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地縛霊は男子大学生と穏やかに暮らす【1】
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ジバと天治。出会って一カ月近く経つ頃には、さらに気安い仲になっていた。
天治はリビングに置いていたテレビを寝室に移動した。食事もここでするようになる。
しかも、晩飯時はジバ用の飲み物を用意して、ローテーブルの向かいに置くのだ。
(なんかムズムズするな……)
『俺は地縛霊だ。飲み物も飯も要らない』
「一緒に食べてる雰囲気を出したいんだよ。嫌?」
『ぐっ……好きにしろ』
寂しそうな顔をされては嫌とは言えない。
「ジバさんありがとう!いただきまーす!」
天治の晩御飯はいつもと少し違った。いつも通りのコンビニの弁当に、自分で焼いたらしき目玉焼きがついている。ただし目玉焼きは、ぐちゃぐちゃに潰れて焦げている。よく見ると殻も入っているらしい。
「……ジバさん、そんなに見ないでよ」
『お前、料理下手だよな。掃除と洗濯はあれだけ手際がいいのにな』
「うるさいな!家庭の味はコンビニとスーパーで間に合ってます!」
天治は弁当を食べ始めた。いい食いっぷりだが、食べ方も所作も綺麗だ。こういう所もモテるゆえんだろう。
『それでいいと思うぜ。誰にでも得手不得手はある』
「ジバさんはどうだった?料理できたの?」
(いい加減、話しとくか)
ジバは生前の記憶がない事を言おうとした。なんとなく言いそびれただけなのだしと。
だが、脳裏にある光景が浮かぶ。
(なんだこれは……)
半熟に焼いたベーコンエッグ、冷凍ほうれん草のバター炒め、味付け済みの肉を適当に焼いたもの、キャベツとジャガイモとソーセージの炒め物、粒状出汁を使った味噌汁、レンチン豚しゃぶサラダ、卵と高菜のチャーハン、モヤシとハムを入れた袋麺などなど。
料理と、料理を作って食べる自分の手元、キッチンとリビングの光景がありありと浮かぶ。
(こんな事は、死んでから初めてだ)
ジバは動揺し、黙り込む。
「ジバさん、大丈夫?」
目の前に天治の顔。反射的に身を引く。
「どうしたの?気分悪い?」
てっきり誘惑の一環で近づいたのかと思ったが、純粋に心配そうな目で見られて拍子抜けする。動揺もおさまった。
『……いや、大丈夫だ。色々思い出していた。……俺も、基本はスーパーの惣菜か弁当か冷食だった。余裕がある時は一品作ってたな』
「へえ?例えば?」
先ほど思い出した料理を言うと、天治は大袈裟なほど驚いた。
「ジバさん凄い!ベーコンエッグ焼けるんだ!」
『いや、ベーコンエッグくらいお前も出来るんじゃないか?練習してみろよ』
「やってみるから教えて!」
天治はアドバイスをメモり、初めて誘惑もオナニーもせずに寝た。
「ベストな状態でチャレンジしたいからね。あ、でもジバさんがしたいならアナルの準備するよ」
『要らん。さっさと寝ろ』
翌朝、天治はアドバイス通りにベーコンエッグを作った。
アドバイスといっても単純なものだ。フライパンは弱火で熱して油を引いて、ベーコンを焼く。卵は器に割りいれて、殻を取り除いてからベーコンの上に乗せるように流す。軽く塩胡椒をふったら、後はフタをして好みの固さになるまで火を通す。これだけだった。
「ジバさん見て!ちゃんと焼けた!焦げてないしぐちゃぐちゃになってない!殻も入ってないよ!」
『おっ!美味そうじゃないか。よかったな』
「うん!味はちょっと薄いかな?でも美味いよ」
天治はニコニコ笑ってベーコンエッグとトーストの朝ごはんを食べた。
「ジバさんのお陰だよ。お礼に俺のアナル好きにしていいよ。あ、チンコしゃぶるだけならすぐ出来…」
『要らん。さっさと食って大学に行け』
「はーい」
『夜にかけて台風が来る。遅くなるなよ』
「……えへへ。心配してくれてありがとう」
『お、おう。気をつけて帰ってこいよ』
はにかんだ笑顔が可愛くて、ドキリとした。なんとか顔に出さないようにする。
「うん!今日も早めに帰って別の料理を作ってみるね!またアドバイスよろしく!」
