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第1部
32話 夏星の大宴 黄緑色のダリア
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大広間に入場後は、所定の位置まで移動します。爵位などによって大体の位置が決まっているのです。
アドリアン様は、こちらに近づこうとする方をさりげなく牽制しつつエスコートして下さります。
私も声をかけられないよう、誰とも目があわないよう気をつけて歩きます。
人では無く、大広間全体をみます。
謁見の間とはまた違った空間ですね……。
大広間は、豪華絢爛という言葉そのもののようでした。
あらゆる場所に、あの大通りを彩っていた黄金に輝く八重咲の向日葵と、黄緑色のダリアが飾っています。
壁は彫刻された大理石と黄金の装飾、バルコニーに通じる窓には重厚な模様と色合いのカーテン、床はモザイク画で幾何学模様が描かれています。
神々が描かれた天井では、魔道具仕立てのシャンデリアが眩い光を放っています。
そして正面の壇上には玉座が並び、すでに国王陛下、王妃陛下、王太子殿下がおわします。
アドリアン様たちから、これから何が起こるか聞いていますが、緊張します。
「ルルティーナ嬢、少し表情が固くなっている。どうか笑って。俺が守るから」
「……ふふっ。ありがとうございます。勇気が出ました」
微笑み会う内に、所定の位置まで来ました。周りは侯爵家と辺境伯家の方々ばかりです。
皆様、一斉にこちらを注目されましたが……。
「ベルダール辺境伯、プランティエ伯爵、ご機嫌よう。今宵はずいぶんと浮ついた蝶が多いようだ」
重く低い声に、場の雰囲気が引き締まります。
お声がけて下さったのは、白いものが混じった黄緑色の髪、赤みがかった琥珀色の瞳、無表情を浮かべた初老の紳士です。
事前の取り決め通りです。お陰で、当てこすりを受けた方々が散っていきました。
私たちはご挨拶を返します。まずはアドリアン様がご挨拶します。
「スフェーヌ侯爵、ご機嫌よう。お陰様で、蝶たちは別の花へと向かったようです」
「スフェーヌ侯爵、ご機嫌よう。ご配慮に感謝いたします」
厚生大臣でもあるスフェーヌ侯爵は、片眉を上げて受け流します。
厳格で常に無表情なお方で、周囲から恐れられているそうです。
しかし、職務に忠実で情熱的な方でもあります。先日の謁見後、初めてお会いしたのですが、ポーションについて二時間以上語り明かしました。
「お二人に紹介したい者がいる。……こちらに来なさい」
「はい。お父様」
スフェーヌ侯爵の背後から現れたのは、黄緑色のダリアを思わせる女性でした。
編み込んでまとめた柔らかな黄緑色の髪、薄い蜂蜜色の瞳、抜けるように白い肌。
お召し物は、若草色の生地に金糸の刺繍を施したエンパイアドレス。トパーズの髪飾り、ブローチ、耳飾りと共に、とても良くお似合いです。
トパーズは黄金色で、あの八重咲の向日葵に色が似ているわ。
「娘のイザベルだ。薬事局の局長補佐でもある。イザベル、ベルダール辺境伯とプランティエ伯爵だ。ご挨拶をしなさい」
この方がスフェーヌ侯爵令嬢イザベル様!
薬事局はポーションや生薬などの薬の流通や査定を管理している部門です。治癒局と共に厚生大臣の管轄です。
イザベル様は、わずか二十歳という若さで局長補佐を務めているのです。
また、薬学の素晴らしい研究家でもあります。私も著作や論文を読ませて頂いています。
お会い出来て嬉しくて、胸が熱くなります。
イザベル様は、素晴らしいカーテシーでご挨拶されます。
「お初にお目にかかります。スフェーヌ侯爵が娘、イザベルと申し上げます。ベルダール辺境伯閣下のご活躍は、以前から婚約者より伺っております。お会いできて光栄です」
「こちらこそ、薬事局始まって以来の才媛とお会いできて光栄です」
アドリアン様が笑顔でご挨拶されます。当たり前の光景ですが、とてもモヤモヤしてしまいます。
アドリアン様、とても優しい笑顔だわ。作った笑顔ではない。
モヤモヤで、先ほどまでの胸の高鳴りがきえてしまいました。
これはわかります。嫉妬です。
私はなんて心が狭くて醜いの……。
密かに落ち込んでいると、イザベル様が私にご挨拶して下さります。
……とてもギラギラしたお目々で。
「お初にお目にかかります。スフェーヌ侯爵が娘、イザベルと申し上げます。薬事局で局長補佐を務めております。
プランティエ伯爵閣下。喪われし技術を甦らせ、数々の素晴らしいポーションを生み出した功績、以前より尊敬しておりました。
閣下にお会いできて感に堪えません。どうぞ、末永いお付き合いをお願いいたします」
話し方も所作もお淑やかそのものですが、物凄い圧を感じます。ポーションの話をした時のスフェーヌ侯爵と似てます。なるほど、これが血の繋がり……。
と、いいますか、かなり大袈裟に評価して頂いているような?
