【本編完結】不吉と蔑まれた黒狼獣人は、お人好しな戦友に求愛する【番外編更新予定】

花房いちご

文字の大きさ
15 / 15

家族への紹介と結婚式(本編完結)

しおりを挟む
 とにかく僕の家族にダンを紹介しなくちゃと、離れから出て宿屋の食堂に来たのだけど。
 まだ早朝だから、家族しかいない。でも皆めちゃくちゃニヤニヤしている。何その顔?

「兄ちゃん、昨夜はお楽しみでしたね」

「わー!サナ!なんて下品なこと言うんだ!」

「ごめんごめん。昨夜というより昼から……」

「やめなさい!」

「君がダンさんだね。私がルークの父だ。フッ。ルークから毎日君の話を聞かされていたから、初めて会った気がしないな」

「私はルークの母です。よろしくお願いしますね。それにルークったら、貴方の絵を何枚も描いているのよ」

「父さん!母さん!余計なことを言わないで!ダン!忘れて!絵を見ないでー!って、どうしたの!?」

 ダンは手で顔を覆って、その場に膝をついた。

「俺のつがいが可愛過ぎて辛い!」

「ダン!?何を言ってるの!?」

「新しい兄ちゃん、だいぶ面白い人だねえ」

「ハッハッハ。私たちの若い頃を思い出すな」

「うふふ。本当ねえ」

 僕とダンの結婚はもちろん歓迎されたし、離れで同居することも許してもらえた。
 ちなみに、父さんと母さんが作った朝ごはんはダンの口に合ったようだ。尻尾を振って食べている。

「この大角豚ホーンピッグの煮込みもパンも全てお二人が作られたのですか!美味しいです!王都の大通りでも通用しますよ!」

「あら。ありがとう。たくさん食べてね」

「うむ。冒険者は身体が資本だ。好きなだけ食べなさい」

「はい!しかし、ルークが戦場では少食だった理由がよくわかります。こんな美味しいものを食べていたら、あの悲惨な糧食は口に合わなかったでしょう。無理に食べさせたのは良くなかったかな?」

「ちょ、その話は待っ」

「……ルーク?母さんは貴方が出征する時に『好き嫌いせずしっかり食べなさい』と言ったわよね?どういうことかしら?」

「そうだぞルーク。父さんも『食べ物への感謝を忘れるな。毒でない限りは、出されたものは全て食べなさい』と、言ったはずだが?」

「か、母さん。と、父さん。そ、それには理由があって!腐ってたりカビてたり……」

「まともな飯の時も人に渡してただろ」

「「ルーク?」」

「うわーん!ごめんなさい!許して!」

 二十二歳にもなって親からがっつり怒られてしまった。ダンめ。覚えていろよ!

「ダン兄ちゃん、パンはこのジャムを塗っても美味しいよ」

「ありがとう。しかし、何を食べても美味いなあ」

 あ。駄目だ。ニコニコ笑いながら食べてる顔を見ると怒りが消えちゃう。わー。尻尾も揺れてる。可愛い。好き。

「僕の旦那様が可愛すぎる!」

「ルーク兄ちゃん、うるさい」

 ともかく、家族への紹介は無事に終わった。




◆◆◆◆◆



 その後、僕たちは村長に会いに行った。
 ダンは僕と共にこの村に定住するし、冒険者活動の拠点にするつもりだ。どちらも村長の許可がいる。
 村長は強面の白髪白髯の老爺だ。挨拶も早々に、応接室に案内される。
 ダンは緊張で毛を逆立てつつ、希望を口にした。

「俺はまだ冒険者としては駆け出しですし、この地に縁もゆかりもない余所者です。しかし、ルークさんと生涯を共にする意志は固く……」

「いいよー」

 村長はパッと人好きのする笑みを浮かべた。そうすると印象がかなり変わる。のっほほーんとした好々爺だ。
 さっきまで顔をしかめていたのは、日課の昼寝を邪魔されて眠かっただけだろう。

