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三章 怠け者の翠風
怠け者の翠風 三話
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カイは【戦士の胃袋亭】で舌鼓を打った。
カイは酒に強い。だが、好きでも嫌いでもない。料理もこだわりはない。食えればそれでいい。
そんなカイでも、【戦士の胃袋亭】の酒と料理は『大したもんだ』と、感心した。しかも、ギース帝国より格安で食べれる。
(特にこの串焼きは凄え。いくらでも食える)
それは、赤角豚という魔獣の肉の串焼きだった。初めて食べる魔獣だがカイの口にあう。夢中で食べ、麦酒を飲んだ。
分厚くて、脂が滴っていて、齧ると炭焼き特有の香ばしさが弾けて鼻に抜ける。塩と香草はやや強め。しっかり噛んで味わってから麦酒を飲むと、もう最高だ。
(こんなに美味え肉はアレ以来だな)
カイはふと、数年前の戦勝の宴で食べた豚肉料理を思い出した。
他にも山ほどのご馳走様が出た。隣の領主との争いに負けかけていたところ、カイたち【黄金鷲団】が参戦して勝利したためだろう。
気前のいい領主は特産品の銀栗豚の丸焼きを用意し、なんと自ら一人一人に切り分けてくれた。傭兵である自分たちを領主自らがもてなしたのは初めてだった。しかも、肉だ。
それも銀栗豚。ギース帝国では、貴族でもなければ食べれない極上の肉だ。あんなに丁寧に焼いた、あんなに上等の肉を食べたのは産まれて初めてだった。
カイは傭兵仲間たちと夢中で食べた。皮がカリカリになるまで焼かれた銀栗豚は絶品で、いくらでも食べれた。もちろん酒も出されたので、ここぞとばかりに飲んだ。
後はまあ、いつもの酒の席だった。ぎゃあぎゃあとうるさく、礼儀もへったくれもない。いつものカイなら、話しかけられるのが面倒くさくてすぐ引っ込むのだが、その時はなんとなく遅くまでその場に居た。
(あの毒舌屋の団長も最後まで機嫌がよかったなあ。嫌味を言われたり馬鹿にされたりもなかった。あれはまあ、面倒くさくねえ宴だったな)
思い出していると、唐突に話しかけられた。
『おじさん、いい食いっぷりだねえ!相席いい?』
『おい、いきなり失礼だぞ。弟がすいません』
話しかけたのは、若い兄弟だった。十代後半ぐらいだろうか。どちらも淡い緑色の髪と黄色っぽい目をしていて、双子なのか顔立ちもよく似ている。
二人の後ろで店員が恐縮した。
『ごめんなさい。満席で……』
『……別にいい』
カイは相席を許可した。
『ありがとな!俺はメンダー!こっちは兄貴のミンディ!みんな薄荷頭のチャラい方と、お堅い方って呼んでる!ねえ、おじさんってこの国の人じゃないよね?どこ出身?』
『おい落ち着け。すみません。礼儀知らずな奴で……』
メンダーは人懐っこく話しかけながら座る。ミンディは弟を止めようとして無視され、諦めて座った。
(やっぱり面倒くせ……いや待てよ。地元民なら色々知ってるはずだな)
カイは、すっかり忘れていた本来の目的を果たすことにした。
『俺は空っぽのカイ。ギース帝国から来た。王都には今日着いたばかりだ』
『カイさんだね。よろしくぅ!空っぽって何?あ、その首飾りが空だから?変なあだ名だなあ。ギース帝国からここまで来たの?あの国は戦好きで貧乏なのは有名だけど本当?王都にはいつまでいるの?』
『メンダー、そんなに立て続けに質問したらカイさんが困るだろう』
『構わねえよ。そのかわり、王都について教えてくれねえか?』
メンダーは矢継ぎ早に、ミンディはゆっくりと、王都について話してくれた。
この二人は、正に情報収集にうってつけだった。二人とも冒険者ギルドの職員だといい、王都の表と裏に通じていた。
『ふうん。なるほどなあ』
カイは複数の組織の名前、元締、規模、縄張りを頭に叩き込む。なかなかいい情報収集になった。
最も、この二人の話だけを鵜呑みにするのは危険なので、他でも話を聞く予定だが。
(にしても、気前良く話すなあ。情報は金より高価だってのに、親切すぎる)
カイの疑問に気付いたのか、メンダーは顔を寄せて声をひそめた。
『実は、下心あって相席にしてもらったんだよ。カイさん、かなりの槍の使い手みたいだからさ。しかもその長槍、魔道具でしょう?』
カイの紫がかった灰色の目が見開かれる。
初対面で実力を見抜かれたことも驚きだが、それ以上に驚きなのが長槍が魔道具だと気付かれたことだ。
魔道具としてはとっくに使えなくなっているので、あの団長にも気付かれたことがないというのに。
『よくわかったな』
