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生贄の奴隷青年は青龍に娶られ溺愛される
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青き鱗を持つ龍は、この地の祠で静かに暮らしていた。
見上げるほど大きいその龍を、人間は青龍と名付け敬った
龍とは、力そのものに近い生き物だ。存在しているだけで、天地に恵みをもたらす。
人間の願いを叶えたりはしないが脅かすこともない。生贄や供物も求めない。むしろ、欲にまみれた人間との関わりを避ける場合が多い。
中でも、この地に住む青龍は力が強かった。また、人間に煩わされることを最も不快としていた。
ゆえに、この地の人間は祠を訪れることはなかった。
だがしかし、人間とは強欲で忘れやすい生き物である。
「生贄を捧げれば、もっと願いを叶えてくれる」
この地を治める領主はそう思い込んでしまった。
領主は、一人の青年を絹と宝石で飾り立てて青龍の祠に連れて来た。
青龍が、領主の愚かさと腐った魂の臭いに怒るとも知らずに。
ーーー失せよ人間ども!生贄なぞ要らぬ!願いも叶えぬ!ーーー
青龍の恫喝が、洞窟を利用した祠を震わせる。
領主たちは恐れおののき逃げ帰った。
ただ一人、生贄の青年だけを残して。
青龍はギロリと青年を睨みつける。
ーーー耳が聞こえぬのか?失せよ。さっさと失せねば喰い殺すぞーーー
「どうぞ、そうして下さい」
ーーー何だと?ーーー
青龍は迷いの無い声と表情に驚いた。
思わず青年を見つめ……目を奪われる。
(なんと美しい……)
青年は美しかった。
月の光のような銀髪にエメラルドのような瞳という見目はもとより、魂にも一切の穢れがない。
(成人している人間の魂が、ここまで美しく清らかとは珍しい。高位神官になっていてもおかしくない。何故、生贄などになっているのか)
青龍が考えている間も青年は話を続けた。
「偉大なる青龍様、どうか私をお召し上がり頂けないでしょうか?私が生贄にならねば、家族が殺されてしまうのです」
青龍は青年から事情と、今までの人生を聞いた。
青年とその家族は、逃げ帰った領主の奴隷だった。
元は他国の生まれだ。青年が子供の頃までは裕福な平民として暮らしていたが、生国が戦に負けてしまった。
家族ごと奴隷に落とされ、故郷から離れたこの国まで連れて来られ、あの領主に買われた。以来、虐げられて生きてきた。
「家族全員ではげまし合って生きてきました。いつか奴隷身分から解放され、故郷に帰る日を夢見ながら……」
数日前、領主は青年に言った。
「ご領主様は、「お前が生贄としての役目を全うすれば、家族を奴隷身分から解放し故郷に帰してやる」と仰いました。
……そして、全う出来なければ皆殺しにすると……。
ですから私は、貴方様に召し上がって頂かなければならないのです」
青年は縋るように青龍を見つめた。
ーーー貴様はそれで良いのか?生きたいとは思わないのか?ーーー
青年はうっとりとした眼差しで微笑んだ。
「構いません。それに、貴方様のような強く美しい龍に召し上がっていただけるなんて、我が身に余る幸福です」
ーーーほほう。その言葉、偽りなき本心であるなーーー
青龍は青年を気に入った。危ういほどに美しい魂を、青龍を敬い見惚れる眼差しを。
ーーーよかろう。我がその身を貰い受ける。喰いはしないがーーー
「青龍様?それはどういう……わぁっ?」
ーーー掴まっておれーーー
青龍は青年を優しく手のひらで包み、祠から飛び出た。
そして領主の館の前に飛来し、領主を呼び出して青年の家族を出せと命じたのだった。
ーーー乱暴なことはするな。丁重にこの場まで連れて来いーーー
「ひっ!ひいい!仰る通りにします!」
領主は青ざめ脂汗をかきながら、青年の家族を差し出した。
ーーーこれで全員か?ーーー
「は、はい。間違いありません」
青年が頷くと、青龍は家族も同じように手のひらで包み飛び上がった。
ついでに領主の館の屋根を尾でなぎはらい、宣言する。
ーーー我はこの地から去る。これは領主が邪な魂の持ち主ゆえであるーーー
「な、なにを言う!言いがかりだ!」
ーーー「生贄をやるから国を奪う企てに力をかせ」と、言ったのは貴様だ。「奴隷一匹では足り無いなら何匹でも捧げてやる。ああ、いやしい奴隷では不満か?ならば、平民でも下位貴族でもかまわんぞ」とも言っていたなーーー
周囲に動揺が走り、疑いと嫌悪の眼差しが領主に突き刺さった。
「国王陛下への反乱だ!」
「しかもアタシらを生贄にする気だったんだ!」
「今のご領主様ならやりかねないよ」
「ああ、奴隷どころか俺たち平民も下賤呼ばわりして虐げてるからな!」
「やたら武器を買い込んでいたのは反乱の為か」
「そうか。代替わりしてから増税続きで金を搾り取っているのも、戦もないのに傭兵を雇っているのも……」
「な……!う、嘘だ!貴様ら!あんな化け物を信じるのか!?」
ーーー領主の魂は腐り切っていて穢く臭い。魂が見えず臭いがわからない人間でもわかるほどにな。ゆえに、我はこの地を去る。
最後の情けだ!この地に住む者は聞け!
我が去ればこの地の恵みは尽きる!今すぐこの地を離れよ!ーーー
青龍は領地中に響き渡る声で叫び、飛び去った。
行き先は、青年たちの故郷だ。
◆◆◆◆◆
青龍は、わずか一刻足らずで青年たちの故郷にたどり着いた。
故郷は侵略者たちが支配していたが、青龍が少し脅してやるだけで去った。
彼らは龍の恐ろしさを良く知っており、二度と侵略しないと誓った。
ーーーこれで安心して暮らせるだろう。そなた、名はなんという?ーーー
青龍は、青年たちを故郷に帰したばかりか、侵略者たちまで退けた。
青年は深く感謝し、名を名乗った。
「私はガランサスと申します」
ーーーガランサス。良き名だなーーー
「もったいないお言葉です」
それは雪の残る早春に咲く花の名だ。青龍は、青年に相応しい名だと思った。
青年は頬を染めつつ問いかけた。
「偉大なる青龍様に感謝を捧げます。どうすれば、このご恩に報いれるでしょうか?」
ーーーそなたが我の伴侶になれば良いーーー
「え?」
ガランサスは驚き絶句した。
青龍はある山を指差す。この地域で最も高く大きな山だ。
ーーーガランサスよ。そなたが我の伴侶となるのなら、我はあの山の洞に留まると誓う。
我が留まれば、天地の恵みがもたらされる。そなたの家族も豊かに暮らせるだろうーーー
ガランサスは混乱した。自分がここまで気に入られた理由がわからない。
しかし青龍は真剣だ。条件もこれ以上無いほど良い。
それに。
「わ、私でよろしいのですか?」
ガランサスもまた青龍に惹かれていた。
一目で目を奪われ、一声で耳が蕩けた。喰われても悔いがないと、断言できるほどに。
今も心が叫んでいる。
この青き鱗を持つ龍が愛おしいと。
ーーーガランサスが良い。我が伴侶にしたいと思ったのはそなただけだーーー
ガランサスは目眩がするほど嬉しかった。
しかし同時におぞましい記憶がよみがえってしまう。あの領主をはじめとする何人もの男女に身を汚された、おぞましい記憶が。
「……ですが私は青龍様に相応しくありません。穢らしい事をたくさんして来た賤しい奴隷で……」
ーーーいいや。ガランサスよ。そなたは穢れてなどいない。無理にされたか、家族のためにせざるを得なかったのであろう?ああ、母や妹をかばうためだな?ーーー
「なぜ、それを」
青龍はとても優しい声で語りかけた。
ーーーそなたを見ていればわかることだ。我には、そなたの魂の美しさが見える。
ガランサスよ。そなたは健気で美しい。
家族とはいえそこまで他者に献身し、しかも魂を憎しみで腐らせずにいられる者などそうはいない。どうか、己を蔑まないでおくれーーー
ガランサスは涙を流していた。これまでの辛く長い日々、その全てが報われた気がした。
しかし青龍はその涙を見て勘違いをした。
ーーー……我の伴侶になるのが嫌なら断ってくれていい。我は龍、そなたは人間だ。恐ろしかろう。
そなたが望むのならば、我はあの洞から出な……ーーー
「嫌ではありません!私も青龍様をお慕いしております!伴侶になります!」
ガランサスは青龍の目を真っ直ぐに見つめて叫んだ。
こうして、ガランサスは俗世から離れて青龍の伴侶となった。
◆◆◆◆◆
ガランサスは家族に別れを告げ、青龍と共に山の洞で暮らし始めた。
穏やかで幸福で……時に淫蕩な暮らしであった。
ーーーまずは身体を作り変えらねばなーーー
月に一度、青龍は長い舌でガランサスの身体を舐めまわし、唾液を飲ませた。
ガランサスは未知の行為に身を震わせた。奴隷時代の一方的な陵辱とは何もかもが違う。
「んくっ……んんっ……はぁっ……」
青龍の身体の作りはもちろん、愛撫はまったく違った。あまりに優し過ぎるのだ。
ガランサスへの気づかいと愛おしさに、そして快楽に溺れるのはあっという間だった。
「ひぁあっ……!」
顔を、口の中を、首筋を、胴体を、手脚を、股関を、青龍の分厚く長い舌が舐めさする。
(きもちいい、きもちいい、こんなのしらない、しらな……!)
快楽が理性を蕩かしてしまう。
舌に絡みつかれ唾液を飲まされながら、ガランサスは悶えて喘ぐだけの生き物となる。
「はぁ……!せ、せいりゅ……さまぁ……!」
ーーーほう、逸物と尻のあわいを舐められるのがそんなに良いか。泣いて腰をふるほどに良いか。愛い奴め。もっと可愛がってやろうーーー
青龍はガランサスの身体が唾液でふやけ、逸物から小水のように精液が出るまで舐めまわした。
「あぁ……も、もう……しんで、しまっ……ひうう!」
青龍の舌が窄まりをずりずりと舐め、中に入っていく。
ガランサスは異物感と圧迫感と……陵辱された時には無かった強い快楽に悲鳴を上げた。
「あっ!ああぁっ!あついぃっ!ひろが……!ひあぁんっ!」
ガランサスは甘い声をあげ、青龍の舌を締め付けながら絶頂した。
青龍は、濡れそぼったガランサスの身体に長い首と大きな顔をこすり付けた。
ーーー可愛いガランサス、愛おしい我が伴侶よ。痛みや苦しみはないか?不快ではないか?ーーー
「あっ……はあんっ……せい、りゅ……っ!ひぁっ……ぁっ……!」
冷たく硬い鱗が肌を撫でる。舌とはまた違った感触。ガランサスは身体をくねらせた。
青龍はその様をじっと眺めている。
ーーー我が伴侶よ。ガランサスよ。いずれ我の全てを受け入れてくれるだろうか。壊れてしまわないだろうかーーー
ガランサスは気づく。
大きな青龍の目が、自分の淫らな姿に興奮しつつも、不安と心配に揺れていることに。
気づいてしまえば、愛おしくてたまらなかった。
「せいりゅ……さま……だいじょ……ぶ……」
