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ファルロの蜜月【4】*
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初夜から数えて七日間、ファルロはラズワートの側から離れようとしなかった。寝室からも最低限しか出ない。ファルロは、起きている間は触れ合うか、風呂や食事など身の回りの世話をしたがった。寝ている間はというと、ガッチリと抱きしめて離さない。
どちらもほぼ全裸のままだ。使用人や配下達も遠ざけている。ラズワートは、どうしても嫌な時以外は好きにさせた。あれだけ熱心だった鍛錬もやめている。
夜、散々愛し合った後。ファルロはラズワートを背中から抱きしめていた。密やかな声で囁き合う。
「嫌ではありませんか?」
「嫌ではない。俺も浮かれているからな。当たり前だろう?懐きそうで懐かなかった狼が、やっと俺のものになったんだ」
愛しさを隠さない声に、ファルロは胸がいっぱいになる。
「ええ。私は貴方のものです。もちろん貴方も……」
寝るはずだったが、逸物が固くなっていく。ラズワートは尻に当たる逸物を、腰をくねらせて刺激してやった。
「待て。が出来ないのか?悪い狼だな」
ふさふさと脚に絡む尻尾を撫でるラズワート。悪戯っぽい流し目に貪りつきたくなるが……。
「ええ。……ですが、お疲れなら朝まで待ちます」
「……正直で優しい狼には褒美をやろう」
ラズワートはファルロの逸物が股に挟まるようにし、自分の逸物と束ねて両手で扱き出した。ファルロも腰を前後させ、手を伸ばして扱く。連日触れ合っているため、ラズワートの逸物の反応は悪いが、快感はあるらしく甘い声をだす。ファルロの逸物はというと、あっという間に反り返った。
「すごい……!な、おまえ……!そこなしか?」
「まさか……ふふっ十二年分、たっぷり溜まっているだけです」
ラズワートの耳をやわく噛んでしゃぶりながら囁く。
「ふぁっ!あっ……!んあっ!」
トロトロと先走りを流す逸物を愛でつつ、もう片方の手でラズワートの下腹を撫でた。
「まだまだ溜まっていますから……いずれここで貴方の狼を全部食べて下さいね?」
「ははっ!いいぞ……くってやる!」
どちらともなく舌を絡めあい、朝方まで精を搾り合って、泥のように眠った。
日が高くなる頃、ファルロは目覚めた。適当に夜衣を羽織り、食事を運ばせようと扉を開け……険しい顔で待機していたクロシュと副官のパヤムから諌められ、我に返ったのだった。
「いくら初夜でも七日七晩は異常です。長くても三日三晩でしょう。ただでさえアンジュール卿はお若いのですから、旦那様が節度を持って導かなくてどうするのです?」
「閣下、四十路半ばになってこれはやり過ぎですよ……。応援するとは言いましたし、今もそれは変わりませんが、我々の前にまったく姿を見せない、近寄らせないのは流石に規律に関わります」
この年齢になっての本気の説教は心に効く。ファルロは返す言葉もなく項垂れた。耳はぺたり、尻尾はしゅん……である。
黙って拝聴していたところに、ラズワートがファルロの隣に立ち頭を下げた。
「すまん。俺が善がって煽ったのも悪い。許してやってくれ」
全員ギョッとした。言った本人はしれっとしている。
「今後はファルロの予定を確認してからまぐわ……」
「ラズワート!露骨すぎます!」
ファルロは慌てて口をふさいだ。金混じりの青い目は揶揄うように細くなる。
「うう!可愛い……ではなく、慎みを持って下さい。この場で襲いますよ。私が」
「旦那様はまったく反省してませんね。尻尾ぶんぶん振ってますし。アンジュール様も開き直っていらっしゃる」
「番たてとはいえ浮かれすぎですよね。しかもアンジュール卿は人間なのに。うわあ。鼻曲がりそうなくらいお互いの匂いつけてる怖……」
クロシュとパヤムはひそひそ話し、溜息をついて生暖かい笑顔になった。
「もういいです。今後は気をつけて下さいね。お二人とも」
「本当にすみませんでした。反省します」
