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ARKADIA──それが人であるということ──
Glutonny to Ghostlady──突入、『幽霊屋敷』
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──そうして、現在に至る訳だ。今回の依頼の目的地である『幽霊屋敷』を遠目から眺めていると、馬車の方から声が上げる。
「先ほども言った通り、これ以上は馬車で進むことができません!すみませんがここからは徒歩でお願いします!」
拠点を作る為の準備をしながら、ここまで僕たちを運んでくれた御者がそう言う。彼の言葉に返事をして、それから遠方の屋敷を目指して僕たちは歩き出した。
時刻にして昼を少し過ぎた頃、第二級危険指定地域とされている割りに、特に大した問題も魔物との遭遇もなく、僕たち四人は目的地──ゴーヴェッテン邸の正門前に辿り着いた。
流石に『四大』の一家であるオトィウス家ほどではないが、それでも充分過ぎるほどに巨大な正門を僕は観察する。……少なくとも五十年以上は前から存在しているというのに、錆一つすら見当たらないし、老朽化している様子も見受けられない。確かにこれは、少々奇妙だ。
──本当に誰かがこっそり管理しているのか……?
僕がそう思っていると、不意にサクラさんが前に出る。彼女はそのまま歩みを止めず、固く閉ざされた正門のすぐ前にまで近づいた。すると────
ギイィ──サクラさんが触れた訳でもないのに、正門は音を立てながらゆっくりと、独りでに開かれた。
「ひっ」
そんな不可思議な光景を目の当たりにしたフィーリアさんが、可愛らしい小さな悲鳴を口から漏らす。一方で、誰よりも正門の近くに立つサクラさんは、目の前で勝手に開いたそれに、奇妙な眼差しを注ぐ。
「……これはまた、親切な門だな」
そう呟くや否や、少しも狼狽えずに彼女は再び歩き出す。なんの躊躇なく正門を抜ける彼女の後に、僕たちも多少慌てながらも続いた。
正門を抜けた先でも、森が広がっている。周囲をいくら見渡そうが、やはり同じ木しかない。そして動物の気配も感じ取れず、それどころか魔物が徘徊している風にも見えない。
何処か不穏な空気を肌で感じる最中────結局大した問題に最後まで直面することもなく、とうとう僕ら四人は辿り着いてしまった。
グェニ大森林の深部に建つ、一つの屋敷──目的地、『幽霊屋敷』にへと。
『幽霊屋敷』──ゴーヴェッテン邸。かの屋敷はその噂通り、正門同様五十年以上前の建築物とは思えないほどに綺麗に、そして整えられていた。
木製の壁はどこも腐っておらず、また信じられないことに微細な傷一つすら見当たらない。数十以上にも存在する窓の硝子には僅かな曇りもなく、新品かと思うほどに透明である。……だというのに、そこから覗き見える屋敷の内部は深淵のように暗く、中は一体どうなっているのかは、とてもじゃないがわからなかった。
もはや異様とまで感じるほどに屋敷は綺麗で──だが、ゾッとするほどに、人の気配は全くしない。充分な管理がされているようにしか思えないのに、信じられないくらいに生活感も、人が住んでいる様子がない。
それ故屋敷からは言い表せない、言い様のない恐ろしげな雰囲気というものが漂っており、そういった類に関して有り体言って苦手ではない僕からしても、思わず不気味に思ってしまっていた。
そして僕がこうなのだからと、フィーリアさんの方を見やれば──ほぼ予想通りというか、彼女は真っ青な顔で屋敷を凝視していた。気のせいか、ぷるぷると全身を震わせているようにも見える。
と、不意にギュッと服の袖口を掴まれた。
「?」
なんだと思い見れば、袖口を掴んでいたのは先輩の小さな手だった。続いて隣を見やれば、先輩は顔を少し強張らせて、屋敷を眺めている。流石のこの人も、やはり目の前に建つ屋敷は不気味に思えるらしい。
