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第三章「約束」

第38話 学園カーストの女王

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「ユウトくんは酷いよ。助けを求めたわたしをまるっきり無視していたよ。《正義の味方》失格だよ。フォースのダークサイドだよ。スーパー301条でWTOに提訴する案件だよ。謝罪と賠償を要求するよ」

 その日の夜。

 待ち合わせ場所にやってきたマナカが、開口一番不満をまくしたててきた。

「なに俺に責任転嫁しているんだ? マナカが不用意なことを言ったからだろう。沈黙は金、雄弁は銀ってな。口は災いの元というやつだ。ま、これからは自分の立ち位置をもっと理解した上で発言したほうがいいぞ」

「立ち位置って――わたしたち、同じ学校の同い年のクラスメイトだよね?」

 こいつ本気で分かってないのか? それともカマトトぶって俺に説明させて、自己の優越性を再確認して悦に入ろうとでもいうのか?

「まぁいい、いい機会だから教えてやろう」

 俺が比較的緩やかとは言え確かに存在する学園カーストと、マナカが学園のアイドルとしてそのトップに君臨していることについて一通り説明すると、

「ふぇー」

 マナカは素直に感心していた。

「学園カーストの女王って……わたし的にはそんなつもりはないんだけどなぁ」

 納得いかない、と首をかしげるマナカだが、

「学校は社会の縮図だ。望む望まざるに関係なく、当然そうなっていくもんなんだ。今回のことはいい経験になっただろ。だからこれからはあんまり教室では話しかけるなよ?」

「なんでさ?」

「……だからさっきも言っただろ、俺とマナカじゃ他人から見た時の価値が違うんだって。上級国民と一般国民ってくらいにな。本人が望む望まずにかかわりなく、だ」

「うーん、確かに学校は社会の縮図かもしれないけど、でも人を価値とかそういうので判断したらダメだと思うよ。その人その人にオンリーワンの個性があるって、わたしは思いたいな」

「そんな青臭いことを真顔で言えるとは、マナカは心底大物だな。将来は政治家にでもなったらどうだ?」

「ユウトくんは、割と保守的で小市民的だよね。もっと楽しく生きようよ? ほら、もうすぐ球技大会があるし。今年は男女混合フットサルだって。一緒にがんばろう! おー!」

 だめだこいつ……まったくわかっていやがらない……。

「あのな、球技大会は全員参加じゃない、各クラスの選抜制だ」

「そだねー」

「つまり運動部の――フットサルなら特にサッカー部と、あとはバスケ部あたりか。そいつらの出番こそあれ、ボッチ帰宅部の俺に出番が回ってくることはない。隅っこで応援しててやるから、出るならまぁがんばってくれ」

 もしマナカが出たいと言えば、反対するクラスメイトは一人もいないだろう。
 逆に男子は限られた出場枠をめぐって、血で血を洗う大争奪戦になることは間違いない。

 そこに参戦するとか、有りか無しでいえば論外中の論外だ。
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