ファルロの威信が地に落ちた瞬間だった。クロシュは二人とも風呂に入ってから食堂に来るよう告げて去り、ラズワートは素直に風呂に向かった。残ったパヤムが居住まいを正して告げる。
「ルイシャーン閣下。今朝、王城よりこちらが届きました。ご確認下さい」
本命はこちらか。ファルロは納得して受け取った。
「わかった。下がっていい」
すぐさま自室に戻って鍵をかけた。渡された物、皇帝アリュシアンからの手紙を開封して中を読んだ。
それから風呂に入った。上がる頃には小一時間ほど経っていた。ファルロは手早く身支度し、賓客の庭園の食堂に向かう。風呂上がりでさっぱりした顔のラズワートがすでに座っている。まだ食事には手をつけていないらしい。自分を待っていたのか。いじらしいなと頬が緩んだ。
「ふはっ!ファルロ、また尻尾……!お前、俺の顔を見ただけで……!はははっ!」
「好きなだけ笑って下さい。でも貴方だって、私の尻尾が揺れてるだけで可愛い笑顔になるじゃないですか」
「俺は可愛くない。可愛いのはお前だ。ほら、隣においで」
確かに、ラズワートからすれば自分は可愛い狼だろう。ファルロは素直に従い、隣に座った。
「今日は俺がお前の世話を焼いてやろう」
鍋ごと置かれた銀羊毛と野菜のシチューを器によそい、香草の香る焼き飯を皿に盛る。甲斐甲斐しい。さらに手ずから食べさせようとするのだから、照れ臭くも嬉しかった。
「お前だって俺によそって食べさせたじゃないか。されるのは照れるのか。面白い奴」
「照れますけど、嬉しいのでもう一口下さい。ほら、あーん」
「わかったわかった。野菜もしっかり食べろよ」
しばし、どちらが歳上かわからないやり取りをしながら食事した。食事後、ファルロはラズワートに皇帝からの手紙が届き、これから出仕する事を伝えた。
「貴方が私の番になる事と、この国で生きる決意を固めた事も報告します。悪いようにはならないでしょう」
「わかった。吉報を待っている。……出来るだけ早く帰って来いよ」
「もちろんで……」
軽く口付けようとしたら、ラズワートの手に阻まれた。
「後でだ。口付けだけで終わるか?お互い節度を守ると誓っただろう?」
「仰る通りです」
ファルロは泣く泣く出仕したのだった。
どちらもほぼ全裸のままだ。使用人や配下達も遠ざけている。ラズワートは、どうしても嫌な時以外は好きにさせた。あれだけ熱心だった鍛錬もやめている。
夜、散々愛し合った後。ファルロはラズワートを背中から抱きしめていた。密やかな声で囁き合う。
「嫌ではありませんか?」
「嫌ではない。俺も浮かれているからな。当たり前だろう?懐きそうで懐かなかった狼が、やっと俺のものになったんだ」
愛しさを隠さない声に、ファルロは胸がいっぱいになる。
「ええ。私は貴方のものです。もちろん貴方も……」
寝るはずだったが、逸物が固くなっていく。ラズワートは尻に当たる逸物を、腰をくねらせて刺激してやった。
「待て。が出来ないのか?悪い狼だな」
ふさふさと脚に絡む尻尾を撫でるラズワート。悪戯っぽい流し目に貪りつきたくなるが……。
「ええ。……ですが、お疲れなら朝まで待ちます」
「……正直で優しい狼には褒美をやろう」
ラズワートはファルロの逸物が股に挟まるようにし、自分の逸物と束ねて両手で扱き出した。ファルロも腰を前後させ、手を伸ばして扱く。連日触れ合っているため、ラズワートの逸物の反応は悪いが、快感はあるらしく甘い声をだす。ファルロの逸物はというと、あっという間に反り返った。
「すごい……!な、おまえ……!そこなしか?」
「まさか……ふふっ十二年分、たっぷり溜まっているだけです」
ラズワートの耳をやわく噛んでしゃぶりながら囁く。
「ふぁっ!あっ……!んあっ!」
トロトロと先走りを流す逸物を愛でつつ、もう片方の手でラズワートの下腹を撫でた。
「まだまだ溜まっていますから……いずれここで貴方の狼を全部食べて下さいね?」
「ははっ!いいぞ……くってやる!」
どちらともなく舌を絡めあい、朝方まで精を搾り合って、泥のように眠った。
