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『極剣聖』と『天魔王』
DESIRE────やわやわ、こりんこりん
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ガラッ──突如、浴室の扉が勢いよく、乱暴に開け放たれた。
「くーらはっ!まーだはいってんのか~?」
そんな声と共に、浴室に飛び込んでくる影が一つ。燃え盛る炎のように鮮やかな赤色をした髪が、僕の視界の隅で揺れる。
一瞬、なにが起きているのか僕は理解できなかった。理解できなかったが、己の視界は目の前の光景をしっかりと捉えていた。
僅かばかりに朱が差した肌は、見ているだけでも実に滑らかそうで。さぞかし極上の手触りをしているのだろうことを、如実に伝えてくれる。
窪んだ小さな臍は可愛らしくも何処か扇情的で。細く括れた腰は軽く抱き締めただけでも、折れてしまいそうなほどに華奢で。
だがそれに反して太腿は妙に肉付きが良く、しかし太いという訳ではない。スラリと伸びて、曲線美を描く足がそれを教えてくれる。
そして走っているせいで激しく上下し、その柔らかさをこれまでかと訴えてくる、適度に実った二つの────
──そぉぉおおおっいいぃっ!!!
────そこで、僕は自らの頬を思い切り、自らの拳で打ち抜いた。
「せ、先輩ッ?!ま、まだ僕入っているんですけどッ?」
頬に広がる鈍い痛みによって、正気に戻った僕は突如として浴室に乱入してきた先輩に言いながら、即座に背中を向ける。
そんな僕に対して、一糸纏わぬあられもなさ過ぎる(ここは浴室なので、仕方のないことというかそうなるのが当然なのだが)姿の先輩が、きょとんとした声を背中越しにかけてきた。
「ん~?なんでくらはせなかむけてんの~?こっちみろよ~おれおまえのせんぱいなんだぞ~?」
けらけらとしながら、先輩がゆっくりとこちらに近づいてくる気配がする。
「いや、いやいやなに言ってんですか先輩?僕男ですよ?お・と・こなんですよっ?」
「おまえこそなにいってんだよ~おれだっておとこだっての~」
「いやそれはそうなんですけど!精神的には男同士ですが肉体的には──って、ん……?」
そこまで言って、ふと気づいた。先ほどから先輩の声が、こう……妙に間延びしているというか、やけにふわふわしたものになっているというか。
──まるで、酔っ払って…………あ。
そして思い出した。確か、この部屋の冷蔵庫に、一本のワインボトルが冷やしてあったことを。
………まさか。
「あの……先輩?ひょっとして、酔ってます?」
「んぇ?よってなんか、ねえっての~ただぁ、れーぞーこにぃ、ぶどうじゅーすあったからそれのんだだけだし~」
──ドンピシャだ畜生ッ!
恐らくルームサービスの一環というものなのだろうけれど、それでも僕はこのホテルの従業員に対して、僅かばかりの怒りをぶつけてしまう。
まあそれはそうとして。今先輩は酩酊状態にある。つまり酔っている。酔っ払いと化してしまっている。
正常な判断力が欠けている今、そんな先輩と一緒に入浴するなど問題しかない。あと罪悪感が凄まじいことになる。
……しかし。しかしだ。先輩をこの浴室から追い出すには…………また、振り返らなければ、ならない。
背後を振り返って、先輩の裸体を直視しなければならないのだ。
──………………最悪、目を瞑れば……!
が、
チャプン──すぐ後ろで、なにかが水に沈むような音が聞こえてきた。
「ふい~……あったけえぇ…」
「せんぱぁぁいィ!?」
思わず絶叫しながら背後を振り返りそうになって、慌てて止まる。
なんてこった、先輩が浴槽に入ってきてしまったじゃあないか……!
