上 下
49 / 83
第五章「プラスとマイナス」

第49話 恋の国家戦略特区

しおりを挟む
「だからですね、今日ユウトがカッコいいところを見せたいと自分から言ってきたので、正直驚いたというのが本心です☆ でもマナカちゃんに対してなら、好意を抱くのも納得ですね☆ 私も一目でマナカちゃんのこと好きになりましたし☆」

「待ってくれ博士。俺はそんなことは言っていないはずだ。訂正してほしい」
「言いましたよ☆」

「いや言っていない。極めて事務的に告げたはずだ」
「なにを言っているのですか☆ あれのいったいどこが事務的なのですか☆」

 やれやれと肩をすくめるアルマミース博士。

「いろいろと世話になった人に恩返しがしたい、甘いものが好きだけどカロリーを気にしているのでローカロリーの美味しいスイーツを用意して欲しい、可愛い服をコーディネイトしてあげて欲しい、サプライズでビックリさせる演出はないかエトセトラエトセトラ……。相手の反応をものすっごく気にした細かい上にクソ長い要望を延々と話してきたじゃありませんか☆ 10分はしゃべってましたよ☆」

「だからそれだけだろう、いいところ見せたいとか好意とかそう言ったことは言っていなかったはずだ」

「それだけ長くなるほどに、真剣にマナカちゃんのことを考えたのでしょう?☆ ならそれは間違いなく好意と呼べるものですよ☆ よく自分の胸に聞いてごらんなさい☆ 違いますか?☆」

「……そう、なのかな」

「ふむ、まだ自分でもよく分かってないのですね☆」

「どうだろう。正直よく分からない……ただ」
「ただ?☆」

「決して嫌な気持ちじゃあない。それは確かだ」
「はぁ☆ 煮え切りませんね☆ ま、少しずつ段階を踏んでいけばオッケーでしょう☆ とまれ、こんなユウトですが仲良くしてあげてくださいね☆ ボッチですし☆」

「わたしももっと仲良くなりたいと思ってます」

「だって☆ 良かったね、ユウト☆ だからこれからは、自分の心で感じたことをちゃんと言葉にして褒めてあげるんですよ☆」

「そうだな……善処するよ」

「そうです☆ せっかくだから今からシャレた口説き文句でもマナカちゃんに言ってみてください☆ もちろん借り物ではなく、自分自身の言葉で言うんですよ☆」

「うえぇぇぇえええっっ!?」

「いや、まずなんでマナカがそこまで驚く」

「いやだって、口説き文句ってそんな……」
 両手を頬に当てて、いやーんばかーんと身体をくねらせるマナカ。

「いや、ただの練習だからな?」
 俺はそれを横目に、

「……そうだな。……よし、いいのを思いついた」
「ご、ごくり……」

 どこかそわそわしながら手ぐしで軽く髪を整えて、しかし真剣な表情を作るマナカ。
 緊張しているのか、少し頬が赤くなっていた。

「こほん、じゃあいくぞ」
「は、はい、いかれます!」

 ピーンと気を付けの格好で背筋を伸ばしたマナカ。
 練習だっつーのに何をそんなに緊張しているのやら。

「マナカは俺の恋の国家戦略特区だ。どんな岩盤規制もこの恋の翼で乗り越えてみせる」

 瞬間、世界が凍った――。

 おかしいな?
 これ以上なく決まったと思ったんだが?

「ムードゼロですね☆ あんたは背伸びしたての中学生二年生ですか☆」
「あ、あはは、さすがにそれはちょっと……」

 あきれ顔の博士と、ひくひくと唇の端が引きつっているマナカ。

「なぜだ……」
 今のは俺的には、なかなかにクールなセリフだったと思うのだが。

「女心ってやつは難しいな……」

 密かにリベンジを誓う俺だった。
 負けず嫌いなのは昔からの性分だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

午前0時の転生屋

玖保ひかる
ファンタジー
 天界で死神と呼ばれる転生屋のディーと相棒の黒猫クロのお仕事物語。 ※この作品は小説家になろうでも掲載しています。

俺だけ✨宝箱✨で殴るダンジョン生活

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
俺、“飯狗頼忠(めしく よりただ)”は世間一般で【大ハズレ】と呼ばれるスキル【+1】を持つ男だ。 幸運こそ100と高いが、代わりに全てのステータスが1と、何をするにもダメダメで、ダンジョンとの相性はすこぶる悪かった。 しかし世の中には天から二物も三物ももらう存在がいる。 それが幼馴染の“漆戸慎(うるしどしん)”だ。 成績優秀、スポーツ万能、そして“ダンジョンタレント”としてクラスカースト上位に君臨する俺にとって目の上のたんこぶ。 そんな幼馴染からの誘いで俺は“宝箱を開ける係”兼“荷物持ち”として誘われ、同調圧力に屈して渋々承認する事に。 他にも【ハズレ】スキルを持つ女子3人を引き連れ、俺たちは最寄りのランクEダンジョンに。 そこで目の当たりにしたのは慎による俺TUEEEEE無双。 寄生上等の養殖で女子達は一足早くレベルアップ。 しかし俺の筋力は1でカスダメも与えられず…… パーティは俺を置いてズンズンと前に進んでしまった。 そんな俺に訪れた更なる不運。 レベルが上がって得意になった女子が踏んだトラップによる幼馴染とのパーティ断絶だった。 一切悪びれずにレベル1で荷物持ちの俺に盾になれと言った女子と折り合いがつくはずもなく、俺たちは別行動をとる事に…… 一撃もらっただけで死ぬ場所で、ビクビクしながらの行軍は悪夢のようだった。そんな中響き渡る悲鳴、先程喧嘩別れした女子がモンスターに襲われていたのだ。 俺は彼女を囮に背後からモンスターに襲いかかる! 戦闘は泥沼だったがそれでも勝利を収めた。 手にしたのはレベルアップの余韻と新たなスキル。そしてアイアンボックスと呼ばれる鉄等級の宝箱を手に入れて、俺は内心興奮を抑えきれなかった。 宝箱。それはアイテムとの出会いの場所。モンスタードロップと違い装備やアイテムが低い確率で出てくるが、同時に入手アイテムのグレードが上がるたびに設置されるトラップが凶悪になる事で有名である。 極限まで追い詰められた俺は、ここで天才的な閃きを見せた。 もしかしてこのトラップ、モンスターにも向けられるんじゃね? やってみたら案の定効果を発揮し、そして嬉しい事に俺のスキルがさらに追加効果を発揮する。 女子を囮にしながらの快進撃。 ステータスが貧弱すぎるが故に自分一人じゃ何もできない俺は、宝箱から出したアイテムで女子を買収し、囮役を引き受けてもらった。 そして迎えたボス戦で、俺たちは再び苦戦を強いられる。 何度削っても回復する無尽蔵のライフ、しかし激戦を制したのは俺たちで、命からがら抜け出したダンジョンの先で待っていたのは……複数の記者のフラッシュだった。 クラスメイトとの別れ、そして耳を疑う顛末。 俺ができるのは宝箱を開けることくらい。 けどその中に、全てを解決できる『鍵』が隠されていた。