『ふふん。そうだろ?俺たちって、人よりずっと見る目があるんだ。だからギルド職員やってるんだけどね』
『メンダー、調子に乗りすぎだ。……カイさん、貴方に声をかけた理由をお話します。率直に言うと人手不足だからです』
フリジア王国王都では、慢性的に高ランク冒険者の人手が足りないのだという。
『カイさんは冒険者では無いとのことですが、どうか一つか二つか三つほど依頼を受けていただけないでしょうか?』
『つまり、俺に冒険者になれってことか』
『うんそう!お願い!』
おかしな話ではない。冒険者になるのは、冒険者ギルドで審査を受けて登録するだけでいい。登録さえすれば、与えられたランクと職員の判断次第になるが、大抵の依頼を受けれるようになる。
これからの身の振り方としても悪くない。冒険者もまた危険の多い職業ではあるが、傭兵ほどではないし、依頼を選べば実入はいいし、しがらみも少ない。
おまけにカイは、傭兵時代にもそれ以前にも魔獣討伐の経験がある。フリジア王国王都までの道のりでも、隊商や乗り合い馬車の護衛として魔獣をいくつか倒した。
しかし、カイの脳裏にある人物が浮かぶ。
(冒険者は嫌だ)
断ろうとしたその時、ミンディがある単語を発した。
『特に今は大変なんです。あの【迦楼羅】の群れが飛来しているのに、銀ランク以上の冒険者がいな……』
『【迦楼羅】だと?』
カイは思わず身を乗り出した。
【迦楼羅】は鳥型の魔獣だ。大の大人程度の大きさを持ち、高速で飛び炎を放つ。美しい赤い羽を持つと言われているが、人里離れた山に住むことが多く謎が多い。
『この辺りでは時々出るよ。蛇型の魔獣を食べるためなんだって。いつもなら金ランクの【炎剣のジェド】とか【暁の牙】とか、銀ランクの【雷鳴の守り手】とか【水獄のエリス】あたりに頼むんだけど、全員王都から離れた場所か、長期依頼中なんだよ。
【迦楼羅】はこっちから手を出さなきゃ悪さしないから放置してもいいんだけど、なんとか素材を取りたいんだよなあ。内臓が薬になるし、肉も高く売れるし』
『黄金に輝く嘴と脚、炎のような赤色の羽毛も珍重されます。そして一番珍重されるのは風切り羽根で色が……』
『わかった。やってやるよ』
カイは依頼を受けることにした。【迦楼羅】にはちょっとした因縁がある。正確にはカイにではなく、先程浮かんだ人物……冒険者だったカイの父親の因縁だが。
(面倒くせえが、やってやるよ。けれど冒険者にはならねえ。これっきりだ)
カイは、父親の形見でもある長槍を握る力を強めた。
カイは酒に強い。だが、好きでも嫌いでもない。料理もこだわりはない。食えればそれでいい。
そんなカイでも、【戦士の胃袋亭】の酒と料理は『大したもんだ』と、感心した。しかも、ギース帝国より格安で食べれる。
(特にこの串焼きは凄え。いくらでも食える)
それは、赤角豚という魔獣の肉の串焼きだった。初めて食べる魔獣だがカイの口にあう。夢中で食べ、麦酒を飲んだ。
分厚くて、脂が滴っていて、齧ると炭焼き特有の香ばしさが弾けて鼻に抜ける。塩と香草はやや強め。しっかり噛んで味わってから麦酒を飲むと、もう最高だ。
(こんなに美味え肉はアレ以来だな)
カイはふと、数年前の戦勝の宴で食べた豚肉料理を思い出した。
他にも山ほどのご馳走様が出た。隣の領主との争いに負けかけていたところ、カイたち【黄金鷲団】が参戦して勝利したためだろう。
気前のいい領主は特産品の銀栗豚の丸焼きを用意し、なんと自ら一人一人に切り分けてくれた。傭兵である自分たちを領主自らがもてなしたのは初めてだった。しかも、肉だ。
それも銀栗豚。ギース帝国では、貴族でもなければ食べれない極上の肉だ。あんなに丁寧に焼いた、あんなに上等の肉を食べたのは産まれて初めてだった。
カイは傭兵仲間たちと夢中で食べた。皮がカリカリになるまで焼かれた銀栗豚は絶品で、いくらでも食べれた。もちろん酒も出されたので、ここぞとばかりに飲んだ。
後はまあ、いつもの酒の席だった。ぎゃあぎゃあとうるさく、礼儀もへったくれもない。いつものカイなら、話しかけられるのが面倒くさくてすぐ引っ込むのだが、その時はなんとなく遅くまでその場に居た。
(あの毒舌屋の団長も最後まで機嫌がよかったなあ。嫌味を言われたり馬鹿にされたりもなかった。あれはまあ、面倒くさくねえ宴だったな)
思い出していると、唐突に話しかけられた。
『おじさん、いい食いっぷりだねえ!相席いい?』
『おい、いきなり失礼だぞ。弟がすいません』
話しかけたのは、若い兄弟だった。十代後半ぐらいだろうか。どちらも淡い緑色の髪と黄色っぽい目をしていて、双子なのか顔立ちもよく似ている。
二人の後ろで店員が恐縮した。
