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番外編・ラズワートは花ひらく【1】*
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ファルロの蜜月【3】の翌日の話です。ラズワート視点。
◆◆◆◆◆
ラズワートとファルロの想いが通じ合った。その翌日のことだった。
ラズワートはファルロの腕の中で目覚めた。お互いに全裸だ。途端に昨夜の記憶が蘇る。顔がカッと熱くなった。
昨夜から今日の朝まで、ラズワートはファルロから与えられる快楽に溺れて乱れた。しかも自ら積極的に求めていた。
正気に返った今も、腹の底がとろりと甘い熱を持っている。息を吸うと、微かに残った互いの汗と精の匂いがしてたまらない。
下腹と逸物が快楽を思い出してうずく。もじもじと摺り寄せる腿も同じだ。ファルロの逸物と精液の感触がよみがえり汗ばんでいく。
ラズワートはとろりと陶酔した。
(……気持ちよかった。またしたい。……くそ!みっともない!なんて有様だ!)
だが同時に、己が浅ましく思えてならなかった。
(とにかく服を着なければ)
ラズワートはファルロを起こさないよう腕から抜け出し、寝台から出ようとした。
「うっ……!」
しかし、身体が重くて上手くいかない。遠征で一日中馬を走らせた時のように疲弊している。
散々精を絞られ、尻穴で絶頂し、素股で足腰を酷使したからだろう。身体強化魔法を使おうとしたが、隷属の首輪のせいで発動できない。
ラズワートは諦めた。それでもファルロの腕の中に帰る気にはなれない。居た堪れなくて、寝台の隅に置いやられていた掛け布団を頭から被る。羞恥で死にそうだ。
(あんな……あんな口付けも交わりも知らん!)
ラズワートはこれまでの自分の経験を振り返った。
◆◆◆◆◆
ラズワートは娼婦としか寝たことが無かった。しかも筆下ろしの時など、どうしても避けられない時だけだ。
数えるほどしか経験がない上に、娼婦との行為は快楽よりも不快感や虚しさの方が強かった。娼婦を傷つけないよう、歯を食いしばるので精一杯だった。
亡き妻サフィーリアと閨を共にしたことはない。サフィーリアの身体が弱っていただけではなく、互いに友情や敬愛以外の感情がなかったためだ。
このように、ラズワートは昔から性的な行為に対する欲求や興味が希薄だった。こ
また、父アジュリートは跡継ぎを強く望んでいたが、意外にもアジュリート以外の周囲はそうでも無かった。
『アンジュールの直系は、本当に惹かれた者としか子を成せない』
そう言い伝えられていたのも大きい。例外はもちろん居るが、どちらにせよ無理強いするものではないと認識されていた。
それでもラズワートは後ろめたさをいだいていたが、叔父のリュビクはこう言っていた。ラズワートが十六歳の頃だった。
『気にするな。実際に、無理に娶せて血の惨事が起きた。しかも一度や二度じゃない。それに、アンジュールは色々とややこしい家だ。下手な相手と子供を作るのもまずい。だからお前は、そのままでいいんだ』
そんなラズワートにとって、ファルロとの出会いは衝撃だった。
(俺より圧倒的に強いこの雄……ファルロが欲しい。……馬鹿な!相手は敵で男だぞ!)
戦での殺し合いで、捕虜交換の宴で、ラズワートはファルロに惹かれ、その度に身体の奥が熱くなった。いっそ、犯されたいとすら思うほどに狂おしく。
そして紆余曲折を経て人質として共に暮らすようになると、ラズワートの身体の熱さはますます強くなっていった。少し触れ合うだけで胸がうるさく鳴り、頭がかすみがかる時すらあった。
かつて、ラズワートが自慰をするのは月に一度あるかないかだった。それが最近では、三日に一度は身体の熱を持て余すようになった。
「はっ……はぁっ……ルイシャー……んんっ!」
ファルロの声や眼差しを浮かべ、己の指をファルロの指に見立てて慰める。あの大きな手で握られたら、しかもあの金の目で見つめられたら……。
「はぁっ!でるっ……!」
目を瞑り、光景を浮かべた瞬間吐精した。あまりに素直な自分の身体に呆れ、同時に悟った。
(そうか。俺はルイシャーン卿とまぐわいたいのか)
今更な自覚である。しかし、相手はどうだろうか。ラズワートを熱く見つめる割に手を出す気配がない。あくまで賓客に対する態度を崩さない。控えめに誘っても無駄だった。
性的な事、あるいはラズワートの身体に興味が無いのではと考えては悩んだ。
(あり得ることだ……)
ファルロが皇城に上がって帰って来なくなってからは、寂しさも相まって苦悩が深まった。
そして数日前、とうとう悩んでいることを家宰のクロシュに見抜かれた。
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ラズワートとファルロの想いが通じ合った。その翌日のことだった。
ラズワートはファルロの腕の中で目覚めた。お互いに全裸だ。途端に昨夜の記憶が蘇る。顔がカッと熱くなった。
昨夜から今日の朝まで、ラズワートはファルロから与えられる快楽に溺れて乱れた。しかも自ら積極的に求めていた。
正気に返った今も、腹の底がとろりと甘い熱を持っている。息を吸うと、微かに残った互いの汗と精の匂いがしてたまらない。
下腹と逸物が快楽を思い出してうずく。もじもじと摺り寄せる腿も同じだ。ファルロの逸物と精液の感触がよみがえり汗ばんでいく。
ラズワートはとろりと陶酔した。
(……気持ちよかった。またしたい。……くそ!みっともない!なんて有様だ!)