「せせ、先輩お、おちちちついてて」
「あはは~なんかくらはへんだぞ~?」
先輩にそう言われて、ハッと僕は我に返った。いけない、まず落ち着くべきは僕自身だ。
平静を取り繕いながら、背中を向けたままもう一度先輩に話しかける。
「先輩、取り敢えず僕の話を「えいっ」突如として背中を包み込むマシュマロ感触うぼはあああああ!!!」
僕の平静は、所詮ただの付け焼き刃に過ぎなかった。一瞬という刹那にも満たない短過ぎる時間を使って構築された僕の平静など、この蕩けるように柔い極上の果実の前には無力だった。哀しいほどに無力で、僕はやっぱり男なんだなと、痛感させられた。
──いや違う違うそうじゃない。
落ち着け落ち着くんだ僕。ここで動揺したらそれこそ先輩の思う壺だ。……まあ、酔ってるから大した思考はできてないと思うけど。
それに今さら抱きつかれたからなんだというのだ。別にこれが初めてじゃあないじゃないか。二度目じゃあないかこれで。
だから僕がこの程度で動揺なんて────
「ぎゅうぅ」
────マシュマロがさらに密着してきてしかも背中全体を滑らかでしっとりとした肌が覆って
「うぐおぉぉぉぉぉ……!」
なんと凄まじい刺激。あまりに桁違いな威力の前に、僕の理性は危うくKOされるところだった。
露出しそうになる本能を、呻き声を上げながら無理矢理捩じ伏せる。僕は男。先輩も男。だからなにもないなにかあってはいけない…………!
「先輩…ッ、きゅ、急にどうしたんですか…?なんで、こんな抱きついて……ッ」
必死に自分を保ちながら、そう尋ねると、酔っ払いは少しぼうっとした声で答えた。
「わかんねえ。なんとなく?」
前言撤回。先輩のそれは答えになっていなかった。先輩も正気じゃない……ッ。
「先輩、取り敢えず離れましょう?ね?」
背中に抱きつき柔肌を惜しげもなく密着させてくる先輩に、まるで赦しを請うかのような声音で、僕はなんとか説得を試みる。
だが、酔って我を失っている先輩にそんなものが通じるはずもなく、
「やぁーだ」
ぎゅぎゅぅ、と。僕の首に両腕を回して、これ以上にないほどに強く抱きついてきた。
僕の背中に、過剰なまでに押しつけられた二つの膨らみ。形容するならやはりそれはマシュマロで、何処までも柔らかくて────だがしかし。
こりん、と。そこで初めて、硬く尖ったような感触も感じ取れた。
──……あ。
それが一体なんなのか、初めの数秒はわからなかった。だが急速に冴えていく頭が、その正体を即座に弾き出した。
そう。それは、言うなれば──────
──…………もう、無理だ。
心臓が高鳴る。血が全身を一気に駆け巡る。堪えていた分、より一層激しく強烈に。
「ん……?くらは、なんかからだあついぞ……?」
僕をこうさせた張本人が、そう言いながらこちらの肩に顎を乗せてくる。その行動すらも、己を昂らせる燃料となってしまう。
「くらはー……?」
こちらの身を案じているのだろう声。だが、やはりそれすらも──悩ましい。
──この際、自覚させて……あげようかな。
欠片ほどといえど、まだ残っていた理性が本能に喰い殺されていくのを感じながら、そう思った。
未だに先輩が、その身体で自らを男だと主張するのなら──はっきりと、その身体にわからせてやろう。
いくら意識は男でも、精神は男でも、身体はあくまでも女なんですよとわからせてやろう──いや、わからせてやる。
──そうしたら、こんな挑発、もうしなくなるはず。
徐々に、最低に歪んでいく己に気づけず、僕はそう結論づける。その行為こそ、自分が最も恐れていたことだというのに。
先輩に対して、絶対にしてはならない行為だと、重々承知していたことだというのに。
だが、先輩の色香に狂わされてしまった僕は、それを思い出すことができない。
──先輩が悪いんだ。一体どれだけ僕が我慢しているのか、抑え込んでいるのか知らないで、いつもいつも………!!
