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第六章「《蒼混じりの焔》ブルーブレンド」
第63話 泥仕合
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俺の一直線の踏み込みに対して《絶対剣域》が反応、強烈な散弾攻撃によって俺は激しく痛打された。
「コほ――っ」
かろうじて残っていた《スーパーダイラタンシー》の残骸を苦もなく粉砕し内臓まで到達するような痛撃に、一瞬意識が飛びそうになる。
普段は攻撃に使うクロの《想念》放射を防御に転用してなお、この強烈な被ダメージ。
疲れた身体に鞭打つ限界すれすれの戦闘機動と、許容値を大きく超えた痛みによって身体中が悲鳴を上げているが――構わない。
「おおおぉぉぉぉ――っ!」
俺は再び突撃を行うも、またもや同じように《絶対剣域》によって激しく打ち据えられて弾き飛ばされた。
「ぐぅ――っ、くっ、かほ――っ」
呼吸がつらい。
さっきから鼻血が酷いからってのと、あとこれは鼻が折れてるな。
呼吸と言う機能を失った鼻を諦めて口呼吸に切り替えたものの、口の中は口の中で、血が充満していて鉄の味が酷かった。
口の端からこぼれる血は、口の中を切ったからというだけではない。
これは壊れはじめた内臓から逆流してきた血だ。
俺の中で、明確な死へのカウントダウンが始まっていた。
だが、そんなことは大した問題ではない。
いくつかの臓器を失っても人間はすぐに死にはしない、しばらくは生きられるのだから。
心臓や肺といった即死に繋がる重要器官は、ろっ骨や筋肉で強固に守られている。
加えてある程度ボディを自由に打たせた代わりに、最も守るべき頭部への被弾はゼロに近い。
もちろん打たれに打たれた腹周りは紫色に変色しているが、気分が滅入ることを進んでやる必要はないだろう。
見て見ぬふりでしてスルーした。
「《絶対剣域》だって万能じゃないんだ。あれはあくまで《想念》放射の一種だ。つまり使えば使うほど力を消耗していくんだ」
《蒼混じりの焔》だって無限に湧き出る力があるわけじゃない。
《螺旋槍・十六夜乱舞》で半分削られて、その残りで戦っているんだ。
ならあとは単純な我慢比べだ。
「打てるだけ打つがいいさ――」
《蒼混じりの焔》だって消耗が激しくなれば、どこかで必ずミスをするだろう。
必ずもう一度チャンスは来る――!
根性だけなら絶対に負けはしない。
生命力の全てを賭して――、
「もう少しだけ動け、俺の身体よ!」
今、動ければ何の問題もない。
この後のことなどどうでもいい。
だって俺は――なぜなら俺は――今この瞬間のために生きてきたのだから。
俺の顔に満面の笑みがこぼれた。
血まみれの身体に、血まみれの手足、血まみれの顏。
激痛に時おり頬が引きつりながらも、溢れでる歓喜を抑えきれないその笑顔は、きっと獲物を見つけて舌なめずりする悪鬼羅刹のごとく見えることだろう。
「まだまだ、ここからだ……!」
頭の中で火花が飛び散り、口の中は逆流した胃液と血で溢れ返っている。
霞み始めた目に額から流れ落ちた血がにじんで、少しずつ視界を奪いはじめた。
全ての感覚がひたすらに猛烈な痛みを訴えつづけ、レッドアラートに支配されるその中で、
「へっ、へへ――っ」
しかし痛みだけしか感じないがゆえに、研ぎ澄まされてゆく野生の獣のような闘争本能。
生物として根源に備わっている野生が、人間的な理性や知性を超越し、生命の限界点を超えてなお戦いを希求し、俺の身体をさらにさらにと激しく駆り立ててゆく――!
俺は《認識阻害》で存在を消しながら間合いに飛び込んでは、《蒼混じりの焔》に《絶対剣域》を発動させて消耗させるを繰り返してゆく。
「泥試合ならお手の物だ。お高く留まったそのツラを、底の見えない憎悪の泥沼に引きずり込んでやる……!」
そんな総力戦の消耗戦はしかし――、
「これは、あまりにつまらないな――ひどく、ひどくナンセンスだ。我が求める究極の闘争とは、決してこのような無粋なものではない。……九十九星よ惑え、《遊星乱舞》!」
その言葉とともに、俺の周りを《想念》の剣の嵐が吹き荒れた――!
