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第二章王太子、オークの花嫁になる
王太子、オークの花嫁になる【1】
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赤花国国王アマリリスとの謁見は秘密裏に行われた。
人目につきにくい早朝、宮殿で最も格式の高い謁見室にて、俺とクオーン、書記官、近衛騎士隊隊長のオグル、近衛騎士十名が対応する。
「赤花国国王アマリリス・ディーダ・クリムゾングローリー様のご入来です」
こちらの外交官に案内されて現れたのは、真紅の髪と目を持つ美女、文官武官合わせて十名……そして場違いに馬鹿でかい箱だった。
は?なんだあの箱?ここに入ることが出来るから危険物ではないだろうが、たくましい武官が二人がかりで抱えている。オグルたち近衛騎士数名が、静かに立ち位置を変えた。一番箱に近い場所をオグルが陣取る。
緊迫した空気が流れるが、特に箱についての説明のないまま挨拶が始まった。
「この度は、急な申し出にお応え頂きありがとうございます。私は赤花国国王アマリリス一世と申します」
「こちらこそご足労をおかけしました。私は緑鉄国国王クオーンです。こちらは私の無二の伴侶であるツカサです」
無二の伴侶を強調し、俺を抱き寄せるクオーン。俺が舐められないようにするためだろう。惚れ直しつつ、営業スマイルを浮かべた。
「ツカサと申します。アマリリス一世陛下、この度のご訪問とご即位を心よりお喜び申し上げます」
アマリリスは柔らかく微笑んだ。
「クオーン陛下、並びにクオーン陛下の名高き宝であるツカサ王配陛下からお言葉を頂き、光栄に存じます」
挨拶を交わし、共に大きな机を挟んで向かいあって座った。箱は、アマリリスの斜め後ろの床に直置きにされた。気を取り直して観察する。
アマリリスの第一印象は、今まで見てきた誰よりも高貴さをそなえた美貌の女性。真紅の髪は艶やかで、同じ色の目は理知の光が宿っている。威厳がありつつも柔らかな微笑みは、上に立つ者特有の自信と余裕に満ちていた。
営業時代で一番の得意先の会長がこんな雰囲気だったな。やわらかーくて、やさしーくて、油断ならねえおっかねえ人だった。ヘラヘラ笑って相槌打ってる間に、とんでもねえ値引きとか変更とかをさせられそうになったもんだ。
クオーンも穏やかさを装いつつ、最大限注意して話している。そして、俺と同じく例の箱に注意を向けていた。
大きさは俺が一人入るくらい。金色のリボンが結ばれていて、いかにもプレゼントといった見た目だ。
プレゼント。贈り物。なんだか嫌な予感がする。
さっきまでは、説明が欲しかった。けれど、やっぱりこの箱について触れたくない。そう強く念じていたが、アマリリスはにっこりと笑って箱に手を掲げた。
「これまでの愚行のお詫びです。お気に召して頂ければ幸いです」
それは、一昔前のバラエティ番組のような光景だった。
金色のリボンが解け、側面がバラバラに展開し、箱の中身が露わになった。
オグルが臨戦態勢をとったが。
「は?なぜ、貴方が……」
呆然と呟き、固まった。俺もまた、眼前の光景に間抜けな声が出た。
「え?誰?って言うか拉致?犯罪?」
箱の中にいたのは、赤い髪に緑色の目をした美青年だった。身長は俺より少し低いくらいだろうか?俺より肩幅がある均整の取れた身体をしている。歳も二十歳くらいだ。
ただし、真っ赤なウェディングドレスを着ていた。意味がわからない。
「彼は……王太子……赤花国のシスル王太子では?」
人目につきにくい早朝、宮殿で最も格式の高い謁見室にて、俺とクオーン、書記官、近衛騎士隊隊長のオグル、近衛騎士十名が対応する。
「赤花国国王アマリリス・ディーダ・クリムゾングローリー様のご入来です」
こちらの外交官に案内されて現れたのは、真紅の髪と目を持つ美女、文官武官合わせて十名……そして場違いに馬鹿でかい箱だった。
は?なんだあの箱?ここに入ることが出来るから危険物ではないだろうが、たくましい武官が二人がかりで抱えている。オグルたち近衛騎士数名が、静かに立ち位置を変えた。一番箱に近い場所をオグルが陣取る。
緊迫した空気が流れるが、特に箱についての説明のないまま挨拶が始まった。
「この度は、急な申し出にお応え頂きありがとうございます。私は赤花国国王アマリリス一世と申します」
「こちらこそご足労をおかけしました。私は緑鉄国国王クオーンです。こちらは私の無二の伴侶であるツカサです」
無二の伴侶を強調し、俺を抱き寄せるクオーン。俺が舐められないようにするためだろう。惚れ直しつつ、営業スマイルを浮かべた。
「ツカサと申します。アマリリス一世陛下、この度のご訪問とご即位を心よりお喜び申し上げます」
アマリリスは柔らかく微笑んだ。
「クオーン陛下、並びにクオーン陛下の名高き宝であるツカサ王配陛下からお言葉を頂き、光栄に存じます」
挨拶を交わし、共に大きな机を挟んで向かいあって座った。箱は、アマリリスの斜め後ろの床に直置きにされた。気を取り直して観察する。
アマリリスの第一印象は、今まで見てきた誰よりも高貴さをそなえた美貌の女性。真紅の髪は艶やかで、同じ色の目は理知の光が宿っている。威厳がありつつも柔らかな微笑みは、上に立つ者特有の自信と余裕に満ちていた。
営業時代で一番の得意先の会長がこんな雰囲気だったな。やわらかーくて、やさしーくて、油断ならねえおっかねえ人だった。ヘラヘラ笑って相槌打ってる間に、とんでもねえ値引きとか変更とかをさせられそうになったもんだ。
クオーンも穏やかさを装いつつ、最大限注意して話している。そして、俺と同じく例の箱に注意を向けていた。
大きさは俺が一人入るくらい。金色のリボンが結ばれていて、いかにもプレゼントといった見た目だ。
プレゼント。贈り物。なんだか嫌な予感がする。
さっきまでは、説明が欲しかった。けれど、やっぱりこの箱について触れたくない。そう強く念じていたが、アマリリスはにっこりと笑って箱に手を掲げた。
「これまでの愚行のお詫びです。お気に召して頂ければ幸いです」
それは、一昔前のバラエティ番組のような光景だった。
金色のリボンが解け、側面がバラバラに展開し、箱の中身が露わになった。
オグルが臨戦態勢をとったが。
「は?なぜ、貴方が……」
呆然と呟き、固まった。俺もまた、眼前の光景に間抜けな声が出た。
「え?誰?って言うか拉致?犯罪?」
箱の中にいたのは、赤い髪に緑色の目をした美青年だった。身長は俺より少し低いくらいだろうか?俺より肩幅がある均整の取れた身体をしている。歳も二十歳くらいだ。
ただし、真っ赤なウェディングドレスを着ていた。意味がわからない。
「彼は……王太子……赤花国のシスル王太子では?」
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