日が高くなる頃、ファルロは目覚めた。適当に夜衣を羽織り、食事を運ばせようと扉を開け……険しい顔で待機していたクロシュと副官のパヤムから諌められ、我に返ったのだった。
「いくら初夜でも七日七晩は異常です。長くても三日三晩でしょう。ただでさえアンジュール卿はお若いのですから、旦那様が節度を持って導かなくてどうするのです?」
「閣下、四十路半ばになってこれはやり過ぎですよ……。応援するとは言いましたし、今もそれは変わりませんが、我々の前にまったく姿を見せない、近寄らせないのは流石に規律に関わります」
この年齢になっての本気の説教は心に効く。ファルロは返す言葉もなく項垂れた。耳はぺたり、尻尾はしゅん……である。
黙って拝聴していたところに、ラズワートがファルロの隣に立ち頭を下げた。
「すまん。俺が善がって煽ったのも悪い。許してやってくれ」
全員ギョッとした。言った本人はしれっとしている。
「今後はファルロの予定を確認してからまぐわ……」
「ラズワート!露骨すぎます!」
ファルロは慌てて口をふさいだ。金混じりの青い目は揶揄うように細くなる。
「うう!可愛い……ではなく、慎みを持って下さい。この場で襲いますよ。私が」
「旦那様はまったく反省してませんね。尻尾ぶんぶん振ってますし。アンジュール様も開き直っていらっしゃる」
「番たてとはいえ浮かれすぎですよね。しかもアンジュール卿は人間なのに。うわあ。鼻曲がりそうなくらいお互いの匂いつけてる怖……」
クロシュとパヤムはひそひそ話し、溜息をついて生暖かい笑顔になった。
「もういいです。今後は気をつけて下さいね。お二人とも」
「本当にすみませんでした。反省します」
ファルロの威信が地に落ちた瞬間だった。クロシュは二人とも風呂に入ってから食堂に来るよう告げて去り、ラズワートは素直に風呂に向かった。残ったパヤムが居住まいを正して告げる。
「ルイシャーン閣下。今朝、王城よりこちらが届きました。ご確認下さい」
本命はこちらか。ファルロは納得して受け取った。
「わかった。下がっていい」
すぐさま自室に戻って鍵をかけた。渡された物、皇帝アリュシアンからの手紙を開封して中を読んだ。
それから風呂に入った。上がる頃には小一時間ほど経っていた。ファルロは手早く身支度し、賓客の庭園の食堂に向かう。風呂上がりでさっぱりした顔のラズワートがすでに座っている。まだ食事には手をつけていないらしい。自分を待っていたのか。いじらしいなと頬が緩んだ。
「ふはっ!ファルロ、また尻尾……!お前、俺の顔を見ただけで……!はははっ!」
「好きなだけ笑って下さい。でも貴方だって、私の尻尾が揺れてるだけで可愛い笑顔になるじゃないですか」
「俺は可愛くない。可愛いのはお前だ。ほら、隣においで」
確かに、ラズワートからすれば自分は可愛い狼だろう。ファルロは素直に従い、隣に座った。
「今日は俺がお前の世話を焼いてやろう」
鍋ごと置かれた銀羊毛と野菜のシチューを器によそい、香草の香る焼き飯を皿に盛る。甲斐甲斐しい。さらに手ずから食べさせようとするのだから、照れ臭くも嬉しかった。
「お前だって俺によそって食べさせたじゃないか。されるのは照れるのか。面白い奴」
「照れますけど、嬉しいのでもう一口下さい。ほら、あーん」
「わかったわかった。野菜もしっかり食べろよ」
しばし、どちらが歳上かわからないやり取りをしながら食事した。食事後、ファルロはラズワートに皇帝からの手紙が届き、これから出仕する事を伝えた。
「貴方が私の番になる事と、この国で生きる決意を固めた事も報告します。悪いようにはならないでしょう」
「わかった。吉報を待っている。……出来るだけ早く帰って来いよ」
「もちろんで……」
軽く口付けようとしたら、ラズワートの手に阻まれた。
「後でだ。口付けだけで終わるか?お互い節度を守ると誓っただろう?」
「仰る通りです」
ファルロは泣く泣く出仕したのだった。
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