ガランサスは片手で青龍の顔を、もう片手で舌を優しく撫でた。
「きもち……いぃ……です……こわいくらい……わたしの、いとおしいおかた……」
青龍は喜び、高く鳴いたのだった。
◆◆◆◆◆
年月を重ね、ガランサスの身体は変化していく。青龍を受け入れ孕めるように。
かつて薄く細かった身体には程良く肉がつき、寿命が伸びていった。
窄まりは性器となり、青龍が触れればしとどに濡れた。
閨での手管も磨いた。全身で青龍の長大な逸物をこすり、鈴口からあふれる濃い精液を飲んだ。
何もかも青龍にとって喜ばしい変化だったが、ガランサスは次第に悩むようになった。
(青龍様のお側にいるだけで身体が火照る。淫らな気持ちになってしまう)
青龍がガランサスを抱くのは月に一度、満月の夜だけである。
かつて青龍はこう言った。
『満月の夜は、我の力が最も高まる。そなたの身体を変えるのに一番効率が良い。それに月に一度だけならば、そなたの身体の負担が少なくすむ』
だからそれ以外の日は、ガランサスと青龍は穏やかに過ごしていた。
青龍は言葉通り、満月の日以外は欲を見せない。ガランサスだけが、青龍の側にいるだけで淫らな欲に濡れてしまう。それがいたたまれないが、耐えられない。
特に、青龍の鱗に触れると駄目だ。
(少し、こすれるだけでもう……)
青龍の鱗は大きくて硬くて分厚い。ガランサスの肌に触れると微かに痛く、冷たい独特の感触がする。
青龍の舌と共に、ガランサスにとって性感を煽る部分だ。
閨以外では、舌に触れる事ことはないが、鱗に触れることは多い。
ただ側で語り合う時、寄り添って眠る時、龍の背に乗って空を散歩する時などなどだ。共に暮らしていればいくらでもある。
また、青龍はガランサスとの触れ合いを愛している。ガランサスとて同じだ。特に理由もなく身のどこかを触れ合わせる事も多い。
その度にガランサスは淫らな欲に濡れて、その気のない青龍の純真さに我が身を恥じ続けているのだ。
(この間なんて、とうとう頂いた鱗で……)
鱗は古くなると剥がれ落ちる。ガランサスは青龍から許可を得て拾い集めていた。
愛おしい青龍の身体の一部だ。捨てるに忍びない。装飾品などにして、純粋な想いで愛でていたのだ。
(獣のようにあえいで、何度も何度も気をやって……)
そう、青龍が出かけたある日のことだ。
ガランサスは、抜け落ちた鱗を寝床にしき裸体を擦り付けるようにして自慰に耽ってしまったのだ。
背徳感が快楽をかき立て、何度も何度も絶頂してして気絶するまで。
(浅ましい!ああ、私はいつかあのお方を襲ってしまうかもしれない)
ガランサスは真剣に悩み、自己嫌悪した。
結果、さりげなく青龍から身を離すようになってしまった。
(やはり私など青龍様に相応しくない……)
こっそりと涙をこぼしながら。
◆◆◆◆◆
数日後、青龍はガランサスの変化に気づいた。
ガランサスは切ない表情で己と距離を置き、身を縮こませている。
青龍はガランサスの魂の美しさを見ることはできる。言葉が嘘か真かもわかる。
だが、心の内までは見れないしわからない。
(もしや、愛おしい我が伴侶に嫌われてしまったか?
あるいは、人間の身から離れていく事が辛くなったか?)
どちらもあり得る。
青龍は龍、ガランサスは人間。あまりにも違う生き物なのだから。
青龍は悲しみ悩んだ。無理に従わせるような事はしたくない。ガランサスは今まで青龍を慈しみ愛してくれた。青龍を幸せにしてくれたのだ。
ガランサスにも幸せになって欲しい。たとえ側に居れなくなるとしても。
(今ならまだ人間に戻せる。ああ、そうだ。それがいい。ガランサスの血族に迎えに来させよう)
青龍は空を飛び、この地の王が住まう城の前に飛来した。
城とその一帯は大騒ぎとなり、すぐに老人が飛び出てきた。
「偉大なる青龍様、お一人でいらっしゃるとはお珍しい。いかがなさいましたか?」
礼儀正しく問う老人は、先代の国王である。またガランサスの妹の孫であり、昔からガランサスに必要な物や青龍の好物を洞に持って来てくれるので、青龍にとって馴染んだ相手でもある。
ーーーうむ。お主にならば任せられる。一大事である故、よく聞くがよいーーー
青龍は事情を話した。
最初は緊張して話を聞いていた老人は、だんだんと呆れた顔になった。
「……恐れながら、お二人がすれ違っているように思われます」
ーーーそうであろうか。我が伴侶は慎ましいゆえ、嫌でも嫌と言えないのでは……ーーー
「ガランサス様が貴方様を嫌うなど、天地が逆さになっても有り得ません。まずはお二人で話し合って下さい」
ーーーいや、しかしーーー
「離れるのは話してからでも出来ます。こじれる前に話し合ってください。以上です。それでは御前を失礼します」
老人はばっさりと言い切り、青龍に早く帰るよう促し、さっさと城にもどったのだった。
青龍は、渋々言われた通りにした。
◆◆◆◆◆
ーーーいま帰ったーーー
「青龍様!」
洞に帰ると、ガランサスが泣いて駆け寄って来た。
「青龍様!帰ってきて下さったのですね!もう戻られないかと思いました!」
ガランサスは青龍の指にすがりついて泣いた。青龍はその姿に、初めて何も言わず離れたことに気づいた。
ーーーガランサス、済まなかった。そなたを不安にさせてしまった。我が愛しの伴侶よーーー
青龍は顔をこすりつけてガランサスを慰めた。久しぶりの触れ合いに心が満たされる。
(やはりガランサスから離れるなど出来ない)
ガランサスの心もまた、安堵と青龍の鱗に触れたことによる陶酔でほぐれた。
(青龍様が愛おしい。離れている間、どれほど恐ろしかったか……)
