20 / 96
第二章王太子、オークの花嫁になる
王太子、オークの花嫁になる【4】*
しおりを挟む
「寛大なお言葉に感謝します。アマリリス一世陛下、私がシスル王子の婚約者になることをお許し頂けないでしょうか?」
「まあ……願ってもないことです。お受けしましょう。緑鉄国のオグル卿といえば、我が国でも名の知れた将として有名ですもの。ねえ、貴方も知っていますよね?」
呆然とした様子でオグルを見ていたシスルが口を開く。
「貴様……あの時のオークの将軍か」
オグルはにこりと笑った。
「私を覚えて下さったのですか。しかもあの頃のような『孕ませ豚』呼ばわりではないとは……光栄です」
シスルはキリッとした顔でオグルを睨む。花嫁衣装を着せられたままだし、尻にバイブがブッ刺さったままなのに目には力が戻っていた。
妹にやり込められて萎れていたが、クオーンに臆さず怒鳴り返していただけあり、度胸と勇気は相当なものらしい。それにしても。
「二人は知り合いだったのか」
俺の疑問に、オグルはかしこまって答えてくれた。
「王配陛下はご存知なくて当然です。先の戦でのことですから」
当時、オグルは将軍として軍を率いて戦った。そしてシスルが率いていた軍と衝突し、オグル側が勝った。シスルは捕らえられ、それが終戦の契機になったのだという。
オグルに捕らえられたシスルは『拷問も虐待も自分だけにしろ!』と言って配下たちを庇った。オグルはその勇気に免じて丁重に扱ったと話した。
「赤花国のシスル王子は勇猛果敢。常に前線に出て将兵を鼓舞されたことで有名ですが、捕らえられてなお配下を庇うなど、なかなか出来ることではありません」
シスルは自尊心をくすぐられたのか、顔が輝いた。
「ふん!当然だ!穢らわしい敵兵から臣下を守るのも上に立つ者の勤めだからな」
アマリリスの顔が険しくなり、シスルに向けて手をかざした。
「婚約者様に向かって失礼なことを言ってはなりません。……もう少し躾なければなりませんね」
「ま、まて違っ……!……ひぎいぃっ!あああっ!やめ、やめてくれええ!」
魔法によってバイブが起動されたらしい。尻からぐちゃぐちゃと卑猥な音が立ち、王子は身悶えながら絶叫した。
「ほら、早く謝罪なさい。賤しい身で礼を失したことを。そして誓うのです身も心も婚約者様に捧げ従うと……」
「ああぁっ!やだっ!やだあぁっ!こんなのやだ!み、みないでくれえ!」
「止めろ!彼はもう俺の婚約者だ!これ以上嬲るなら貴国に抗議する!」
オグルはシスルを抱きしめて叫んだ。アマリリスはどこか安心したように微笑み、手を下げる。バイブ音が止まる。
シスルは涙をこぼしながら、弱々しくオグルの身体を叩いた。
「うっ……うぅ……一度ならず……!二度もオークに情けを……!くっ……!こ、殺せ!私を殺せ!」
「俺はお前を殺さない。婚約者として連れて帰る」
「何故だ!貴様の子を孕まされるぐらいなら……!」
「お前は死なすには惜しい男だ」
真摯なオグルの言葉に、シスルの目に光が戻る。オグルはシスルの両手を広げさせ、撫でた。
「あの日と変わらず、剣だこだらけの無骨な手だ……強く気高く美しい。俺はあの日、配下たちを守ったこの手と、強い意志を宿す緑色の目に惚れた」
シスルの頬が朱に染まり、緑色の目が木漏れ日のように揺れる。
「な、何を言って……!」
「赤花国のシスル王子に求婚している。無理強いはしないが、いずれは俺の花嫁となって欲しい。……今はこの想いを利用してくれて構わない」
「な……な、にを……」
シスルは絶句し、握られた指を見つめて固まった。オグルの目がクオーンとアマリリスに向けられる。暗い青色の目は冷静そのものだ。シスルに気づかれないよう口が動く『いいな?』クオーンもアマリリスも無言で頷き、歩み寄って互いの手を握った。
