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第2章

第17話 エルフ+魔法戦士+魔法剣

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 翌日から俺たちはクエストをこなしていった。

 クエストの中には1週間ほど絵のモデルになって欲しい(アイセルに)なんていう「え? それ冒険者の仕事なの?」みたいな依頼もあった。

 しかもかなり報酬が高くてご飯も出るし、なにもしない俺の日当まで出るとか至れり尽くせりで。

 けどよくよく考えてみれば低ランクパーティ向けに薬草採取だの、どこぞの屋敷の裏庭の草刈りだのといった雑用のようなクエストも用意されているのだ。

 冒険者ギルドは職業斡旋所のような、需要と供給をマッチングさせるための役目も果たしているんだろう。

 そんな充実した日々を送りながら、今日は久々にイービル・イノシシの討伐にやってきていた。

 最近出没するという小さな村近くの低木地帯を俺たちが進んでいくと、茂みからイービル・イノシシが飛び出してくる。

 不意打ち――のつもりだろう。

 しかし既に俺のバフスキルで強化されたアイセルはそれを察知していて、魔法剣を抜刀すると同時に斬りかかる。

「居合斬り! からの連撃斬!」
 鋭い連続技でものの見事に返り討ちにしてみせた。

 アイセルは他にもイービル・イノシシがいないか注意をしっかりとはらって、安全をしっかり確認してから、

「ふぅ……」

 軽く息を吐くと魔法剣を鞘に納めた。

「よくやったアイセル。倒した後もすぐ状況確認を怠らないし、もうすっかり一人前の冒険者だな」

「そんな、やっとレベル22になったところですし、まだまだ駆け出しを卒業したばかりですよ。それもこれも全部、ケースケ様が分かりやすく心得を指導してくれたおかげですしね」

「うんうん、控えめなところも悪くないぞ。これからも精進に励むように」

 俺が若干冗談気味に先輩風を吹かせてみると、

「はい、がんばります!」

 アイセルは元気な声を返してきたのだった。

「魔法剣の威力も文句なしだな」

「はい、『武器強化』のスキルを使うとものすごい斬れ味になって、こっちがビックリするくらいです」

「魔法戦士が魔法剣を持ったら鬼に金棒だ。レベルが上がればさらにどんどんと強くなっていくから、投資した甲斐もあったってなもんだ」

「えへへ、その節はありがとうございました」

「それとアイセルが敵の気配を察知する『索敵』スキルを覚えたのも大きいな」

「はい、これのおかげですごく戦いやすくなりました」

 イービル・イノシシの不意打ちを簡単に察知できたのは、この『索敵』スキルのおかげだった。

「でもまだ『索敵』はレベル7なので、大まかに近くにいるなってくらいしかわからないんですけどね」

「それで十分さ。不意打ちがありそうって分かるだけで慎重に動けるし、今みたいに気づいてない振りをして逆に誘い込んだりもできる」

「ですねっ!」

「エルフの魔法戦士とパーティを組むのは初めてなんだけど、戦闘系に補助系にと、ほんと色んな使えるスキルをどんどん覚えてくんだな。あまりに優遇職すぎてバッファーの自分が悲しくなってくるぞ……」

 なにこの差?
 ちょっと酷くない?

 俺なんかレベル120でも、1人じゃイービル・イノシシ1匹すら狩れないんだぞ?
 なのにアイセルときたら、もう1人でも充分すぎるほどに戦えてしまうのだから。

 さすがエルフ+魔法戦士+魔法剣は、ソロで同レベルのパーティに匹敵するって言われるだけのことはあるな……はぁ……。

「わわっ、そんなことありませんよ! 元気出してください──って、言ってるそばからまたイービル・イノシシの気配です。右手からですね。えっと一体じゃなくて複数かな? なんとなくですけど」

「今度はこっちから仕掛けよう。複数だと接近するのはマズイからな、主に俺が足を引っ張る意味で。俺はここで待機してる。頼むぞアイセル、あとは任せた」

「任せられました! 『光学迷彩』発動です!」

 アイセルは『光学迷彩』で姿を消すと、音もなくイービル・イノシシに接敵する。
 そしてそこにいた3体を、不意打ちからの先制攻撃であっさりと片づけてしまった。

 惚れ惚れするような鮮やかすぎる手際を、俺は少しだけ羨ましく見ていたのだった。
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