43 / 96
第三章エルフ、オークの花嫁になる
エルフ、オークの花嫁になる【8】
しおりを挟む
時は流れ二十年後。秋の終わりを迎えた頃、私は二百歳になった。成人になったので、自分の事は自分で決めれるし、何処にだって行ける。だから私は家族と縁を切り、青星国から出ることにした。もうこの家には居たくない。
氏族長一家は理解してくれた。
「うむ。寂しくなるが、レグレースの想いを尊重する」
「ええ。貴方は広い世界の中で、己の居場所を見つけた方が幸せになれる子です」
「けれどレグレース、行く当てはあるのかい?」
「当てはあります」
まずはあの村に行くつもりだ。セリオリス様たちは、研究のために旅に出ることが増えたため留守がちらしいが、あのオークの子はいるはずだ。彼に会いたい。
それに、この二十年で私は強い願いを抱くようになった。出会えるかどうかはわからないけれど、愛し合える人と出会いたい。出来れば妄想のように抱かれたい。
決意を胸に、旅立ちの朝を迎えた。
「レグレース!考えなおせ!」
何故か元家族に引き留められたが。
「皆様が仰っていた通り、私が皆様の家族として生まれたのは何かの間違いだったのです。もう二度と家には戻りませんので、ご安心下さい」
と、言うと固まった。どうしてそんな、絶望したような目をするのだろう?
見送りに来てくれた氏族長一家が、冷めた眼差しを元家族たちに向け、温かな眼差しを私に注いでくれた。
「レグレースよ。達者でな」
「困った事があったら、いつでも私たちの元に来なさい」
「氏族は抜けてないのだから、たまには国に帰って来るんだよ」
「お便りを待っていますよ。私たちからも送りますから」
「はい!いつか、土産話と共に帰ってきます!今までお世話になりました!」
「うむ。風の精霊を一人連れていくといい。そなたの助けになるだろう」
《よろしくね。レグレース》
涙が滲む。この人たちは私を特別に愛する事はなかった。けれど、その穏やかな優しさと慈しみが無ければ、私は生きていけなかっただろう。私は再会を誓って旅立った。
元家族が「そんなつもりじゃなかった」「至らないお前のためだったんだ」「仕事はどうするの!職人頭を継がせるはずだったのに!」などと叫んでいたが、どうでもいいので聞き流した。
いつまでも与えられなかった親兄弟の愛は、もう要らない。
◆◆◆◆◆
青星国を出た私は、あの緑鉄国の村へと向かった。
あわよくば、妄想の旦那様のようなオークに抱かれたい。娶って欲しい。
という欲望もあるが、まずはあのオークの子供に会いたい。私は彼にもらった匂い袋を握りしめた。今でも大切な宝物だ。定期的に修繕し、中身を入れ変えて愛用している。
《ふうん。優しい子だね》
「うん。あの子、大きくなったかなあ。まだ二十年しか経っていないから、あまり変わってないだろうな」
私は道中、子供の好きそうなお菓子を買うなどして浮かれていた。
「セリオリス様たちの好きそうな物も買おう」
手紙には、村には年に何回か帰ると書いてあった。お会いできるかもしれない。幸い、買い物には困らなかった。
青星国と緑鉄国の間の森を貫く街道は、二十年前より人通りが多い。宿場や村も増えていた。エルフはもちろん、オーク、人間、ドワーフなど様々な種族が行き交う。二十年前のように、ささやかな交流を楽しみつつ買い物をした。
しかし、緑鉄国側から来るエルフたちの様子がおかしい。彼らは服と魔法で厳重に正体を隠していた。一人が私に忠告した。
「一人で緑鉄国に行くのなら、姿を隠しておきなさい。邪悪な気配がしている」
私も外套でしっかり隠し、認識阻害魔法をかけて人間に見えるようにした。
しかし、道中で見抜かれ忠告されることになる。
氏族長一家は理解してくれた。
「うむ。寂しくなるが、レグレースの想いを尊重する」
「ええ。貴方は広い世界の中で、己の居場所を見つけた方が幸せになれる子です」
「けれどレグレース、行く当てはあるのかい?」
「当てはあります」
まずはあの村に行くつもりだ。セリオリス様たちは、研究のために旅に出ることが増えたため留守がちらしいが、あのオークの子はいるはずだ。彼に会いたい。
それに、この二十年で私は強い願いを抱くようになった。出会えるかどうかはわからないけれど、愛し合える人と出会いたい。出来れば妄想のように抱かれたい。
決意を胸に、旅立ちの朝を迎えた。
「レグレース!考えなおせ!」
何故か元家族に引き留められたが。
「皆様が仰っていた通り、私が皆様の家族として生まれたのは何かの間違いだったのです。もう二度と家には戻りませんので、ご安心下さい」
と、言うと固まった。どうしてそんな、絶望したような目をするのだろう?
見送りに来てくれた氏族長一家が、冷めた眼差しを元家族たちに向け、温かな眼差しを私に注いでくれた。
「レグレースよ。達者でな」
「困った事があったら、いつでも私たちの元に来なさい」
「氏族は抜けてないのだから、たまには国に帰って来るんだよ」
「お便りを待っていますよ。私たちからも送りますから」
「はい!いつか、土産話と共に帰ってきます!今までお世話になりました!」
「うむ。風の精霊を一人連れていくといい。そなたの助けになるだろう」
《よろしくね。レグレース》
涙が滲む。この人たちは私を特別に愛する事はなかった。けれど、その穏やかな優しさと慈しみが無ければ、私は生きていけなかっただろう。私は再会を誓って旅立った。
元家族が「そんなつもりじゃなかった」「至らないお前のためだったんだ」「仕事はどうするの!職人頭を継がせるはずだったのに!」などと叫んでいたが、どうでもいいので聞き流した。
いつまでも与えられなかった親兄弟の愛は、もう要らない。
◆◆◆◆◆
青星国を出た私は、あの緑鉄国の村へと向かった。
あわよくば、妄想の旦那様のようなオークに抱かれたい。娶って欲しい。
という欲望もあるが、まずはあのオークの子供に会いたい。私は彼にもらった匂い袋を握りしめた。今でも大切な宝物だ。定期的に修繕し、中身を入れ変えて愛用している。
《ふうん。優しい子だね》
「うん。あの子、大きくなったかなあ。まだ二十年しか経っていないから、あまり変わってないだろうな」
私は道中、子供の好きそうなお菓子を買うなどして浮かれていた。
「セリオリス様たちの好きそうな物も買おう」
手紙には、村には年に何回か帰ると書いてあった。お会いできるかもしれない。幸い、買い物には困らなかった。
青星国と緑鉄国の間の森を貫く街道は、二十年前より人通りが多い。宿場や村も増えていた。エルフはもちろん、オーク、人間、ドワーフなど様々な種族が行き交う。二十年前のように、ささやかな交流を楽しみつつ買い物をした。
しかし、緑鉄国側から来るエルフたちの様子がおかしい。彼らは服と魔法で厳重に正体を隠していた。一人が私に忠告した。
「一人で緑鉄国に行くのなら、姿を隠しておきなさい。邪悪な気配がしている」
私も外套でしっかり隠し、認識阻害魔法をかけて人間に見えるようにした。
しかし、道中で見抜かれ忠告されることになる。
47
お気に入りに追加
315
あなたにおすすめの小説
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる