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CHAPTER4
3
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一番奥の席に座っている白衣を着た四十代半ばの男性が、この研究室の主である精神科医平泉眞だ。平泉教授の他に数人の男女がいた。その年齢から察して学生たちであろう。いや、中に一人だけ三十代半ばの男性がいた。白衣を着ていること考慮して、恐らく平泉の下で働く助手だろうと推測される。学生たちに負けず、今風の茶髪だ。私好みのなかなかのイケメンだ。
「それで、お話というのは?」
平泉は椅子を回転させ、上半身を私の方へ向けた。
「……あの、ここじゃその……」
私は学生を一瞥すると、口籠った。
「ああ」
平泉教授は、口許に悪戯な笑みを浮かべ頷いた。
「確か殺人事件に関するお話でしたね。わかりました、そういうことでしたら、この学生たちが邪魔だということですね。さあキミたち、刑事さんの邪魔になるから部屋から出て行って」
「ちぇっ、後学のためになると思ったのに」
「何だ、話し聞けないのか俺たち」
「仕方ないよ、行こうか」
学生たちは口々に文句をいい、研究室を出て行った。
「教授、自分も遠慮します」
助手らしき青年がいい、私たちの前から消えようとした。
「ああ、キミはいい。蛭子君、キミはここに残りなさい。構わないだろう刑事さん?」
「はあぁ、まあ、その……先生さえ宜しければ」
私は仕方なく頷いた。
蛭子さんは、自分の机の引き出しを開け、名刺を取り出した。
「平泉先生の下で働く蛭子と申します。どうぞ」
私は手渡された名刺を見た。
「蛭子慎弥さんですか……?」
蛭子さんは頷いた。
私は、蛭子さんから貰った名刺を立花君に渡した。
「蛭子君。お二人に何か飲み物をお出しして」
「はい、教授」
「先生、私たちにお構いなく」]
「立ち話も何ですから、どこか適当に座ってください」
「済みません。では、お言葉に甘えて」
一礼すると私は、回転椅子を引き、腰をおろした。
立花君も私に倣い、彼女の左隣、ドアに近い方に腰掛けた。
蛭子さんがグラスに注がれたウーロン茶を、二人の前に置いた。
「ありがとうございます」
私は目礼した。唇を軽く湿らしてからいよいよ本題を切り出す。
ショルダーバッグのファスナーを開け、中から一枚の写真を取り出した。
「平泉先生。この人物をご存知ですよね?」
と訊ねつつ、写真を平泉教授に手渡した。
「うん?」
平泉教授は眉間に皺を寄せ、写真に写った人物を凝視した。
「野瀬清志君だ……。彼がまた何か……?」
不安気な眼差しを私に向ける。
「先生は、新聞やTⅤなどは?」
私が怪訝そうに訊ねる。
小林清志の名は、有明のOL殺人事件の被疑者として既に報道されている筈だ。
「一応新聞は目を通すが、TⅤは殆ど見ない」
平泉教授はかぶりを振った。
「一週間ほど前、有明でOLが殺害されるという事件がありまして」
「まさかその事件の犯人が、以前私が精神鑑定を行った野瀬清志君だというのかね?」
平泉教授の声が震えていた。
「清志は、二年前に少年院を出ています。それに今は、苗字も変わっています」
「……それは初耳だ」
「少年院に収容されていた頃知り合った弁護士小林泰蔵と養子縁組をして、小林姓を名乗っています」
「ほう、小林と……。それで、その清志君が……一体何を?」
「昨日未明、清志の養父小林泰蔵さんが、清瀬市野塩町二丁目○○の自宅で他殺体となって発見されました」
「今朝、ニュースでやっていた事件ですね?」
蛭子さんが口を挟んだ。
私は頷く。
「マスコミにはまだ伏せてありますが、実は有明で殺害されたOLと昨日殺害された小林さんの殺害方法が、十年前に清志が起こしたあの事件と酷似しておりまして」
ここまで語って平泉教授の反応を窺った。
