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RESTART──先輩と後輩──
ラグナ先輩?
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「その……何だ。ひ、久しぶりだな。元気してたか?────クラハ」
そう言って、気まずそうに。突如として現れた謎ローブはその顔を僕に晒す────女の子だった。
ふわりと舞って揺れる、轟々と激しく燃え盛る炎をそのまま流し入れたような赤髪。それと同じ色の、煌びやかに輝く真紅の瞳。若干不安そうにしながらも、勝気にしている表情はまるで芸術作品かの如く精巧に作られた人形のように恐ろしく整っており、幼げながらもその将来を大いに期待させてくれる、少女の可憐さと女の美麗さの間を彷徨う、中途半端だからこそ思わず惹かれてしまう貌をそこに宿していた。
麻布のローブ──否、女の子はそれだけ言って、僕の向かいの椅子へと何の躊躇いなく腰かける。
僕はといえば────ただただ、困惑していた。
「え……え、えっと」
急に向かいに座られた少女に対し、僕はしどろもどろになってしまう。いや、僕がこうなるのは仕方のないことなんだ。
だって。そもそも僕に────
「………その、ちょっと。尋ねたいことが、あるんだけど……君、いいかな?」
────こんな女の子との面識なんて、全くないのだから。
「失礼になるかもだけど、君は一体誰なのかな?。僕が覚えている限り、僕の知り合いとかに君のような子はいないんだけど……」
僕がそう言うと、目の前の女の子は複雑そうな──寂しそうな表情を浮かべる。それからはあ、と呆れたようにため息を吐いて。
「……まあ、やっぱわっかんねえよなあ」
と、そう答えたのだった。見た目からは想像もつかない、可愛らしい声音には似つかわしくない、やや雑で乱暴な言葉遣いに、思わず僕は面食らってしまう。
──こ、こういう女の子もいるのか……。
少しだけ驚きを感じていると、やがて女の子がまた、その口を開かせ言う。
「俺だよ。俺」
そう言いながら。ぴっ、と自分のことを指差す女の子。……当然、僕はその意味がわからず、再度困惑した。
「……え?」
いやまあ、自分のことを「俺」って呼んだことに対してもだけど、その言い方に僕は戸惑う他なかった。
目を丸くさせ、ただただ困惑する他ないの僕に、女の子は痺れを切らしたように、若干苛立った様子で今度は──────
「ラグナ!俺は、お前の先輩のラグナさんだ!」
──────などと、宣うのだった。
「………はい?」
一瞬、この子が何を言っているのか僕は理解できなかった。なので、頭の中でこの子の発言を反芻させてみる。
『俺は、お前の先輩のラグナさんだ!』
…………うん。やっぱり、ちょっと理解できないかな。
僕は珈琲に口をつけ、それから少女にへと笑いかけた。できるだけ自然に。和かに。
「嘘言っちゃいけないよ、君。大体、僕の先輩は男だしね」
そう、僕の先輩であるラグナ=アルティ=ブレイズは歴とした男だ。それは揺るぎない事実で、変えようのない現実なのだ。
であるからして、先輩は決して今目の前にいるような赤髪の美少女などではない。うん、絶対に違う。
……さてと、ではそうなるとこの子の目的は何だろう。ひょっとして僕を騙して金でも巻き上げようとか、そんな感じの目的だろうか?
「ふっざけんな!嘘なんかじゃねえっての!俺は本当にラグナなんだよ!」
「……いや、そう言われても……あ、もしかすると君ってラグナ先輩のファン?サインが欲しいなら、僕じゃなくて先輩に直接頼んでもらえると」
「俺が俺のサイン欲しがる訳ねえだろッ!」
そう叫ぶと同時に、椅子から立ち上がる女の子。僕はその剣幕に、僅かにではあるが不覚にも気圧されてしまった。
どうしよう。僕はどうやらちょっと、いや結構面倒な子に絡まれてしまったらしい。そしてまさかとは思うが……察するに、この子があの手紙の差出人なのだろうか?
……いや、流石にそれはないはずだ。筆跡も癖も、あれは間違いなく先輩の────僕が知る男のラグナ先輩のものだった。
考え込む僕に、女の子は呆れたような眼差しを向けて。そしてそれと同じ声音で、まるで愚痴を溢すかのように言う。
「ったく……お前、先輩の言葉も信用できないってのか?」
「信用できないのかって、言われても……」
僕が困ったようにそう返すと、女の子は少し疲れたように眉を顰め、それから仕方なさそうにため息を吐いて椅子に再び座った。
そして、唐突に。
「アレ」
……と、僕に呟くのだった。しかし、急にそんなことを言われても、一体何のことだか僕はわからず戸惑った。そんな様子の僕を見兼ねたのか、また仕方なさそうに女の子が続ける。
「……結構前に、お前が《S》冒険者になった記念で渡しただろ?まだ、御守り代わりに持ってんのか?」
「え?……あ」
そう言われて、僕はハッと気づいた。しかしそれは────僕と先輩だけしか知らないはずのことだ。
僕が驚いていると、また女の子が言う
「アジャの森、ガヴェイラ遺跡、深淵の洞窟、白金の塔……流石に全部は覚えちゃいないけど、とにかくお前と一緒に行ったことのある場所だぞ」
「……はは。いや、これは……ちょっと、参ったなあ」
女の子の言う通りそれらの場所は、かつて先輩と共に────というか半ば強制的に連れられ、僕も訪れたことのある場所だった。そしてこれも僕と先輩以外、知ることのない情報である。
……つまり、だ。まさか、この子は、本当に……?
「……ほ、本当にラグナ先輩……なんですか?」
未だ信じられない気持ちで、恐る恐るそう訊くと────女の子は胸を張って、自信満々に答えた。
「おう。正真正銘、俺はお前の先輩、ラグナ=アルティ=ブレイズだ。さっきからそう言ってんだろ?」
「………マジですか」
そう言って、気まずそうに。突如として現れた謎ローブはその顔を僕に晒す────女の子だった。
ふわりと舞って揺れる、轟々と激しく燃え盛る炎をそのまま流し入れたような赤髪。それと同じ色の、煌びやかに輝く真紅の瞳。若干不安そうにしながらも、勝気にしている表情はまるで芸術作品かの如く精巧に作られた人形のように恐ろしく整っており、幼げながらもその将来を大いに期待させてくれる、少女の可憐さと女の美麗さの間を彷徨う、中途半端だからこそ思わず惹かれてしまう貌をそこに宿していた。
麻布のローブ──否、女の子はそれだけ言って、僕の向かいの椅子へと何の躊躇いなく腰かける。
僕はといえば────ただただ、困惑していた。
「え……え、えっと」
急に向かいに座られた少女に対し、僕はしどろもどろになってしまう。いや、僕がこうなるのは仕方のないことなんだ。
だって。そもそも僕に────
「………その、ちょっと。尋ねたいことが、あるんだけど……君、いいかな?」
────こんな女の子との面識なんて、全くないのだから。
「失礼になるかもだけど、君は一体誰なのかな?。僕が覚えている限り、僕の知り合いとかに君のような子はいないんだけど……」
僕がそう言うと、目の前の女の子は複雑そうな──寂しそうな表情を浮かべる。それからはあ、と呆れたようにため息を吐いて。
「……まあ、やっぱわっかんねえよなあ」
と、そう答えたのだった。見た目からは想像もつかない、可愛らしい声音には似つかわしくない、やや雑で乱暴な言葉遣いに、思わず僕は面食らってしまう。
──こ、こういう女の子もいるのか……。
少しだけ驚きを感じていると、やがて女の子がまた、その口を開かせ言う。
「俺だよ。俺」
そう言いながら。ぴっ、と自分のことを指差す女の子。……当然、僕はその意味がわからず、再度困惑した。
「……え?」
いやまあ、自分のことを「俺」って呼んだことに対してもだけど、その言い方に僕は戸惑う他なかった。
目を丸くさせ、ただただ困惑する他ないの僕に、女の子は痺れを切らしたように、若干苛立った様子で今度は──────
「ラグナ!俺は、お前の先輩のラグナさんだ!」
──────などと、宣うのだった。
「………はい?」
一瞬、この子が何を言っているのか僕は理解できなかった。なので、頭の中でこの子の発言を反芻させてみる。
『俺は、お前の先輩のラグナさんだ!』
…………うん。やっぱり、ちょっと理解できないかな。
僕は珈琲に口をつけ、それから少女にへと笑いかけた。できるだけ自然に。和かに。
「嘘言っちゃいけないよ、君。大体、僕の先輩は男だしね」
そう、僕の先輩であるラグナ=アルティ=ブレイズは歴とした男だ。それは揺るぎない事実で、変えようのない現実なのだ。
であるからして、先輩は決して今目の前にいるような赤髪の美少女などではない。うん、絶対に違う。
……さてと、ではそうなるとこの子の目的は何だろう。ひょっとして僕を騙して金でも巻き上げようとか、そんな感じの目的だろうか?
「ふっざけんな!嘘なんかじゃねえっての!俺は本当にラグナなんだよ!」
「……いや、そう言われても……あ、もしかすると君ってラグナ先輩のファン?サインが欲しいなら、僕じゃなくて先輩に直接頼んでもらえると」
「俺が俺のサイン欲しがる訳ねえだろッ!」
そう叫ぶと同時に、椅子から立ち上がる女の子。僕はその剣幕に、僅かにではあるが不覚にも気圧されてしまった。
どうしよう。僕はどうやらちょっと、いや結構面倒な子に絡まれてしまったらしい。そしてまさかとは思うが……察するに、この子があの手紙の差出人なのだろうか?
……いや、流石にそれはないはずだ。筆跡も癖も、あれは間違いなく先輩の────僕が知る男のラグナ先輩のものだった。
考え込む僕に、女の子は呆れたような眼差しを向けて。そしてそれと同じ声音で、まるで愚痴を溢すかのように言う。
「ったく……お前、先輩の言葉も信用できないってのか?」
「信用できないのかって、言われても……」
僕が困ったようにそう返すと、女の子は少し疲れたように眉を顰め、それから仕方なさそうにため息を吐いて椅子に再び座った。
そして、唐突に。
「アレ」
……と、僕に呟くのだった。しかし、急にそんなことを言われても、一体何のことだか僕はわからず戸惑った。そんな様子の僕を見兼ねたのか、また仕方なさそうに女の子が続ける。
「……結構前に、お前が《S》冒険者になった記念で渡しただろ?まだ、御守り代わりに持ってんのか?」
「え?……あ」
そう言われて、僕はハッと気づいた。しかしそれは────僕と先輩だけしか知らないはずのことだ。
僕が驚いていると、また女の子が言う
「アジャの森、ガヴェイラ遺跡、深淵の洞窟、白金の塔……流石に全部は覚えちゃいないけど、とにかくお前と一緒に行ったことのある場所だぞ」
「……はは。いや、これは……ちょっと、参ったなあ」
女の子の言う通りそれらの場所は、かつて先輩と共に────というか半ば強制的に連れられ、僕も訪れたことのある場所だった。そしてこれも僕と先輩以外、知ることのない情報である。
……つまり、だ。まさか、この子は、本当に……?
「……ほ、本当にラグナ先輩……なんですか?」
未だ信じられない気持ちで、恐る恐るそう訊くと────女の子は胸を張って、自信満々に答えた。
「おう。正真正銘、俺はお前の先輩、ラグナ=アルティ=ブレイズだ。さっきからそう言ってんだろ?」
「………マジですか」
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