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RESTART──先輩と後輩──
崩壊(その三十一)
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「まあまあ。その辺にしてやったらどうだロンベル。彼の言う通り、出品祭の時期のオールティアの人入りは尋常じゃない。寧ろ彼を労う為にも、十万Orsをポンとくれてやるべきだよ」
今すぐにでも少女を抱き抱えている男を殴り飛ばしそうな様子のロンベルを、あくまでも穏やかな口調で冷ややかに諌める男────その名はクライド=シエスタ。彼もロンベルと同じく『大翼の不死鳥』に所属する《A》冒険者であり、『閃瞬』の異名を名乗っている。
「そうかぁ?俺はロンベルに同意見だけどなぁ。俺たちゃあ《A》冒険者様だぞぉ?そんな《A》冒険者様を待たせるとか、ぶっ飛ばされても文句言えねぇぞぉ?」
と、透かさず口を挟むその男。名はヴェッチャ=クーゲルフライデー。この男もロンベルやクライドと同じ《A》冒険者で、『壊撃』で通っている確かな実力者の一人だ。
「…………」
そして残った最後の一人の男。壁を背に無言で立つ彼の名は、ガロー。わかっているのはただそれだけで、姓名は当然として、その他の素性などが全くの不明である。一つだけ確かなのは、この男もロンベルやクライド、ヴェッチャと肩を並べる屈指の《A》冒険者ということだけだった。
ともあれ、このように。今、この裏路地の入り組んだ奥の、更に奥には。どういう訳で、どういった理由からなのか。『大翼の不死鳥』が抱える《A》冒険者が集っていたのだ。
「それにしても、なるほどね……その子で最近噂で持ち切りの?」
「ああ。ブレイズさんの影武者やってる子供だ。ったく、忌々しい。腹立たしいったらありゃしねえ」
「子供の割には育ってんな。出るとこ出てっし」
「…………」
眠り込み、何一つとして言えない少女に対し。各々の感想を言い合う男たち。そんな会話を遮るように、少女を抱き抱える男が再度口を開いた。
「そんで、こっちはこっからどうしたらいいんです?頼まれてた仕事はご覧の通り終わったんもんで……」
すると、徐にロンベルはその場から動き。そうして男の目の前にまで来るや否や、その顔面を殴りつけた。一切躊躇せず、遠慮なく。
「ぶべ……ッ!」
殴られた男は堪らず身体をふらつかせたものの、倒れることも、抱き抱える少女を放り投げることもなく、彼は耐えた。
そんな男をロンベルは塵芥か滓でも見下ろすかのような目つきで、吐き捨てるように言う。
「立場を理解してねえみたいだな。誰に向かってんな口利いてんだ、ああ?そら、さっさと早く寄越せやボケが」
「へ、へいへい……」
ロンベルに急かされ、男は彼に少女を受け渡す。彼から少女を受け取ったロンベルは、早速その身体を目で眺め、手で触れ。そうして、彼は少女を味見する。
「……はっ、生意気な肉つきしやがってからに。あーけしからん、けしからんなぁこれは。全く以てけしからんよなあおい」
と、下卑下劣な思考を少しも隠そうとせず、その顔に出しながら。ロンベルはそう呟き、極上の獲物を前にした猛獣のように、唇を舌で舐めずった。それからあからさまに上機嫌な様子で、少女をその腕に抱き抱えたまま踵を返した。
「にしても、なあ?」
その途中で、この場はおろか路地裏全体に響き渡る程の大声で、ロンベルはわざとらしく続ける。
「もうちったぁ感謝してほしいよなあ。相手を眠らせて記憶を消す固有魔法……ってだけ言えば聞こえは良いが?その実対象相手の魔力が高かったり、耐性があると少しも効きやしない外れ固有魔法だもんなぁ」
「……」
「それに加えて魔物全般にゃあ効果がねえときたもんだ。はは、マジに使えねえなあおい?マジで終わっちまってるよなあ、おいおい」
