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RESTART──先輩と後輩──
理性揺さぶる洗髪タイム
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──さて、どうしよう。
シャワーヘッド片手に、僕は考えていた。どうして、一体どうしてこんなことになっているのだろうかと。
「……何で固まってんだよクラハ。早く洗ってくれよ、髪」
顔だけこちらに振り返らせて、僕にそう催促する先輩。だが、それでも僕は手を動かせないでいた。
……いや、だって。駄目だろ、これは?
「……あの、先輩」
「ん?何だ?」
「え、えっと……ほ、本当にいいんですか?僕がその、先輩の髪を洗っても……?」
「洗ってもいいも何も、そもそも俺がお前に頼んだことじゃねえか。遠慮する必要なんてねえぞ?」
「いや、それは、そうなん…ですけど、も」
少し遅れたが、今僕がどんな状況下に置かれているのか、説明しよう。
先輩と、浴室にいる。先輩と、二人きりで浴室にいる。なお浴室なので当然、先輩は全裸である。だが僕は服を着たままだ。
一応、先輩は全裸であるが僕には背中を向けている。というかそうしてもらわないと困る。僕が凄く困る。
「それとも何だよ?俺の髪に触りたくないとか思ってんのか?」
「いやそんなこと全然思ってません滅相もございません」
むしろその逆であるとは口が裂けても言えない、心からの本音だ。
と、その時。不意に前を向いていた先輩が背後を──つまりは僕の方に振り向いた。
「ならさっさと洗ってくれ。このままだと俺風邪引いちまうぞ」
先輩自身、その行動には何の狙いもない、強いて言うなら僕と面を向かってそう伝えたいが為のものだったのだろう。だがその行動に、僕は咄嗟に顔ごと視線を逸らし、慌てて声を上げた。
「え、ええ!わ、わかりました!わかりましたよ!だから前を向いてください先輩!前を、向いててください!」
「……?まあ、いいや。んじゃ頼んだぞー」
僕の態度に胡乱げになりながらも、とりあえず納得してくれた様子で。先輩はそう言って、再び前に振り向き直った。
──ああ、この人は全くもう……!
もう一度言わせてもらうが、今先輩は一糸纏わぬ全裸姿である。本来ならば布下にひた隠すべきそのありのままの全てを外気に曝け出している、大変無防備過ぎる状態なのである。
そして今現在、先輩は女の子になっている訳で。それを未だに今一、先輩は自覚してくれないでいる。
瞼の裏に貼り付いて離れない、先程の風景────否、絶景。慌てて視界を逸らしたとはいえ、その片隅で、しかもあんな僅かな動作でさえ揺れた、二つの肌色の果実に未だ悶々としながらも、僕は改めて先輩の髪に視線を定める。
──……本当に綺麗な赤髪だな。
思わず無意識に、心の中でそう呟いてしまう。先輩の髪は燃え盛る炎を直接そのまま流し込んだような、赤々とした見事な紅蓮色で。光の加減によって美麗に赤光が瞬いて輝き、そして煌めく。その様には、否応にも見惚れてしまうものだ。
シャワーヘッドを持つ手が妙に、嫌に震える。それに、緊張しているからか汗が滲み出して止まらない。
本当に、いいのだろうか。いや、先輩がいいと言っているのだから、先輩の言う通り躊躇う必要はないのだろう。……だが、それでもだ。
僕とて、一人の男である。当然、目の前にこんな可愛い、それも全裸の女の子がいれば、そういう気持ちになってしまう。今だって、こうして髪に覆われた背中しか見ていないのに…………結構、キている。
──落ち着け。落ち着くんだクラハ=ウインドア。相手は先輩。元男の先輩。だから先輩は男……!
