上 下
47 / 440
RESTART──先輩と後輩──

こんなことの為に(その二)

しおりを挟む
「いやあ、楽しみで楽しみで仕方がありゃしねえぜ、全くよ」

「おうおうその通りだな。あんな上物にありつける機会チャンスなんて、そうそうねえぞ」

「惜しむらくはまだ子供ガキってとこか。けどそれはそれで、唆られるもんがあるなぁ。何にも知らねえ子供に色々と教育すんのも、新鮮で面白そうだ」

ちげえねえ違えねえ。ギャッハハハッ!」

 などと、言い合いながら。その部屋にいる十数人の男たちは、それぞれの娯楽に興じていた。

 飯を食らい。酒を飲み。手札カード携え、賭博事ギャンブル────その光景は、まさに粗暴で乱暴な、傭兵気取りのチンピラである彼らに相応しい、最低最悪なものであった。

 同調性も協調性も、微塵だってありはしない。けれど、この後。そんな彼らでも一致団結し、一心同体となる。

 この後に待つ、本日最大のお楽しみメインイベントの為に。

「けどよ、元は『炎鬼神』なんだろ?あの嬢ちゃん」

「ギャハハッ!んなのデマに決まってんだろ!……それにそうだったとして、今はただの子供の女。それも将来有望な美少女サマだ。だったら……やることは一つだろうがよ」

「まあ、確かに……それもそうだな!ガハハハッ!」

「でも、俺としては処女ヴァージン散らして、一番最初に味わってみたかったなぁ。あの初めて特有の痛いくらいの締まりが最高サイコーだっつーぅのに」

「そんなのここにいる全員が思ってるさ。けど、それを楽しめるのは頭のライザーさんだけだろ。まあお目溢しが味わえるだけでも喜ぼうぜ」

 という、品性の欠片もない、およそ頭を使っているとは思えない性欲剥き出し丸出しの会話が繰り広げられる、その最中。一人の男がふと気づいたように言う。

「おい、何か……下の階が騒がしくねえか?」

 そんな男の指摘に、苛ついた声で別の男が言う。

「下っ端のクズ共が不満垂れて愚痴叫びながら暴れてるだけだろどーせ。精鋭隊の癖にっせえことを一々いちいち気にしてんじゃねえよ。たく、くだらねえ。みっともねえ情けねえ」

「お、おう……わりぃ」

 ギィ──その時であった。今の今まで、閉ざされていたこの部屋の扉が、軋んだ音を立てながら、ゆっくりと僅かに開かれて。瞬間、部屋にいる全員が全員、扉の方へ目を向けた。

 まるで先程までの馬鹿騒ぎが全くの嘘だったかのように、部屋は静まり返っていた。そんな最中、ついさっき下の階が騒がしいと指摘した男を、それは気の所為だと叱咤した男がぶっきらぼうに言う。

「今日は絶対に開けんじゃあねえって……あんだけ言っておいたよなぁ?」

 だが、男の言葉に対して即座に謝罪の言葉もなければ、返事すらなく。そのことに、男は不愉快そうに舌打ちした。

「見てこいロルカ。そんで、連中……ちょっくらシメてこいや」

「ああ?面倒だな……わかったよ」

 下の階が騒がしいと指摘した男──ロルカはその言葉に従って、ゆっくりと椅子から立ち上がり。そしてまたゆっくりと、僅かに開かれるだけに留められた扉に近づき、この部屋から出て行った。

「ったく、白けさせんなよなあ」

「本当だぜ。こんな舐めた真似、二度と出来ないように再教育すっかぁ?」

「そうしようそうしよう。とりあえず半殺しは確定だ」

「これだから若ぇ衆は駄目だ。目上に対する礼儀ってぇモンがこれっぽっちもわかっちゃいねえ」

 という風に会話を広げながら、男たちは先程よりも若干勢いの下がった馬鹿騒ぎを再開させる──────その時だった。



 バァンッ──不意に、またしても部屋の扉が。しかし、今度は思い切り開かれて。全開となると同時に、部屋の外から何か大きな物体が投げ込まれた。



 突如として部屋の中に投げ込まれたは、宙を舞い。そして部屋の中央へと。今賭博ギャンブルが行われ、四人の男たちが囲むテーブルへと落下する。

 言うなれば、それは合唱。木製のテーブルが砕ける音、皿や酒瓶が割れる音。それに混じって微かに聞こえる、肉が切れ骨が折れる、生々しい音。そんな複数の音が大音量で重なって、部屋に響き渡った。

 テーブルの上にあった山札が宙へバラ撒かれ、ヒラヒラと花弁の如く舞い落ち、もはや残骸となったテーブルを下敷きに、すっかり伸びてしまっている────先程部屋を出たばかりのロルカの上に積み重なった。

 今この部屋にいる、ロルカを除いた十数人の男が。全員、全開となったままの扉の方へ顔を向かせ、睨めつける。

 そうして数秒後────スッと、扉の外から足が伸びて。何の躊躇もなく、部屋の床を踏み締めた。

「……おいおい。マジかよ。本当に来やがった」

「流石はライザーさんだな」

「ああ。全くだぜ」

 薄暗い通路の影から現れた、その姿と顔を見て。そう口々に男たちが言う。言って、誰しもがその口元を悪意で吊り上がらせた。

「丁度賭博には飽き飽きして、気分転換がしたかったとこだ」

「やっぱり、若ぇ衆は駄目だ駄目だあ。こうなったら礼儀ってヤツをとことん、死ぬ程その身体に叩き込んでやる」

「半殺しにしてやんよお。イヒヒッ」

 異口同音────皆言うことは違えど、その言葉に込められているものは、皆同じ。

 悪意と暴意と、そして殺意で満ち満ちたこの部屋に、けれど足を踏み入れたその者は──────





「……先輩を、返してください」





 ──────一切臆することなく。ただ淡々と、男たちにそう言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

処理中です...