「ほ、本当ですか。それはっ!?」
平泉教授は酷く驚いたようで、素っ頓狂な裏返った声を上げた。
蛭子さんに至っては、その顔から完全に血の気が失せ、手のひらを口に当てていた。
「じゃあ、あの事件のように……」
蛭子さんは訊ねようとして口を開いたが、言葉が続かないようだ。
旧姓野瀬清志が実の母佐和子を、犯罪史上稀にみる残忍な方法で殺害した事件は、十年前の発生当初からネットなどで世間に広く知れ渡っていた。そのため、この若い助手も、佐和子が実の息子の手によって腹を切り裂かれ殺害され、その死体を納屋の天井から鎖で吊り下げられていたということを十分承知している。
「小林清志は、現在行方不明です。二件の殺人事件の現場から、小林を犯人とするに足りる物的証拠が発見されまして、我々警察としましては、彼を被疑者であると断定し、全国に指名手配を掛け、その行方を追っている次第です」
「刑事さん。実を言うと私は、当時清志君の弁護をしておられた方に頼まれ、精神鑑定を行っただけで、その後彼とは全く会っていないんだよ」
「そうですか……」
私は残念そうに頷いた。
今まで黙って私と平泉教授の会話を聞いていた立花君が、突如口を開いた。
「あの、小林清志の趣味とかご存知ですか?」
「趣味? そんなの私が知る訳ないだろう」
平泉教授は、眉間に皺を刻んだ険しい表情で立花君を睨むように見た。
「精神鑑定を行った先生なら何かご存知かなと思い、小林の行方を探す手掛かりなればと考えて」
立花君はバツ悪そうにいった。
「いや、知らない」
平泉教授はゆっくりとかぶりを振った。
「お役に立てなくて済まない」
「十年前の鑑定記録など残っていれば、見せて頂きたいのですが?」
「鑑定記録ですか……? お待ちください」
平泉教授は回転椅子をクルリと回し、身体の向きを変え、腰をあげた。研究室の壁際に設置されたスチール書庫の方へ歩いて行く。
私は、平泉教授の背中を目で追った。膨大な資料の中から十年前の事件の鑑定記録を探し出すのはなかなか骨の折れる作業だった。
「済みませんね、お手数掛けまして」
私は、平泉教授の背中に向かって声を掛けた。
適当な辺りを付け、スチール書庫の引き戸を開けながら、
「いいえ。精神科医として、私も非常に興味が注がれる事件です」
と意味あり気なことを口にして、笑みを返した。
「と仰いますと?」
私が怪訝そうに訊ねると、平泉教授は、
「今回の事件ですよ。もしあなた方警察の方が考えておられるように、今回も清志君が犯人だとすると、反社会性パーソナリティ障害、つまり精神病質は、関東医療少年院に収容されていた短い期間では治らなかったということになります。もう一度彼の鑑定を行ってみたいと不意に思いましてね」
「完治していないと……?」
平泉教授は頷きながら、
「おっ、ありました。これだ」
といって、棚の中から捜し出した鑑定結果を記録したファイルを手に取った。
私の前に戻ると、ファイルを手渡した。
「どうぞ」
「ありがとうございます。早速拝見させて頂きます」
一礼して、私はファイルを開いた。
小林清志の鑑定記録は、実に三十ページ近くに及んでいた。その殆どが私の知らない医学用語を使ったものだった。
「宜しければ、お持ち帰りになっても結構ですよ。コピーを取ってもくださっても構いません。捜査のお役に立つのであれば」
平泉教授が許可をくだした。
「いいんですか、先生?」
平泉教授は静かに頷いた。
「では、お言葉に甘えて」
私が持参したショルダーバッグの中にファイルをしまおうとしたその時、立花君のスマホがこの緊張した場面には不似合いな派手なを奏で始めた。
「す、済みません」
立花君は少し焦ったように、慌ててスマホのタッチパネルを操作した。
こんな時に電話を掛けて来た失礼な相手が誰なのか気になり、私は横目で覗き見した。
液晶画面には、私の知らない女性の名前が表示されていた。
祖父江優樹菜って誰……?