そうして、本音が口からこぼれた。
「私が浅ましいせいで、とうとう貴方様に嫌われたかと思いました」
ーーー……なるほど。どうやらすれ違っていたようだ。我がそなたを嫌うなどあり得ぬというのにーーー
青龍はガランサスに「何故そう思ったか?」「自分に近寄らなくなった理由もそれか?」とたずねた。
ガランサスは観念して全てを打ち明けた。
「……こんな浅ましい身体は、貴方様に相応しくありません」
ーーー何を言うか!我のために熟れた身体の何が浅ましいと言うのか!ーーー
青龍は心から怒鳴った。ガランサスは驚いて固まった。
ーーーああ、ガランサス。愛おしく純粋な我が伴侶よ。名に相応しい清らかで美しい魂の持ち主よ。そなたの身も心もこれ以上なく尊く素晴らしい。どうかもう、己を卑下してくれるなーーー
青龍は愛を告げながら舌を伸ばした。
ーーー我とて同じだ。ガランサスと触れ合いたい、まぐわいたいと思わぬ時はないのだーーー
◆◆◆◆◆
折しも今日は満月だった。
青龍は、心ゆくまでガランサスを愛することにした。
ガランサスは分厚く長い舌で衣服をはぎ取られ、肌を舐められ絡み付けられた。
ーーーいつもより深く触れる。良いな?ーーー
ガランサスは、青龍の舌の拘束にうっとりしつつ頷いた。
「はい……私は貴方様のものですから……」
ーーー物ではなく伴侶だーーー
青龍はたしなめるように爪先で乳首をこすってやった。
「ひぃんっ!あっ!あぁっ!」
ーーーそなたは我が伴侶だ。我の唯一だ。いい加減覚えよーーー
「は、はいっ!はんりょです!……んぶっ!」
青龍はガランサスの乳首をいじめつつ、舌を口内に入れた。小さくあたたかい口はすぐいっぱいになり、舌先は喉まで届く。
さらに手で肌を撫でてやる。青龍の鱗の感触がわかるように。
「んっ……ぉ……っ!……っ!」
ガランサスはあっという間に絶頂した。大して触っていない逸物から精液がこぼれる。
ーーーうむ。良い香りだ。一月ぶりの甘露をいただくぞーーー
青龍はガランサスに絡めた舌を解き、手のひらでつつむ。そして再び舌を伸ばして逸物と精液を舐めてやった。
「ぁっ……!……ひぅ……!」
最早ガランサスは、快楽に喘ぐ以外なにも出来なくなっていた。
青龍と触れ合っている場所が気持ちいい。下腹が熱くて切ない。窄まりはだらだらと愛液を垂らしてうずく。
「んっ……はぁ……あぁ……ふぁっ……」
淫らに身をよじる伴侶の姿を、青龍は愛おしく見つめた。
ーーーガランサス、そなたはどこまでも我を夢中にさせるーーー
「ああぁっ!」
青龍の舌が窄まりに入る。ガランサスの身体が絶頂でしなるが、青龍の愛撫は止まらない。
「ひああっ!ふかっ……!ふかいいぃっ!」
青龍の舌が肉壁をほじってこねる。舌はグネグネと動き、唾液と愛液が混じってボタボタとたれ落ちた。
いつもより激しく深い愛撫。ガランサスは過ぎた快楽に狂いそうになるが、同時に多幸感に浸っていた。
ーーーガランサス、そなただけだ。我が愛するのも、伴侶にするのも、まぐわうのも、子を成すのも。
もう離れるものか。離すものか。そなたが我が想いを疑わなくなるまで、そして我が子を孕むまでまぐわってやるーーー
「はひぃっ!わたしも!あいひてますうぅ!……あうぅっ……!こども、う、うみた……いいっ!ひああぁっ!」
ーーーうむ。嬉しいぞ。我が伴侶よ……これほど熟れていれば充分だーーー
「ひううっ!」
突然、青龍の舌が引き抜かれた。その衝撃にガランサスはまた絶頂し、身体を震わせる。
だがすぐにそれ所ではなくなる。青龍の手に優しく掴まれ、いきり勃った龍の逸物の上まで運ばれたのだから。
「あ……」
ガランサスは唾を飲み、期待に身体を震わせた。
青龍の逸物は人間と全く違う。先端は尖っており、細かくて柔らかな鱗に覆われているのだ。
ーーー今宵は最後までまぐわうーーー
今まで逸物の挿入まではしなかった。ガランサスは唐突に自覚した。
青龍から「まだ身体が出来ていないから」と説明されてはいたが、いつまでも挿入されないことにも不安を感じていたのだ。
けれど、そんな日々ももう終わりだ。
ガランサスは喜びの涙を流しながら、自ら脚を開いた。
「うれしい……わたしは、しあわせものです……だいてください……はらませてくださ……ぃっ!」
先端が窄まりに触れる。
ぬるんと、柔らかいが冷たい鱗におおわれた逸物が入ってくる。
「……ひぁっ!……いぎっ!……!」
とうとう逸物を挿入された。肉壁をこするのは、鱗でおおわれた青龍の逸物だ。
その事実と感触を意識した瞬間、ガランサスは青龍の逸物を肉壁で食い締めながら絶頂した。
「~~~っ!~~~っ!」
ーーーおおっ!締まる!柔らかなぬかるみが我を包んで……!ああ、どれだけこの日を待ったことか!ーーー
青龍はゆっくりとガランサスの身体を動かし、ガランサスが受け入れられる限界まで逸物を挿入した。
「っ!ぁ……っ!ぐぅ……!……っ!」
ガランサスの腹が膨れていく。
ーーー素晴らしい。ここまで受け入れてくれるとは。我が伴侶よ。そなたは本当に得難い存在だーーー
ガランサスは快楽に痙攣しながら青龍を見つめ、腹を撫でた。
圧迫感と快感が強過ぎて上手く声が出せない分、少しでも自分が幸福であることが伝われば良いと願いながら。
ーーーああ、我も幸福だ。……精を注ぐ。少しでいい、受け止めてくれーーー
「は……ぃ……っ!~~~っ!」
粘っこい飛沫がガランサスの腹の中で弾けた。ガランサスは深い悦びと共に気絶したのだった。
◆◆◆◆◆
あれから何夜過ぎただろうか?
青龍とガランサスはまぐわい続けていた。
「はぁん……青龍様ぁ……」
ガランサスは龍の唾液と精液にまみれ、蕩けた顔で膨らんだ腹を撫でている。
膨らんでいるのは胸と尻も同じだ。さらに、肌のあちこちに鱗が浮いている。
龍の子を孕んだことで、龍に近づいたのだ。
ーーー元気な子だ。よく身に宿してくれた。ガランサス、愛している。我が唯一の伴侶よーーー
「はい……私も……」
かつて人間であった青年はうっとりと笑い、己の伴侶と鱗をこすり合わせて善がり声を上げたのだった。
おしまい
◆◆◆◆◆
お読みいただきありがとうございます!お気に入り登録、感想など反応頂ければ幸いです。
辰年記念に書きました。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
今回のMVP:妹の孫
見上げるほど大きいその龍を、人間は青龍と名付け敬った
龍とは、力そのものに近い生き物だ。存在しているだけで、天地に恵みをもたらす。
人間の願いを叶えたりはしないが脅かすこともない。生贄や供物も求めない。むしろ、欲にまみれた人間との関わりを避ける場合が多い。
中でも、この地に住む青龍は力が強かった。また、人間に煩わされることを最も不快としていた。
ゆえに、この地の人間は祠を訪れることはなかった。
だがしかし、人間とは強欲で忘れやすい生き物である。
「生贄を捧げれば、もっと願いを叶えてくれる」
この地を治める領主はそう思い込んでしまった。
領主は、一人の青年を絹と宝石で飾り立てて青龍の祠に連れて来た。
青龍が、領主の愚かさと腐った魂の臭いに怒るとも知らずに。
ーーー失せよ人間ども!生贄なぞ要らぬ!願いも叶えぬ!ーーー
青龍の恫喝が、洞窟を利用した祠を震わせる。
領主たちは恐れおののき逃げ帰った。
ただ一人、生贄の青年だけを残して。
青龍はギロリと青年を睨みつける。
ーーー耳が聞こえぬのか?失せよ。さっさと失せねば喰い殺すぞーーー
「どうぞ、そうして下さい」
ーーー何だと?ーーー
青龍は迷いの無い声と表情に驚いた。
思わず青年を見つめ……目を奪われる。
(なんと美しい……)
青年は美しかった。
月の光のような銀髪にエメラルドのような瞳という見目はもとより、魂にも一切の穢れがない。
(成人している人間の魂が、ここまで美しく清らかとは珍しい。高位神官になっていてもおかしくない。何故、生贄などになっているのか)
青龍が考えている間も青年は話を続けた。
「偉大なる青龍様、どうか私をお召し上がり頂けないでしょうか?私が生贄にならねば、家族が殺されてしまうのです」
青龍は青年から事情と、今までの人生を聞いた。
青年とその家族は、逃げ帰った領主の奴隷だった。
元は他国の生まれだ。青年が子供の頃までは裕福な平民として暮らしていたが、生国が戦に負けてしまった。
家族ごと奴隷に落とされ、故郷から離れたこの国まで連れて来られ、あの領主に買われた。以来、虐げられて生きてきた。
「家族全員ではげまし合って生きてきました。いつか奴隷身分から解放され、故郷に帰る日を夢見ながら……」
数日前、領主は青年に言った。
「ご領主様は、「お前が生贄としての役目を全うすれば、家族を奴隷身分から解放し故郷に帰してやる」と仰いました。
……そして、全う出来なければ皆殺しにすると……。
ですから私は、貴方様に召し上がって頂かなければならないのです」
青年は縋るように青龍を見つめた。
ーーー貴様はそれで良いのか?生きたいとは思わないのか?ーーー
青年はうっとりとした眼差しで微笑んだ。
「構いません。それに、貴方様のような強く美しい龍に召し上がっていただけるなんて、我が身に余る幸福です」
ーーーほほう。その言葉、偽りなき本心であるなーーー
青龍は青年を気に入った。危ういほどに美しい魂を、青龍を敬い見惚れる眼差しを。
ーーーよかろう。我がその身を貰い受ける。喰いはしないがーーー
「青龍様?それはどういう……わぁっ?」
ーーー掴まっておれーーー
青龍は青年を優しく手のひらで包み、祠から飛び出た。
そして領主の館の前に飛来し、領主を呼び出して青年の家族を出せと命じたのだった。
ーーー乱暴なことはするな。丁重にこの場まで連れて来いーーー
「ひっ!ひいい!仰る通りにします!」
領主は青ざめ脂汗をかきながら、青年の家族を差し出した。
ーーーこれで全員か?ーーー
「は、はい。間違いありません」
青年が頷くと、青龍は家族も同じように手のひらで包み飛び上がった。
ついでに領主の館の屋根を尾でなぎはらい、宣言する。
ーーー我はこの地から去る。これは領主が邪な魂の持ち主ゆえであるーーー
「な、なにを言う!言いがかりだ!」
ーーー「生贄をやるから国を奪う企てに力をかせ」と、言ったのは貴様だ。「奴隷一匹では足り無いなら何匹でも捧げてやる。ああ、いやしい奴隷では不満か?ならば、平民でも下位貴族でもかまわんぞ」とも言っていたなーーー
周囲に動揺が走り、疑いと嫌悪の眼差しが領主に突き刺さった。
「国王陛下への反乱だ!」
「しかもアタシらを生贄にする気だったんだ!」
「今のご領主様ならやりかねないよ」
「ああ、奴隷どころか俺たち平民も下賤呼ばわりして虐げてるからな!」
「やたら武器を買い込んでいたのは反乱の為か」
「そうか。代替わりしてから増税続きで金を搾り取っているのも、戦もないのに傭兵を雇っているのも……」
「な……!う、嘘だ!貴様ら!あんな化け物を信じるのか!?」
ーーー領主の魂は腐り切っていて穢く臭い。魂が見えず臭いがわからない人間でもわかるほどにな。ゆえに、我はこの地を去る。
最後の情けだ!この地に住む者は聞け!
我が去ればこの地の恵みは尽きる!今すぐこの地を離れよ!ーーー
青龍は領地中に響き渡る声で叫び、飛び去った。
行き先は、青年たちの故郷だ。
◆◆◆◆◆
青龍は、わずか一刻足らずで青年たちの故郷にたどり着いた。
故郷は侵略者たちが支配していたが、青龍が少し脅してやるだけで去った。
彼らは龍の恐ろしさを良く知っており、二度と侵略しないと誓った。
ーーーこれで安心して暮らせるだろう。そなた、名はなんという?ーーー
青龍は、青年たちを故郷に帰したばかりか、侵略者たちまで退けた。
青年は深く感謝し、名を名乗った。
「私はガランサスと申します」
ーーーガランサス。良き名だなーーー
「もったいないお言葉です」
それは雪の残る早春に咲く花の名だ。青龍は、青年に相応しい名だと思った。
青年は頬を染めつつ問いかけた。
「偉大なる青龍様に感謝を捧げます。どうすれば、このご恩に報いれるでしょうか?」
ーーーそなたが我の伴侶になれば良いーーー
「え?」
ガランサスは驚き絶句した。
青龍はある山を指差す。この地域で最も高く大きな山だ。
ーーーガランサスよ。そなたが我の伴侶となるのなら、我はあの山の洞に留まると誓う。
我が留まれば、天地の恵みがもたらされる。そなたの家族も豊かに暮らせるだろうーーー
ガランサスは混乱した。自分がここまで気に入られた理由がわからない。
しかし青龍は真剣だ。条件もこれ以上無いほど良い。
それに。
「わ、私でよろしいのですか?」
ガランサスもまた青龍に惹かれていた。
一目で目を奪われ、一声で耳が蕩けた。喰われても悔いがないと、断言できるほどに。
今も心が叫んでいる。
この青き鱗を持つ龍が愛おしいと。
ーーーガランサスが良い。我が伴侶にしたいと思ったのはそなただけだーーー
ガランサスは目眩がするほど嬉しかった。
しかし同時におぞましい記憶がよみがえってしまう。あの領主をはじめとする何人もの男女に身を汚された、おぞましい記憶が。
「……ですが私は青龍様に相応しくありません。穢らしい事をたくさんして来た賤しい奴隷で……」
ーーーいいや。ガランサスよ。そなたは穢れてなどいない。無理にされたか、家族のためにせざるを得なかったのであろう?ああ、母や妹をかばうためだな?ーーー
「なぜ、それを」
青龍はとても優しい声で語りかけた。
ーーーそなたを見ていればわかることだ。我には、そなたの魂の美しさが見える。
ガランサスよ。そなたは健気で美しい。
家族とはいえそこまで他者に献身し、しかも魂を憎しみで腐らせずにいられる者などそうはいない。どうか、己を蔑まないでおくれーーー
ガランサスは涙を流していた。これまでの辛く長い日々、その全てが報われた気がした。
しかし青龍はその涙を見て勘違いをした。
ーーー……我の伴侶になるのが嫌なら断ってくれていい。我は龍、そなたは人間だ。恐ろしかろう。
そなたが望むのならば、我はあの洞から出な……ーーー
「嫌ではありません!私も青龍様をお慕いしております!伴侶になります!」
ガランサスは青龍の目を真っ直ぐに見つめて叫んだ。
こうして、ガランサスは俗世から離れて青龍の伴侶となった。
◆◆◆◆◆
ガランサスは家族に別れを告げ、青龍と共に山の洞で暮らし始めた。
穏やかで幸福で……時に淫蕩な暮らしであった。
ーーーまずは身体を作り変えらねばなーーー
月に一度、青龍は長い舌でガランサスの身体を舐めまわし、唾液を飲ませた。
ガランサスは未知の行為に身を震わせた。奴隷時代の一方的な陵辱とは何もかもが違う。
「んくっ……んんっ……はぁっ……」
青龍の身体の作りはもちろん、愛撫はまったく違った。あまりに優し過ぎるのだ。
ガランサスへの気づかいと愛おしさに、そして快楽に溺れるのはあっという間だった。
「ひぁあっ……!」
顔を、口の中を、首筋を、胴体を、手脚を、股関を、青龍の分厚く長い舌が舐めさする。
(きもちいい、きもちいい、こんなのしらない、しらな……!)
快楽が理性を蕩かしてしまう。
舌に絡みつかれ唾液を飲まされながら、ガランサスは悶えて喘ぐだけの生き物となる。
「はぁ……!せ、せいりゅ……さまぁ……!」
ーーーほう、逸物と尻のあわいを舐められるのがそんなに良いか。泣いて腰をふるほどに良いか。愛い奴め。もっと可愛がってやろうーーー
青龍はガランサスの身体が唾液でふやけ、逸物から小水のように精液が出るまで舐めまわした。
「あぁ……も、もう……しんで、しまっ……ひうう!」
青龍の舌が窄まりをずりずりと舐め、中に入っていく。
ガランサスは異物感と圧迫感と……陵辱された時には無かった強い快楽に悲鳴を上げた。
「あっ!ああぁっ!あついぃっ!ひろが……!ひあぁんっ!」
ガランサスは甘い声をあげ、青龍の舌を締め付けながら絶頂した。
青龍は、濡れそぼったガランサスの身体に長い首と大きな顔をこすり付けた。
ーーー可愛いガランサス、愛おしい我が伴侶よ。痛みや苦しみはないか?不快ではないか?ーーー
「あっ……はあんっ……せい、りゅ……っ!ひぁっ……ぁっ……!」
冷たく硬い鱗が肌を撫でる。舌とはまた違った感触。ガランサスは身体をくねらせた。
青龍はその様をじっと眺めている。
ーーー我が伴侶よ。ガランサスよ。いずれ我の全てを受け入れてくれるだろうか。壊れてしまわないだろうかーーー
ガランサスは気づく。
大きな青龍の目が、自分の淫らな姿に興奮しつつも、不安と心配に揺れていることに。
気づいてしまえば、愛おしくてたまらなかった。
「せいりゅ……さま……だいじょ……ぶ……」
ガランサスは片手で青龍の顔を、もう片手で舌を優しく撫でた。
「きもち……いぃ……です……こわいくらい……わたしの、いとおしいおかた……」
青龍は喜び、高く鳴いたのだった。
◆◆◆◆◆
年月を重ね、ガランサスの身体は変化していく。青龍を受け入れ孕めるように。
かつて薄く細かった身体には程良く肉がつき、寿命が伸びていった。