内心で混乱しつつ、ご挨拶を返します。
「お初にお目にかかります。スフェーヌ侯爵令嬢、過分なお言葉痛み入ります。私の方こそ、【薬草大全】と【生薬の分布と歴史】を書かれた薬学博士とお会いできて感激です。よろしくお願いいたします」
「私の本を……!本当ですか?!」
「はい。どちらも良く読ませて頂いています。【薬草大全】は、収録されている薬草の数が多く、効能や利用法が詳細で勉強になります。図解も美しくて、眺めているだけでも楽しいですね。特に好きなのが天空百合の項目です。
【生薬の分布と歴史】も、薬草が多く分布する土地の歴史や伝説が網羅されていて、他の本を読む時も参考になりま……」
「プランティエ伯爵!私と友人になって頂けないでしょうか?!」
「はい。……はい?」
友人?と、仰った?のですか?
友人になりたいと仰った?
「イザベル、プランティエ伯爵がお困りだ。断わり難い状況で、そのような事を言うな」
「はっ!ああ、私とした事が……。プランティエ伯爵、失礼しました」
はっ!このままではいけません!友人が出来るチャンスが消えてしまいます!
「いいえ。あの、私、スフェーヌ侯爵令嬢がよろしければ……私もお友達になりたいです」
「よ、よろしいのですか?」
「もちろんです」
「ありがとうございます!プランティエ伯爵閣下、私のことはどうぞイザベルとおよび下さい」
「で、では、私のこともルルティーナとお呼び下さい。私の方が歳下ですし、敬語も結構です」
「では、ルルティーナさんとお呼びしますね。……するわ。……敬語は追々ということで許して。貴女も敬語はいりませ……いらないから」
「はい!イザベル様!」
素敵なご友人ができました!とっても幸せです!
「……イザベル、プランティエ伯爵、楽しそうなところ悪いが……」
物凄く気まずそうなスフェーヌ侯爵様。我に返りました。
アドリアン様も苦笑いです。
「ルルティーナ嬢。そろそろ始まるから、俺の隣に戻って来てくれないか?」
「「はい。すみません……」」
イザベル様とはまたお話するお約束をして、壇上に向き直ります。
「アドリアン様、ごめんなさい」
「いいさ。君が楽しそうで嬉しい。いい友人が出来そうだね」
「はい。とっても嬉しいです」
「妬けるなあ」
「え?」
「……なんでもないよ。ほら、始まる」
壇上の玉座から、国王陛下、王妃陛下、王太子殿下が立ち上がります。
いよいよ、始まるのです。
アドリアン様は、こちらに近づこうとする方をさりげなく牽制しつつエスコートして下さります。
私も声をかけられないよう、誰とも目があわないよう気をつけて歩きます。
人では無く、大広間全体をみます。
謁見の間とはまた違った空間ですね……。
大広間は、豪華絢爛という言葉そのもののようでした。
あらゆる場所に、あの大通りを彩っていた黄金に輝く八重咲の向日葵と、黄緑色のダリアが飾っています。
壁は彫刻された大理石と黄金の装飾、バルコニーに通じる窓には重厚な模様と色合いのカーテン、床はモザイク画で幾何学模様が描かれています。
神々が描かれた天井では、魔道具仕立てのシャンデリアが眩い光を放っています。
そして正面の壇上には玉座が並び、すでに国王陛下、王妃陛下、王太子殿下がおわします。
アドリアン様たちから、これから何が起こるか聞いていますが、緊張します。
「ルルティーナ嬢、少し表情が固くなっている。どうか笑って。俺が守るから」
「……ふふっ。ありがとうございます。勇気が出ました」
微笑み会う内に、所定の位置まで来ました。周りは侯爵家と辺境伯家の方々ばかりです。
皆様、一斉にこちらを注目されましたが……。
「ベルダール辺境伯、プランティエ伯爵、ご機嫌よう。今宵はずいぶんと浮ついた蝶が多いようだ」
重く低い声に、場の雰囲気が引き締まります。
お声がけて下さったのは、白いものが混じった黄緑色の髪、赤みがかった琥珀色の瞳、無表情を浮かべた初老の紳士です。
事前の取り決め通りです。お陰で、当てこすりを受けた方々が散っていきました。
私たちはご挨拶を返します。まずはアドリアン様がご挨拶します。
「スフェーヌ侯爵、ご機嫌よう。お陰様で、蝶たちは別の花へと向かったようです」
「スフェーヌ侯爵、ご機嫌よう。ご配慮に感謝いたします」
厚生大臣でもあるスフェーヌ侯爵は、片眉を上げて受け流します。
厳格で常に無表情なお方で、周囲から恐れられているそうです。
しかし、職務に忠実で情熱的な方でもあります。先日の謁見後、初めてお会いしたのですが、ポーションについて二時間以上語り明かしました。
「お二人に紹介したい者がいる。……こちらに来なさい」
「はい。お父様」
スフェーヌ侯爵の背後から現れたのは、黄緑色のダリアを思わせる女性でした。
編み込んでまとめた柔らかな黄緑色の髪、薄い蜂蜜色の瞳、抜けるように白い肌。
お召し物は、若草色の生地に金糸の刺繍を施したエンパイアドレス。トパーズの髪飾り、ブローチ、耳飾りと共に、とても良くお似合いです。
トパーズは黄金色で、あの八重咲の向日葵に色が似ているわ。
「娘のイザベルだ。薬事局の局長補佐でもある。イザベル、ベルダール辺境伯とプランティエ伯爵だ。ご挨拶をしなさい」
この方がスフェーヌ侯爵令嬢イザベル様!