招かれざる獣たち~彼らとの出会いが少年の運命を変える。獣耳の少女と護り手たちの物語~

都鳥
ファンタジー
~落ちこぼれ少年が獣の姫の護り手となるまで~ 両親と妹を魔獣に殺され、その敵を討つ為に冒険者となった少年・ラウルは、草原で保護者とはぐれた兎耳の少女、アリアを助ける。 それが縁で、少女がパパと呼ぶ旅の凄腕冒険者一行、ジャウマ、セリオン、ヴィジェスとも知り合いになる。家族の敵である、魔獣の討伐に彼らの助力を得られる事になり、共に『悪魔の森』の奥へ向かった。 森の奥でラウルは『黒い魔獣』の正体と、人ならざる獣の力を持つ一行の正体を知る。そして彼らは、ラウルも自分たちの『仲間』だと告げた。 彼らの助力で敵を討ったラウルは、彼らと共に旅をする事になる。 それぞれ赤竜、鳥、白狐の力を持ち、半獣半人の姿にもなれる3人の青年。そして彼ら3人を「パパ」と呼ぶ兎耳の少女アリア。 彼らと共に、各地に棲まう『黒い魔獣』を倒して回る旅。その旅の中で彼らは何を求めるのか? 彼らの過去は? 何故『黒い魔獣』を倒すのか。 そして、不思議な力を持つ兎耳の少女は…… これは気弱な少年ラウルが、仲間たちとなし崩し的に魔獣退治の旅をする物語。 ★第2回『ドリコムメディア大賞』一次選考通過 ※戦闘シーンや魔獣に襲われた後のシーンがあるので、一応R-15に設定してありますが、文章表現は抑えてあります。過度な描写はありません。 ※この作品は、小説家になろう、ノベルアッププラス、カクヨム、noteにも掲載しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

戦国姫 (せんごくき)

メマリー
キャラ文芸
戦国最強の武将と謳われた上杉謙信は女の子だった⁈ 不思議な力をもって生まれた虎千代(のちの上杉謙信)は鬼の子として忌み嫌われて育った。 虎千代の師である天室光育の勧めにより、虎千代の中に巣食う悪鬼を払わんと妖刀「鬼斬り丸」の力を借りようする。 鬼斬り丸を手に入れるために困難な旅が始まる。 虎千代の旅のお供に選ばれたのが天才忍者と名高い加当段蔵だった。 旅を通して虎千代に魅かれていく段蔵。 天界を揺るがす戦話(いくさばなし)が今ここに降臨せしめん!!

一度目は勇者、二度目は魔王だった俺の、三度目の異世界転生

染井トリノ
ファンタジー
この度、アルファポリス様から書籍化されることになりました。 それに伴ってタイトルが変更になります。 旧題:一度目は勇者、二度目は魔王だった俺は、三度目の人生をどう生きればいいですか?  勇者として異世界を救った青年は、二度目の転生で魔王となって討伐された。そして三度目の転生。普通の村人レイブとして新たな生を受けた彼は、悩みながらものんびり生きることを志す。三度目の転生から十五年後。才能がありすぎるのを理由に村から出ていくことを勧められたレイブは、この際、世界を見て回ろうと決意する。そして、王都の魔法学園に入学したり、幻獣に乗ったり、果ては、謎の皇女に頼られたり!? 一度目・二度目の人生では経験できなかった、ほのぼのしつつも楽しい異世界ライフを満喫していくのだった。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

【完結】呪われ令嬢、猫になる

やまぐちこはる
ファンタジー
エザリア・サリバーは大商団の令嬢だ。一人娘だったが、母が病で儚くなると、父の再婚相手とその連れ子に忌み嫌われ、呪いをかけられてしまう。 目が覚めたとき、エザリアは自分がひどく小さくなっていることに気がついた。呪われて猫になってしまっていたのだ。メイドが来たとき、猫がいたために、箒で外に追い出されてしまう。 しかたなくとぼとぼと屋敷のまわりをうろついて隠れるところを探すと、義母娘が自分に呪いをかけたことを知った。 ■□■ HOT女性向け44位(2023.3.29)ありがとうございますw(ΦωΦ)w  子猫六匹!急遽保護することになり、猫たんたちの医療費の助けになってくれればっという邪な思いで書きあげました。 平日は三話、6時・12時・18時。 土日は四話、6時・12時・18時・21時に更新。 4月30日に完結(予約投稿済)しますので、サクサク読み進めて頂けると思います。 【お気に入り】にポチッと入れて頂けましたらうれしいですっ(ΦωΦ) ★かんたん表紙メーカー様で、表紙を作ってみたのですが、いかがでしょうか。 元画像はうちの18歳の三毛猫サマ、白猫に化けて頂きました。

処理中です...