窄まりは性器となり、青龍が触れればしとどに濡れた。
閨での手管も磨いた。全身で青龍の長大な逸物をこすり、鈴口からあふれる濃い精液を飲んだ。
何もかも青龍にとって喜ばしい変化だったが、ガランサスは次第に悩むようになった。
(青龍様のお側にいるだけで身体が火照る。淫らな気持ちになってしまう)
青龍がガランサスを抱くのは月に一度、満月の夜だけである。
かつて青龍はこう言った。
『満月の夜は、我の力が最も高まる。そなたの身体を変えるのに一番効率が良い。それに月に一度だけならば、そなたの身体の負担が少なくすむ』
だからそれ以外の日は、ガランサスと青龍は穏やかに過ごしていた。
青龍は言葉通り、満月の日以外は欲を見せない。ガランサスだけが、青龍の側にいるだけで淫らな欲に濡れてしまう。それがいたたまれないが、耐えられない。
特に、青龍の鱗に触れると駄目だ。
(少し、こすれるだけでもう……)
青龍の鱗は大きくて硬くて分厚い。ガランサスの肌に触れると微かに痛く、冷たい独特の感触がする。
青龍の舌と共に、ガランサスにとって性感を煽る部分だ。
閨以外では、舌に触れる事ことはないが、鱗に触れることは多い。
ただ側で語り合う時、寄り添って眠る時、龍の背に乗って空を散歩する時などなどだ。共に暮らしていればいくらでもある。
また、青龍はガランサスとの触れ合いを愛している。ガランサスとて同じだ。特に理由もなく身のどこかを触れ合わせる事も多い。
その度にガランサスは淫らな欲に濡れて、その気のない青龍の純真さに我が身を恥じ続けているのだ。
(この間なんて、とうとう頂いた鱗で……)
鱗は古くなると剥がれ落ちる。ガランサスは青龍から許可を得て拾い集めていた。
愛おしい青龍の身体の一部だ。捨てるに忍びない。装飾品などにして、純粋な想いで愛でていたのだ。
(獣のようにあえいで、何度も何度も気をやって……)
そう、青龍が出かけたある日のことだ。
ガランサスは、抜け落ちた鱗を寝床にしき裸体を擦り付けるようにして自慰に耽ってしまったのだ。
背徳感が快楽をかき立て、何度も何度も絶頂してして気絶するまで。
(浅ましい!ああ、私はいつかあのお方を襲ってしまうかもしれない)
ガランサスは真剣に悩み、自己嫌悪した。
結果、さりげなく青龍から身を離すようになってしまった。
(やはり私など青龍様に相応しくない……)
こっそりと涙をこぼしながら。
◆◆◆◆◆
数日後、青龍はガランサスの変化に気づいた。
ガランサスは切ない表情で己と距離を置き、身を縮こませている。
青龍はガランサスの魂の美しさを見ることはできる。言葉が嘘か真かもわかる。
だが、心の内までは見れないしわからない。
(もしや、愛おしい我が伴侶に嫌われてしまったか?
あるいは、人間の身から離れていく事が辛くなったか?)
どちらもあり得る。
青龍は龍、ガランサスは人間。あまりにも違う生き物なのだから。
青龍は悲しみ悩んだ。無理に従わせるような事はしたくない。ガランサスは今まで青龍を慈しみ愛してくれた。青龍を幸せにしてくれたのだ。
ガランサスにも幸せになって欲しい。たとえ側に居れなくなるとしても。
(今ならまだ人間に戻せる。ああ、そうだ。それがいい。ガランサスの血族に迎えに来させよう)
青龍は空を飛び、この地の王が住まう城の前に飛来した。
城とその一帯は大騒ぎとなり、すぐに老人が飛び出てきた。
「偉大なる青龍様、お一人でいらっしゃるとはお珍しい。いかがなさいましたか?」
礼儀正しく問う老人は、先代の国王である。またガランサスの妹の孫であり、昔からガランサスに必要な物や青龍の好物を洞に持って来てくれるので、青龍にとって馴染んだ相手でもある。
ーーーうむ。お主にならば任せられる。一大事である故、よく聞くがよいーーー
青龍は事情を話した。
最初は緊張して話を聞いていた老人は、だんだんと呆れた顔になった。
「……恐れながら、お二人がすれ違っているように思われます」
ーーーそうであろうか。我が伴侶は慎ましいゆえ、嫌でも嫌と言えないのでは……ーーー
「ガランサス様が貴方様を嫌うなど、天地が逆さになっても有り得ません。まずはお二人で話し合って下さい」
ーーーいや、しかしーーー
「離れるのは話してからでも出来ます。こじれる前に話し合ってください。以上です。それでは御前を失礼します」
老人はばっさりと言い切り、青龍に早く帰るよう促し、さっさと城にもどったのだった。
青龍は、渋々言われた通りにした。
◆◆◆◆◆
ーーーいま帰ったーーー
「青龍様!」
洞に帰ると、ガランサスが泣いて駆け寄って来た。
「青龍様!帰ってきて下さったのですね!もう戻られないかと思いました!」
ガランサスは青龍の指にすがりついて泣いた。青龍はその姿に、初めて何も言わず離れたことに気づいた。
ーーーガランサス、済まなかった。そなたを不安にさせてしまった。我が愛しの伴侶よーーー
青龍は顔をこすりつけてガランサスを慰めた。久しぶりの触れ合いに心が満たされる。
(やはりガランサスから離れるなど出来ない)
ガランサスの心もまた、安堵と青龍の鱗に触れたことによる陶酔でほぐれた。
(青龍様が愛おしい。離れている間、どれほど恐ろしかったか……)
そうして、本音が口からこぼれた。
「私が浅ましいせいで、とうとう貴方様に嫌われたかと思いました」
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青龍はガランサスに「何故そう思ったか?」「自分に近寄らなくなった理由もそれか?」とたずねた。
ガランサスは観念して全てを打ち明けた。
「……こんな浅ましい身体は、貴方様に相応しくありません」
ーーー何を言うか!我のために熟れた身体の何が浅ましいと言うのか!ーーー
青龍は心から怒鳴った。ガランサスは驚いて固まった。