思わず剥き出しになろうとしている男の本能を、理性でどうにかこうにか捩じ伏せつつ、シャワーの水栓を緩める。
すると音を立てながら、シャワーヘッドから温水が放出されていく。
「そ、それじゃあお湯かけますね……!」
言って、僕はゆっくりとシャワーヘッドを先輩の後頭部へと翳した。温水によって、先輩の赤髪がゆっくりと濡れていく。
外だけでなく、ちゃんと中も濡らすため、恐る恐ると残った片手を近づけていく。触れる直前まで葛藤していたが、覚悟を決め指先で髪に触れた。
瞬間、伝わるのは予想通りの、素晴らしく滑らかで、さらりと流れる感触。絹糸かと錯覚するほどの、極上の手触り。
──う、わ……。
思わずそのまま、無意識に指先を沈めてしまう。すると僕の指先──どころか指は大した抵抗もなく呑み込まれ、まだ濡れ切っていない中の感触に包み込まれてしまった。
──うわ、うわうわうわうわぁ……!!
ゴリゴリと理性が削られる音が聞こえてくる気がする。全身から一気に汗が噴き出してくる。
女性の髪というのが、こんなにも艶めかしいものだったとは……夢にも思っていなかった。
そしてこの髪の向こうには、先輩の剥き出しにされた無防備な裸の背中があるのだ。
──堪えろ。堪えろ、堪えろ堪えろ堪えろ……!
完全に意識外からの思わぬ一撃に、一瞬で本能に意識を持っていかれかけてしまったが、僕はギリギリで何とか自制心を利かせて堪え、踏み止まることができた。
櫛でやるように。手で先輩の髪を梳いて、水に馴染ませていく。
──……そ、そろそろかな。
そうして、僕は一旦水を止め、シャワーヘッドをタイルの上にへと置いた。
それからシャンプーのボトルを手に取り、中身を手の平に出し、伸ばす。ある程度泡立たせてから、また先輩の髪へと手を伸ばした。
「これから洗いますからね、先輩」
「んー」
一応、先輩の断りを入れてから。改めてシャンプー塗れの手で先輩の髪に触れた。水によってしっとりと濡れた先輩の髪は、乾いている時はまた違って手触りで。また心を揺さぶられたが、僕は鉄の自制心で抑えた。
「い、痛かったら言ってくださいねー……?」
言いながら、僕は先輩の髪を洗っていく。手の平の上でもある程度泡立っていた泡が、モコモコとさらに巨大化していく。これは……先輩の髪質のおかげだろうか?
できるだけ優しく、そしてなるべく丁寧に。髪を傷めないよう、僕は割れ物を扱うような慎重な手つきで先輩の髪を洗う。そしてある程度洗えたところで、次は頭皮に移る。
爪は立てず、指腹で。マッサージという訳ではないが、痛くしないよう上手く加減して、力を込めて揉んでいく。
「痒いところはございますか?」
などと、お決まりの台詞に対し。先輩は気持ち良さそうな声で答えてくれた。
「痒いところはねえな。……つーか、お前頭洗うの上手いじゃねえか」
「そう言ってもらえて光栄ですね」
……こうして先輩と普通に会話できる程度には、荒ぶり昂っていた僕の気持ちも、だいぶ落ち着いた。最初はどうなることかと思ったが……意外とどうにかなるものだ。
そうして、再びシャワーヘッドを手に取って、温水をかける。先輩の髪に盛られていた泡が、流されていく。
手を使って、きちんと全部流して。そうしてようやく、先輩の洗髪は無事終わりを迎えたのだった。
「終わりましたよ、先輩」
「おう、ありがとなクラハ……あ、そうだ」
己の役目を終え、そそくさと浴室から撤退しようとした僕を先輩が呼び止める。
「クラハ。ものはついででさ、もう一つお前に頼んでもいいか?」
「え、いや………はい、何でしょうか?」
「背中流し「もう勘弁してくださいお願いしますッ!!」
先輩には申し訳なかったが、これ以上は自分を抑えられる自信が全くなかった。
堪らず僕はそう叫んで、浴室から飛び出す。……だから、気づけなかった。気づくことができなかった。
「…………」
僕が浴室から逃げ出す直前。遠去かるその背中を、先輩が複雑そうな表情を浮かべて見つめていたことに。
そしてこの後すぐに、僕は直面することとなる。先輩がその小さく、か弱い身体の内側に抱え込んだ──────苦悩に。
シャワーヘッド片手に、僕は考えていた。どうして、一体どうしてこんなことになっているのだろうかと。
「……何で固まってんだよクラハ。早く洗ってくれよ、髪」
顔だけこちらに振り返らせて、僕にそう催促する先輩。だが、それでも僕は手を動かせないでいた。
……いや、だって。駄目だろ、これは?