薬事局はポーションや生薬などの薬の流通や査定を管理している部門です。治癒局と共に厚生大臣の管轄です。
イザベル様は、わずか二十歳という若さで局長補佐を務めているのです。
また、薬学の素晴らしい研究家でもあります。私も著作や論文を読ませて頂いています。
お会い出来て嬉しくて、胸が熱くなります。
イザベル様は、素晴らしいカーテシーでご挨拶されます。
「お初にお目にかかります。スフェーヌ侯爵が娘、イザベルと申し上げます。ベルダール辺境伯閣下のご活躍は、以前から婚約者より伺っております。お会いできて光栄です」
「こちらこそ、薬事局始まって以来の才媛とお会いできて光栄です」
アドリアン様が笑顔でご挨拶されます。当たり前の光景ですが、とてもモヤモヤしてしまいます。
アドリアン様、とても優しい笑顔だわ。作った笑顔ではない。
モヤモヤで、先ほどまでの胸の高鳴りがきえてしまいました。
これはわかります。嫉妬です。
私はなんて心が狭くて醜いの……。
密かに落ち込んでいると、イザベル様が私にご挨拶して下さります。
……とてもギラギラしたお目々で。
「お初にお目にかかります。スフェーヌ侯爵が娘、イザベルと申し上げます。薬事局で局長補佐を務めております。
プランティエ伯爵閣下。喪われし技術を甦らせ、数々の素晴らしいポーションを生み出した功績、以前より尊敬しておりました。
閣下にお会いできて感に堪えません。どうぞ、末永いお付き合いをお願いいたします」
話し方も所作もお淑やかそのものですが、物凄い圧を感じます。ポーションの話をした時のスフェーヌ侯爵と似てます。なるほど、これが血の繋がり……。
と、いいますか、かなり大袈裟に評価して頂いているような?
内心で混乱しつつ、ご挨拶を返します。
「お初にお目にかかります。スフェーヌ侯爵令嬢、過分なお言葉痛み入ります。私の方こそ、【薬草大全】と【生薬の分布と歴史】を書かれた薬学博士とお会いできて感激です。よろしくお願いいたします」
「私の本を……!本当ですか?!」
「はい。どちらも良く読ませて頂いています。【薬草大全】は、収録されている薬草の数が多く、効能や利用法が詳細で勉強になります。図解も美しくて、眺めているだけでも楽しいですね。特に好きなのが天空百合の項目です。
【生薬の分布と歴史】も、薬草が多く分布する土地の歴史や伝説が網羅されていて、他の本を読む時も参考になりま……」
「プランティエ伯爵!私と友人になって頂けないでしょうか?!」
「はい。……はい?」
友人?と、仰った?のですか?
友人になりたいと仰った?
「イザベル、プランティエ伯爵がお困りだ。断わり難い状況で、そのような事を言うな」
「はっ!ああ、私とした事が……。プランティエ伯爵、失礼しました」
はっ!このままではいけません!友人が出来るチャンスが消えてしまいます!
「いいえ。あの、私、スフェーヌ侯爵令嬢がよろしければ……私もお友達になりたいです」
「よ、よろしいのですか?」
「もちろんです」
「ありがとうございます!プランティエ伯爵閣下、私のことはどうぞイザベルとおよび下さい」
「で、では、私のこともルルティーナとお呼び下さい。私の方が歳下ですし、敬語も結構です」
「では、ルルティーナさんとお呼びしますね。……するわ。……敬語は追々ということで許して。貴女も敬語はいりませ……いらないから」
「はい!イザベル様!」
素敵なご友人ができました!とっても幸せです!
「……イザベル、プランティエ伯爵、楽しそうなところ悪いが……」
物凄く気まずそうなスフェーヌ侯爵様。我に返りました。
アドリアン様も苦笑いです。
「ルルティーナ嬢。そろそろ始まるから、俺の隣に戻って来てくれないか?」
「「はい。すみません……」」
イザベル様とはまたお話するお約束をして、壇上に向き直ります。
「アドリアン様、ごめんなさい」
「いいさ。君が楽しそうで嬉しい。いい友人が出来そうだね」
「はい。とっても嬉しいです」
「妬けるなあ」
「え?」
「……なんでもないよ。ほら、始まる」
壇上の玉座から、国王陛下、王妃陛下、王太子殿下が立ち上がります。
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