……それにしても、最近先輩がこういう、女の子らしい仕草をすることが増えた気がする。恐らく当の本人は無自覚なのだろうけど。
まあ今それについて考えるのは後にするとして、僕たち三人がこんな様子の中、サクラさんは至って普通で、数秒屋敷を眺めていたかと思うと、不意に歩き出した。
「行くぞ」
「は、はいっ」「お、おう!」
僕たちに背を向けたまま、彼女は短くそう言う。声をかけられて、慌てて僕と、袖口を掴んだままの先輩も続く。……それから十数秒ほど経った後、震える声を絞り出して、今にも泣き出しそうな様子になりながらも、フィーリアさんも歩き出した。
「え、ちょっ、まっ……お、置いてかないでくださいよぉ~」
遠目から眺めただけでも異様な雰囲気を醸し出していた『幽霊屋敷』だったが、こうして近づくと──それに加えて、言い表せない圧も感じ取れるようにもなった。
──これは、ちょっと……。
もうすぐ目の前には屋敷の中に進む為の大扉があるのだが……情けない話、開ける気になれない。とてもではないが、自分から進んで開けようという気になれないのだ。
すっかり気圧されてしまい、僕が動けないでいると、スッとサクラさんが一歩、足を前に踏み出した。
その瞬間────
ギギギ──閉じられていた大扉が、軋みながらもその見た目通り重厚に、ゆっくりと開かれ始めた。
「…………」
流石にサクラさんも、これには少々面食らったらしい。彼女の身体が、ほんの少しばかり後ろに退がった。
音を立て続けて、遂に大扉は完全に開かれる。その先にあったのは──濃密過ぎる、闇だった。
なにも見えない。全く見えない。ただ、そこに在るのは闇だけ────
「……なるほど。『幽霊屋敷』という通称も、あながち間違いではないらしいな」
先ほどの門と同じく、独りでに開いた大扉と、その奥に待っていた光景に、堪らず動揺する僕と違い、やはりサクラさんは冷静で、静かにそう呟く。
「私が先導を務めよう」
そう言うや否や、少しも臆さずサクラさんは歩き出す。そしてなんの躊躇もなく広がる闇にへと足を踏み入れ──そのまま中に沈んでいった。
少し遅れて、闇から凛としたサクラさんの声が聞こえてくる
「早く来るといい。案外中は普通だぞ」
サクラさんの尋常ではない肝の据わりぶりに、思わず呆気に取られてしまっていたが、彼女の声にハッと我に返り、依然として気圧されたままではあるが僕も、先輩も歩き出した。ちなみに先輩は僕の袖口をギュッと掴んだままである。
一方でフィーリアさんといえば────
「マジですかマジですかなんで中入れちゃうんですか心臓に毛でも生えてるんですかというか置いてかないでくださいぃぃ……!!」
────と、もう半ば泣いているのが丸わかりな声音でそう言いながらも、こんな場所で独りにされる方がよっぽど堪えるらしく僕と先輩の後ろをおっかなびっくり付いていた。
躊躇いながらも、昼間だというのに一寸先すら見通せぬ闇に恐る恐る足を踏み入れる。爪先が闇に埋もれた瞬間、ぬるりとした感触が伝わった──気がした。
そこからは意を決し、一気に踏み込む────目の前を見れば、そこは広大な玄関だった。
「え……」
思わず声が漏れる。外からでは全く見えなかったのに、いざ中に入ってみれば──見える。薄暗いが、それでも目を凝らせば間取りも、構造も、なんなら奥に続く廊下や無数に並んだ扉も、その全部が見える。
いや、それよりも────
──今、昼……だよな?
────そう、今は昼のはずなのだ。外から見た通り、この屋敷には窓がある。それも大量に。だが微かな陽光ですら、差し込んでいない。
差し込んでいるのは、淡く、薄青い光だ。
「…………!?」
それを奇妙に思い、視線を横に流す。…………月が出ていた。
──どうなってるんだ!?