私は首を傾げた。
「ごめん。今仕事中だから、また後で掛け直す」
立花君は半分腰を浮かせた状態で、電話の相手に伝えた。
この時偶然にも、彼の肘が机の上の書類に当たった。学生たちが平泉教授に提出したレポートのようだ。それが床に散らばった。
「ちょっとキミ、何てことをしてくれるんだ」
「済みません、先生。ほら、立花君君もちゃんと先生に謝って」
私はキャリア警察官を睨み付けた。
「申し訳ありません」
立花君は中腰になって、床に散らばった書類を拾い集めた。
「お気になさらずに、僕もよく仕出かします。その度に、教授にこっ酷く叱られます」
蛭子さんが、書類を拾い集めるのを手伝いながらいった。
「さっきの電話、カノジョから?」
私も書類片付けに加わり、それとなく訊ねてみる。
「ええ、まあ」
立花君は否定することもなく頷いた。
「どんな 女性?」
「気になりますか?」
「キャリアであるあなたとお付き合いする女性って、どんな人かなって思って」
「外務省のキャリア官僚です。T大法学部からの付き合いです。サークルも同じスカッシュでした」
「やっぱりキャリアか、同じ国立でもY大とは大違い」
「刑事さんも、Y大ですか?」
「えっ?」
不意に訊ねられ、私は驚きながら蛭子さんの顔を見た。
「僕の元カノもY大でした。因みに学部は理工学部です」
「リケジョか。私は経済学部。実をいうと私理系は苦手だったから、未だにDNAと遺伝子と染色体の違いが分からないんですよ」
「へえー、意外だな。できる女性って感じがしたのに」
立花君が口を挟んで来た。
「立花君君、あんたわかるの。じゃあ説明してみなさいよ」
「急に振られても、ちょっとその……」
立花君は赤面し、しどろもどろになった。
「DNAは核酸の一種デオキシリボ核酸のことで、遺伝情報の継承と発現を担う高分子生体物質。遺伝子はDNAを担体とし、その塩基配列にコードされる遺伝情報。因みに染色体とは……」
「おい、蛭子君。刑事さんたちが困惑しているぞ」
平泉教授が、蛭子さんを制した。
「いいえ、そんな困惑だなんて……」
私は卑屈な作り笑いを浮かべた。
後片付けが終了すると、
「本日はお邪魔致しました。これで失礼させて頂きます」
私は平泉教授に深々と頭をさげ、立花君とともに研究室を離れた。
「それで、お話というのは?」
平泉は椅子を回転させ、上半身を私の方へ向けた。
「……あの、ここじゃその……」
私は学生を一瞥すると、口籠った。
「ああ」
平泉教授は、口許に悪戯な笑みを浮かべ頷いた。
「確か殺人事件に関するお話でしたね。わかりました、そういうことでしたら、この学生たちが邪魔だということですね。さあキミたち、刑事さんの邪魔になるから部屋から出て行って」
「ちぇっ、後学のためになると思ったのに」
「何だ、話し聞けないのか俺たち」
「仕方ないよ、行こうか」
学生たちは口々に文句をいい、研究室を出て行った。
「教授、自分も遠慮します」
助手らしき青年がいい、私たちの前から消えようとした。
「ああ、キミはいい。蛭子君、キミはここに残りなさい。構わないだろう刑事さん?」
「はあぁ、まあ、その……先生さえ宜しければ」
私は仕方なく頷いた。
蛭子さんは、自分の机の引き出しを開け、名刺を取り出した。
「平泉先生の下で働く蛭子と申します。どうぞ」
私は手渡された名刺を見た。
「蛭子慎弥さんですか……?」
蛭子さんは頷いた。
私は、蛭子さんから貰った名刺を立花君に渡した。
「蛭子君。お二人に何か飲み物をお出しして」
「はい、教授」
「先生、私たちにお構いなく」]
「立ち話も何ですから、どこか適当に座ってください」
「済みません。では、お言葉に甘えて」
一礼すると私は、回転椅子を引き、腰をおろした。
立花君も私に倣い、彼女の左隣、ドアに近い方に腰掛けた。
蛭子さんがグラスに注がれたウーロン茶を、二人の前に置いた。
「ありがとうございます」
