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『極剣聖』と『天魔王』
DESIRE────可愛い先輩
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「クソッ…なんで俺がこんな格好……!」
などという言葉と共に、フィーリアさんに連れられこの場に現れた先輩。その姿を見て僕は──言葉を失っていた。
──せ、先輩……。
先輩が今着ているのは、赤と黒を基調とした、ゴシックドレス。フリルなどで全体的にボリュームがあり、大胆にも胸元を露出させている。全体的に見れば実に少女らしい衣装だが、しかしその内に秘めた女らしさも醸し出していた。また、サイズがなかったのかそれとも意図的なのか。先輩には少し大きいのではないかと思う。
しかし、逆にそれが功を奏しており、今の先輩を非常に素晴らしく、愛くるしい可憐な少女にへと仕立てていた。今の先輩は、傍目から見ると超一流の、それこそこの世に二人とていない鬼才の人形作家──《神の手》、マヴィロフ=ベンクィッティが手がけた、非常に精巧な芸術的人形としか思えない。
「うぅぅぅ……!」
堪えられないというような呻き声を上げて、両手で顔を覆い俯く先輩。梳かれて絹のような輝きと艶やかさを放つ髪の隙間から僅かに覗き見える、真っ赤に染まった耳から察するに、恐らくその顔も完熟した林檎のようになっていることだろう。
「どうですどうですかウインドアさん!?このラグナさんは!?可愛いですよね!?思わず抱き締めたくなりますよねなっちゃいますよね!?」
何処からどう見ても美少女然とした今の先輩に思わず見惚れてしまっている横で、はぁはぁと息を荒げ興奮を少しも隠そうとしないフィーリアさんが僕にそう訊いてくる。正直、彼女のその言葉には同意する。全力で。
「ほら、なにか言ってあげてくださいよウインドアさん!さあ!さあ!!」
興奮全開のフィーリアさんの言葉に押されるように──しかし全くの無意識に、僕は口を開き声を零した。
「可愛い」
瞬間、バッと俯いていた先輩が思い切り顔を上げた。予想通り、その顔は完熟した林檎の──いや、もはやそれ以上に真っ赤に、真っ赤っ赤に染まっており、また驚愕の表情となっていた。
「か、かわっ………!?」
先輩のその声はこれまでにないほどに震えており、その上凄まじく掠れていた。それからまるで魚のように口をぱくぱく開閉させて──かと思えば、その琥珀色の瞳をじわぁと潤わせた。
──あっ……。
今までの経験上、僕は察した。この後に起こすであろう先輩の行動を。その前に止めようと慌てて再度口を開こうとしたが──
「ぅ、ぁ…な、なに言ってんだこの馬鹿ぁぁぁあっっ」
──と、叫んで。僕らから背を向けて脱兎の如く店の奥に逃げてしまった。
「………………」
非常に居た堪れない気分の中、遠ざかるラグナ先輩の背中に手を伸ばしたまま立ち尽くす僕の横で、《SS》冒険者二人が会話を交わす。
「そういえば、どうしたんですかサクラさん。さっきからずっと黙ってますけど……?」
「……………………心を無にしていなければ、即死だった」
「は?」
などという言葉と共に、フィーリアさんに連れられこの場に現れた先輩。その姿を見て僕は──言葉を失っていた。
──せ、先輩……。
先輩が今着ているのは、赤と黒を基調とした、ゴシックドレス。フリルなどで全体的にボリュームがあり、大胆にも胸元を露出させている。全体的に見れば実に少女らしい衣装だが、しかしその内に秘めた女らしさも醸し出していた。また、サイズがなかったのかそれとも意図的なのか。先輩には少し大きいのではないかと思う。
しかし、逆にそれが功を奏しており、今の先輩を非常に素晴らしく、愛くるしい可憐な少女にへと仕立てていた。今の先輩は、傍目から見ると超一流の、それこそこの世に二人とていない鬼才の人形作家──《神の手》、マヴィロフ=ベンクィッティが手がけた、非常に精巧な芸術的人形としか思えない。
「うぅぅぅ……!」
堪えられないというような呻き声を上げて、両手で顔を覆い俯く先輩。梳かれて絹のような輝きと艶やかさを放つ髪の隙間から僅かに覗き見える、真っ赤に染まった耳から察するに、恐らくその顔も完熟した林檎のようになっていることだろう。
「どうですどうですかウインドアさん!?このラグナさんは!?可愛いですよね!?思わず抱き締めたくなりますよねなっちゃいますよね!?」
何処からどう見ても美少女然とした今の先輩に思わず見惚れてしまっている横で、はぁはぁと息を荒げ興奮を少しも隠そうとしないフィーリアさんが僕にそう訊いてくる。正直、彼女のその言葉には同意する。全力で。
「ほら、なにか言ってあげてくださいよウインドアさん!さあ!さあ!!」
興奮全開のフィーリアさんの言葉に押されるように──しかし全くの無意識に、僕は口を開き声を零した。
「可愛い」
瞬間、バッと俯いていた先輩が思い切り顔を上げた。予想通り、その顔は完熟した林檎の──いや、もはやそれ以上に真っ赤に、真っ赤っ赤に染まっており、また驚愕の表情となっていた。
「か、かわっ………!?」
先輩のその声はこれまでにないほどに震えており、その上凄まじく掠れていた。それからまるで魚のように口をぱくぱく開閉させて──かと思えば、その琥珀色の瞳をじわぁと潤わせた。
──あっ……。
今までの経験上、僕は察した。この後に起こすであろう先輩の行動を。その前に止めようと慌てて再度口を開こうとしたが──
「ぅ、ぁ…な、なに言ってんだこの馬鹿ぁぁぁあっっ」
──と、叫んで。僕らから背を向けて脱兎の如く店の奥に逃げてしまった。
「………………」
非常に居た堪れない気分の中、遠ざかるラグナ先輩の背中に手を伸ばしたまま立ち尽くす僕の横で、《SS》冒険者二人が会話を交わす。
「そういえば、どうしたんですかサクラさん。さっきからずっと黙ってますけど……?」
「……………………心を無にしていなければ、即死だった」
「は?」
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