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最終話 ルルティーナとアドリアンの幸せ辺境生活
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行きと同じく、馬車で王都からミゼール領へと帰ります。
私の隣にはお義母様とシアン、向かいにはドリィとお義父様が座っています。これも行きと同じくなのですが……。
「納得いかないです」
ドリィはこの並びが不満なのを隠しません。
「イアン殿、リラ殿、俺とルティは婚約したのです。ルティは俺の膝の上に座るべきだ」
お義母様とお義父様の目が座ります。
「正式にはまだ婚約してないだろ」
「そうよ。婚約者でもないのに馴れ馴れしい!」
そうです。私たちはつい先日、王城で婚約届けをだしました。
しかし王侯貴族の婚約には、審査と国王陛下からの許可が必要なのです。許可が下りるまで、どれだけ早くても半年はかかる見通しです。
つまり、現時点では私たちは婚約者ではないのですが……。
ドリィは鼻で笑います。
「婚約証明書の有無など関係ないです。婚約に一番必要なのは互いの同意なのですから。俺はすでにルティの婚約者で、ルティも俺の婚約者だ。違いますか?」
「まあ、それはそうだけどな……」
「順序と節度というものが……」
戸惑うお二人に私からも一言。
「膝に乗るかどうかはともかく、婚約については私もドリィと同じ思いです。私はルルティーナ・プランティエ伯爵。アドリアン・ベルダール辺境伯の婚約者です」
「ルルティーナ……」
「……貴女がそう言うなら」
「ああルティ!そうだ、俺たちは婚約者だ。いやむしろ結婚したも同然だ。今すぐ挙式してもおかしくない。むしろ挙式するべきでは?」
「何いってんだコイツ」
「どういう理屈よ」
「浮かれトンチキ閣下が。はしゃぎ過ぎです」
お義父様、お義母様、シアンは呆れを通り越して冷たい眼差しですが、ドリィはビクともしません。
お膝においで。と、言わんばかりに腕を開いています。
しかたありませんね。
「ルティも俺の膝の上がいいよな?」
「人前では嫌です。ドリィは私が嫌なことを無理矢理するんですか?」
「っ!る、ルティ?」
しかたないので、はっきり言葉にしました。
ドリィはショックを受けた様子です。可哀想ですが、お義母様に言われて決意したのです。
『ルルティーナ、いいこと?アドリアン坊ちゃんが威厳を保てるかどうかは貴女にかかっているのよ』
そうです。
ドリィはこれからも、私を好き過ぎて暴走するでしょう。一緒になって浮かれている場合ではありません。
責任ある立場のドリィを諌めるのも、婚約者である私の役目!
だから今は、にっこり微笑んでトドメを刺すのです。優しくお願いすればイチコロだと、シアンから教えてもらいましたし。
えっと、こうかしら?
「ドリィ、お願いよ。少しの間だけでいいから、良い子にしていて欲しいの」
「うっ!こ、これはこれで良い……。わかった。今は我慢するよ」
よかった!諌められたわ!
「何か変な扉が開いてないか?」
「この二人、本当に婚約して大丈夫なの?」
「いざとなったら私がお止めします。この命に換えても」
なぜか、三人と思いっきり心の距離が開いた気がしますが。
ともかく、行きと同じく楽しい旅路でした。
◆◆◆◆◆
王都を出発して十日後の朝、ミゼール城に帰還しました。
ーーーガラン!ガン!ゴン!ガン!ガランガラン!ーーー
まずは、激しく打ち鳴らされる鐘の音が私たちが乗る馬車を迎えてくれます。
「ベルダール辺境伯閣下とプランティエ伯爵閣下がご帰還だー!鐘を鳴らせ鳴らせ!」
「城中に響かせろー!」
叫び声が馬車の中まで聞こえてきます。歓迎されて嬉しいですが、凄い音です。それにしても。
「皆様、私たちの陞爵を知っているのですね」
「大きな慶事が重なったのよ。早馬で報せを送るに決まっているじゃない」
お義母様に言われて、そういうものなのかと納得します。
お義母様の青紫色の目が厳しさを増しました。
「アドリアン坊ちゃんと結婚するなら、貴女は辺境伯夫人になるわ。こういった常識や、領地経営に関する知識も学ばなければならない。わかっているわね?」
仰る通りです。私に出来るか不安です。ですが。
「はい。覚悟の上です。私はドリィの妻になるのですから」
青紫がかすかに和らぎます。
「よろしい。今まで以上にビシバシと指導するわよ!ルルティーナ!ついて来なさい!」
「はい!お義母様!」
「うーん。またリラの熱血に火が付いたか」
「リラ殿もルティも頼もしい……ルティ、好きだ」
「どさくさに紛れて惚気ないで下さいよ。恋ボケ閣下」
盛り上がっているうちに馬車が城門をくぐり、止まりました。扉が開きます。
「お帰りなさい!」
「おめでとうございます!」
「うおおおおお!ベルダール団長閣下!プランティエ伯爵閣下!おめでとう御座います!」
城が揺れそうなほどの歓声と、辺境騎士団の皆様の笑顔が見えます。
城と城門の間を埋め尽くす笑顔、笑顔、笑顔……。
最前列にいるカルメ様、シェルシェ様、ヴィオラ師匠。
エイルさんユーリさんたち、ポーション職人の皆様。
他にもナルシス様を初めとする騎士や衛兵の皆様、ニトとリルたち侍女や料理人の皆さままで……。
「凄いな。辺境騎士団の全員がいるんじゃないか?」
「はい……こんなに帰還を歓迎してもらえるなんて……」
感激で泣きそう。いえ、涙よりも笑顔を向けたい。
ルルティーナ、嬉し泣きは後よ。
「ルティ。さあ、行こう」
「はい。ドリィ」
私とドリィは微笑みあって頷き、馬車を降ります。
最初はドリィ、私が後に続こうとすると……。
「ルティ、俺に身を任せて」
「え?!ちょ、ドリィ!?」
ドリィにふわりと身体を抱え上げられました。
また横抱きというか、お姫様抱っこされてる!
「オオー!見せつけてくれますね!団長!」
「ご婚約おめでとうございますー!」
また歓声がおおきくなります。恥ずかしい!後ろにいるお義母様たちの呆れた視線が辛い!
「ど、ドリィ、降ろして。人前でこういうことは……」
「こいつらは身内みたいなものだから問題ない。……君と婚約したことを自慢したいんだ。駄目かな?」
「あうぅ……」
わ、私がドリィを止めなきゃ。駄目だ。嫌だと言わなきゃ。でも……。
「ルティ、お願いだ」
やっぱり、私はドリィに甘いようです。私も腕を伸ばして抱き返します。
「もう!今日だけなんだからね!ドリィ!」
「わかったよ!ルティ!」
わかってないだろうなと思いつつ、私はドリィと笑い合います。
「もう知っているだろうが、俺とルティは婚約した!うらやましいだろうが嫉妬するなよ!」
「あの冷血団長が惚気てる!」
「うらやましくはありますが!よかったですね!」
「プランティエ伯爵閣下ー!おめでとうございます!どうかお幸せに!」
「はい!」
これから先、特に国王陛下と王太子殿下が訪問される春の表彰式まで、きっとやるべき事が多くて大変でしょう。
でも、私もドリィも一人ではありません。
「私たち、これからもミゼール領で幸せに暮らします!」
おしまい
◆◆◆◆◆
ここまでお読みいただきありがとうございました。
また、お気に入り登録、エール、コンテスト投票など反応ありがとうございます。皆さまの反応のおかげで完結まで書けました。これからもよろしくお願いします。
書ききれなかった話がたくさんありますので、続編や番外編を書くかもしれません。
どれも構想段階ですので、一旦完結とさせて頂きます。
私の隣にはお義母様とシアン、向かいにはドリィとお義父様が座っています。これも行きと同じくなのですが……。
「納得いかないです」
ドリィはこの並びが不満なのを隠しません。
「イアン殿、リラ殿、俺とルティは婚約したのです。ルティは俺の膝の上に座るべきだ」
お義母様とお義父様の目が座ります。
「正式にはまだ婚約してないだろ」
「そうよ。婚約者でもないのに馴れ馴れしい!」
そうです。私たちはつい先日、王城で婚約届けをだしました。
しかし王侯貴族の婚約には、審査と国王陛下からの許可が必要なのです。許可が下りるまで、どれだけ早くても半年はかかる見通しです。
つまり、現時点では私たちは婚約者ではないのですが……。
ドリィは鼻で笑います。
「婚約証明書の有無など関係ないです。婚約に一番必要なのは互いの同意なのですから。俺はすでにルティの婚約者で、ルティも俺の婚約者だ。違いますか?」
「まあ、それはそうだけどな……」
「順序と節度というものが……」
戸惑うお二人に私からも一言。
「膝に乗るかどうかはともかく、婚約については私もドリィと同じ思いです。私はルルティーナ・プランティエ伯爵。アドリアン・ベルダール辺境伯の婚約者です」
「ルルティーナ……」
「……貴女がそう言うなら」
「ああルティ!そうだ、俺たちは婚約者だ。いやむしろ結婚したも同然だ。今すぐ挙式してもおかしくない。むしろ挙式するべきでは?」
「何いってんだコイツ」
「どういう理屈よ」
「浮かれトンチキ閣下が。はしゃぎ過ぎです」
お義父様、お義母様、シアンは呆れを通り越して冷たい眼差しですが、ドリィはビクともしません。
お膝においで。と、言わんばかりに腕を開いています。
しかたありませんね。
「ルティも俺の膝の上がいいよな?」
「人前では嫌です。ドリィは私が嫌なことを無理矢理するんですか?」
「っ!る、ルティ?」
しかたないので、はっきり言葉にしました。
ドリィはショックを受けた様子です。可哀想ですが、お義母様に言われて決意したのです。
『ルルティーナ、いいこと?アドリアン坊ちゃんが威厳を保てるかどうかは貴女にかかっているのよ』
そうです。
ドリィはこれからも、私を好き過ぎて暴走するでしょう。一緒になって浮かれている場合ではありません。
責任ある立場のドリィを諌めるのも、婚約者である私の役目!