「まあ……願ってもないことです。お受けしましょう。緑鉄国のオグル卿といえば、我が国でも名の知れた将として有名ですもの。ねえ、貴方も知っていますよね?」
呆然とした様子でオグルを見ていたシスルが口を開く。
「貴様……あの時のオークの将軍か」
オグルはにこりと笑った。
「私を覚えて下さったのですか。しかもあの頃のような『孕ませ豚』呼ばわりではないとは……光栄です」
シスルはキリッとした顔でオグルを睨む。花嫁衣装を着せられたままだし、尻にバイブがブッ刺さったままなのに目には力が戻っていた。
妹にやり込められて萎れていたが、クオーンに臆さず怒鳴り返していただけあり、度胸と勇気は相当なものらしい。それにしても。
「二人は知り合いだったのか」
俺の疑問に、オグルはかしこまって答えてくれた。
「王配陛下はご存知なくて当然です。先の戦でのことですから」
当時、オグルは将軍として軍を率いて戦った。そしてシスルが率いていた軍と衝突し、オグル側が勝った。シスルは捕らえられ、それが終戦の契機になったのだという。
オグルに捕らえられたシスルは『拷問も虐待も自分だけにしろ!』と言って配下たちを庇った。オグルはその勇気に免じて丁重に扱ったと話した。
「赤花国のシスル王子は勇猛果敢。常に前線に出て将兵を鼓舞されたことで有名ですが、捕らえられてなお配下を庇うなど、なかなか出来ることではありません」
シスルは自尊心をくすぐられたのか、顔が輝いた。
「ふん!当然だ!穢らわしい敵兵から臣下を守るのも上に立つ者の勤めだからな」
アマリリスの顔が険しくなり、シスルに向けて手をかざした。
「婚約者様に向かって失礼なことを言ってはなりません。……もう少し躾なければなりませんね」
「ま、まて違っ……!……ひぎいぃっ!あああっ!やめ、やめてくれええ!」
魔法によってバイブが起動されたらしい。尻からぐちゃぐちゃと卑猥な音が立ち、王子は身悶えながら絶叫した。
「ほら、早く謝罪なさい。賤しい身で礼を失したことを。そして誓うのです身も心も婚約者様に捧げ従うと……」
「ああぁっ!やだっ!やだあぁっ!こんなのやだ!み、みないでくれえ!」
「止めろ!彼はもう俺の婚約者だ!これ以上嬲るなら貴国に抗議する!」
オグルはシスルを抱きしめて叫んだ。アマリリスはどこか安心したように微笑み、手を下げる。バイブ音が止まる。
シスルは涙をこぼしながら、弱々しくオグルの身体を叩いた。
「うっ……うぅ……一度ならず……!二度もオークに情けを……!くっ……!こ、殺せ!私を殺せ!」
「俺はお前を殺さない。婚約者として連れて帰る」
「何故だ!貴様の子を孕まされるぐらいなら……!」
「お前は死なすには惜しい男だ」
真摯なオグルの言葉に、シスルの目に光が戻る。オグルはシスルの両手を広げさせ、撫でた。
「あの日と変わらず、剣だこだらけの無骨な手だ……強く気高く美しい。俺はあの日、配下たちを守ったこの手と、強い意志を宿す緑色の目に惚れた」
シスルの頬が朱に染まり、緑色の目が木漏れ日のように揺れる。
「な、何を言って……!」
「赤花国のシスル王子に求婚している。無理強いはしないが、いずれは俺の花嫁となって欲しい。……今はこの想いを利用してくれて構わない」
「な……な、にを……」
シスルは絶句し、握られた指を見つめて固まった。オグルの目がクオーンとアマリリスに向けられる。暗い青色の目は冷静そのものだ。シスルに気づかれないよう口が動く『いいな?』クオーンもアマリリスも無言で頷き、歩み寄って互いの手を握った。
59
お気に入りに追加
315
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる