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RESTART──先輩と後輩──

崩壊(その三十)

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 人気もなければ、人通りもないような。そんな、まるで絵に描いたようかのような薄暗い裏路地。無論本来であれば誰一人として、わざわざ用でもなければ近づかないこの場所だが。今、一つの足音が静かに響き渡っており。その足音の主────一人の男の姿があった。

 否、正確に言えばその男一人という訳ではない。何故ならば、男はその腕にもう一人の人間────まるで燃え盛る炎のように、逆巻き揺らぐ紅蓮のように。否応にも人目を惹く、赤い髪の少女を抱き抱えていたのだから。

 どうやら少女は男の腕の中で眠り込んでいるようで、しっかりと閉じられた瞳は開かれる様子を一向に見せない。男の歩みに合わせて多少身体が揺れ動いても、起きる気配は全くと言っていい程に見られず。その様子から、少女の眠りが相当深いものであることが容易に察せられる。

 そのまだ幼なげであどけない少女の寝顔を時折、男は確認しつつ。口元を歪ませ、口角を吊り上げ、そうして下衆の笑みを見事に作り上げる。

「いやぁ、恐ろしく興奮するなぁ……この男をまるで知らねえ子供ガキの嬢ちゃんを、これから好き勝手に、好き放題に犯しまくれると思うと……楽しみで楽しみで、そりゃあもう驚く程に仕方ねぇわ」

 浮かべるその笑みに違わぬ、至極下衆な呟きを独り漏らしつつ。続けて、少女の寝顔を舐め回すように眺める。

 確かに幼なげであどけない────しかし、それだけではない。ほんのりと薄ら赤い唇には既に女特有の艶があり、思わず指先で触れてなぞり、突っついてみたい衝動に駆られてしまう。が、今はそんなことをしている場合ではないし、まだでもない。

 次に男は己の腕にかかる少女の重さと、そしてその柔らかさを愉しむ。

「……」

 しかし、言うまでもなくこの男が。その程度のことで満足など到底、絶対にできる訳もなく。却って身の内に燻る劣情を悪戯に刺激されるだけで。

 故に当然、必然的に男の視線は向かう────無警戒に、そして無防備に。緩やかで穏やかに、規則正しく上下を繰り返す、少女の胸元に。

「…………」

 見たところ、恐らく少女の年齢としは十代半ば。多めに見積もってもその後半に丁度差し掛かった辺りで、少なくとも二十歳はたちをまだ超えてはいないだろう。

 それに背丈もだいぶ低い。頭の天辺がこちらの臍をようやく越すまでしかない。それが尚更、この少女の幼さに拍車を掛けている。……掛けている訳なのだが。

 そんな幼い子供のような容姿とは無縁そうな、この少女の一要素アピールポイント────それは言うまでもなく、胸だろう。

 顔に見合わず、低い背丈とは裏腹に。少女の胸は豊かでたわわに実っており、今着ている女物レディースのシャツを些か、窮屈そうに前へ押し出している程だ。

 もしかすると、この少女の背の低さはこの胸に栄養の大半を持っていかれたからなのか────と、そんな風に。ある訳もない原因を男は愚推した。

 それはさておき。男としてこの世に生を受けた以上、否応にもこの胸には惹かれてしまう。こうして見るだけではなく、己が手で触ってみたい。あわよくば両方を両手で触って、そして心行くまで揉んで。揉みしだいて、揉みくちゃにしてやりたい。

 それにこの少女の特筆すべき点は胸だけには留まらない。そこを除くと、一見してそこまで性的な部分は見当たらないかのように思われるだろうが────否。断じて、否と。男は言い切る。

 確かに一見すればそうだろう。が、こうして直に、少女の身体を抱き上げ、触れてみてわかった。

 女っ気のないショートパンツに包み込まれた臀部しりはやや小ぶりながらも形は良く確かに肉厚で、女性的な柔らかさをきちんと有しており。胸と同様、しかしこちらの場合は力強く鷲掴んで思い切り形を歪ませたいという、おとこの原始的な性的欲求を呼び起こされてくれる。

 しなやかに伸びる足とは対照的に、むっちりとした肉感溢れる太腿ふともも情事ことをするにあたって、それはもう抜群の安定感を発揮してくれることだろう。

 ……と、ここまで語ってきた通り。その見た目と服装からでは少しばかり女っぽさが不足していると思いきや、その実こうして目で見て手で触れなければわからないような、要所要所でおんなの色香を匂わせ、漂わせている────それがこの少女に対して下すべき、正当にして本当の評価だろう。

「……良いね、良いねぇ。俄然、良いね……!」

 いざ始めたを軽く想像し、込み上げる期待感と共に男はそう呟く。が、そうして改めて少女を眺めてしまうと……欲が出る。

 少しくらいは。ほんの少し、程度ならば、別に今しても、特に問題はないだろう────と。

「おっとおっと。いけねえいけねぇ……ま、流石にまだ手をつけちゃいけねえ」

 しかし思いの外、この男の自制心ブレーキいた。服の上からとはいえ、つい胸に手を伸ばしそうになった己を、既のところで男は律する。

 そう。だ。まだこの少女に手を出す訳にはいかない。何故ならばこの少女は────なのだから。










「お待たせしましたぁ!言われた通り持ってきましたぜ、お目当ての少女モン

 裏路地の奥の、更に奥。陽の光も差し込まないだろうそこまでに、依然少女を抱き抱えたまま進み続けた男は。路地裏に声を響かせながら、そう言った。

 本来ならば誰も寄りつこうとはしない路地裏の、それも入り組んだ奥の更に奥。当然人などいる筈もないのだが────しかし、今日のところは違った。

 四人の先客が、そこにはいた。全員、男であった。その中の一人が、不満を少しも隠そうとはせず文句を垂れる。

「遅かったな、鈍間。あと少し、一分でも遅かったら、お前を半殺しにしてたところだ」

「無茶言わないでくださいって。これでも急いだ方なんです。この時期のこの街で人探しなんて、正気の沙汰じゃあないんですよ」

「黙れ。言い訳なんざ聞きたかねえ」

「へいへい……」

 と、言われた文句に対し堪らず苦言を呈した男に。しかし容赦のない言葉をぶつけるその男の名は────ロンベル。





『どうだっていい?どうだっていいって、言ったなあ?確かにそう言ったよなあ、クラハぁ!?』

『そんじゃあ好きにしても構わねえってことだよなあ!お前は文句ねえってことだよなあ!!』

『はっはあ!いんやぁ今から楽しみだぜえ……あの生意気な乳、俺のこの手でどう弄ったもんかな……!』

『第一ラグナさんラグナさんってなあ……あんな乳と尻だけのあんなガキが、ブレイズさんな訳ねえだろうが馬鹿が。デマ、デマなんだよどうせよ。何の為だかは知らねえし知る気もねえけど、天下の『世界冒険者組合ギルド』サマが言いふらした大嘘だ、どうせな』

『ぎあ、っえ』





大翼の不死鳥フェニシオン』に所属する、優秀な部類だと評価されている《A》冒険者ランカー────ロンベル=シュナイザーその人であった。
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