狼は腹のなか〜銀狼の獣人将軍は、囚われの辺境伯を溺愛する〜

花房いちご

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ファルロの蜜月【12】*

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 この夜から三日三晩、ファルロとラズワートはひたすら互いを貪った。
 とはいえ、ファルロは初夜の翌朝の時点で正気に返ったので、止めて休息しようとした。
 早朝、二人はほぼ同時に起きた。手足を絡めあって失神するように寝ていたのだ。まず、ファルロは慌てた。ラズワートの身体を拭くどころか、大量に注ぎ込んだ精液すら掻き出していない。心なしか下腹が膨らんだままだ。

「ああ……たくさん入ったままだな……まるで孕んだようだ」

 ラズワートはうっとりと微笑見ながら下腹を撫でた。どうやらまだ余韻に浸っているらしい。あまりの卑猥さに、ファルロは襲い掛かりそうになる。

(駄目です!このままではラズワートの身体にさわりがあります!)

  どうにか我慢して、ラズワートの腰の下にクッションを置き、尻がよく見えるようにする。ラズワートはされるがままだ。丸見えになった赤く腫れた尻穴からごぷりと精液があふれた。こういう時用に用意してある布を敷く。

「もったいない……」

 ラズワートの手が尻穴を押さえようとする。ファルロは優しく退かす。

「掻き出します。このままではお腹を壊してしまいますから」

「いやだ。ファル……ひんっ!あっ!あぁっ!」

 ファルロの太く長い指が尻穴に入っていく。散々、逸物で耕され精液に浸された肉壁は柔らかい。すんなりと指を受け入れた。ファルロは出来るだけ感じさせないよう、乱暴にならないよう気をつけて指を動かし、精液を掻き出していった。

「ひいぃっ!ああっ!でる!やだあぁっ!」

 しかし、ラズワートは喘ぎ、身悶えし、卑猥な音を立てて精液をひり出す。少しも触られていないというのに、ラズワートの逸物は反り返って先走りを撒き散らした。口淫してやりたい。ファルロは生唾を飲んだが、なんとか耐えほとんどの精液を掻き出した。
 尻穴が腫れていたので軟膏を塗り込んで終わりだ。ファルロはクッションを退かし、ラズワートの身体を抱きしめて口付けた。

「はぁっ!はっ……んんっ……!……はぁ、終わった……か?」

 金混じりの青い目に理性の光が戻る。ファルロは安心した。

「はい。掻き出すのは終わりましたよ。暴れずによく頑張りました。次は湯浴みを……」 

「嫌だ」

 ラズワートはするりと腕の拘束から逃れ、四つん這いの姿勢になって尻を向けた。赤く腫れて、さらに広がった尻穴を自らの手で広げて誘惑する。

「……なんで掻き出したんだ?もっと注いでくれ。お前の十二年はこんなものか?」

 精液を掻き出した後に塗った軟膏が溶け、愛液のように垂れる様がいやらしい。いやらしくて、柔らかそうな肉襞にファルロの逸物がそそり立つ。夜衣の合わせからブルンと飛び出たそれに、ラズワートは嫣然とした笑みを浮かべた。

「なあ、欲しい。中が熱くてぐちゃぐちゃで切ない……また種付けして欲しい」

 ラズワートは、腰を悩ましく揺らしながらにじり寄り、そそり立った逸物に尻穴が当たるよう擦り付けた。

「いや私もしたいですけどちょっと待っ……あああっ!わかりましたよ!我慢無理です!貴方の身体のためだったのに!」

 ファルロは自らの逸物に香油をかけ、ラズワートの腰を掴んで尻穴に挿れていった。肉壁は蕩けそうに熱く柔らかく、理性を容易く奪った。

「ぐるるっ!うぅ……!すごい……なか、うねって……!」

 ファルロは夢中で腰を振った。やや性急な動きにも関わらず、ラズワートも甘く鳴いて腰を振った。

「あぁっ!はいっ……!ふとい……!いぃっ!ひろがるぅ!きもちいぃ!」

「わたしも……!いいっ!ラズワート!」

 この日も結局、何時間も繋がったままだった。

◆◆◆◆◆

 ファルロが解放されたのは四日目の早朝だった。

「三日三晩の約束だからな。仕方ない」

 ラズワートは名残惜しそうに寝台から出て、適当に夜衣を引っ掛けた。散々貪りあって乱れたというのに元気そうだ。どうやら時々、身体強化魔法で疲労や傷を治していたらしい。そんな効果もあるのかと感心した。

「なかなか便利な魔法だろ?お前の魔力をたっぷり貰ってるから魔力不足の恐れもない」

 聞き捨てならない言葉があった。

「ん?言ってなかったか。お前は魔力が強いから、隷属の首輪無しだと体液や粘膜を通して、自然と流れ込んでくる。体調に支障はない量のはずだが、嫌か?」

「いえ。貴方の力になれるなら別に構いませんが」

 一応、自分の身体に異変がないか確認する。事後特有の倦怠感は少しあるが、特にこれといって変化はない。どちらかというと、色んな意味で満たされている。というか、ラズワートの糧になるならかなり嬉しい。

「良かった。魔力と精液を腹に注がれるのは堪らないからな……」

 ラズワートは意味ありげに下腹を撫でて口角を上げた。ファルロは再び欲がもたげかけ、奥歯を噛み締め耐えた。ついさっき、欲情を抑える薬を飲んだというのに危うい。

(つくづく侮れないというか、次々と意外な面が出てくる人だな)

 そんな所も魅力だが、色々と困るのも事実だ。

「はあ……まだ下腹が疼いている」

「……あまり誘惑しないで下さい。今からこうでは、発情期は貴方を抱き殺しかねません」

 そう、ファルロの発情期は年によって差はあるが、春の終わりから初夏にかけてだ。今は違うのに、信じられないほど欲望に溺れた。半獣体どころか、完全獣化での交わりをしてしまうほどに。名誉に関わる失態である。

「ほほう。それは楽しみだな」

 ラズワートは頸や首筋の歯形を撫でて見せつける。ファルロの耳が罪悪感から垂れた。

「落ち込むことはないぞ。いつも余裕だったお前が正気を失うほど俺に夢中になった。俺は嬉しい」

「ラズワート……」

 たかがそれだけで、ファルロの尻尾は喜びに揺れ後悔は霧散するのだった。ラズワートはにんまりと笑った。

「だから発情期中は三日三晩といわず、ずっとしていよう。皆は俺が説得する。もちろん、お前の執務をしっかり補佐した上でだ。俺はまた狼のお前に種付けされたい」

 金混じりの青い目は真っ直ぐにファルロを見つめ、期待にきらめいていた。

「ラズワート……そんな真剣な顔で言うことじゃないでしょう……」

 貴方って、想像以上に好き者ですね。とは流石に言えないファルロだった。そもそも、ファルロだってしたいので同罪である。
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