「これは――っ!」
「コほ――っ」
かろうじて残っていた《スーパーダイラタンシー》の残骸を苦もなく粉砕し内臓まで到達するような痛撃に、一瞬意識が飛びそうになる。
普段は攻撃に使うクロの《想念》放射を防御に転用してなお、この強烈な被ダメージ。
疲れた身体に鞭打つ限界すれすれの戦闘機動と、許容値を大きく超えた痛みによって身体中が悲鳴を上げているが――構わない。
「おおおぉぉぉぉ――っ!」
俺は再び突撃を行うも、またもや同じように《絶対剣域》によって激しく打ち据えられて弾き飛ばされた。
「ぐぅ――っ、くっ、かほ――っ」
呼吸がつらい。
さっきから鼻血が酷いからってのと、あとこれは鼻が折れてるな。
呼吸と言う機能を失った鼻を諦めて口呼吸に切り替えたものの、口の中は口の中で、血が充満していて鉄の味が酷かった。
口の端からこぼれる血は、口の中を切ったからというだけではない。
これは壊れはじめた内臓から逆流してきた血だ。
俺の中で、明確な死へのカウントダウンが始まっていた。
だが、そんなことは大した問題ではない。
いくつかの臓器を失っても人間はすぐに死にはしない、しばらくは生きられるのだから。
心臓や肺といった即死に繋がる重要器官は、ろっ骨や筋肉で強固に守られている。
加えてある程度ボディを自由に打たせた代わりに、最も守るべき頭部への被弾はゼロに近い。
もちろん打たれに打たれた腹周りは紫色に変色しているが、気分が滅入ることを進んでやる必要はないだろう。
見て見ぬふりでしてスルーした。
「《絶対剣域》だって万能じゃないんだ。あれはあくまで《想念》放射の一種だ。つまり使えば使うほど力を消耗していくんだ」
《蒼混じりの焔》だって無限に湧き出る力があるわけじゃない。
《螺旋槍・十六夜乱舞》で半分削られて、その残りで戦っているんだ。
ならあとは単純な我慢比べだ。
「打てるだけ打つがいいさ――」
《蒼混じりの焔》だって消耗が激しくなれば、どこかで必ずミスをするだろう。
必ずもう一度チャンスは来る――!
根性だけなら絶対に負けはしない。
生命力の全てを賭して――、
「もう少しだけ動け、俺の身体よ!」
今、動ければ何の問題もない。
この後のことなどどうでもいい。
だって俺は――なぜなら俺は――今この瞬間のために生きてきたのだから。
俺の顔に満面の笑みがこぼれた。
血まみれの身体に、血まみれの手足、血まみれの顏。
激痛に時おり頬が引きつりながらも、溢れでる歓喜を抑えきれないその笑顔は、きっと獲物を見つけて舌なめずりする悪鬼羅刹のごとく見えることだろう。
「まだまだ、ここからだ……!」
頭の中で火花が飛び散り、口の中は逆流した胃液と血で溢れ返っている。
霞み始めた目に額から流れ落ちた血がにじんで、少しずつ視界を奪いはじめた。
全ての感覚がひたすらに猛烈な痛みを訴えつづけ、レッドアラートに支配されるその中で、
「へっ、へへ――っ」
しかし痛みだけしか感じないがゆえに、研ぎ澄まされてゆく野生の獣のような闘争本能。
生物として根源に備わっている野生が、人間的な理性や知性を超越し、生命の限界点を超えてなお戦いを希求し、俺の身体をさらにさらにと激しく駆り立ててゆく――!
俺は《認識阻害》で存在を消しながら間合いに飛び込んでは、《蒼混じりの焔》に《絶対剣域》を発動させて消耗させるを繰り返してゆく。
「泥試合ならお手の物だ。お高く留まったそのツラを、底の見えない憎悪の泥沼に引きずり込んでやる……!」
そんな総力戦の消耗戦はしかし――、
「これは、あまりにつまらないな――ひどく、ひどくナンセンスだ。我が求める究極の闘争とは、決してこのような無粋なものではない。……九十九星よ惑え、《遊星乱舞》!」
その言葉とともに、俺の周りを《想念》の剣の嵐が吹き荒れた――!
「これは――っ!」
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