【第1部完結】魔力無し令嬢ルルティーナの幸せ辺境生活【第2部連載開始】

花房いちご

文字の大きさ
上 下
29 / 92
第1部

28話 赤薔薇の破滅 三輪目 前編(リリアーヌ視点)

しおりを挟む
「おー、走ってる走ってる」

 朝飯の片づけが終わって、昼食の準備が一段落したところで窓から外を眺めると、偵察隊の人達が走っていた。

「私もよく走ってたなあ……」

 今だって過去形ではなく、まったくの他人事ごとではない。調理室でご飯作りをしていても、自衛官であることには変わらないし、定期的に訓練に参加することもあるのだから。

「でも、最近じゃ脚力より、絶対に腕力の方が強くなっているわよね」

 大鍋でおかずをかき混ぜたりするのはかなりの重労働。二の腕には、ここに来た時よりも絶対に筋肉がついたと思う。そう思いながら腕を曲げて力こぶを作ってみた。ほら見て、立派な力こぶができた♪

 私の後ろでは、駐屯地内のいろんな部署から派遣されてくる隊員さん達が昼食の準備をしていた。別に私がサボっているわけでも、彼等が懲罰ちょうばつでここに来させられているわけでもない。これも、一応は訓練のうちなのだ。

 どういうことかというと、なにか有事が起きてここの隊員達がてんでばらばらになった時にでも、ちゃんと一人でサバイバルできるように調理技術も身につけさせるという、まあいわば親心みたいなものなんだとか。

 いま作業している彼等も、最初に来た時はそりゃもう使いものにならなくて大変だった。

 まさか自衛隊に来て、誰かにジャガイモの皮のむき方から仕込まなくちゃいけなくなるなんて、私も思いもしなかった。だけど、そんな彼等も今ではなんとか形になるものを作れるようになり、味つけに関しても私が確認すれば良いだけになっていた。すごい進歩でしょ? 鍋をひっくりかえしたくなる衝動をこらえながら、我慢強く指導した自分をほめてあげたい。

「あれ、ペースが遅くなってきた」

 最初は張り切って走っていた一団の、走るスピードがどんどん遅くなっている。もしかしてスタミナ切れ? ああ、やっぱりもっと栄養価が高くて腹持ちのする朝ご飯を用意しなくちゃ駄目かな?

「……でも、後ろについて走ってる人はずっと同じペースで走り続けてるよね」

 人によってエネルギー代謝率はさまざまだし、後ろを走っている人は省エネタイプなのかな。そう言えば見たことのない顔かも。あ、新しく着任した小隊長さんかな?

 そんな私の頭の中の声が聞こえたのか、グループの最後尾を走っていた人がこっちを見た。や、やばい、糧食班がサボっていると思われちゃうよ! 慌てて姿勢を正してみたものの、窓際に立っていたら同じことだって気がついた。な、中に引っ込まなくちゃ!

「わあ」

 後ろに下がろうとしたら、濡れていた床に足をとられて尻餅をついてしまった。よく見ればジャガイモの皮が。どうやらこれで滑ったらしい。

「もう! なんでこんなところにジャガイモの皮?!」

 もしかして私の長靴にでもひっついてきた? 皮をつまむ。そして皮を見つめたところで、その向こう側でこちらを見ている数名の隊員と目が合った。

「ちょっと。そこはこう、なんて言うか、大丈夫ですかって声をかけないまでも、見ないふりをする優しさとか無いんですか?」

 私のムカついた言葉に、慌てて視線を自分達の手元におとす。どうして肩が震えているかな、まったく。あ。

「あ、これってもしかして、私に対する嫌がらせですか?!」

 つまみあげたジャガイモの皮を突き出すと、全員がとんでもないと慌てて首を振った。

「違う違う、嫌がらせなんてとんでもない!」
「そうですよ。ここにきて二ヶ月、ここまで任せてもらえるまで調理の腕が上達できたのは、音無おとなし三曹の指導のお蔭なんです。感謝することはあっても、嫌がらせなんてとんでもない」
「音無三曹がいなくなったら、俺達は美味しいご飯が食べられなくなるじゃないか。嫌がらせする奴は俺達が許さないから……俺達の胃袋のためにも」
「それって喜んでいいんですか?」
「もちろんですよ!」

 そう、私はここの駐屯地の男連中の胃袋を、わしづかみにしているらしい。

「その調子で、新しく来た幹部殿のことも調略ちょうりゃくしてほしいんですけどねえ」
調略ちょうりゃくって、どこの陰謀時代劇ですか」
「だってすっげー怖い人らしいですよ。鬼、悪魔って呼ばれているらしいです。その人が配属された小隊から死人が出るかも」
「えー?」

 俺、ここから戻りたくないなあなんて言い出す人までいる始末。いったい、どんな怖い人がやって来たのやら。

「その人って、どこか別のところから来たベテランさんなんですか?」
「いや。BOCを終えたばかりの若い幹部だよ。今年度うちに来たのは二人なんだけどね、そのうちの一人が、そりゃえげつないぐらい化け物じみているらしいよ。あ、これは人事の知り合いからの伝聞で、俺はまだ会ったことがないけど」
「それって一体どういう……」

 もしかして私の憧れるなんとか兵曹みたいな人なんだろうか? あ、でも彼は特殊部隊の指揮官をしていたベテランで、新米さんではないわよね? ってことはミリオタかぶれの変人とか? ああ、でもそれだったらBOCなんて行かないような気はするし。

「あ、そういえば」

 さっき偵察小隊の一団の後ろを走っていた人も、見たことのない顔だった。ってことは、そのなんとか兵曹もどきさんの可能性もあり?

 気になってもう一度、こっそりと窓から外をのぞいてみる。さっきの小隊はまだ走っていて足元がおぼつかない隊員が何人かいる中で、一番後ろの隊長さんらしき人はまったくさっきと変わらない。どのぐらいの時間を走っているのかわからないけど、なかなかのスタミナだよね。

「もしかしてー、もしかするのかなー?」

 どんな人なのかな? ちょっと興味があるかもしれない。普段は厨房ちゅうぼうの奥に隠れている私も、その新しい小隊長さんは気になる存在になりつつあった。だって憧れのなんとか兵曹だよ? 気になって当然じゃない? ああ、鬼か悪魔だったら困るけど。

音無おとなし三曹、味の確認をお願いします」

 声をかけられたので窓から離れる。

「今日のカレーのできばえはどうでしょうか」

 本日の味つけを任されたのは、この中で一番若い陸士長君だ。この子も、来たばかりの時は、包丁の持ち方からしてどうしようかと思うぐらいだったけれど、今では野菜の皮むきをさせたら右に出るものはいないぐらいなっていた。最近では、捨てる皮を使って細工切りまでするんだから感心してしまう。

 小皿にルーを入れてフーフーしながら味見。うん、素晴らしい。

「うん、おいしいです。もしかして今回が、今までで一番のできじゃないですか? 合格です」
「本当に? やったー! ここにいる間に合格もらえたー!!」

 よっしゃー!と言う感じで両手をあげて喜ぶ陸士長君。ここまで長かったねー、お姉さんも嬉しいよ。

「この調子で夕飯の時も頑張りましょう」
「了解しました!!」

 そういうわけで隊員の皆さーん、本日のお昼ご飯は皆の大好きなカレーですよー!


+++++


 昼食の時間になって、外にいた隊員達が一斉に食堂に戻ってきた。

 さっき私が走るのを観察していた小隊の人達も戻ってきたけど、心なしか顔色が悪い。さらにはその中の大森おおもり二曹と山本やまもと二曹が、ご機嫌ななめな様子でなにやらブツブツと悪態をついている。なになに? あの森永もりながってやつの持久力は化け物か?

 ああ、やっぱりさっきの隊長さんらしき人がケーシーなにがしさんなんだ。遠くからしか見えなかったけれど、どんな人なんだろう? 顔を見たいけど、幹部はこことは違う場所で食事をしているので、残念ながら遠目でしかご尊顔を拝することはできない。

「今日のカレーはうまいな」

 そんな声が聞こえてきて、自分のことのように嬉しくなる。ぜいたくを言うなら、もう少しゆっくり味わって食べて欲しいんだけどなかなかそれは難しい。でも、ここからながめていても、おいしそうに食べてくれているのがわかるから良しとするか。

 そんな感じで慌ただしい食事作りの任務もとどこおりなく終わり、在庫確認を終えると、食器を片づけるという一日の最後の作業に入った。人数が人数だからこれもなかなか重労働な作業だ。所定の場所に食器を片づていると、コンコンとカウンターをたたく音がした。ふりかえると、トレーを持った隊員が立っていた。

「ああ、もう。なんでもう少し早く持ってきてくれないんですか? そりゃあ任務のうちですから片づけますけどね、次の準備もありますし、こっちにも手順ってものがあるんですよ?」
「すまない。名取なとり一佐に呼び出しを受けていて、食べるのが遅くなってしまった」
「そうなんですか? しかられていたのならしかたないですね、こっちに渡してください」
「べつに、しかられていたわけじゃないんだが」
「どちらにしろ呼び出しを食らったんでしょ? 似たようなものですよ」

 そう言いながら、その人が立っているところに足早に向かう。

「……あまり見かけない顔ですね?」

 と言いながら、階級章に目をやって飛び上がった。二尉ってことは幹部! 幹部がどうして食器を自分で運んでくるの?! こういうことって下の子達がすることなんじゃ?!

「あ、失礼しました! 幹部のかたとは知らずに」
「いや、かまわない。遅くなったのは事実だから。ところで、ここでは君がすべて食事を作っているのか?」

 カウンターにトレーを置くと少しだけこちらを覗き込むように身を屈めてから尋ねてきた。

「ここは民間に委託してませんからね。糧食班には、駐屯地内の色んな部署から隊員が派遣されてくるのは御存知でしょう? 彼らが慣れるまでは私がしますが、ある程度任せられるようになったので、今はほとんど彼らが作ってますよ。お口にあいませんでしたか?」

 心配になって思わず聞いてしまった。

「いや、うまかったよ」
「そうですか、それは良かった。今日は新人陸士長君会心のできでしたからね。幹部の人にほめてもらったって知ったら喜びます」

 食器をシンクに運んでから、その人がまだそこに立っていることに気がついた。

「あの、まさかご飯のおかわりがしたいとか、言いませんよね?」
「あるのかい?」
「残念ながら完食御礼です。幹部のかたなら営外住みで自由に出来るんだから、色々と自宅に備蓄はしてるんでしょう? まだお腹が寂しいならそれを食べてください」

 私の言葉に、その人がおかしそうに笑った。真面目な顔をしている時はちょっと怖そうな感じではあったけど、笑うと急に可愛くなっちゃうのね、意外なギャップだ。

「そう言えば、昼間のカレーはうまかったな」
「ここは毎週水曜日がカレーの日なんですよ、昼だったり夜だったり、まちまちですけど」

 陸自カレーに関しては、海自カレーとは違って全体で曜日が統一されているわけではないのだ。

「そうか。じゃあ、来週の水曜日をまた楽しみにしているよ」
「ここはカレーしかおいしくないって言われてるみたい」
「そんなことはないさ。朝飯もうまかったし、この夕飯もうまかった」
「なら良いんですけどね」
「じゃあ。二度手間をかけてもうしわけなかった」
「いいえ。次からはできるだけ時間内に食べてくださいね。そうしたらカレーのおかわりにありつけるかも」

 頑張るよと笑いながら立ち去ろうとしたその人は、急に立ち止まってふりかえった。

「ところでそっちの名前は?」
「私ですか? まさか無礼な口振りを上に告げ口するとか」
「そんなことはしないよ。社交辞令の一環として」
「なら良いんですけど。音無です、音無三等陸曹です。そちらのことをおうかがいしても?」
「森永だ」

 あ、つい最近その名前を聞いた覚えが。

「ああ、ケー」

 ケーシーなにがしと言いかけて、あわてて口をつぐんだ。

「ケ?」
「いえ。新しく着任された小隊長のお一人なのかなと」
「ああ、そうだ。これからはしばらく俺の胃袋がお世話になると思うけどよろしく」

 こうして私は、気になるケーシーなにがし的な小隊長さんと対面することができた。

「……思っていたより細身で小柄だったかな」

 映画と現実をごっちゃにしたら駄目だよって話だよね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

処理中です...