そう驚愕した直後だった。
バタンッ──背後で、凄まじい勢いで扉が閉まる音がした。
「ひえぇっ!?ちょ、はっ?う、嘘でしょっ?!」
普段ならば絶対に聞けないだろう声音で悲鳴を上げたフィーリアさんは、すぐさま扉に駆け寄ったようで、ガタガタと激しく揺らす。しかし、扉が開くことはなかった。
「あ、開かない……」
絶望に満ちたフィーリアさんの声が、虚しく玄関に響き渡る。それから、少し申し訳なさそうにサクラさんが呟く。
「私としたことが迂闊だったな。すまない」
そう呟いて、僅かに身体を揺らした──その瞬間だった。
パキ──それは注意していなければ、聞き逃してしまうほどに小さく、微弱な音。
「む?」
刹那、それはもう凄まじい音を立てながら、サクラさんが立っていた床が抜けた。
それはあまりにも突然で、気がついた時には──もう、僕たちの目の前からサクラさんの姿は消えていた。床に空いた、穴だけをそこに残して。
「…………さ、サクラさんッ!?」
「うわっ?」
思わず先輩を振り払って、僕は穴の元に駆け寄る。覗いてみるが、底知れぬ闇が広がっているだけだった。
「そんな……」
と、僕が呟いた瞬間だった。唐突に、視界を白いものが遮ったのだ。
「ッ!?」
それに驚きつつ、顔を上げる──今、僕は霧に包まれていた。
「き、霧……?屋敷の中で……?」
「お、おいクラハッ。お前急に──って、な、なんだこりゃ?」
振り払われたことを非難しながらも、僕の元に駆け寄った先輩も突如発生した霧に困惑の声を上げる。
霧はたちまち濃くなり──そして、急激に薄まる。やがて霧散したかと思えば、完全に消えた。
「一体、なにが……」
呟きながら、周囲を見渡す。見渡して、僕は気づいてしまった。
「…………フィーリア、さん?」
僕のすぐ傍には先輩がいる。……しかし、扉の方にいたはずのフィーリアさんの姿は、まるで先ほどの霧のように、跡形もなく消えてしまっていた。
「先ほども言った通り、これ以上は馬車で進むことができません!すみませんがここからは徒歩でお願いします!」
拠点を作る為の準備をしながら、ここまで僕たちを運んでくれた御者がそう言う。彼の言葉に返事をして、それから遠方の屋敷を目指して僕たちは歩き出した。
時刻にして昼を少し過ぎた頃、第二級危険指定地域とされている割りに、特に大した問題も魔物との遭遇もなく、僕たち四人は目的地──ゴーヴェッテン邸の正門前に辿り着いた。
流石に『四大』の一家であるオトィウス家ほどではないが、それでも充分過ぎるほどに巨大な正門を僕は観察する。……少なくとも五十年以上は前から存在しているというのに、錆一つすら見当たらないし、老朽化している様子も見受けられない。確かにこれは、少々奇妙だ。
──本当に誰かがこっそり管理しているのか……?
