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第一章「ボーイ・ミーツ・ガール」
第20話 継承される力
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《螺旋槍》の初動に必要なほんのわずかに動作が停止する瞬間。
それを狙って、ヒグマ型が死角となった背中側から襲いかかってきたのだ。
「この、味な真似を――っ!」
半ば本能的に攻撃をキャンセルすると、
「うぉりゃっ!」
俺は前方へ身体を投げ出すようにダイブした。
勢いそのまま飛び込み前回り受け身でもって、ヒグマ型のアタックをギリギリでかわしてみせる。
そのまま、前回り受け身の動作の延長で流れるように立ち上がると、今度は空ぶったヒグマ型を壁にするように回り込んで、虎視眈々と機を窺っていたライオン型からの追撃をどうにか防いだのだった。
「こいつら、組んでやがるのか」
「っぽいね」
連携というには拙いものの、明らかに協力の意思が見て取れる攻撃だった。
戦術は極めてシンプル。
機動力に秀でたライオン型が高速近接戦闘を挑み、隙を見てヒグマ型が強烈な一撃を叩き込む。
互いの強みを前面に押し出した単純明快なコンビネーションだが、それゆえに行動に迷いがない。
「2体同時に現れての待ち伏せ、ってだけでも特殊なのに、連携していて、なによりユウトに対する明確な攻撃意思を持っているなんて――」
クロが状況を整理して分析する。
それを自分の中に落とし込みながら――その間もライオン型とヒグマ型の連続攻撃が続くが――俺は小さな傷こそ作りながらも、致命傷は受けずにさばき、いなし、かわしていった。
「確かにやることが決まっているから、無駄がないぶん、隙もない。でもな――」
――あまりに単調にすぎる。
「いいだろう、てめぇらに教えてやる。単純な運動性能に劣る人間が、しかし何百年にもわたって《想念獣》と戦うことで磨き上げ、継承してきた戦闘術の神髄を――」
ライオン型の攻撃を捌きながら、ヒグマ型に対して敢えて背を見せてのバックステップ。
死角から襲いくる狙い澄ましたかのようなヒグマ型の右爪の振り下ろしを、右足を軸にくるっとその場で180度ピボットターンをして紙一重にてかわす――!
「――これまでずっと同じ攻撃だったからな」
ヒグマ型の行動は背後から頭を狙っての一撃必殺ただそれのみ。
「さすがにそれじゃ、ワンパターンが過ぎるってもんだぜ?」
加えて連携の精度不足による同士討ちを避けるためか、ヒグマ型が仕掛けてくる時にはライオン型の追撃がわずかにヌルくなるのだ。
つまりライオン型の動きにさえ気を付けていれば、死角のヒグマ型の動きまで手に取るように見て取れるってわけだ!
「狙いどころもタイミングも既に見切ってるぜ」
ならば背中を向けていようが、目をつぶっていようが、
「確信をもってかわせるってなもんだ――!」
空ぶったヒグマ型を前に、
「おおおおぉぉぉぉぉっっっっ!!」
俺は右足で大地を強烈に踏みつけた。
立ち上る反発力を回転力に変え、想念放射を加えて打ち出されるは――、
「《螺旋槍》!」
必殺必倒の一撃にてヒグマ型を塵とかえる――!
機を見るに敏。
この間、わずかに数呼吸。
既に討滅されたヒグマ型も、ヒグマ型の攻撃の邪魔にならないようにと、わずかに距離をとっていたライオン型も、
「……?」
いったい何が起こったのか分からないほどの、それは一瞬の逆転劇だった。
これであとはライオン型との一対一だ。
「さぁ、これで残るはお前だけだ。悪いがてめぇ程度にタイマンで負けるほど、俺の戦闘術は安くねぇぜ?」
俺は油断も容赦も一切なしで、残ったライオン型《想念獣》を討滅したのだった。
それを狙って、ヒグマ型が死角となった背中側から襲いかかってきたのだ。
「この、味な真似を――っ!」
半ば本能的に攻撃をキャンセルすると、
「うぉりゃっ!」
俺は前方へ身体を投げ出すようにダイブした。
勢いそのまま飛び込み前回り受け身でもって、ヒグマ型のアタックをギリギリでかわしてみせる。
そのまま、前回り受け身の動作の延長で流れるように立ち上がると、今度は空ぶったヒグマ型を壁にするように回り込んで、虎視眈々と機を窺っていたライオン型からの追撃をどうにか防いだのだった。
「こいつら、組んでやがるのか」
「っぽいね」
連携というには拙いものの、明らかに協力の意思が見て取れる攻撃だった。
戦術は極めてシンプル。
機動力に秀でたライオン型が高速近接戦闘を挑み、隙を見てヒグマ型が強烈な一撃を叩き込む。
互いの強みを前面に押し出した単純明快なコンビネーションだが、それゆえに行動に迷いがない。
「2体同時に現れての待ち伏せ、ってだけでも特殊なのに、連携していて、なによりユウトに対する明確な攻撃意思を持っているなんて――」
クロが状況を整理して分析する。
それを自分の中に落とし込みながら――その間もライオン型とヒグマ型の連続攻撃が続くが――俺は小さな傷こそ作りながらも、致命傷は受けずにさばき、いなし、かわしていった。
「確かにやることが決まっているから、無駄がないぶん、隙もない。でもな――」
――あまりに単調にすぎる。
「いいだろう、てめぇらに教えてやる。単純な運動性能に劣る人間が、しかし何百年にもわたって《想念獣》と戦うことで磨き上げ、継承してきた戦闘術の神髄を――」
ライオン型の攻撃を捌きながら、ヒグマ型に対して敢えて背を見せてのバックステップ。
死角から襲いくる狙い澄ましたかのようなヒグマ型の右爪の振り下ろしを、右足を軸にくるっとその場で180度ピボットターンをして紙一重にてかわす――!
「――これまでずっと同じ攻撃だったからな」
ヒグマ型の行動は背後から頭を狙っての一撃必殺ただそれのみ。
「さすがにそれじゃ、ワンパターンが過ぎるってもんだぜ?」
加えて連携の精度不足による同士討ちを避けるためか、ヒグマ型が仕掛けてくる時にはライオン型の追撃がわずかにヌルくなるのだ。
つまりライオン型の動きにさえ気を付けていれば、死角のヒグマ型の動きまで手に取るように見て取れるってわけだ!
「狙いどころもタイミングも既に見切ってるぜ」
ならば背中を向けていようが、目をつぶっていようが、
「確信をもってかわせるってなもんだ――!」
空ぶったヒグマ型を前に、
「おおおおぉぉぉぉぉっっっっ!!」
俺は右足で大地を強烈に踏みつけた。
立ち上る反発力を回転力に変え、想念放射を加えて打ち出されるは――、
「《螺旋槍》!」
必殺必倒の一撃にてヒグマ型を塵とかえる――!
機を見るに敏。
この間、わずかに数呼吸。
既に討滅されたヒグマ型も、ヒグマ型の攻撃の邪魔にならないようにと、わずかに距離をとっていたライオン型も、
「……?」
いったい何が起こったのか分からないほどの、それは一瞬の逆転劇だった。
これであとはライオン型との一対一だ。
「さぁ、これで残るはお前だけだ。悪いがてめぇ程度にタイマンで負けるほど、俺の戦闘術は安くねぇぜ?」
俺は油断も容赦も一切なしで、残ったライオン型《想念獣》を討滅したのだった。
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