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『極剣聖』と『天魔王』
DESIRE────Battle party(その五)
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アメリアを飲み込んだ、血によって形成された冒涜的な球体。それは、まるで心臓がそうするかのように、静かに脈動を続けていた。
騒がしい彼女が飲み込まれたことによって、大広間は静寂に包まれた。脈動を繰り返すその球体を、フィーリアは訝しげに遠目から眺める。
「……一体、なんなんですかあれは……?」
大広間に響き渡るフィーリアの独り言。周囲が静かなだけあって、それはよく響く。
──わからない以上、無闇に動くのは危険ですかね。
そう自分に言い聞かせて、引き続き球体を観察する──その時だった。
ドクンッ──一際、強く球体が脈動した。
「……?」
瞬間、球体から────腕が飛び出してきた。しかし、それはアメリアの腕でもなければ、もはや人間の腕でもない。
一瞬石柱かと見紛うほどに太く、そして巨大で真っ赤な腕。その肌も人間のそれではなく、まるで岩の表面かのようだった。
そして次に球体から飛び出たのは足。腕と同様真っ赤であり、やはり人間のそれとは違う。
人間離れした腕と足。突如として球体から生えたそれらにフィーリアは少しばかり驚かされたが、この程度のことで動揺する彼女ではない。あくまでも彼女は、冷静だった。
球体に亀裂が走る。最初は一筋だったが、徐々に増えて、瞬く間に球体全体にへと走った。そして──
バッシャアアアアッ──割れ砕け、内部から大量の血が流れ出た。
「きははあはははぁっ。どお『天魔王』様?これが私の、真の姿!」
球体の残骸が転がる中心に立っていたのは、アメリアではなかった。そこに立っていたのは──フィーリアよりもずっと、遙かずっと巨大な、真紅の悪魔だった。
蝙蝠と類似した翼をはためかせ、周囲に暴風を起こす。低く淀み濁った、悍しい声色が大広間の大気を揺らす。
「改めて自己紹介させてもらうわ。私はアメリア=ルーガーネット。人間にして、魔族の血を引く存在」
真紅の悪魔──アメリア=ルーガーネットのその口調は、先ほどまでと違って確かな知性と理性が感じ取れた。
「この私の姿を見て、生きていた人間はこれまでで誰一人としていない。何故なら、私がこの手で全員ぶち殺してやったから」
悪魔となったアメリアが一歩を踏み出す。たったその一歩で、彼女一帯の床全てが、音を立てて割れ爆ぜた。
拳を握り締め、アメリアが牙の並んだ口を大きく開けて、立ち尽くすフィーリアに向かって叫んだ。
「あなたも例外じゃあないわ『天魔王』!人間でしかないあなたに、魔族でもある私は倒せない!」
そして床を蹴った。割れていた床が完璧に粉砕され、一瞬にしてアメリアがフィーリアとの距離を詰める。
拳を振り上げ、そしてフィーリア目掛けて振り下ろす。しかし未だに彼女の前には目に見えない透明な障壁があり、それによってアメリアの拳は防がれてしまう──はずだった。
バァリンッ──アメリアの拳と障壁が衝突し、障壁が歪みガラスのように割れ砕けてしまった。
「な、嘘……!?」
不可視の破片が宙に霧散し、儚く消えていく。その光景を目の当たりにしてフィーリアは、硬直してしまう。
その隙を、アメリアは決して見逃さない。
「勝ったッ!」
ガシッ──慌ててその場から退こうとしたフィーリアを、アメリアは難なく掴み文字通り手中にへと収めてしまった。
「い、いやぁ!離して!離してください!」
悲鳴を上げながら、なんとかして脱出しようとフィーリアはもがくが、無駄だった。アメリアは、ゆっくりと、徐々に彼女の身体を握り締めていく。
「ざまぁないわねえ『天魔王』。このまま握り潰してやるわッ」
グググ──身体を圧迫され、フィーリアが呻く。もはや指一本すら動かせなくなり、身動きが取れなくなってしまった。
「あ、が…ぁ……くる、し……ぃ…」
全身の骨が軋む。内臓が徐々に潰れていく。チカチカと明滅する。
口端から唾液を垂らし、表情を歪ませる彼女の様子を、アメリアは実に愉しそうに眺めていた。事実、彼女は今人生の中で最大の喜悦を享受していた。
