だな」

 もちろん相手は100体近くいるので、2人で全部はさばききれない。
 時々討ち漏らしたリヴィング・メイルが、俺とシャーリーの方に近づいてくるんだけど――、

「世界を形造りし神なる元素よ、我が衣となりてせ散じよ! まとうは極光の羽衣! ライトニング・クロス!」

 呪文の詠唱とともにシャーリーの身体に、バチバチと音をたてて極光の羽衣がまとわりついていく。

 範囲殲滅する代わりに一発で魔力がすっからかんになる極光殲滅魔法とは違って、魔力消費の少ない近接戦闘用の攻防一体の装備魔法だ。
 もちろんゴーストにも有効だ。

「ケースケには近づかせないからね?」
 そう不敵に笑って言ってのけると、シャーリーは愛用の白い杖を武器に接近戦を開始した。

 杖での打撃とともに極光がぜ、リヴィング・メイルをドカンボカンと吹き飛ばしていく。

 遠距離戦がメインでありながら、魔法と杖術をミックスさせた接近戦も卒なくこなす。
 勇者パーティ時代も「戦える後衛」として遊撃ポジションを務めていた世界で唯一の職業『魔法使い』シャーリー=シェフィールドの実力は、伊達ではない。

「これは完全に相性勝ちだな。アイセルとサクラに加えてシャーリーも加入した『アルケイン』は、ゴーストに対して圧倒的に強いパーティだ」

 俺は3人の大活躍に守られつつ、次々と数を減らすリヴィング・メイルを見ながら安心してつぶやいた。

 あ、そうだ。

「少し余裕もあるし、せっかくの機会だから例のあれを試してみるか」
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