私は目礼した。唇を軽く湿らしてからいよいよ本題を切り出す。
ショルダーバッグのファスナーを開け、中から一枚の写真を取り出した。
「平泉先生。この人物をご存知ですよね?」
と訊ねつつ、写真を平泉教授に手渡した。
「うん?」
平泉教授は眉間に皺を寄せ、写真に写った人物を凝視した。
「野瀬清志君だ……。彼がまた何か……?」
不安気な眼差しを私に向ける。
「先生は、新聞やTⅤなどは?」
私が怪訝そうに訊ねる。
小林清志の名は、有明のOL殺人事件の被疑者として既に報道されている筈だ。
「一応新聞は目を通すが、TⅤは殆ど見ない」
平泉教授はかぶりを振った。
「一週間ほど前、有明でOLが殺害されるという事件がありまして」
「まさかその事件の犯人が、以前私が精神鑑定を行った野瀬清志君だというのかね?」
平泉教授の声が震えていた。
「清志は、二年前に少年院を出ています。それに今は、苗字も変わっています」
「……それは初耳だ」
「少年院に収容されていた頃知り合った弁護士小林泰蔵と養子縁組をして、小林姓を名乗っています」
「ほう、小林と……。それで、その清志君が……一体何を?」
「昨日未明、清志の養父小林泰蔵さんが、清瀬市野塩町二丁目○○の自宅で他殺体となって発見されました」
「今朝、ニュースでやっていた事件ですね?」
蛭子さんが口を挟んだ。
私は頷く。
「マスコミにはまだ伏せてありますが、実は有明で殺害されたOLと昨日殺害された小林さんの殺害方法が、十年前に清志が起こしたあの事件と酷似しておりまして」
ここまで語って平泉教授の反応を窺った。
「ほ、本当ですか。それはっ!?」
平泉教授は酷く驚いたようで、素っ頓狂な裏返った声を上げた。
蛭子さんに至っては、その顔から完全に血の気が失せ、手のひらを口に当てていた。
「じゃあ、あの事件のように……」
蛭子さんは訊ねようとして口を開いたが、言葉が続かないようだ。
旧姓野瀬清志が実の母佐和子を、犯罪史上稀にみる残忍な方法で殺害した事件は、十年前の発生当初からネットなどで世間に広く知れ渡っていた。そのため、この若い助手も、佐和子が実の息子の手によって腹を切り裂かれ殺害され、その死体を納屋の天井から鎖で吊り下げられていたということを十分承知している。
「小林清志は、現在行方不明です。二件の殺人事件の現場から、小林を犯人とするに足りる物的証拠が発見されまして、我々警察としましては、彼を被疑者であると断定し、全国に指名手配を掛け、その行方を追っている次第です」
「刑事さん。実を言うと私は、当時清志君の弁護をしておられた方に頼まれ、精神鑑定を行っただけで、その後彼とは全く会っていないんだよ」
「そうですか……」
私は残念そうに頷いた。
今まで黙って私と平泉教授の会話を聞いていた立花君が、突如口を開いた。
「あの、小林清志の趣味とかご存知ですか?」
「趣味? そんなの私が知る訳ないだろう」
平泉教授は、眉間に皺を刻んだ険しい表情で立花君を睨むように見た。
「精神鑑定を行った先生なら何かご存知かなと思い、小林の行方を探す手掛かりなればと考えて」
立花君はバツ悪そうにいった。
「いや、知らない」
平泉教授はゆっくりとかぶりを振った。
「お役に立てなくて済まない」
「十年前の鑑定記録など残っていれば、見せて頂きたいのですが?」
「鑑定記録ですか……? お待ちください」
平泉教授は回転椅子をクルリと回し、身体の向きを変え、腰をあげた。研究室の壁際に設置されたスチール書庫の方へ歩いて行く。
私は、平泉教授の背中を目で追った。膨大な資料の中から十年前の事件の鑑定記録を探し出すのはなかなか骨の折れる作業だった。
「済みませんね、お手数掛けまして」
私は、平泉教授の背中に向かって声を掛けた。
適当な辺りを付け、スチール書庫の引き戸を開けながら、
「いいえ。精神科医として、私も非常に興味が注がれる事件です」