ロンベルの言葉を、男は何も言わずにただ黙って聞き続けていた。
ここで下手に何か言い返そうものなら、その後自分に待ち受けているのはロンベルによる私刑だ。それがわかっていて、口を開こうとする馬鹿はいない。そして男もそういった馬鹿の一人ではない。
それ故の無言と沈黙。だがそうしたところで、結局はロンベルという男の加虐性を加速させるだけなのだ。
「そんな塵芥の屑滓《クズカス》戦力外野郎を、わざわざ拾ってやってこうやって有効活用して、それでちゃんとお目溢しもくれてやってる俺は一体何だ?善人の中の善人じゃねえかよ!?ははははははッ!!!」
──……相変わらず言いたい放題言いやがって。お前みたいなクソド外道が善人な訳ねぇだろうが。それにお目溢しつったって、散々お前らに使い回されて使い倒された後じゃねえかよ……。
と、心の中であらん限りの悪意と憎悪を込め、殺意を剥き出しにして吐き捨てる男だが。それが声に出てしまわないよう、依然として口は固く閉ざしている。
「君が善人の中の善人だとしたら、僕は死後聖人認定されるだろうね」
「だな」
「…………」
「ああ?そらどういう意味だお前ら。ああッ!?……ふん、まあいい。今、んなことに付き合ってられる程暇じゃあない」
自分は善人だと宣うロンベルに、各々の意見を溢す《A》冒険者の三人。そのどれもが否定的で、当然の如くロンベルは語気を荒げて彼らに噛みつく。しかし、すぐさま不快さを噯にも隠さないで忌々しそうに吐き捨て、そそくさと足早にまた歩き出した。
ロンベルの視線の先────そこにあったのは、路地裏の地面に投げ出されるようにして雑に置かれている、埃に塗れ薄汚れているマットレス。
彼はそのマットレスのすぐ側にまで歩くと、まるで物のように抱き抱えていた少女を放り投げた。流麗に煌めく赤髪をぶわりと宙に広げながら、少女はそのマットレスに落下する。
お世辞にも反発性に優れているようには見えない古ぼけたマットレスで、それ故に衝撃の吸収性も相応に低いだろうことが容易に見て取れたが。
トス──しかし、少女がマットレスに着地した時に聞こえたのは、思いの外重々しいものではなかった。どうやら少女の身体の軽さが功を奏したようである。
勢いよく跳ね上がってしまい、あわやマットレスの外に弾き出されしまうということもなく。少女の身体は無事マットレスの上に乗せられた。なお、このように扱われても、少女が目を覚ます様子はない。
それを確認したロンベルは再度舌舐めずりをして、それから顔だけを後ろに振り向かせた。
「最初に話した通り初物は俺が頂く。文句はねえよな?」
「どうぞご自由に。どのみち、今回僕はパスだ。趣味じゃない」
「俺も構わねえぞぉ。その代わり、後ろは俺のモンだってこと忘れんじゃねえぞぉ」
「はっ、クライドはまだしも、ヴェッチャ。お前だけは理解に苦しまされるぜ。糞穴のどこが良いんだか……」
「意外と悪かねぇんだぞこれが。前とは違って、こう……グッポリ感が良い。一度味わえば病みつきになるってもんだぁ」
「訊いてもねえこと言うなや気持ち悪りぃ。で、ガロー。お前もクライドと同じってことでいいんだよな?」
「…………」
そうして、それぞれの言質を確保し、ロンベルはニヤリと下品な笑みを浮かべて。彼は再び少女の方へと向き直り、自分もまたマットレスに身を乗り出した。
如何に少女が軽くとも、ロンベル程の男が上に乗ればどのようなマットレスであってもその形は歪み、押し潰れる。こんなマットレスでは尚のことで、生地越しに地面の硬い感触を膝頭に感じるロンベルだったが、しかし彼がそれを気にすることはない。
当たり前だろう。これから味わう少女と、その快楽を前にしてしまえば。ロンベルにとってそんなものは至って些細なことでしかないのだから。
「へへッ……悪く思うなよ嬢ちゃん。俺を恨んだりするなよ嬢ちゃん。なんたってこれからヤること全部、あいつの所為なんだからよ」