だが同時に、己が浅ましく思えてならなかった。
(とにかく服を着なければ)
ラズワートはファルロを起こさないよう腕から抜け出し、寝台から出ようとした。
「うっ……!」
しかし、身体が重くて上手くいかない。遠征で一日中馬を走らせた時のように疲弊している。
散々精を絞られ、尻穴で絶頂し、素股で足腰を酷使したからだろう。身体強化魔法を使おうとしたが、隷属の首輪のせいで発動できない。
ラズワートは諦めた。それでもファルロの腕の中に帰る気にはなれない。居た堪れなくて、寝台の隅に置いやられていた掛け布団を頭から被る。羞恥で死にそうだ。
(あんな……あんな口付けも交わりも知らん!)
ラズワートはこれまでの自分の経験を振り返った。
◆◆◆◆◆
ラズワートは娼婦としか寝たことが無かった。しかも筆下ろしの時など、どうしても避けられない時だけだ。
数えるほどしか経験がない上に、娼婦との行為は快楽よりも不快感や虚しさの方が強かった。娼婦を傷つけないよう、歯を食いしばるので精一杯だった。
亡き妻サフィーリアと閨を共にしたことはない。サフィーリアの身体が弱っていただけではなく、互いに友情や敬愛以外の感情がなかったためだ。
このように、ラズワートは昔から性的な行為に対する欲求や興味が希薄だった。こ
また、父アジュリートは跡継ぎを強く望んでいたが、意外にもアジュリート以外の周囲はそうでも無かった。
『アンジュールの直系は、本当に惹かれた者としか子を成せない』
そう言い伝えられていたのも大きい。例外はもちろん居るが、どちらにせよ無理強いするものではないと認識されていた。
それでもラズワートは後ろめたさをいだいていたが、叔父のリュビクはこう言っていた。ラズワートが十六歳の頃だった。
『気にするな。実際に、無理に娶せて血の惨事が起きた。しかも一度や二度じゃない。それに、アンジュールは色々とややこしい家だ。下手な相手と子供を作るのもまずい。だからお前は、そのままでいいんだ』
そんなラズワートにとって、ファルロとの出会いは衝撃だった。
(俺より圧倒的に強いこの雄……ファルロが欲しい。……馬鹿な!相手は敵で男だぞ!)
戦での殺し合いで、捕虜交換の宴で、ラズワートはファルロに惹かれ、その度に身体の奥が熱くなった。いっそ、犯されたいとすら思うほどに狂おしく。
そして紆余曲折を経て人質として共に暮らすようになると、ラズワートの身体の熱さはますます強くなっていった。少し触れ合うだけで胸がうるさく鳴り、頭がかすみがかる時すらあった。
かつて、ラズワートが自慰をするのは月に一度あるかないかだった。それが最近では、三日に一度は身体の熱を持て余すようになった。
「はっ……はぁっ……ルイシャー……んんっ!」
ファルロの声や眼差しを浮かべ、己の指をファルロの指に見立てて慰める。あの大きな手で握られたら、しかもあの金の目で見つめられたら……。
「はぁっ!でるっ……!」
目を瞑り、光景を浮かべた瞬間吐精した。あまりに素直な自分の身体に呆れ、同時に悟った。
(そうか。俺はルイシャーン卿とまぐわいたいのか)
今更な自覚である。しかし、相手はどうだろうか。ラズワートを熱く見つめる割に手を出す気配がない。あくまで賓客に対する態度を崩さない。控えめに誘っても無駄だった。
性的な事、あるいはラズワートの身体に興味が無いのではと考えては悩んだ。
(あり得ることだ……)
ファルロが皇城に上がって帰って来なくなってからは、寂しさも相まって苦悩が深まった。
そして数日前、とうとう悩んでいることを家宰のクロシュに見抜かれた。
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