『フッ。仕方ないな。わかった。教えてやるよ』
こうして、日々は穏やかに過ぎていった。
天治はリビングに置いていたテレビを寝室に移動した。食事もここでするようになる。
しかも、晩飯時はジバ用の飲み物を用意して、ローテーブルの向かいに置くのだ。
(なんかムズムズするな……)
『俺は地縛霊だ。飲み物も飯も要らない』
「一緒に食べてる雰囲気を出したいんだよ。嫌?」
『ぐっ……好きにしろ』
寂しそうな顔をされては嫌とは言えない。
「ジバさんありがとう!いただきまーす!」
天治の晩御飯はいつもと少し違った。いつも通りのコンビニの弁当に、自分で焼いたらしき目玉焼きがついている。ただし目玉焼きは、ぐちゃぐちゃに潰れて焦げている。よく見ると殻も入っているらしい。
「……ジバさん、そんなに見ないでよ」
『お前、料理下手だよな。掃除と洗濯はあれだけ手際がいいのにな』
「うるさいな!家庭の味はコンビニとスーパーで間に合ってます!」
天治は弁当を食べ始めた。いい食いっぷりだが、食べ方も所作も綺麗だ。こういう所もモテるゆえんだろう。
『それでいいと思うぜ。誰にでも得手不得手はある』
「ジバさんはどうだった?料理できたの?」
(いい加減、話しとくか)
ジバは生前の記憶がない事を言おうとした。なんとなく言いそびれただけなのだしと。
だが、脳裏にある光景が浮かぶ。
(なんだこれは……)
半熟に焼いたベーコンエッグ、冷凍ほうれん草のバター炒め、味付け済みの肉を適当に焼いたもの、キャベツとジャガイモとソーセージの炒め物、粒状出汁を使った味噌汁、レンチン豚しゃぶサラダ、卵と高菜のチャーハン、モヤシとハムを入れた袋麺などなど。
料理と、料理を作って食べる自分の手元、キッチンとリビングの光景がありありと浮かぶ。
(こんな事は、死んでから初めてだ)
ジバは動揺し、黙り込む。
「ジバさん、大丈夫?」
目の前に天治の顔。反射的に身を引く。
「どうしたの?気分悪い?」
てっきり誘惑の一環で近づいたのかと思ったが、純粋に心配そうな目で見られて拍子抜けする。動揺もおさまった。
『……いや、大丈夫だ。色々思い出していた。……俺も、基本はスーパーの惣菜か弁当か冷食だった。余裕がある時は一品作ってたな』
「へえ?例えば?」
先ほど思い出した料理を言うと、天治は大袈裟なほど驚いた。
「ジバさん凄い!ベーコンエッグ焼けるんだ!」
『いや、ベーコンエッグくらいお前も出来るんじゃないか?練習してみろよ』
「やってみるから教えて!」
天治はアドバイスをメモり、初めて誘惑もオナニーもせずに寝た。
「ベストな状態でチャレンジしたいからね。あ、でもジバさんがしたいならアナルの準備するよ」
『要らん。さっさと寝ろ』
翌朝、天治はアドバイス通りにベーコンエッグを作った。
アドバイスといっても単純なものだ。フライパンは弱火で熱して油を引いて、ベーコンを焼く。卵は器に割りいれて、殻を取り除いてからベーコンの上に乗せるように流す。軽く塩胡椒をふったら、後はフタをして好みの固さになるまで火を通す。これだけだった。
「ジバさん見て!ちゃんと焼けた!焦げてないしぐちゃぐちゃになってない!殻も入ってないよ!」
『おっ!美味そうじゃないか。よかったな』
「うん!味はちょっと薄いかな?でも美味いよ」
天治はニコニコ笑ってベーコンエッグとトーストの朝ごはんを食べた。
「ジバさんのお陰だよ。お礼に俺のアナル好きにしていいよ。あ、チンコしゃぶるだけならすぐ出来…」
『要らん。さっさと食って大学に行け』
「はーい」
『夜にかけて台風が来る。遅くなるなよ』
「……えへへ。心配してくれてありがとう」
『お、おう。気をつけて帰ってこいよ』
はにかんだ笑顔が可愛くて、ドキリとした。なんとか顔に出さないようにする。
「うん!今日も早めに帰って別の料理を作ってみるね!またアドバイスよろしく!」
『フッ。仕方ないな。わかった。教えてやるよ』
こうして、日々は穏やかに過ぎていった。
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