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『極剣聖』と『天魔王』
伝説のスライムを探せ(前々編)
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先輩の女の子の日騒動が終わり、一週間。僕と先輩は今、『ヴィブロ平原』にへと訪れていた。
日常と変わりない、快晴の日差しが降り注ぐ中、僕と先輩は並んで歩く。
「ここもなんか久しぶりって感じすんなー」
「まあ、色々ありましたからね……ここ数日」
言いながら、振り返る。……いやあ、本当にここ数日だけで一生分の思い出ができた気がする。
「……えーっと」
チラリ、と。僕は控えめに視線を背後に送る。そこにいるのは————
「へええ、こんな平原が近くにあったんですねえ。静かで良い雰囲気出てますねー」
「ああ。長閑《のどか》で素晴らしい場所だ。………是非とも後日、ラグナ嬢と二人きりで訪れたところだな」
————世界最強の二人。二人の《SS》冒険者、『極剣聖』サクラ=アザミヤさんと『天魔王』フィーリア=レリウ=クロミアさん。
戦々恐々としながらも、僕は背後の二人に尋ねる。
「あ、あの……サクラさん、フィーリアさん?その、本当によかったん、ですか……?」
「え?なにがです?」「なにがだろうか、ウインドア?」
同時に返事を投げてくる二人に、僕は躊躇いつつもわかりやすく、はっきりと言い直した。
「いや、ですから……伝説のスライム探しに付き合ってもらっても」
伝説のスライム——なんでも、僕や先輩が『大翼の不死鳥』の冒険者になる以前に、この平原で目撃された、スライムと酷似した謎の魔物である。
七色に輝く不定形の姿をしており、またとんでもなく素早いらしい。
それ以外の情報はないに等しく、これを情報と読んでもいいのか躊躇われるが、グィンさんが個人的に調べたという文献だけだ。
————太古の時代、この世全ての叡智をその身に蓄えた、賢者の如き魔物が存在していた。七色に光り輝く不定の身体を持ち、ある時には鳥、ある時には獣の姿となりて、古に生きた人々を、その膨大なる叡智を以て、導いた————
……というような内容である。少し引っかかるのは、スライムとは明言されていないことと、鳥や獣に擬態できる点だろうか。
とにかく、僕と先輩はLv上げがてら、そのスライムを求めて今日はこの平原に訪れた訳だ。……今ではこの世界に二人しかいない、現役《SS》冒険者であるサクラさんとフィーリアさんを、恐れ多くも引き連れて。
「ウインドア。それならば問題ないと言ったはずだ。私は暇だからな……蚊ほども手応えを感じられない魔物の相手をするよりも、いるかどうかもわからない伝説のスライムとやらを探す方がよっぽど楽しいだろうよ」
「私もサクラさんに同じですねえ。正直そんなスライム聞いたこともなかったので興味ありますし、それにいたらいたで捕まえて、実験に使えるかもしれませんし……」
「は、はは……そ、そうですか。だったら、まあ……別にいいんですけど……はい…」
——冗談のつもり、だったんだけどなあ……。
サクラさんはともかく、フィーリアさんにはなんて説明しよう。本当は先輩の経験値稼ぎの糧にしたいので、捕獲は遠慮してくれませんか、と言っても……聞いてくれないだろう。いや聞いてくれないだろうなあ。
「……なにそんなに気にしてんだ?クラハ。俺もこいつらがいても構わねえぞ?……まあ、サクラはアレだけど」
「僕にも、色々あるんです先輩。……色々あるんですよ……」
可愛らしく小首を傾げる先輩に、僕は苦笑いしながらそう返す。何故だろう、胃が少し痛い気がする。
「それで、そのスライムの目撃場所はどの辺りなんだ?ウインドア」
「え?ああ……情報が確かなら、ここを進んだ少し先です」
サクラさんに訊かれて、僕はグィンさんから貰ったメモを見ながら答える。……とはいえ、だいぶ古い情報だから当てにはならないだろうが。
そうして僕たち一行は先を進んで、メモに記されていた場所付近に辿り着いた。
「……ふむ。ここでその伝説のスライムは目撃されたのか」
「別に空気中の魔素も多くも少なくもない、普通の場所ですね」
二人の言う通り、そこは変哲もない林の中。強いて言うなら、他よりも少し開けた場所だということくらいだろうか。
——そもそも、まだこの平原にいるんだろうか?……そのスライムは。
まあ、そう考えるのも今さらという話ではあるが。周囲を見渡していると、不意にフィーリアさんが口を開いた。
「こうして集まるんじゃなくて、手分けして探した方が効率良くないですか?」
確かにその通りだ。全員で集まって一箇所を調べるよりも、分かれてそれぞれの場所を調べた方が絶対に効率的だろう。
「そうですね。僕も分かれて探した方がいいかと思います」
「ですよね。そっちはどうですか?サクラさん、ブレイズさん」
フィーリアに尋ねられて、先輩とサクラさんの二人が彼女に答える。
「お世辞にも私は頭が良くなくてな……君たちに合わせることにするよ」
「お、俺も」
……なにはともあれ。この場は分かれて探すという意見で一致した。するとフィーリアさんは——何故か口の端を吊り上げて、