「よくも小娘風情が舐めた態度取ってくれてたわねえ。そのお礼に──これ以上にないくらいに苦しませて殺してあげるわぁあ!!」
そして、アメリアは一気に、手に力を込めた。
ゴキグチャボキグチュバキャブチュ──枯れ枝を数十本まとめた折ったような音と、粘度の高い液体を袋に入れ激しく叩いたような音が混じり合い、最高なまでの生理的嫌悪を引き起こす、名状し難い合奏をフィーリアの身体から奏でた。
「あ、ぎぃ、ぁああああぁぁあああああっ?!」
喉奥から絞り出すかのような絶叫をフィーリアは上げて、次の瞬間大量の血を口から噴き出す。そして────まるで糸の切れた人形のように、だらりと首を曲げた。
「……あは、あははははははっ!はははっはははははははははははあああははっははははっっ!!」
アメリアが笑う。これ以上になく、最高だと言うように高らかに笑う。その度に握り締めたフィーリアの身体が揺れ、周囲に血飛沫を飛ばす。
依然笑いながら、アメリアは空いている左手でフィーリアの頭を摘む。そして一切躊躇うことなく、捻り切った。首を失ったフィーリアの身体から、さらに大量の血が床に零れ落ちる。
捻り切ったフィーリアの小さな頭を、アメリアは指圧しまるで林檎のように潰した。爆ぜるようにして潰れた彼女の頭から砕けた頭蓋骨と桃色の肉と、グチャグチャになった脳の破片と脳漿が飛び散り、床を汚した。
それは、フィーリアの死体に対して行われる、死者の尊厳をとことんまで踏み躙り、侮辱する行為の始まりに過ぎなかった。
「きゃはっ!きゃはははははっ!ひひゃあはははっはは!」
腕を摘み、引き千切る。脚を掴み、引き千切る。そして達磨となった彼女の上半身と下半身をそれぞれ掴み、まるでゴムのように伸ばして、引き千切った。
彼女の死体に残されていた血が、雨となってアメリアの頭上から降り注ぐ。それを歓喜し狂笑を上げながらアメリアは浴びる。
「勝った!勝ったわ!私は勝ったんだわ!あの『天魔王』に、クソ生意気で気に入らないチビのメスガキに、私は勝ったんだわぁあははははははははっ!!!」
勝利の咆哮が大広間に轟く。そしてアメリアは
「良い夢は見れましたか?」
──────瞬間、アメリアの目の前の全てが、崩壊した。
騒がしい彼女が飲み込まれたことによって、大広間は静寂に包まれた。脈動を繰り返すその球体を、フィーリアは訝しげに遠目から眺める。
「……一体、なんなんですかあれは……?」
大広間に響き渡るフィーリアの独り言。周囲が静かなだけあって、それはよく響く。
──わからない以上、無闇に動くのは危険ですかね。
そう自分に言い聞かせて、引き続き球体を観察する──その時だった。
ドクンッ──一際、強く球体が脈動した。
「……?」
瞬間、球体から────腕が飛び出してきた。しかし、それはアメリアの腕でもなければ、もはや人間の腕でもない。
一瞬石柱かと見紛うほどに太く、そして巨大で真っ赤な腕。その肌も人間のそれではなく、まるで岩の表面かのようだった。
そして次に球体から飛び出たのは足。腕と同様真っ赤であり、やはり人間のそれとは違う。
人間離れした腕と足。突如として球体から生えたそれらにフィーリアは少しばかり驚かされたが、この程度のことで動揺する彼女ではない。あくまでも彼女は、冷静だった。
球体に亀裂が走る。最初は一筋だったが、徐々に増えて、瞬く間に球体全体にへと走った。そして──
バッシャアアアアッ──割れ砕け、内部から大量の血が流れ出た。
「きははあはははぁっ。どお『天魔王』様?これが私の、真の姿!」
球体の残骸が転がる中心に立っていたのは、アメリアではなかった。そこに立っていたのは──フィーリアよりもずっと、遙かずっと巨大な、真紅の悪魔だった。
蝙蝠と類似した翼をはためかせ、周囲に暴風を起こす。低く淀み濁った、悍しい声色が大広間の大気を揺らす。
「改めて自己紹介させてもらうわ。私はアメリア=ルーガーネット。人間にして、魔族の血を引く存在」
真紅の悪魔──アメリア=ルーガーネットのその口調は、先ほどまでと違って確かな知性と理性が感じ取れた。
「この私の姿を見て、生きていた人間はこれまでで誰一人としていない。何故なら、私がこの手で全員ぶち殺してやったから」
