上 下
24 / 57
第3章 新1年生の親睦バスケットボール大会

第24話 弱い心は蹴り飛ばせ!

しおりを挟む
 高瀬翔(たかせ・しょう)。
 名は体を表すで、182センチと背が高く、ジャンプ力も抜群なバスケ部の期待の星だ。

 入学早々にバスケ部のレギュラー候補となった彼が試合に出られたのなら、うちのクラスはぶっちぎりの優勝候補の筆頭で間違いなかっただろう。

 もちろんルール的に何をどうしたって出られないので、言ってもしょうがないんだけれど。

 ちなみに小学校からバスケ一筋らしく、背も高くモテそうなのに恋愛には全く興味がないらしい(女子がそんな噂話をしているのを聞いた)。

「ひまりちゃんは昔から何をやらせても、パッとこなせちゃうんだ。本当に自慢の妹だよ」

 僕は高瀬に、兄バカ全開の答えを返した。

 同時にひまりちゃんの才能をまざまざと見せつけられたことから来る、わずかな胸の痛みに、今までのように気付かない振りをしようとして――そんな弱い心を僕は心の中で蹴り飛ばす!

 ひまりちゃんに相応しい男になるんだろ?

 だったら、まずは目の前の現実を受け入れないと。
 でないと始まる物も始まらない。
 全てはそこからなんだから。

「あはは、そうだろうね。でもほんと、あれは一朝一夕で身に付くものじゃないよ。普段から周囲を観察することを、意識的に行ってないと身に付かないスキルだ」

「うーん、それはどうだろ? ひまりちゃんはそういうことはしてないと思うけど」

 周囲を観察だなんて、可愛くてあどけなくて天真爛漫なひまりちゃんが、そんなストーカーまがいなことをするわけがない。
 これに関しては僕ははっきりと違うと断言できた。

 まぁ、強いて言うなら、ブラコン気味なところがないこともないけれど。

「そうか。なら持って生まれ天性のセンスなんだろうな。羨ましい限りだよ。ちなみに女子バスケ部には入らないのかな? シュートが上手いし、これだけ動けたらすぐにレギュラーになれると思うけど」

「家の手伝いとかもあるから、多分部活はしないんじゃないかな?」

 父さんからは家の手伝いなんてしないで、好きなことをやっていいと言われているのに、ひまりちゃんは「好きでやってるから」と今でも週に2,3回、夕方のお手伝いを続けている。

 頻度は落ちたとはいえ、夕方のひまりタイムは現在も継続中。
 ひまりちゃんがいるおかげで、この時間の常連さんは増えるばかりだ。

「そうなのか。俺としてはバスケの才能がもったいなく感じるが、ま、何をしたいかは人それぞれだもんな。さてと、そろそろ練習を再開するか」

 予定していた休憩時間が終わり、僕たちは再び練習を始めた。

「シュートの時は膝でしっかりとタメを作って、ボールは身体の中心線を動かす。あとは左手を添えるだけ」
「焦らずゆっくりでいいよ。相手も素人なんだ。相手のことは考えずに、まずは落ち着いて自分のプレーをやりきることを意識しよう」

 高瀬のアドバイスは技術的なことからメンタルのことまで幅広く、また実に的確だった。

「うーん、入らないなぁ……。ひまりちゃんならすぐに理解して実行できるんだろうけど」

 しかし僕の放ったシュートは――今日何度目になるだろうか――リングに当たって跳ねて落ちた。

 結局、僕たちはシュートやドリブルの基礎やディフェンスの仕方、簡単な戦術などを色々と教わったけど、女子チームと違って文化部&帰宅部ぞろいの男子チームは悲しいかな、やる気がないわけではなかったものの、あまり上手くなることなく終わってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...