だから今は、にっこり微笑んでトドメを刺すのです。優しくお願いすればイチコロだと、シアンから教えてもらいましたし。
えっと、こうかしら?
「ドリィ、お願いよ。少しの間だけでいいから、良い子にしていて欲しいの」
「うっ!こ、これはこれで良い……。わかった。今は我慢するよ」
よかった!諌められたわ!
「何か変な扉が開いてないか?」
「この二人、本当に婚約して大丈夫なの?」
「いざとなったら私がお止めします。この命に換えても」
なぜか、三人と思いっきり心の距離が開いた気がしますが。
ともかく、行きと同じく楽しい旅路でした。
◆◆◆◆◆
王都を出発して十日後の朝、ミゼール城に帰還しました。
ーーーガラン!ガン!ゴン!ガン!ガランガラン!ーーー
まずは、激しく打ち鳴らされる鐘の音が私たちが乗る馬車を迎えてくれます。
「ベルダール辺境伯閣下とプランティエ伯爵閣下がご帰還だー!鐘を鳴らせ鳴らせ!」
「城中に響かせろー!」
叫び声が馬車の中まで聞こえてきます。歓迎されて嬉しいですが、凄い音です。それにしても。
「皆様、私たちの陞爵を知っているのですね」
「大きな慶事が重なったのよ。早馬で報せを送るに決まっているじゃない」
お義母様に言われて、そういうものなのかと納得します。
お義母様の青紫色の目が厳しさを増しました。
「アドリアン坊ちゃんと結婚するなら、貴女は辺境伯夫人になるわ。こういった常識や、領地経営に関する知識も学ばなければならない。わかっているわね?」
仰る通りです。私に出来るか不安です。ですが。
「はい。覚悟の上です。私はドリィの妻になるのですから」
青紫がかすかに和らぎます。
「よろしい。今まで以上にビシバシと指導するわよ!ルルティーナ!ついて来なさい!」
「はい!お義母様!」
「うーん。またリラの熱血に火が付いたか」
「リラ殿もルティも頼もしい……ルティ、好きだ」
「どさくさに紛れて惚気ないで下さいよ。恋ボケ閣下」
盛り上がっているうちに馬車が城門をくぐり、止まりました。扉が開きます。
「お帰りなさい!」
「おめでとうございます!」
「うおおおおお!ベルダール団長閣下!プランティエ伯爵閣下!おめでとう御座います!」
城が揺れそうなほどの歓声と、辺境騎士団の皆様の笑顔が見えます。
城と城門の間を埋め尽くす笑顔、笑顔、笑顔……。
最前列にいるカルメ様、シェルシェ様、ヴィオラ師匠。
エイルさんユーリさんたち、ポーション職人の皆様。
他にもナルシス様を初めとする騎士や衛兵の皆様、ニトとリルたち侍女や料理人の皆さままで……。
「凄いな。辺境騎士団の全員がいるんじゃないか?」
「はい……こんなに帰還を歓迎してもらえるなんて……」
感激で泣きそう。いえ、涙よりも笑顔を向けたい。
ルルティーナ、嬉し泣きは後よ。
「ルティ。さあ、行こう」
「はい。ドリィ」
私とドリィは微笑みあって頷き、馬車を降ります。
最初はドリィ、私が後に続こうとすると……。
「ルティ、俺に身を任せて」
「え?!ちょ、ドリィ!?」
ドリィにふわりと身体を抱え上げられました。
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「ど、ドリィ、降ろして。人前でこういうことは……」
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わ、私がドリィを止めなきゃ。駄目だ。嫌だと言わなきゃ。でも……。
「ルティ、お願いだ」
やっぱり、私はドリィに甘いようです。私も腕を伸ばして抱き返します。
「もう!今日だけなんだからね!ドリィ!」
「わかったよ!ルティ!」
わかってないだろうなと思いつつ、私はドリィと笑い合います。
「もう知っているだろうが、俺とルティは婚約した!うらやましいだろうが嫉妬するなよ!」
「あの冷血団長が惚気てる!」
「うらやましくはありますが!よかったですね!」
「プランティエ伯爵閣下ー!おめでとうございます!どうかお幸せに!」
「はい!」
これから先、特に国王陛下と王太子殿下が訪問される春の表彰式まで、きっとやるべき事が多くて大変でしょう。
でも、私もドリィも一人ではありません。
「私たち、これからもミゼール領で幸せに暮らします!」
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