と意味あり気なことを口にして、笑みを返した。
「と仰いますと?」
私が怪訝そうに訊ねると、平泉教授は、
「今回の事件ですよ。もしあなた方警察の方が考えておられるように、今回も清志君が犯人だとすると、反社会性パーソナリティ障害、つまり精神病質は、関東医療少年院に収容されていた短い期間では治らなかったということになります。もう一度彼の鑑定を行ってみたいと不意に思いましてね」
「完治していないと……?」
平泉教授は頷きながら、
「おっ、ありました。これだ」
といって、棚の中から捜し出した鑑定結果を記録したファイルを手に取った。
私の前に戻ると、ファイルを手渡した。
「どうぞ」
「ありがとうございます。早速拝見させて頂きます」
一礼して、私はファイルを開いた。
小林清志の鑑定記録は、実に三十ページ近くに及んでいた。その殆どが私の知らない医学用語を使ったものだった。
「宜しければ、お持ち帰りになっても結構ですよ。コピーを取ってもくださっても構いません。捜査のお役に立つのであれば」
平泉教授が許可をくだした。
「いいんですか、先生?」
平泉教授は静かに頷いた。
「では、お言葉に甘えて」
私が持参したショルダーバッグの中にファイルをしまおうとしたその時、立花君のスマホがこの緊張した場面には不似合いな派手なを奏で始めた。
「す、済みません」
立花君は少し焦ったように、慌ててスマホのタッチパネルを操作した。
こんな時に電話を掛けて来た失礼な相手が誰なのか気になり、私は横目で覗き見した。
液晶画面には、私の知らない女性の名前が表示されていた。
祖父江優樹菜って誰……?
私は首を傾げた。
「ごめん。今仕事中だから、また後で掛け直す」
立花君は半分腰を浮かせた状態で、電話の相手に伝えた。
この時偶然にも、彼の肘が机の上の書類に当たった。学生たちが平泉教授に提出したレポートのようだ。それが床に散らばった。
「ちょっとキミ、何てことをしてくれるんだ」
「済みません、先生。ほら、立花君君もちゃんと先生に謝って」
私はキャリア警察官を睨み付けた。
「申し訳ありません」
立花君は中腰になって、床に散らばった書類を拾い集めた。
「お気になさらずに、僕もよく仕出かします。その度に、教授にこっ酷く叱られます」
蛭子さんが、書類を拾い集めるのを手伝いながらいった。
「さっきの電話、カノジョから?」
私も書類片付けに加わり、それとなく訊ねてみる。
「ええ、まあ」
立花君は否定することもなく頷いた。
「どんな 女性?」
「気になりますか?」
「キャリアであるあなたとお付き合いする女性って、どんな人かなって思って」
「外務省のキャリア官僚です。T大法学部からの付き合いです。サークルも同じスカッシュでした」
「やっぱりキャリアか、同じ国立でもY大とは大違い」
「刑事さんも、Y大ですか?」
「えっ?」
不意に訊ねられ、私は驚きながら蛭子さんの顔を見た。
「僕の元カノもY大でした。因みに学部は理工学部です」
「リケジョか。私は経済学部。実をいうと私理系は苦手だったから、未だにDNAと遺伝子と染色体の違いが分からないんですよ」
「へえー、意外だな。できる女性って感じがしたのに」
立花君が口を挟んで来た。
「立花君君、あんたわかるの。じゃあ説明してみなさいよ」
「急に振られても、ちょっとその……」
立花君は赤面し、しどろもどろになった。
「DNAは核酸の一種デオキシリボ核酸のことで、遺伝情報の継承と発現を担う高分子生体物質。遺伝子はDNAを担体とし、その塩基配列にコードされる遺伝情報。因みに染色体とは……」
「おい、蛭子君。刑事さんたちが困惑しているぞ」
平泉教授が、蛭子さんを制した。
「いいえ、そんな困惑だなんて……」
私は卑屈な作り笑いを浮かべた。
後片付けが終了すると、
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