これから先輩に対してする己の歪み切った、何処までも最悪で最低な行為を正当化するため、身勝手にも程がある言い訳を心の中で呟いて、顔だけ振り返った。
「…ん……ぅ……」
……………………寝ていた。先輩は、こちらの首に両腕を回したまま、こちらの肩に顎を乗せたまま、こちらの背中に身体を預けたまま、それはもう本当に心地好さそうに、すやすやと寝ていらっしゃった。
「くーらはっ!まーだはいってんのか~?」
そんな声と共に、浴室に飛び込んでくる影が一つ。燃え盛る炎のように鮮やかな赤色をした髪が、僕の視界の隅で揺れる。
一瞬、なにが起きているのか僕は理解できなかった。理解できなかったが、己の視界は目の前の光景をしっかりと捉えていた。
僅かばかりに朱が差した肌は、見ているだけでも実に滑らかそうで。さぞかし極上の手触りをしているのだろうことを、如実に伝えてくれる。
窪んだ小さな臍は可愛らしくも何処か扇情的で。細く括れた腰は軽く抱き締めただけでも、折れてしまいそうなほどに華奢で。
だがそれに反して太腿は妙に肉付きが良く、しかし太いという訳ではない。スラリと伸びて、曲線美を描く足がそれを教えてくれる。
そして走っているせいで激しく上下し、その柔らかさをこれまでかと訴えてくる、適度に実った二つの────
──そぉぉおおおっいいぃっ!!!
────そこで、僕は自らの頬を思い切り、自らの拳で打ち抜いた。
「せ、先輩ッ?!ま、まだ僕入っているんですけどッ?」
頬に広がる鈍い痛みによって、正気に戻った僕は突如として浴室に乱入してきた先輩に言いながら、即座に背中を向ける。
そんな僕に対して、一糸纏わぬあられもなさ過ぎる(ここは浴室なので、仕方のないことというかそうなるのが当然なのだが)姿の先輩が、きょとんとした声を背中越しにかけてきた。
「ん~?なんでくらはせなかむけてんの~?こっちみろよ~おれおまえのせんぱいなんだぞ~?」
けらけらとしながら、先輩がゆっくりとこちらに近づいてくる気配がする。
「いや、いやいやなに言ってんですか先輩?僕男ですよ?お・と・こなんですよっ?」
「おまえこそなにいってんだよ~おれだっておとこだっての~」
「いやそれはそうなんですけど!精神的には男同士ですが肉体的には──って、ん……?」
そこまで言って、ふと気づいた。先ほどから先輩の声が、こう……妙に間延びしているというか、やけにふわふわしたものになっているというか。
──まるで、酔っ払って…………あ。
そして思い出した。確か、この部屋の冷蔵庫に、一本のワインボトルが冷やしてあったことを。
………まさか。
「あの……先輩?ひょっとして、酔ってます?」
「んぇ?よってなんか、ねえっての~ただぁ、れーぞーこにぃ、ぶどうじゅーすあったからそれのんだだけだし~」
──ドンピシャだ畜生ッ!
恐らくルームサービスの一環というものなのだろうけれど、それでも僕はこのホテルの従業員に対して、僅かばかりの怒りをぶつけてしまう。
まあそれはそうとして。今先輩は酩酊状態にある。つまり酔っている。酔っ払いと化してしまっている。
正常な判断力が欠けている今、そんな先輩と一緒に入浴するなど問題しかない。あと罪悪感が凄まじいことになる。
……しかし。しかしだ。先輩をこの浴室から追い出すには…………また、振り返らなければ、ならない。
背後を振り返って、先輩の裸体を直視しなければならないのだ。
──………………最悪、目を瞑れば……!
が、
チャプン──すぐ後ろで、なにかが水に沈むような音が聞こえてきた。
「ふい~……あったけえぇ…」
「せんぱぁぁいィ!?」
思わず絶叫しながら背後を振り返りそうになって、慌てて止まる。
なんてこった、先輩が浴槽に入ってきてしまったじゃあないか……!