と、まるで呪詛のようにそんなことを呟きながら。ロンベルは少女の胸元へと手を伸ばし、シャツを掴み────下着ごと、破り裂いて引き千切り、剥ぎ取った。
今すぐにでも少女を抱き抱えている男を殴り飛ばしそうな様子のロンベルを、あくまでも穏やかな口調で冷ややかに諌める男────その名はクライド=シエスタ。彼もロンベルと同じく『大翼の不死鳥』に所属する《A》冒険者であり、『閃瞬』の異名を名乗っている。
「そうかぁ?俺はロンベルに同意見だけどなぁ。俺たちゃあ《A》冒険者様だぞぉ?そんな《A》冒険者様を待たせるとか、ぶっ飛ばされても文句言えねぇぞぉ?」
と、透かさず口を挟むその男。名はヴェッチャ=クーゲルフライデー。この男もロンベルやクライドと同じ《A》冒険者で、『壊撃』で通っている確かな実力者の一人だ。
「…………」
そして残った最後の一人の男。壁を背に無言で立つ彼の名は、ガロー。わかっているのはただそれだけで、姓名は当然として、その他の素性などが全くの不明である。一つだけ確かなのは、この男もロンベルやクライド、ヴェッチャと肩を並べる屈指の《A》冒険者ということだけだった。
ともあれ、このように。今、この裏路地の入り組んだ奥の、更に奥には。どういう訳で、どういった理由からなのか。『大翼の不死鳥』が抱える《A》冒険者が集っていたのだ。
「それにしても、なるほどね……その子で最近噂で持ち切りの?」
「ああ。ブレイズさんの影武者やってる子供だ。ったく、忌々しい。腹立たしいったらありゃしねえ」
「子供の割には育ってんな。出るとこ出てっし」
「…………」
眠り込み、何一つとして言えない少女に対し。各々の感想を言い合う男たち。そんな会話を遮るように、少女を抱き抱える男が再度口を開いた。
「そんで、こっちはこっからどうしたらいいんです?頼まれてた仕事はご覧の通り終わったんもんで……」
すると、徐にロンベルはその場から動き。そうして男の目の前にまで来るや否や、その顔面を殴りつけた。一切躊躇せず、遠慮なく。
「ぶべ……ッ!」
殴られた男は堪らず身体をふらつかせたものの、倒れることも、抱き抱える少女を放り投げることもなく、彼は耐えた。
そんな男をロンベルは塵芥か滓でも見下ろすかのような目つきで、吐き捨てるように言う。
「立場を理解してねえみたいだな。誰に向かってんな口利いてんだ、ああ?そら、さっさと早く寄越せやボケが」
「へ、へいへい……」
ロンベルに急かされ、男は彼に少女を受け渡す。彼から少女を受け取ったロンベルは、早速その身体を目で眺め、手で触れ。そうして、彼は少女を味見する。
「……はっ、生意気な肉つきしやがってからに。あーけしからん、けしからんなぁこれは。全く以てけしからんよなあおい」
と、下卑下劣な思考を少しも隠そうとせず、その顔に出しながら。ロンベルはそう呟き、極上の獲物を前にした猛獣のように、唇を舌で舐めずった。それからあからさまに上機嫌な様子で、少女をその腕に抱き抱えたまま踵を返した。
「にしても、なあ?」
その途中で、この場はおろか路地裏全体に響き渡る程の大声で、ロンベルはわざとらしく続ける。
「もうちったぁ感謝してほしいよなあ。相手を眠らせて記憶を消す固有魔法……ってだけ言えば聞こえは良いが?その実対象相手の魔力が高かったり、耐性があると少しも効きやしない外れ固有魔法だもんなぁ」
「……」
「それに加えて魔物全般にゃあ効果がねえときたもんだ。はは、マジに使えねえなあおい?マジで終わっちまってるよなあ、おいおい」
ロンベルの言葉を、男は何も言わずにただ黙って聞き続けていた。
ここで下手に何か言い返そうものなら、その後自分に待ち受けているのはロンベルによる私刑だ。それがわかっていて、口を開こうとする馬鹿はいない。そして男もそういった馬鹿の一人ではない。
