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第三章エルフ、オークの花嫁になる
エルフ、オークの花嫁になる【4】
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彼は、自分がオークの中でも鼻がいいのだと言った。
村長の家から発情の匂いが漂ってきたので、私を心配して見に来てくれたのだ。なんて優しい子だろう。
悶えつつ感動している間に、彼は私を小さな家に招いてくれた。客間らしき部屋の椅子に座る。彼はどこかへ行き、しばらくして戻った。陶器のコップを差し出される。中の液体からは、何種類もの薬草の匂いがした。
「これ、飲んで。俺たちの匂いに当てられた人に効くから」
差し出された苦い茶を飲む。凄まじく不味いが、淫らな欲はすぐに治った。私は感謝した。
「ありがとう。お陰で助かったよ」
「気にしなくていいよ。あのままだと誰かに襲われてただろうし……。お兄さん、すごく綺麗だもん」
「え?綺麗?私が?」
産まれて初めて言われた。私は他種族の血が濃く出た為、あまりエルフらしくない見た目をしている。
髪は金よりも銀に近く、目は氷のように薄青い。顔立ちも華やかさと高貴さに欠ける。魔力もエルフにしては弱く、魔法の得意不得意が極端だ。
その代わり、手先が器用で魔力調整が得意だ。これを活かし、魔石生成などで食い扶持を稼いでいる。とはいえ、一流の魔石職人たちの域には達していない。
氏族長一家などはともかく、周りからはやんわりと下に見られていた。気位の高い親兄弟とも上手くいっていない。
そんな私が?
「綺麗だよ。雪の精霊か白薔薇の精霊かと思った。それに話し方も優しいし、とっても可愛い」
「ゆ、雪?白薔薇?か、可愛い?」
「うん。凄く可愛い。今の照れた顔なんて見たら、オークの男も女もみんなお兄さんを好きになるよ」
「そんなっ?私が?」
顔が熱い。思わず両手で顔を隠した。彼は「そういうところだぞ」と、呆れた様子で呟く。どういう意味だろうか?
「とにかく、用事が終わったらすぐ帰った方がいい。セリオっさんみたいに、オークの花嫁になりたくなかったらな」
「オークの花嫁……」
一瞬、それも悪くないなと思ってしまった。
だって、セリオリス様はとても幸せそうだった。まさかセリオリス様がオークと結ばれているとは思わなかったが、手籠にされるような方ではないので同意の上だろう。それに気持ちよさそうで……羨ましかった。
いやいや!私は何てことを!
私は自分の浅ましさに顔を伏せた。とても、優しい彼の金色の目をみれなかった。だからその時、彼がどんな顔をしてたか、どんな思いだったかは知らないままだった。
◆◆◆◆◆
私はその日の昼過ぎに、改めて屋敷を訪れた。
無事にセリオリス様とオークのオズマ様と話せたが、やはりお二人は相思相愛の伴侶で、故郷に帰る気もないらしい。セリオリス様は、キラッキラの笑顔で再会を喜こび、開けっぴろげに話す。
「親父が無茶言って悪かったな!俺は大丈夫だ!ここには良いオークしかいねえし、肉もコイツのちんぽも美味えからよ!」
「セリィ!口を慎みなさい!レグレース様!伴侶の非礼をお詫びいたします!申し訳ございません!」
違和感が凄い。
山賊のような発言をしたのが、エルフの中でも尊き産まれで、類希な美貌のセリオリス様。
常識と品のある発言をしたのが、オークの中でも大柄で顔の険しいオズマ様なのだから。
やはりエルフにしろオークにしろ、見た目だけでは内面がわからないなと思った。
それはともかく。
「オズマ様、どうかお気になさらず。セリオリス様がお変わりなくて、私は安心いたしました」
「寛大なお心に感謝します。……と、いうことは、セリィは故郷でもこのような態度だったのですか?」
私は、セリオリス様のやらかし……武勇伝の数々を浮かべて遠い目になった。