「今日から君もこの村の一員だね。村民登録するから冒険者資格証貸して。……資格取って半年で銅級ブロンズランク?しかも討伐数が凄い!この村を拠点にするのも大歓迎だよ!最近は魔獣が増え気味だから、ガンガン討伐してもらえると助かる!
 ただし、拠点の変更申請だけは忘れないでねー。念のため冒険者ギルドへの紹介状を書いとくから、明日にでも取りに来て。
 あとルークくんとの結婚式はいつにする?出来れば今月中にしてもらえると、他の結婚式と被らなくて助かるんだけどー?」

「え?あ、はい。ありがとうございます?討伐も頑張りま……え?今月中に結婚式?あと二週間切ってますよ!それは流石に早くないですか!?」

「ダン、諦めて。村人の結婚は村を上げてのお祭りだから、本人たち以上に村の予定が優先されちゃうんだよ。……あと僕も、早く君と結婚式をあげたい。駄目かな?」

「今月中に式をあげます!!!!!」

「仲良しで良かったねー。じゃ、式の打ち合わせは明日ね。日程と会場の希望とかも考えておいて。紹介状もその時に渡せるよう準備するからよろしくー」

 こうして僕たちは、爆速で結婚することになった。

 結婚式の日は、よく晴れていた。
 会場はもちろん、ダンに見せたかったかあの場所だ。

「君に、この光景を見せたかったんだ」

 エメラルドグリーンに輝く湖と、白い石で出来た古城が見える。その対岸に即席の式場を作ってもらったのだ。
 僕らはそこに隣り合って立ち、眼前の絶景を見ている。

 春の青空の下。湖は透き通った美しさをたたえている。古城に絡む緋色蔦スカーレットアイビーも生き生きと鮮やかで、古城の白さを際立たせていた。
 絵画そのもののような光景に、少し涙が浮かんだ。
 きっと、ダンも感動していると思ったのだけど……。僕を見てる?

「ハッ!すまん。何も聞いてなかった。お前があんまりにも綺麗で……」

「ええ?ダンの方がよっぽど男前じゃないか!」

「そ、そうか?変じゃないか?」

 僕らは、この地方の伝統的な花婿衣装を着ている。
 上衣もズボンも白が基調だ。上衣は詰襟で丈が長い。腰に巻かれたベルトは、僕はダンの毛の色である黒で、ダンは僕の髪の色であるクリーム色だ。ズボンは細身でダンの脚のたくましさを強調している。
 色といい、かっちりした形といい、ダンったら最高に似合ってる!

「うん!僕の旦那様は最高だよ!格好いい!」

 ダンがふわっと笑う。

「俺のつがいも最高だ。今日も綺麗で可愛い」

「う、うん。ありがとう」

 まだまだ恥ずかしいけど、ダンからの褒め言葉を素直に受け取れるようになってきた。自分を不吉だと卑下していたダンもそうだ。
 こうやって、僕たちはこれからも変化していくのだろう。お互いの想いを受け止めあって、ずっと二人でいるために。
 僕らは鼻先をこすりあって微笑み合う。

「おーい!お二人さーん!お熱いのはいいけど、さっさと式を始めてくれー!」

「そうだそうだー!酒飲ませろー!」

「腹減ったー!」

「司祭様が待ってますよー!」

「あはは!みんなー!ごめーん!今から始めるよ!ダン、行こう!」

「ああ!」

 僕らは待機してくれていた司祭様の元に行き、愛を誓った。

 村中が「よかったなー!」「お幸せにー!」と、祝ってくれる。
 ダンが甘い眼差しで見つめてくれている。
 幸せで眩暈がする。
 やっぱり僕の予想通りだ。

 僕らのこれからの人生は運が上がりっぱなし!間違いないね!


 本編完結


◆◆◆◆◆



ここまでお読みいただきありがとうございます。
閲覧、お気に入り登録、ハート、エールなどの反応ありがとうございます。大変励みになっております。
本編はここまでです。番外編をいくつか更新する予定ですが、時期は未定です。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...