『ごめんなさい。満席で……』
『……別にいい』
カイは相席を許可した。
『ありがとな!俺はメンダー!こっちは兄貴のミンディ!みんな薄荷頭のチャラい方と、お堅い方って呼んでる!ねえ、おじさんってこの国の人じゃないよね?どこ出身?』
『おい落ち着け。すみません。礼儀知らずな奴で……』
メンダーは人懐っこく話しかけながら座る。ミンディは弟を止めようとして無視され、諦めて座った。
(やっぱり面倒くせ……いや待てよ。地元民なら色々知ってるはずだな)
カイは、すっかり忘れていた本来の目的を果たすことにした。
『俺は空っぽのカイ。ギース帝国から来た。王都には今日着いたばかりだ』
『カイさんだね。よろしくぅ!空っぽって何?あ、その首飾りが空だから?変なあだ名だなあ。ギース帝国からここまで来たの?あの国は戦好きで貧乏なのは有名だけど本当?王都にはいつまでいるの?』
『メンダー、そんなに立て続けに質問したらカイさんが困るだろう』
『構わねえよ。そのかわり、王都について教えてくれねえか?』
メンダーは矢継ぎ早に、ミンディはゆっくりと、王都について話してくれた。
この二人は、正に情報収集にうってつけだった。二人とも冒険者ギルドの職員だといい、王都の表と裏に通じていた。
『ふうん。なるほどなあ』
カイは複数の組織の名前、元締、規模、縄張りを頭に叩き込む。なかなかいい情報収集になった。
最も、この二人の話だけを鵜呑みにするのは危険なので、他でも話を聞く予定だが。
(にしても、気前良く話すなあ。情報は金より高価だってのに、親切すぎる)
カイの疑問に気付いたのか、メンダーは顔を寄せて声をひそめた。
『実は、下心あって相席にしてもらったんだよ。カイさん、かなりの槍の使い手みたいだからさ。しかもその長槍、魔道具でしょう?』
カイの紫がかった灰色の目が見開かれる。
初対面で実力を見抜かれたことも驚きだが、それ以上に驚きなのが長槍が魔道具だと気付かれたことだ。
魔道具としてはとっくに使えなくなっているので、あの団長にも気付かれたことがないというのに。
『よくわかったな』
『ふふん。そうだろ?俺たちって、人よりずっと見る目があるんだ。だからギルド職員やってるんだけどね』
『メンダー、調子に乗りすぎだ。……カイさん、貴方に声をかけた理由をお話します。率直に言うと人手不足だからです』
フリジア王国王都では、慢性的に高ランク冒険者の人手が足りないのだという。
『カイさんは冒険者では無いとのことですが、どうか一つか二つか三つほど依頼を受けていただけないでしょうか?』
『つまり、俺に冒険者になれってことか』
『うんそう!お願い!』
おかしな話ではない。冒険者になるのは、冒険者ギルドで審査を受けて登録するだけでいい。登録さえすれば、与えられたランクと職員の判断次第になるが、大抵の依頼を受けれるようになる。
これからの身の振り方としても悪くない。冒険者もまた危険の多い職業ではあるが、傭兵ほどではないし、依頼を選べば実入はいいし、しがらみも少ない。
おまけにカイは、傭兵時代にもそれ以前にも魔獣討伐の経験がある。フリジア王国王都までの道のりでも、隊商や乗り合い馬車の護衛として魔獣をいくつか倒した。
しかし、カイの脳裏にある人物が浮かぶ。
(冒険者は嫌だ)
断ろうとしたその時、ミンディがある単語を発した。
『特に今は大変なんです。あの【迦楼羅】の群れが飛来しているのに、銀ランク以上の冒険者がいな……』
『【迦楼羅】だと?』
カイは思わず身を乗り出した。
【迦楼羅】は鳥型の魔獣だ。大の大人程度の大きさを持ち、高速で飛び炎を放つ。美しい赤い羽を持つと言われているが、人里離れた山に住むことが多く謎が多い。
『この辺りでは時々出るよ。蛇型の魔獣を食べるためなんだって。いつもなら金ランクの【炎剣のジェド】とか【暁の牙】とか、銀ランクの【雷鳴の守り手】とか【水獄のエリス】あたりに頼むんだけど、全員王都から離れた場所か、長期依頼中なんだよ。
【迦楼羅】はこっちから手を出さなきゃ悪さしないから放置してもいいんだけど、なんとか素材を取りたいんだよなあ。内臓が薬になるし、肉も高く売れるし』
『黄金に輝く嘴と脚、炎のような赤色の羽毛も珍重されます。そして一番珍重されるのは風切り羽根で色が……』
『わかった。やってやるよ』
カイは依頼を受けることにした。【迦楼羅】にはちょっとした因縁がある。正確にはカイにではなく、先程浮かんだ人物……冒険者だったカイの父親の因縁だが。
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