「せせ、先輩お、おちちちついてて」
「あはは~なんかくらはへんだぞ~?」
先輩にそう言われて、ハッと僕は我に返った。いけない、まず落ち着くべきは僕自身だ。
平静を取り繕いながら、背中を向けたままもう一度先輩に話しかける。
「先輩、取り敢えず僕の話を「えいっ」突如として背中を包み込むマシュマロ感触うぼはあああああ!!!」
僕の平静は、所詮ただの付け焼き刃に過ぎなかった。一瞬という刹那にも満たない短過ぎる時間を使って構築された僕の平静など、この蕩けるように柔い極上の果実の前には無力だった。哀しいほどに無力で、僕はやっぱり男なんだなと、痛感させられた。
──いや違う違うそうじゃない。
落ち着け落ち着くんだ僕。ここで動揺したらそれこそ先輩の思う壺だ。……まあ、酔ってるから大した思考はできてないと思うけど。
それに今さら抱きつかれたからなんだというのだ。別にこれが初めてじゃあないじゃないか。二度目じゃあないかこれで。
だから僕がこの程度で動揺なんて────
「ぎゅうぅ」
────マシュマロがさらに密着してきてしかも背中全体を滑らかでしっとりとした肌が覆って
「うぐおぉぉぉぉぉ……!」
なんと凄まじい刺激。あまりに桁違いな威力の前に、僕の理性は危うくKOされるところだった。
露出しそうになる本能を、呻き声を上げながら無理矢理捩じ伏せる。僕は男。先輩も男。だからなにもないなにかあってはいけない…………!
「先輩…ッ、きゅ、急にどうしたんですか…?なんで、こんな抱きついて……ッ」
必死に自分を保ちながら、そう尋ねると、酔っ払いは少しぼうっとした声で答えた。
「わかんねえ。なんとなく?」
前言撤回。先輩のそれは答えになっていなかった。先輩も正気じゃない……ッ。
「先輩、取り敢えず離れましょう?ね?」
背中に抱きつき柔肌を惜しげもなく密着させてくる先輩に、まるで赦しを請うかのような声音で、僕はなんとか説得を試みる。
だが、酔って我を失っている先輩にそんなものが通じるはずもなく、
「やぁーだ」
ぎゅぎゅぅ、と。僕の首に両腕を回して、これ以上にないほどに強く抱きついてきた。
僕の背中に、過剰なまでに押しつけられた二つの膨らみ。形容するならやはりそれはマシュマロで、何処までも柔らかくて────だがしかし。
こりん、と。そこで初めて、硬く尖ったような感触も感じ取れた。
──……あ。
それが一体なんなのか、初めの数秒はわからなかった。だが急速に冴えていく頭が、その正体を即座に弾き出した。
そう。それは、言うなれば──────
──…………もう、無理だ。
心臓が高鳴る。血が全身を一気に駆け巡る。堪えていた分、より一層激しく強烈に。
「ん……?くらは、なんかからだあついぞ……?」
僕をこうさせた張本人が、そう言いながらこちらの肩に顎を乗せてくる。その行動すらも、己を昂らせる燃料となってしまう。
「くらはー……?」
こちらの身を案じているのだろう声。だが、やはりそれすらも──悩ましい。
──この際、自覚させて……あげようかな。
欠片ほどといえど、まだ残っていた理性が本能に喰い殺されていくのを感じながら、そう思った。
未だに先輩が、その身体で自らを男だと主張するのなら──はっきりと、その身体にわからせてやろう。
いくら意識は男でも、精神は男でも、身体はあくまでも女なんですよとわからせてやろう──いや、わからせてやる。
──そうしたら、こんな挑発、もうしなくなるはず。
徐々に、最低に歪んでいく己に気づけず、僕はそう結論づける。その行為こそ、自分が最も恐れていたことだというのに。
先輩に対して、絶対にしてはならない行為だと、重々承知していたことだというのに。
だが、先輩の色香に狂わされてしまった僕は、それを思い出すことができない。
──先輩が悪いんだ。一体どれだけ僕が我慢しているのか、抑え込んでいるのか知らないで、いつもいつも………!!
これから先輩に対してする己の歪み切った、何処までも最悪で最低な行為を正当化するため、身勝手にも程がある言い訳を心の中で呟いて、顔だけ振り返った。
「…ん……ぅ……」
……………………寝ていた。先輩は、こちらの首に両腕を回したまま、こちらの肩に顎を乗せたまま、こちらの背中に身体を預けたまま、それはもう本当に心地好さそうに、すやすやと寝ていらっしゃった。
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