狼は腹のなか〜銀狼の獣人将軍は、囚われの辺境伯を溺愛する〜

花房いちご

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ファルロの蜜月【7】*

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 この日は、ラズワートの寝室で共寝した。寝台の中、正面から抱き合しめあう。互いに夜衣は着たままだ。ラズワートのつむじに軽く口付け、匂いと体温を感じる。最初は抱きしめられることに慣れていなかったラズワートも、身を委ねることを覚えた。その変化が愛おしい。たまらなくなって、頭や額に口付けを落としていく。

「ふふっファルロ、くすぐったい」

 どこか幼く甘い声。その声もたまらないなと、口付けようと身をよじる。なかなかの力で阻まれた。

「嫌だ。離れるな」

まるで駄々っ子だ。いつもと逆だなと、ファルロはおかしくなった。

「離れません。可愛い子に口付けたいんです」

「……俺は可愛くないし、子供じゃない」

「可愛いです。子供扱いなんてしてませんよ。こんなに魅力的なのに」

 ファルロは拗ねた声の一つ一つに丁寧に返しながら、今度こそ身動いでラズワートに口付けた。少し睨みつけるようだった金混じりの青い目も、あっという間に甘くとろける。
 唇は従順にファルロの舌を受け入れ、舌と舌が絡み合う。ファルロは温かく柔らかい舌と口内を存分に味わい、ラズワートに快楽を与えた。

「ん……ふ……はぁっ……」

 ラズワートの唇から、甘い声と唾液がこぼれる。ファルロはそれらを舐めて吸いながら、ラズワートの顔を観察する。

「はぁ……ふぁる、ろ……」

 うっとりと目を閉じて感じるラズワートが愛しい。今夜は口付けだけのつもりだったが、欲がもたげる。

(ですが、シャーディとサフィーリア様のことを話した後というのは少し……)

 流石のファルロもためらっていると、ラズワートが唇を離した。口元が互いの唾液で濡れていて淫靡だ。その淫靡な唇がファルロの首筋に吸い付き、鍛えられた脚が卑猥にファルロの股間を擦る。

「お前をもっと感じたい。今夜は少し……寂しい」

 ここまで言われて応えないほど、ファルロは野暮ではない。

「では、寂しさなんて感じなくなるまで、たくさん可愛がってあげましょう」

「ん……ふぁ……あっ……」

 再び口付けながら、ラズワートの夜衣を脱がしていく。艶かしい肌の匂いが濃くなる。口付けをやめ、胸筋の発達した胸を揉みつつ片方の乳首を舐めしゃぶる。

「あっ!いきなりっ!ひあぁっ!」

 胸と乳首が弱いラズワートは容易く乱れた。ファルロの頭を抱いて身悶えする。無意識だろうか。腰が揺れている。しっかり立ち上がった乳首を摘みながら顔を見上げた。

「ラズワートの身体は、どこもかしこも可愛いですね。もう死ぬまで、いえ死んでも離してあげれそうに無いです」

 一瞬、ラズワートは泣きそうな顔になった。愛しそうにファルロを見つめながら、額に口付けを落とす。

「俺もお前を離してなんてやらない」

 嬉しい。今度はファルロが泣きそうになった。
 また深く口付けあいながら、ファルロは自分の夜衣の前をはだけ、逸物を取り出した。まだ兆し出したばかりのそれと、ラズワートの逸物を束ねてしごく。ラズワートは腰を動かして応えた。

「あっ!はぁっ……!ああぁっ!」

 ねちねちと、いやらしい音が激しくなっていく。ファルロは己よりも、ラズワートが快感を感じれるよう努めたかった。しかしいつの間にか手管も何もなく、夢中で手を動かしていた。
 ラズワートと身体を貪りあっているこの状況に酔っている。何度夜を迎えても夢中だ。

(本当に、もうラズワートを手離せない。そしてラズワートからも離れて欲しくない。その為なら、私は何でもできる。……きっと、ラズワートも同じ想いでしょう)

 その証拠のように、ラズワートの手はファルロの頭と肩をしっかり抱いて離さなかった。
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