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第二章王太子、オークの花嫁になる
元サラリーマン、どすけべウェディングドレスを着る【9】
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「人間至上主義と伝統重視が一気に加速しました。理由ですか?うーん。高貴なお方のお考えは分かりかねます」
「当てずっぽうでいいよ。ソーイから見て心当たりはない?」
「そうですねえ……不敬な言い方ですが、現国王は人望も能力もない方です。国王になれたのは、伝統に則って長子相続にすべしとした原点回帰派の後ろ盾があったからです。要するに、彼らの言いなりなんですよね」
「ああ、なるほど」
民から見てもあからさまだったのだろう。この辺りのことも王配教育の時に聞いてみるか。彼らは俺に気を使って赤花国の話を最低限しかしないが、嫌でも関わることのある相手だ。営業活動と一緒で、綿密なリサーチは必要だろう。
「原点回帰派と現国王は『赤花国を人間だけの国に戻す。周辺諸国の多種族も討伐する』と言って戦争に明け暮れるようになりました。そのための増税と徴兵で国は荒れて……私のような亡命者が続出しました」
「……苦労したんだな」
「異世界から召喚された王配陛下ほどではございませんよ。時々……穏やかだった頃の赤花国が懐かしくなるだけです」
ソーイは少しだけ寂しそうに微笑んだ。
なんだかしんみりしてしまったので、エッチ用衣装の話題で盛り上げた。ソーイは大興奮しながらデザイン画を描き、俺を呼びに来た女官は固まり、オグルは「さっさと事前演習に行け!」と、ブチ切れたのだった。
事前演習こと式のリハーサルは無事に終わった。俺とクオーンが、お互いの正装に見惚れて進行が遅れまくった以外は特に問題もない。エッチする時用のスーツの完成を急がせよう。クオーンの分もちゃんと作ってもらわなければと決心した。このまま結婚式を迎えると思っていた。
しかし数日後、とんでもない知らせが入った。
赤花国で政変が起こり、国王が王座から引きずり下ろされた。
しかもそれだけではない。新国王が緑鉄国への訪問を打診した。俺たちの結婚祝いと正式な謝罪のためという名目で。
◆◆◆◆◆
俺とクオーンが知らせを受けたのは、子供部屋でクルーガの寝顔を見ている時だった。ぷっくりした緑色の頬、ふわふわした黒髪の生えた我が子。あまりにも可愛くて、クオーンと一緒にずっと見つめていると、知らせが入った。
「わかった。報告ご苦労。ツカサ、君も来てくれ」
「うん。……クルーガ、またな」
揺籠の中の我が子と離れ、臣下たちが待つ会議室に移動する。詳細な報告を受け、意見交換し、今後の方針を決めるためだ。とはいえ、向こうにいる間諜もあまりの展開の速さに情報収集が追いついていない状態らしい。確かな情報はあまりに少なかった。
新国王は、第一王女アマリリス・ディーダ・クリムゾングローリーだ。なんと彼女が一人で、わずか一日で宮廷を制圧したという。そして穏健派をまとめ上げ、父親である前国王を退位させて戴冠した。戴冠から三日経った今日、訪問を打診してきたという。
「動きが速すぎる。どう考えても外交より内政に力入れる時期じゃん。魔法使えばすぐ来れるからって、なんで俺らへの祝いと謝罪にわざわざ本人が来るの?ぶっちゃけめっちゃ怪しい。不穏。断りたい。……けど、向こうの意図とか状況を知るチャンスでもあるよな」
円卓を囲んで座る臣下たちがゲンナリした様子で頷く。ただでさえ結婚式の準備で疲弊しているのだ。後でボーナスを出そう。
疲弊から口の重い彼らを代表し、いつもの突っ込み近衛騎士隊長から有能王族モードになったオグルが発言する。
「王配陛下のおっしゃる通りです。断れば、それを理由に戦端が開かれる恐れもあります」
「当てずっぽうでいいよ。ソーイから見て心当たりはない?」
「そうですねえ……不敬な言い方ですが、現国王は人望も能力もない方です。国王になれたのは、伝統に則って長子相続にすべしとした原点回帰派の後ろ盾があったからです。要するに、彼らの言いなりなんですよね」
「ああ、なるほど」
民から見てもあからさまだったのだろう。この辺りのことも王配教育の時に聞いてみるか。彼らは俺に気を使って赤花国の話を最低限しかしないが、嫌でも関わることのある相手だ。営業活動と一緒で、綿密なリサーチは必要だろう。
「原点回帰派と現国王は『赤花国を人間だけの国に戻す。周辺諸国の多種族も討伐する』と言って戦争に明け暮れるようになりました。そのための増税と徴兵で国は荒れて……私のような亡命者が続出しました」
「……苦労したんだな」
「異世界から召喚された王配陛下ほどではございませんよ。時々……穏やかだった頃の赤花国が懐かしくなるだけです」
ソーイは少しだけ寂しそうに微笑んだ。
なんだかしんみりしてしまったので、エッチ用衣装の話題で盛り上げた。ソーイは大興奮しながらデザイン画を描き、俺を呼びに来た女官は固まり、オグルは「さっさと事前演習に行け!」と、ブチ切れたのだった。
事前演習こと式のリハーサルは無事に終わった。俺とクオーンが、お互いの正装に見惚れて進行が遅れまくった以外は特に問題もない。エッチする時用のスーツの完成を急がせよう。クオーンの分もちゃんと作ってもらわなければと決心した。このまま結婚式を迎えると思っていた。
しかし数日後、とんでもない知らせが入った。
赤花国で政変が起こり、国王が王座から引きずり下ろされた。
しかもそれだけではない。新国王が緑鉄国への訪問を打診した。俺たちの結婚祝いと正式な謝罪のためという名目で。
◆◆◆◆◆
俺とクオーンが知らせを受けたのは、子供部屋でクルーガの寝顔を見ている時だった。ぷっくりした緑色の頬、ふわふわした黒髪の生えた我が子。あまりにも可愛くて、クオーンと一緒にずっと見つめていると、知らせが入った。
「わかった。報告ご苦労。ツカサ、君も来てくれ」
「うん。……クルーガ、またな」
揺籠の中の我が子と離れ、臣下たちが待つ会議室に移動する。詳細な報告を受け、意見交換し、今後の方針を決めるためだ。とはいえ、向こうにいる間諜もあまりの展開の速さに情報収集が追いついていない状態らしい。確かな情報はあまりに少なかった。
新国王は、第一王女アマリリス・ディーダ・クリムゾングローリーだ。なんと彼女が一人で、わずか一日で宮廷を制圧したという。そして穏健派をまとめ上げ、父親である前国王を退位させて戴冠した。戴冠から三日経った今日、訪問を打診してきたという。
「動きが速すぎる。どう考えても外交より内政に力入れる時期じゃん。魔法使えばすぐ来れるからって、なんで俺らへの祝いと謝罪にわざわざ本人が来るの?ぶっちゃけめっちゃ怪しい。不穏。断りたい。……けど、向こうの意図とか状況を知るチャンスでもあるよな」
円卓を囲んで座る臣下たちがゲンナリした様子で頷く。ただでさえ結婚式の準備で疲弊しているのだ。後でボーナスを出そう。
疲弊から口の重い彼らを代表し、いつもの突っ込み近衛騎士隊長から有能王族モードになったオグルが発言する。
「王配陛下のおっしゃる通りです。断れば、それを理由に戦端が開かれる恐れもあります」
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