ーーーああ、ガランサス。愛おしく純粋な我が伴侶よ。名に相応しい清らかで美しい魂の持ち主よ。そなたの身も心もこれ以上なく尊く素晴らしい。どうかもう、己を卑下してくれるなーーー
青龍は愛を告げながら舌を伸ばした。
ーーー我とて同じだ。ガランサスと触れ合いたい、まぐわいたいと思わぬ時はないのだーーー
◆◆◆◆◆
折しも今日は満月だった。
青龍は、心ゆくまでガランサスを愛することにした。
ガランサスは分厚く長い舌で衣服をはぎ取られ、肌を舐められ絡み付けられた。
ーーーいつもより深く触れる。良いな?ーーー
ガランサスは、青龍の舌の拘束にうっとりしつつ頷いた。
「はい……私は貴方様のものですから……」
ーーー物ではなく伴侶だーーー
青龍はたしなめるように爪先で乳首をこすってやった。
「ひぃんっ!あっ!あぁっ!」
ーーーそなたは我が伴侶だ。我の唯一だ。いい加減覚えよーーー
「は、はいっ!はんりょです!……んぶっ!」
青龍はガランサスの乳首をいじめつつ、舌を口内に入れた。小さくあたたかい口はすぐいっぱいになり、舌先は喉まで届く。
さらに手で肌を撫でてやる。青龍の鱗の感触がわかるように。
「んっ……ぉ……っ!……っ!」
ガランサスはあっという間に絶頂した。大して触っていない逸物から精液がこぼれる。
ーーーうむ。良い香りだ。一月ぶりの甘露をいただくぞーーー
青龍はガランサスに絡めた舌を解き、手のひらでつつむ。そして再び舌を伸ばして逸物と精液を舐めてやった。
「ぁっ……!……ひぅ……!」
最早ガランサスは、快楽に喘ぐ以外なにも出来なくなっていた。
青龍と触れ合っている場所が気持ちいい。下腹が熱くて切ない。窄まりはだらだらと愛液を垂らしてうずく。
「んっ……はぁ……あぁ……ふぁっ……」
淫らに身をよじる伴侶の姿を、青龍は愛おしく見つめた。
ーーーガランサス、そなたはどこまでも我を夢中にさせるーーー
「ああぁっ!」
青龍の舌が窄まりに入る。ガランサスの身体が絶頂でしなるが、青龍の愛撫は止まらない。
「ひああっ!ふかっ……!ふかいいぃっ!」
青龍の舌が肉壁をほじってこねる。舌はグネグネと動き、唾液と愛液が混じってボタボタとたれ落ちた。
いつもより激しく深い愛撫。ガランサスは過ぎた快楽に狂いそうになるが、同時に多幸感に浸っていた。
ーーーガランサス、そなただけだ。我が愛するのも、伴侶にするのも、まぐわうのも、子を成すのも。
もう離れるものか。離すものか。そなたが我が想いを疑わなくなるまで、そして我が子を孕むまでまぐわってやるーーー
「はひぃっ!わたしも!あいひてますうぅ!……あうぅっ……!こども、う、うみた……いいっ!ひああぁっ!」
ーーーうむ。嬉しいぞ。我が伴侶よ……これほど熟れていれば充分だーーー
「ひううっ!」
突然、青龍の舌が引き抜かれた。その衝撃にガランサスはまた絶頂し、身体を震わせる。
だがすぐにそれ所ではなくなる。青龍の手に優しく掴まれ、いきり勃った龍の逸物の上まで運ばれたのだから。
「あ……」
ガランサスは唾を飲み、期待に身体を震わせた。
青龍の逸物は人間と全く違う。先端は尖っており、細かくて柔らかな鱗に覆われているのだ。
ーーー今宵は最後までまぐわうーーー
今まで逸物の挿入まではしなかった。ガランサスは唐突に自覚した。
青龍から「まだ身体が出来ていないから」と説明されてはいたが、いつまでも挿入されないことにも不安を感じていたのだ。
けれど、そんな日々ももう終わりだ。
ガランサスは喜びの涙を流しながら、自ら脚を開いた。
「うれしい……わたしは、しあわせものです……だいてください……はらませてくださ……ぃっ!」
先端が窄まりに触れる。
ぬるんと、柔らかいが冷たい鱗におおわれた逸物が入ってくる。
「……ひぁっ!……いぎっ!……!」
とうとう逸物を挿入された。肉壁をこするのは、鱗でおおわれた青龍の逸物だ。
その事実と感触を意識した瞬間、ガランサスは青龍の逸物を肉壁で食い締めながら絶頂した。
「~~~っ!~~~っ!」
ーーーおおっ!締まる!柔らかなぬかるみが我を包んで……!ああ、どれだけこの日を待ったことか!ーーー
青龍はゆっくりとガランサスの身体を動かし、ガランサスが受け入れられる限界まで逸物を挿入した。
「っ!ぁ……っ!ぐぅ……!……っ!」
ガランサスの腹が膨れていく。
ーーー素晴らしい。ここまで受け入れてくれるとは。我が伴侶よ。そなたは本当に得難い存在だーーー
ガランサスは快楽に痙攣しながら青龍を見つめ、腹を撫でた。
圧迫感と快感が強過ぎて上手く声が出せない分、少しでも自分が幸福であることが伝われば良いと願いながら。
ーーーああ、我も幸福だ。……精を注ぐ。少しでいい、受け止めてくれーーー
「は……ぃ……っ!~~~っ!」
粘っこい飛沫がガランサスの腹の中で弾けた。ガランサスは深い悦びと共に気絶したのだった。
◆◆◆◆◆
あれから何夜過ぎただろうか?
青龍とガランサスはまぐわい続けていた。
「はぁん……青龍様ぁ……」
ガランサスは龍の唾液と精液にまみれ、蕩けた顔で膨らんだ腹を撫でている。
膨らんでいるのは胸と尻も同じだ。さらに、肌のあちこちに鱗が浮いている。
龍の子を孕んだことで、龍に近づいたのだ。
ーーー元気な子だ。よく身に宿してくれた。ガランサス、愛している。我が唯一の伴侶よーーー
「はい……私も……」
かつて人間であった青年はうっとりと笑い、己の伴侶と鱗をこすり合わせて善がり声を上げたのだった。
おしまい
◆◆◆◆◆
お読みいただきありがとうございます!お気に入り登録、感想など反応頂ければ幸いです。
辰年記念に書きました。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
今回のMVP:妹の孫
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