僕がそう思っていると、不意にサクラさんが前に出る。彼女はそのまま歩みを止めず、固く閉ざされた正門のすぐ前にまで近づいた。すると────
ギイィ──サクラさんが触れた訳でもないのに、正門は音を立てながらゆっくりと、独りでに開かれた。
「ひっ」
そんな不可思議な光景を目の当たりにしたフィーリアさんが、可愛らしい小さな悲鳴を口から漏らす。一方で、誰よりも正門の近くに立つサクラさんは、目の前で勝手に開いたそれに、奇妙な眼差しを注ぐ。
「……これはまた、親切な門だな」
そう呟くや否や、少しも狼狽えずに彼女は再び歩き出す。なんの躊躇なく正門を抜ける彼女の後に、僕たちも多少慌てながらも続いた。
正門を抜けた先でも、森が広がっている。周囲をいくら見渡そうが、やはり同じ木しかない。そして動物の気配も感じ取れず、それどころか魔物が徘徊している風にも見えない。
何処か不穏な空気を肌で感じる最中────結局大した問題に最後まで直面することもなく、とうとう僕ら四人は辿り着いてしまった。
グェニ大森林の深部に建つ、一つの屋敷──目的地、『幽霊屋敷』にへと。
『幽霊屋敷』──ゴーヴェッテン邸。かの屋敷はその噂通り、正門同様五十年以上前の建築物とは思えないほどに綺麗に、そして整えられていた。
木製の壁はどこも腐っておらず、また信じられないことに微細な傷一つすら見当たらない。数十以上にも存在する窓の硝子には僅かな曇りもなく、新品かと思うほどに透明である。……だというのに、そこから覗き見える屋敷の内部は深淵のように暗く、中は一体どうなっているのかは、とてもじゃないがわからなかった。
もはや異様とまで感じるほどに屋敷は綺麗で──だが、ゾッとするほどに、人の気配は全くしない。充分な管理がされているようにしか思えないのに、信じられないくらいに生活感も、人が住んでいる様子がない。
それ故屋敷からは言い表せない、言い様のない恐ろしげな雰囲気というものが漂っており、そういった類に関して有り体言って苦手ではない僕からしても、思わず不気味に思ってしまっていた。
そして僕がこうなのだからと、フィーリアさんの方を見やれば──ほぼ予想通りというか、彼女は真っ青な顔で屋敷を凝視していた。気のせいか、ぷるぷると全身を震わせているようにも見える。
と、不意にギュッと服の袖口を掴まれた。
「?」
なんだと思い見れば、袖口を掴んでいたのは先輩の小さな手だった。続いて隣を見やれば、先輩は顔を少し強張らせて、屋敷を眺めている。流石のこの人も、やはり目の前に建つ屋敷は不気味に思えるらしい。
……それにしても、最近先輩がこういう、女の子らしい仕草をすることが増えた気がする。恐らく当の本人は無自覚なのだろうけど。
まあ今それについて考えるのは後にするとして、僕たち三人がこんな様子の中、サクラさんは至って普通で、数秒屋敷を眺めていたかと思うと、不意に歩き出した。
「行くぞ」
「は、はいっ」「お、おう!」
僕たちに背を向けたまま、彼女は短くそう言う。声をかけられて、慌てて僕と、袖口を掴んだままの先輩も続く。……それから十数秒ほど経った後、震える声を絞り出して、今にも泣き出しそうな様子になりながらも、フィーリアさんも歩き出した。
「え、ちょっ、まっ……お、置いてかないでくださいよぉ~」
遠目から眺めただけでも異様な雰囲気を醸し出していた『幽霊屋敷』だったが、こうして近づくと──それに加えて、言い表せない圧も感じ取れるようにもなった。
──これは、ちょっと……。
もうすぐ目の前には屋敷の中に進む為の大扉があるのだが……情けない話、開ける気になれない。とてもではないが、自分から進んで開けようという気になれないのだ。
すっかり気圧されてしまい、僕が動けないでいると、スッとサクラさんが一歩、足を前に踏み出した。
その瞬間────
ギギギ──閉じられていた大扉が、軋みながらもその見た目通り重厚に、ゆっくりと開かれ始めた。
「…………」
流石にサクラさんも、これには少々面食らったらしい。彼女の身体が、ほんの少しばかり後ろに退がった。
音を立て続けて、遂に大扉は完全に開かれる。その先にあったのは──濃密過ぎる、闇だった。
なにも見えない。全く見えない。ただ、そこに在るのは闇だけ────
「……なるほど。『幽霊屋敷』という通称も、あながち間違いではないらしいな」
先ほどの門と同じく、独りでに開いた大扉と、その奥に待っていた光景に、堪らず動揺する僕と違い、やはりサクラさんは冷静で、静かにそう呟く。
「私が先導を務めよう」
そう言うや否や、少しも臆さずサクラさんは歩き出す。そしてなんの躊躇もなく広がる闇にへと足を踏み入れ──そのまま中に沈んでいった。
少し遅れて、闇から凛としたサクラさんの声が聞こえてくる
「早く来るといい。案外中は普通だぞ」
サクラさんの尋常ではない肝の据わりぶりに、思わず呆気に取られてしまっていたが、彼女の声にハッと我に返り、依然として気圧されたままではあるが僕も、先輩も歩き出した。ちなみに先輩は僕の袖口をギュッと掴んだままである。
一方でフィーリアさんといえば────
「マジですかマジですかなんで中入れちゃうんですか心臓に毛でも生えてるんですかというか置いてかないでくださいぃぃ……!!」
────と、もう半ば泣いているのが丸わかりな声音でそう言いながらも、こんな場所で独りにされる方がよっぽど堪えるらしく僕と先輩の後ろをおっかなびっくり付いていた。
躊躇いながらも、昼間だというのに一寸先すら見通せぬ闇に恐る恐る足を踏み入れる。爪先が闇に埋もれた瞬間、ぬるりとした感触が伝わった──気がした。
そこからは意を決し、一気に踏み込む────目の前を見れば、そこは広大な玄関だった。
「え……」
思わず声が漏れる。外からでは全く見えなかったのに、いざ中に入ってみれば──見える。薄暗いが、それでも目を凝らせば間取りも、構造も、なんなら奥に続く廊下や無数に並んだ扉も、その全部が見える。
いや、それよりも────
──今、昼……だよな?
────そう、今は昼のはずなのだ。外から見た通り、この屋敷には窓がある。それも大量に。だが微かな陽光ですら、差し込んでいない。
差し込んでいるのは、淡く、薄青い光だ。
「…………!?」
それを奇妙に思い、視線を横に流す。…………月が出ていた。
──どうなってるんだ!?
そう驚愕した直後だった。
バタンッ──背後で、凄まじい勢いで扉が閉まる音がした。
「ひえぇっ!?ちょ、はっ?う、嘘でしょっ?!」
普段ならば絶対に聞けないだろう声音で悲鳴を上げたフィーリアさんは、すぐさま扉に駆け寄ったようで、ガタガタと激しく揺らす。しかし、扉が開くことはなかった。
「あ、開かない……」
絶望に満ちたフィーリアさんの声が、虚しく玄関に響き渡る。それから、少し申し訳なさそうにサクラさんが呟く。
「私としたことが迂闊だったな。すまない」
そう呟いて、僅かに身体を揺らした──その瞬間だった。
パキ──それは注意していなければ、聞き逃してしまうほどに小さく、微弱な音。
「む?」
刹那、それはもう凄まじい音を立てながら、サクラさんが立っていた床が抜けた。
それはあまりにも突然で、気がついた時には──もう、僕たちの目の前からサクラさんの姿は消えていた。床に空いた、穴だけをそこに残して。
「…………さ、サクラさんッ!?」
「うわっ?」
思わず先輩を振り払って、僕は穴の元に駆け寄る。覗いてみるが、底知れぬ闇が広がっているだけだった。
「そんな……」
と、僕が呟いた瞬間だった。唐突に、視界を白いものが遮ったのだ。
「ッ!?」
それに驚きつつ、顔を上げる──今、僕は霧に包まれていた。
「き、霧……?屋敷の中で……?」
「お、おいクラハッ。お前急に──って、な、なんだこりゃ?」
振り払われたことを非難しながらも、僕の元に駆け寄った先輩も突如発生した霧に困惑の声を上げる。
霧はたちまち濃くなり──そして、急激に薄まる。やがて霧散したかと思えば、完全に消えた。
「一体、なにが……」
呟きながら、周囲を見渡す。見渡して、僕は気づいてしまった。
「…………フィーリア、さん?」
僕のすぐ傍には先輩がいる。……しかし、扉の方にいたはずのフィーリアさんの姿は、まるで先ほどの霧のように、跡形もなく消えてしまっていた。
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