「……あの、先輩」
「ん?何だ?」
「え、えっと……ほ、本当にいいんですか?僕がその、先輩の髪を洗っても……?」
「洗ってもいいも何も、そもそも俺がお前に頼んだことじゃねえか。遠慮する必要なんてねえぞ?」
「いや、それは、そうなん…ですけど、も」
少し遅れたが、今僕がどんな状況下に置かれているのか、説明しよう。
先輩と、浴室にいる。先輩と、二人きりで浴室にいる。なお浴室なので当然、先輩は全裸である。だが僕は服を着たままだ。
一応、先輩は全裸であるが僕には背中を向けている。というかそうしてもらわないと困る。僕が凄く困る。
「それとも何だよ?俺の髪に触りたくないとか思ってんのか?」
「いやそんなこと全然思ってません滅相もございません」
むしろその逆であるとは口が裂けても言えない、心からの本音だ。
と、その時。不意に前を向いていた先輩が背後を──つまりは僕の方に振り向いた。
「ならさっさと洗ってくれ。このままだと俺風邪引いちまうぞ」
先輩自身、その行動には何の狙いもない、強いて言うなら僕と面を向かってそう伝えたいが為のものだったのだろう。だがその行動に、僕は咄嗟に顔ごと視線を逸らし、慌てて声を上げた。
「え、ええ!わ、わかりました!わかりましたよ!だから前を向いてください先輩!前を、向いててください!」
「……?まあ、いいや。んじゃ頼んだぞー」
僕の態度に胡乱げになりながらも、とりあえず納得してくれた様子で。先輩はそう言って、再び前に振り向き直った。
──ああ、この人は全くもう……!
もう一度言わせてもらうが、今先輩は一糸纏わぬ全裸姿である。本来ならば布下にひた隠すべきそのありのままの全てを外気に曝け出している、大変無防備過ぎる状態なのである。
そして今現在、先輩は女の子になっている訳で。それを未だに今一、先輩は自覚してくれないでいる。
瞼の裏に貼り付いて離れない、先程の風景────否、絶景。慌てて視界を逸らしたとはいえ、その片隅で、しかもあんな僅かな動作でさえ揺れた、二つの肌色の果実に未だ悶々としながらも、僕は改めて先輩の髪に視線を定める。
──……本当に綺麗な赤髪だな。
思わず無意識に、心の中でそう呟いてしまう。先輩の髪は燃え盛る炎を直接そのまま流し込んだような、赤々とした見事な紅蓮色で。光の加減によって美麗に赤光が瞬いて輝き、そして煌めく。その様には、否応にも見惚れてしまうものだ。
シャワーヘッドを持つ手が妙に、嫌に震える。それに、緊張しているからか汗が滲み出して止まらない。
本当に、いいのだろうか。いや、先輩がいいと言っているのだから、先輩の言う通り躊躇う必要はないのだろう。……だが、それでもだ。
僕とて、一人の男である。当然、目の前にこんな可愛い、それも全裸の女の子がいれば、そういう気持ちになってしまう。今だって、こうして髪に覆われた背中しか見ていないのに…………結構、キている。
──落ち着け。落ち着くんだクラハ=ウインドア。相手は先輩。元男の先輩。だから先輩は男……!