それ故の無言と沈黙。だがそうしたところで、結局はロンベルという男の加虐性を加速させるだけなのだ。
「そんな塵芥の屑滓《クズカス》戦力外野郎を、わざわざ拾ってやってこうやって有効活用して、それでちゃんとお目溢しもくれてやってる俺は一体何だ?善人の中の善人じゃねえかよ!?ははははははッ!!!」
──……相変わらず言いたい放題言いやがって。お前みたいなクソド外道が善人な訳ねぇだろうが。それにお目溢しつったって、散々お前らに使い回されて使い倒された後じゃねえかよ……。
と、心の中であらん限りの悪意と憎悪を込め、殺意を剥き出しにして吐き捨てる男だが。それが声に出てしまわないよう、依然として口は固く閉ざしている。
「君が善人の中の善人だとしたら、僕は死後聖人認定されるだろうね」
「だな」
「…………」
「ああ?そらどういう意味だお前ら。ああッ!?……ふん、まあいい。今、んなことに付き合ってられる程暇じゃあない」
自分は善人だと宣うロンベルに、各々の意見を溢す《A》冒険者の三人。そのどれもが否定的で、当然の如くロンベルは語気を荒げて彼らに噛みつく。しかし、すぐさま不快さを噯にも隠さないで忌々しそうに吐き捨て、そそくさと足早にまた歩き出した。
ロンベルの視線の先────そこにあったのは、路地裏の地面に投げ出されるようにして雑に置かれている、埃に塗れ薄汚れているマットレス。
彼はそのマットレスのすぐ側にまで歩くと、まるで物のように抱き抱えていた少女を放り投げた。流麗に煌めく赤髪をぶわりと宙に広げながら、少女はそのマットレスに落下する。
お世辞にも反発性に優れているようには見えない古ぼけたマットレスで、それ故に衝撃の吸収性も相応に低いだろうことが容易に見て取れたが。
トス──しかし、少女がマットレスに着地した時に聞こえたのは、思いの外重々しいものではなかった。どうやら少女の身体の軽さが功を奏したようである。
勢いよく跳ね上がってしまい、あわやマットレスの外に弾き出されしまうということもなく。少女の身体は無事マットレスの上に乗せられた。なお、このように扱われても、少女が目を覚ます様子はない。
それを確認したロンベルは再度舌舐めずりをして、それから顔だけを後ろに振り向かせた。
「最初に話した通り初物は俺が頂く。文句はねえよな?」
「どうぞご自由に。どのみち、今回僕はパスだ。趣味じゃない」
「俺も構わねえぞぉ。その代わり、後ろは俺のモンだってこと忘れんじゃねえぞぉ」
「はっ、クライドはまだしも、ヴェッチャ。お前だけは理解に苦しまされるぜ。糞穴のどこが良いんだか……」
「意外と悪かねぇんだぞこれが。前とは違って、こう……グッポリ感が良い。一度味わえば病みつきになるってもんだぁ」
「訊いてもねえこと言うなや気持ち悪りぃ。で、ガロー。お前もクライドと同じってことでいいんだよな?」
「…………」
そうして、それぞれの言質を確保し、ロンベルはニヤリと下品な笑みを浮かべて。彼は再び少女の方へと向き直り、自分もまたマットレスに身を乗り出した。
如何に少女が軽くとも、ロンベル程の男が上に乗ればどのようなマットレスであってもその形は歪み、押し潰れる。こんなマットレスでは尚のことで、生地越しに地面の硬い感触を膝頭に感じるロンベルだったが、しかし彼がそれを気にすることはない。
当たり前だろう。これから味わう少女と、その快楽を前にしてしまえば。ロンベルにとってそんなものは至って些細なことでしかないのだから。
「へへッ……悪く思うなよ嬢ちゃん。俺を恨んだりするなよ嬢ちゃん。なんたってこれからヤること全部、あいつの所為なんだからよ」
と、まるで呪詛のようにそんなことを呟きながら。ロンベルは少女の胸元へと手を伸ばし、シャツを掴み────下着ごと、破り裂いて引き千切り、剥ぎ取った。
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