悪魔となったアメリアが一歩を踏み出す。たったその一歩で、彼女一帯の床全てが、音を立てて割れ爆ぜた。
拳を握り締め、アメリアが牙の並んだ口を大きく開けて、立ち尽くすフィーリアに向かって叫んだ。
「あなたも例外じゃあないわ『天魔王』!人間でしかないあなたに、魔族でもある私は倒せない!」
そして床を蹴った。割れていた床が完璧に粉砕され、一瞬にしてアメリアがフィーリアとの距離を詰める。
拳を振り上げ、そしてフィーリア目掛けて振り下ろす。しかし未だに彼女の前には目に見えない透明な障壁があり、それによってアメリアの拳は防がれてしまう──はずだった。
バァリンッ──アメリアの拳と障壁が衝突し、障壁が歪みガラスのように割れ砕けてしまった。
「な、嘘……!?」
不可視の破片が宙に霧散し、儚く消えていく。その光景を目の当たりにしてフィーリアは、硬直してしまう。
その隙を、アメリアは決して見逃さない。
「勝ったッ!」
ガシッ──慌ててその場から退こうとしたフィーリアを、アメリアは難なく掴み文字通り手中にへと収めてしまった。
「い、いやぁ!離して!離してください!」
悲鳴を上げながら、なんとかして脱出しようとフィーリアはもがくが、無駄だった。アメリアは、ゆっくりと、徐々に彼女の身体を握り締めていく。
「ざまぁないわねえ『天魔王』。このまま握り潰してやるわッ」
グググ──身体を圧迫され、フィーリアが呻く。もはや指一本すら動かせなくなり、身動きが取れなくなってしまった。
「あ、が…ぁ……くる、し……ぃ…」
全身の骨が軋む。内臓が徐々に潰れていく。チカチカと明滅する。
口端から唾液を垂らし、表情を歪ませる彼女の様子を、アメリアは実に愉しそうに眺めていた。事実、彼女は今人生の中で最大の喜悦を享受していた。
「よくも小娘風情が舐めた態度取ってくれてたわねえ。そのお礼に──これ以上にないくらいに苦しませて殺してあげるわぁあ!!」
そして、アメリアは一気に、手に力を込めた。
ゴキグチャボキグチュバキャブチュ──枯れ枝を数十本まとめた折ったような音と、粘度の高い液体を袋に入れ激しく叩いたような音が混じり合い、最高なまでの生理的嫌悪を引き起こす、名状し難い合奏をフィーリアの身体から奏でた。
「あ、ぎぃ、ぁああああぁぁあああああっ?!」
喉奥から絞り出すかのような絶叫をフィーリアは上げて、次の瞬間大量の血を口から噴き出す。そして────まるで糸の切れた人形のように、だらりと首を曲げた。
「……あは、あははははははっ!はははっはははははははははははあああははっははははっっ!!」
アメリアが笑う。これ以上になく、最高だと言うように高らかに笑う。その度に握り締めたフィーリアの身体が揺れ、周囲に血飛沫を飛ばす。
依然笑いながら、アメリアは空いている左手でフィーリアの頭を摘む。そして一切躊躇うことなく、捻り切った。首を失ったフィーリアの身体から、さらに大量の血が床に零れ落ちる。
捻り切ったフィーリアの小さな頭を、アメリアは指圧しまるで林檎のように潰した。爆ぜるようにして潰れた彼女の頭から砕けた頭蓋骨と桃色の肉と、グチャグチャになった脳の破片と脳漿が飛び散り、床を汚した。
それは、フィーリアの死体に対して行われる、死者の尊厳をとことんまで踏み躙り、侮辱する行為の始まりに過ぎなかった。
「きゃはっ!きゃはははははっ!ひひゃあはははっはは!」
腕を摘み、引き千切る。脚を掴み、引き千切る。そして達磨となった彼女の上半身と下半身をそれぞれ掴み、まるでゴムのように伸ばして、引き千切った。
彼女の死体に残されていた血が、雨となってアメリアの頭上から降り注ぐ。それを歓喜し狂笑を上げながらアメリアは浴びる。
「勝った!勝ったわ!私は勝ったんだわ!あの『天魔王』に、クソ生意気で気に入らないチビのメスガキに、私は勝ったんだわぁあははははははははっ!!!」
勝利の咆哮が大広間に轟く。そしてアメリアは
「良い夢は見れましたか?」
──────瞬間、アメリアの目の前の全てが、崩壊した。
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