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第3章 文化祭

第45話 最強の証明

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「おおおおおおおぉぉぉぉっっっ!!」
「なにィっ!? まだこんな力が残っていたというのか!?」

 まずは一気にスタート位置まで押し返すと、

「俺の勝ちだぁぁぁっっっっ!!!!」
「ぐぅぅぅぅぅぅ――――ッ!」

 ドンッ!!
 俺は勢いそのままクマ先輩の手の甲を机へと叩きつけた――!

「はぁ、はぁ、はぁ……どうだっ!」
「ぐぅ、あ、はぁ、ぐぅ……無念……」

 一瞬の静寂が支配した後、

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!??」

 周囲にいつの間にか壁のように集まっていた野次馬というかギャラリーが、絶体絶命の土俵際からの刹那の大逆転劇に盛大にどよめいた。

「やりましたね勇者様!」
 俺の戦いをすぐ側で見守ってくれていたリエナが、いの一番にねぎらいの言葉をかけてくる。

「ありがとリエナ。まぁこんなもんよ」
 俺は激戦を耐え抜いて疲れ果てた右腕の代わりに、左手を挙げてそれに応える。

「途中はどうなるかと思ってハラハラしちゃいましたよ」
「心配させて悪かったな。正直ギリギリの勝負でさ」

「それでも最後はこうやって勝ってしまうんですから、やっぱり勇者様は最強ですよ♪ 惚れなおしちゃいました♪」

「ははっ、サンキューな」

 こうして俺は最強であることを証明するべく、また1つの勝利を積み重ねたのだった。
 『絶対不敗の最強勇者』の不敗神話は、まだまだこれからも続いてゆくのだ。

 俺がリエナに惚れ直されていると、クマ先輩が話しかけてきた。
 会話が途切れるのを律義に待っていてくれたっぽい。

「織田、俺の完敗だ。まさか超重量級でパワー自慢の俺が負けるとは思いもしなかった。パワーもさることながら決して諦めない驚異の粘りと、そして一瞬の勝機を逃さない野生の獣のような勝負勘……全てにおいて俺を上回っていた」

「正直危なかったですけどね。あそこはよく耐えれたと自分でも思いますから」

「それでも勝ってみせた。ナイスファイトだったよ、卒業前にいい思い出ができた」

 クマ先輩はとても悔しそうだったけど、だけどとても嬉しそうな弾んだ声で言いながら、左手を差し出してくる。
 俺も左手でその手を取った。

「すごく楽しかったです」
「俺もだ。だが次は負けんぞ?」

「次ですか?」
「『腕相撲チャレンジ』は文化祭で代々続いている伝統の企画でな」

「ああ、そうだったんですね」

「来年はもう俺は卒業してしまっているが、今日からまた1年かけて鍛え直した上で必ず顔を出す。その時にもう一度俺と勝負をしてくれないか」

「いいですけど、できればお手柔らかにお願いしますね?」

 さらに強くなったクマ先輩を想像して、俺は苦笑する。
 来年やって勝てるかどうかは正直微妙だ。

「ははは、悪いがそれはできない相談だ。とても手を抜いて勝てる相手じゃあないからな。来年は楽しみにしておけよ? 最強の座を奪われた借りは、1年分の利子をつけてきっちり返させてもらうからな」

 ニヤリと笑ったクマ先輩に、

「申し訳ないんですが、俺も負けるのだけはどうにも嫌いな性質たちなんですよ」

 俺も不敵に笑い返す。

 俺とクマ先輩は激戦を互いに称え合うように、ガッシリと握手を交わしあった。

 こうして『運動部有志連合プレゼンツ! 腕相撲チャレンジ! 参加無料、乞う、力自慢!!』は、Sランクのクマ先輩を倒した俺が最強ということで終わりかけたんだけど――、

「なんじゃ、こんなところにおったのか勇者シュウヘイ=オダ。ふむ、何やら楽しそうな遊びをしておったようじゃの? せっかくじゃ、わらわと少しこの腕相撲とやらで遊んでみぬか?」

 突然、ギャラリーの中から綺麗な女の人が一人、やたらと偉そうな口調で呟きながら俺の前に現れたのだ。
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