「でしたら——勝負、しませんか?」
そう、僕たち三人に言うのだった。
日常と変わりない、快晴の日差しが降り注ぐ中、僕と先輩は並んで歩く。
「ここもなんか久しぶりって感じすんなー」
「まあ、色々ありましたからね……ここ数日」
言いながら、振り返る。……いやあ、本当にここ数日だけで一生分の思い出ができた気がする。
「……えーっと」
チラリ、と。僕は控えめに視線を背後に送る。そこにいるのは————
「へええ、こんな平原が近くにあったんですねえ。静かで良い雰囲気出てますねー」
「ああ。長閑《のどか》で素晴らしい場所だ。………是非とも後日、ラグナ嬢と二人きりで訪れたところだな」
————世界最強の二人。二人の《SS》冒険者、『極剣聖』サクラ=アザミヤさんと『天魔王』フィーリア=レリウ=クロミアさん。
戦々恐々としながらも、僕は背後の二人に尋ねる。
「あ、あの……サクラさん、フィーリアさん?その、本当によかったん、ですか……?」
「え?なにがです?」「なにがだろうか、ウインドア?」
同時に返事を投げてくる二人に、僕は躊躇いつつもわかりやすく、はっきりと言い直した。
「いや、ですから……伝説のスライム探しに付き合ってもらっても」
伝説のスライム——なんでも、僕や先輩が『大翼の不死鳥』の冒険者になる以前に、この平原で目撃された、スライムと酷似した謎の魔物である。
七色に輝く不定形の姿をしており、またとんでもなく素早いらしい。
それ以外の情報はないに等しく、これを情報と読んでもいいのか躊躇われるが、グィンさんが個人的に調べたという文献だけだ。
————太古の時代、この世全ての叡智をその身に蓄えた、賢者の如き魔物が存在していた。七色に光り輝く不定の身体を持ち、ある時には鳥、ある時には獣の姿となりて、古に生きた人々を、その膨大なる叡智を以て、導いた————
……というような内容である。少し引っかかるのは、スライムとは明言されていないことと、鳥や獣に擬態できる点だろうか。
とにかく、僕と先輩はLv上げがてら、そのスライムを求めて今日はこの平原に訪れた訳だ。……今ではこの世界に二人しかいない、現役《SS》冒険者であるサクラさんとフィーリアさんを、恐れ多くも引き連れて。
「ウインドア。それならば問題ないと言ったはずだ。私は暇だからな……蚊ほども手応えを感じられない魔物の相手をするよりも、いるかどうかもわからない伝説のスライムとやらを探す方がよっぽど楽しいだろうよ」
「私もサクラさんに同じですねえ。正直そんなスライム聞いたこともなかったので興味ありますし、それにいたらいたで捕まえて、実験に使えるかもしれませんし……」
「は、はは……そ、そうですか。だったら、まあ……別にいいんですけど……はい…」
——冗談のつもり、だったんだけどなあ……。
サクラさんはともかく、フィーリアさんにはなんて説明しよう。本当は先輩の経験値稼ぎの糧にしたいので、捕獲は遠慮してくれませんか、と言っても……聞いてくれないだろう。いや聞いてくれないだろうなあ。
「……なにそんなに気にしてんだ?クラハ。俺もこいつらがいても構わねえぞ?……まあ、サクラはアレだけど」
「僕にも、色々あるんです先輩。……色々あるんですよ……」
可愛らしく小首を傾げる先輩に、僕は苦笑いしながらそう返す。何故だろう、胃が少し痛い気がする。
「それで、そのスライムの目撃場所はどの辺りなんだ?ウインドア」
「え?ああ……情報が確かなら、ここを進んだ少し先です」
サクラさんに訊かれて、僕はグィンさんから貰ったメモを見ながら答える。……とはいえ、だいぶ古い情報だから当てにはならないだろうが。
そうして僕たち一行は先を進んで、メモに記されていた場所付近に辿り着いた。
「……ふむ。ここでその伝説のスライムは目撃されたのか」
「別に空気中の魔素も多くも少なくもない、普通の場所ですね」
二人の言う通り、そこは変哲もない林の中。強いて言うなら、他よりも少し開けた場所だということくらいだろうか。
——そもそも、まだこの平原にいるんだろうか?……そのスライムは。
まあ、そう考えるのも今さらという話ではあるが。周囲を見渡していると、不意にフィーリアさんが口を開いた。
「こうして集まるんじゃなくて、手分けして探した方が効率良くないですか?」
確かにその通りだ。全員で集まって一箇所を調べるよりも、分かれてそれぞれの場所を調べた方が絶対に効率的だろう。
「そうですね。僕も分かれて探した方がいいかと思います」
「ですよね。そっちはどうですか?サクラさん、ブレイズさん」
フィーリアに尋ねられて、先輩とサクラさんの二人が彼女に答える。
「お世辞にも私は頭が良くなくてな……君たちに合わせることにするよ」
「お、俺も」
……なにはともあれ。この場は分かれて探すという意見で一致した。するとフィーリアさんは——何故か口の端を吊り上げて、
「でしたら——勝負、しませんか?」
そう、僕たち三人に言うのだった。
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