思わず剥き出しになろうとしている男の本能を、理性でどうにかこうにか捩じ伏せつつ、シャワーの水栓を緩める。
すると音を立てながら、シャワーヘッドから温水が放出されていく。
「そ、それじゃあお湯かけますね……!」
言って、僕はゆっくりとシャワーヘッドを先輩の後頭部へと翳した。温水によって、先輩の赤髪がゆっくりと濡れていく。
外だけでなく、ちゃんと中も濡らすため、恐る恐ると残った片手を近づけていく。触れる直前まで葛藤していたが、覚悟を決め指先で髪に触れた。
瞬間、伝わるのは予想通りの、素晴らしく滑らかで、さらりと流れる感触。絹糸かと錯覚するほどの、極上の手触り。
──う、わ……。
思わずそのまま、無意識に指先を沈めてしまう。すると僕の指先──どころか指は大した抵抗もなく呑み込まれ、まだ濡れ切っていない中の感触に包み込まれてしまった。
──うわ、うわうわうわうわぁ……!!
ゴリゴリと理性が削られる音が聞こえてくる気がする。全身から一気に汗が噴き出してくる。
女性の髪というのが、こんなにも艶めかしいものだったとは……夢にも思っていなかった。
そしてこの髪の向こうには、先輩の剥き出しにされた無防備な裸の背中があるのだ。
──堪えろ。堪えろ、堪えろ堪えろ堪えろ……!
完全に意識外からの思わぬ一撃に、一瞬で本能に意識を持っていかれかけてしまったが、僕はギリギリで何とか自制心を利かせて堪え、踏み止まることができた。
櫛でやるように。手で先輩の髪を梳いて、水に馴染ませていく。
──……そ、そろそろかな。
そうして、僕は一旦水を止め、シャワーヘッドをタイルの上にへと置いた。
それからシャンプーのボトルを手に取り、中身を手の平に出し、伸ばす。ある程度泡立たせてから、また先輩の髪へと手を伸ばした。
「これから洗いますからね、先輩」
「んー」
一応、先輩の断りを入れてから。改めてシャンプー塗れの手で先輩の髪に触れた。水によってしっとりと濡れた先輩の髪は、乾いている時はまた違って手触りで。また心を揺さぶられたが、僕は鉄の自制心で抑えた。
「い、痛かったら言ってくださいねー……?」
言いながら、僕は先輩の髪を洗っていく。手の平の上でもある程度泡立っていた泡が、モコモコとさらに巨大化していく。これは……先輩の髪質のおかげだろうか?
できるだけ優しく、そしてなるべく丁寧に。髪を傷めないよう、僕は割れ物を扱うような慎重な手つきで先輩の髪を洗う。そしてある程度洗えたところで、次は頭皮に移る。
爪は立てず、指腹で。マッサージという訳ではないが、痛くしないよう上手く加減して、力を込めて揉んでいく。
「痒いところはございますか?」
などと、お決まりの台詞に対し。先輩は気持ち良さそうな声で答えてくれた。
「痒いところはねえな。……つーか、お前頭洗うの上手いじゃねえか」
「そう言ってもらえて光栄ですね」
……こうして先輩と普通に会話できる程度には、荒ぶり昂っていた僕の気持ちも、だいぶ落ち着いた。最初はどうなることかと思ったが……意外とどうにかなるものだ。
そうして、再びシャワーヘッドを手に取って、温水をかける。先輩の髪に盛られていた泡が、流されていく。
手を使って、きちんと全部流して。そうしてようやく、先輩の洗髪は無事終わりを迎えたのだった。
「終わりましたよ、先輩」
「おう、ありがとなクラハ……あ、そうだ」
己の役目を終え、そそくさと浴室から撤退しようとした僕を先輩が呼び止める。
「クラハ。ものはついででさ、もう一つお前に頼んでもいいか?」
「え、いや………はい、何でしょうか?」
「背中流し「もう勘弁してくださいお願いしますッ!!」
先輩には申し訳なかったが、これ以上は自分を抑えられる自信が全くなかった。
堪らず僕はそう叫んで、浴室から飛び出す。……だから、気づけなかった。気づくことができなかった。
「…………」
僕が浴室から逃げ出す直前。遠去かるその背中を、先輩が複雑そうな表情を浮かべて見つめていたことに。
そしてこの後すぐに、僕は直面することとなる。先輩がその小さく、か弱い身体の内側に抱え込んだ──────苦悩に。
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