「はい。……その、我が道を行く方ですから」
「ああ……でしょうね」
「おい、お前らなんだその反応は」
村長の家から発情の匂いが漂ってきたので、私を心配して見に来てくれたのだ。なんて優しい子だろう。
悶えつつ感動している間に、彼は私を小さな家に招いてくれた。客間らしき部屋の椅子に座る。彼はどこかへ行き、しばらくして戻った。陶器のコップを差し出される。中の液体からは、何種類もの薬草の匂いがした。
「これ、飲んで。俺たちの匂いに当てられた人に効くから」
差し出された苦い茶を飲む。凄まじく不味いが、淫らな欲はすぐに治った。私は感謝した。
「ありがとう。お陰で助かったよ」
「気にしなくていいよ。あのままだと誰かに襲われてただろうし……。お兄さん、すごく綺麗だもん」
「え?綺麗?私が?」
産まれて初めて言われた。私は他種族の血が濃く出た為、あまりエルフらしくない見た目をしている。
髪は金よりも銀に近く、目は氷のように薄青い。顔立ちも華やかさと高貴さに欠ける。魔力もエルフにしては弱く、魔法の得意不得意が極端だ。
その代わり、手先が器用で魔力調整が得意だ。これを活かし、魔石生成などで食い扶持を稼いでいる。とはいえ、一流の魔石職人たちの域には達していない。
氏族長一家などはともかく、周りからはやんわりと下に見られていた。気位の高い親兄弟とも上手くいっていない。
そんな私が?
「綺麗だよ。雪の精霊か白薔薇の精霊かと思った。それに話し方も優しいし、とっても可愛い」
「ゆ、雪?白薔薇?か、可愛い?」
「うん。凄く可愛い。今の照れた顔なんて見たら、オークの男も女もみんなお兄さんを好きになるよ」
「そんなっ?私が?」
顔が熱い。思わず両手で顔を隠した。彼は「そういうところだぞ」と、呆れた様子で呟く。どういう意味だろうか?
「とにかく、用事が終わったらすぐ帰った方がいい。セリオっさんみたいに、オークの花嫁になりたくなかったらな」
「オークの花嫁……」
一瞬、それも悪くないなと思ってしまった。
だって、セリオリス様はとても幸せそうだった。まさかセリオリス様がオークと結ばれているとは思わなかったが、手籠にされるような方ではないので同意の上だろう。それに気持ちよさそうで……羨ましかった。
いやいや!私は何てことを!
私は自分の浅ましさに顔を伏せた。とても、優しい彼の金色の目をみれなかった。だからその時、彼がどんな顔をしてたか、どんな思いだったかは知らないままだった。
◆◆◆◆◆
私はその日の昼過ぎに、改めて屋敷を訪れた。
無事にセリオリス様とオークのオズマ様と話せたが、やはりお二人は相思相愛の伴侶で、故郷に帰る気もないらしい。セリオリス様は、キラッキラの笑顔で再会を喜こび、開けっぴろげに話す。
「親父が無茶言って悪かったな!俺は大丈夫だ!ここには良いオークしかいねえし、肉もコイツのちんぽも美味えからよ!」
「セリィ!口を慎みなさい!レグレース様!伴侶の非礼をお詫びいたします!申し訳ございません!」
違和感が凄い。
山賊のような発言をしたのが、エルフの中でも尊き産まれで、類希な美貌のセリオリス様。
常識と品のある発言をしたのが、オークの中でも大柄で顔の険しいオズマ様なのだから。
やはりエルフにしろオークにしろ、見た目だけでは内面がわからないなと思った。
それはともかく。
「オズマ様、どうかお気になさらず。セリオリス様がお変わりなくて、私は安心いたしました」
「寛大なお心に感謝します。……と、いうことは、セリィは故郷でもこのような態度だったのですか?」
私は、セリオリス様のやらかし……武勇伝の数々を浮かべて遠い目になった。
「はい。……その、我が道を行く方ですから」
「ああ……でしょうね」
「おい、お前らなんだその反応は」
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