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第五章「プラスとマイナス」
第47話 ついていくのはちょっとないかなぁ
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「今日は『アルマミース』に連れて行ってくれる、って話だったと記憶しているのですが」
建物入り口前にてリムジンから降りると、マナカが再び同じセリフをつぶやいた。
フェンスと壁に囲まれた広大な敷地に、現代的な白亜の建物が幾多も並ぶ姿を、不安げに見回している。
「さっき物々しいゲートを通って入る時にも、なんかライフル銃? をもった異国風の軍人さんがいたのですが。今日はクロちゃんもいないし……」
「ここは米軍と自衛隊とあともろもろの共同研究施設だからな。あとクロは私的都合により今日は家で留守番している」
「米軍……? 自衛隊……??」
小首を傾げてはてなマークを浮かべるマナカ。
どうやらサプライズは成功したようだ。
さて、あまり不安にさせたままにしておくのは本意ではない。何度も言うが、今日はマナカに喜んでもらうために誘ったのだから。
ちなみにクロは、
『ボクって空気読むタイプなんだよね。馬に蹴られて死んじゃいたくないし、ついていくのはちょっとないかなぁ』
などと言って不参加だった。
よく意味が分からない。
「さっき車の中でも言ったかと思うけど――」
そう俺が切り出した、まさにちょうどそのタイミングだった。
「あらあらあらあらまぁまぁまぁまぁ!☆」
静けさに包まれ、ある種の荘厳さすら感じさせる休日の近代施設群に、突如としてその静寂を台無しにして余りある大きな声が鳴り響いたのは――。
「今日は噂のガールフレンドを連れてくると聞いていましたが、どんな可愛い子と一緒なのかと楽しみにしてたら、素敵じゃないキュートじゃないお持ち帰りしたいじゃないですか☆ これはマジで想像以上の可愛さですね☆」
「博士、出迎えなんて珍しい――」
そう言って声をかけた俺は、しかし華麗にスルーされる。
代わりに横に立つマナカに猛烈アタックを開始した、可愛らしい私服の上に白衣を羽織った若い女性研究者。
島村練子――もといカーネリアン=アルマミース博士だった。
「ねぇねぇ、あなたお名前は☆ マナカちゃんですね☆ 年はおいくつですか?☆ へぇー16歳☆ いやー若いですね☆ 肌もすべすべです☆ おや、今日のコーデはうちの新作じゃないですか☆ こんな可愛い女の子に着てもらえるなんて光栄ですね☆ それにしてもほんと似合っていますね☆ ああ、そうです、モデルに興味があったりしませんか?☆ 最近専属モデルの子が一人、自分探しの旅に出ると言って辞めてしまって困っていたんですよ☆ あなたなら間違いなく最高のモデルになれます☆ おやおや失敬、そんな警戒しなくても大丈夫です☆ こう見えて私は社会的に地位のある人間です☆ そうですね、モデル引き受けてくれたらうちの新作は無料で全部プレゼントしちゃいましょう☆ というかむしろお金払うので着てください☆」
「アルマミース博士」
物理的に二人の間に割り込んで視界を妨げつつ、俺はもう一度その名前を呼ぶと、とどまることを知らないマシンガントークをやんわりと制した。
それでやっと我に返ってくれたテンションマックスの若き研究者。
「はっと、いけませんいけません☆ てへぺろです☆ リアル女神様降臨を目の当たりにして、つい我を忘れてしまいました☆」
「は、はぁ……」
いきなりのハイテンションに若干引き気味だったマナカは、助けに入った俺にくっつくぐらいに身を寄せながら、服の裾をきゅっと軽く握りしめていた。
まぁ初対面でここまでがつがつ来られたら、不安になる気持ちはよくわかる。
俺も最初の頃は「この人、大丈夫なのか」と心底思ったものだ。
建物入り口前にてリムジンから降りると、マナカが再び同じセリフをつぶやいた。
フェンスと壁に囲まれた広大な敷地に、現代的な白亜の建物が幾多も並ぶ姿を、不安げに見回している。
「さっき物々しいゲートを通って入る時にも、なんかライフル銃? をもった異国風の軍人さんがいたのですが。今日はクロちゃんもいないし……」
「ここは米軍と自衛隊とあともろもろの共同研究施設だからな。あとクロは私的都合により今日は家で留守番している」
「米軍……? 自衛隊……??」
小首を傾げてはてなマークを浮かべるマナカ。
どうやらサプライズは成功したようだ。
さて、あまり不安にさせたままにしておくのは本意ではない。何度も言うが、今日はマナカに喜んでもらうために誘ったのだから。
ちなみにクロは、
『ボクって空気読むタイプなんだよね。馬に蹴られて死んじゃいたくないし、ついていくのはちょっとないかなぁ』
などと言って不参加だった。
よく意味が分からない。
「さっき車の中でも言ったかと思うけど――」
そう俺が切り出した、まさにちょうどそのタイミングだった。
「あらあらあらあらまぁまぁまぁまぁ!☆」
静けさに包まれ、ある種の荘厳さすら感じさせる休日の近代施設群に、突如としてその静寂を台無しにして余りある大きな声が鳴り響いたのは――。
「今日は噂のガールフレンドを連れてくると聞いていましたが、どんな可愛い子と一緒なのかと楽しみにしてたら、素敵じゃないキュートじゃないお持ち帰りしたいじゃないですか☆ これはマジで想像以上の可愛さですね☆」
「博士、出迎えなんて珍しい――」
そう言って声をかけた俺は、しかし華麗にスルーされる。
代わりに横に立つマナカに猛烈アタックを開始した、可愛らしい私服の上に白衣を羽織った若い女性研究者。
島村練子――もといカーネリアン=アルマミース博士だった。
「ねぇねぇ、あなたお名前は☆ マナカちゃんですね☆ 年はおいくつですか?☆ へぇー16歳☆ いやー若いですね☆ 肌もすべすべです☆ おや、今日のコーデはうちの新作じゃないですか☆ こんな可愛い女の子に着てもらえるなんて光栄ですね☆ それにしてもほんと似合っていますね☆ ああ、そうです、モデルに興味があったりしませんか?☆ 最近専属モデルの子が一人、自分探しの旅に出ると言って辞めてしまって困っていたんですよ☆ あなたなら間違いなく最高のモデルになれます☆ おやおや失敬、そんな警戒しなくても大丈夫です☆ こう見えて私は社会的に地位のある人間です☆ そうですね、モデル引き受けてくれたらうちの新作は無料で全部プレゼントしちゃいましょう☆ というかむしろお金払うので着てください☆」
「アルマミース博士」
物理的に二人の間に割り込んで視界を妨げつつ、俺はもう一度その名前を呼ぶと、とどまることを知らないマシンガントークをやんわりと制した。
それでやっと我に返ってくれたテンションマックスの若き研究者。
「はっと、いけませんいけません☆ てへぺろです☆ リアル女神様降臨を目の当たりにして、つい我を忘れてしまいました☆」
「は、はぁ……」
いきなりのハイテンションに若干引き気味だったマナカは、助けに入った俺にくっつくぐらいに身を寄せながら、服の裾をきゅっと軽く握りしめていた。
まぁ初対面でここまでがつがつ来られたら、不安になる気持ちはよくわかる。
俺も最初の頃は「この人、大丈夫なのか」と心底思ったものだ。
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