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蜜月の日々と宴の支度
半魔の勇者と第三王子の披露宴(第二章&本編最終話)
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あっという間に、披露宴の当日を迎えた。
季節は春の盛りだ。窓の外は雲一つない青空が広がっている。窓の中、シャンデリアが輝く王城の広間は今までのどんな宴よりも飾り立てられていた。
この日の為に育てられた花々が飾られ、瀟洒なレースのクロスがかけられたテーブルが整然と並び、その上に磨き上げた銀器や陶器に盛られた料理が置かれている。見目も味も一級品。
来賓の、国内外の王侯貴族たちの衣装も色とりどりで華やかだ。
(ルナルシオン、綺麗だ……)
しかし、そのどれもがルナルシオンの美しさには敵わない。
「この度は、我が息子第三王子ルナルシオンおよび勇者ダガンの披露宴に……」
ダガンは、壇上で隣に立つ伴侶の美しさに感動していた。華やかな会場の様子も、バルドレッドの口上も頭に入ってない。
(俺とルナルシオンの色が一つになってて、いい。たまらない)
本日の主役である二人は、形が違うが同じ生地と刺繍を施された礼装を着ている。ダガンが騎士の礼装に近い形なのに対し、ルナルシオンはゆったりと袖も裾も長い優美なデザインだ。生地の色は白金と黒。刺繍は水色と金色のニ色。互いの髪と目の色でそろえている。刺繍の柄は同じで、ふんだんにトパーズ、アクアマリン、ダイヤモンドなどの宝石を縫い付けている。
そして、ルナルシオンの胸元にはあのトパーズの首飾りが輝き、髪には同じ色のトパーズと金の鎖で出来た飾りが編み込まれていた。
全てがルナルシオンの美しさを引き立たせている。見た瞬間から、ダガンの視線は釘付けになっていた。
「ダガン、そんなに見られると恥ずかしいよ」
ルナルシオンが小声でたしなめる。しかしその眼差しは優しく、とても嬉しそうだ。ダガンは恥ずかしくなったが、それでも目を離せなかった。
「わ、悪い。あんまり綺麗で目が離せなくてな」
「ふふっ。ありがとう。君も素敵だよ。同じ色をまとっているのも嬉しいし。もっと色を揃えた衣装を増やそうか」
「そうだな。ああ、いや、俺が贈りたい衣装があるから、そっちを先に……」
「えー。こんな感じで、ウチの勇者と第三王子は終始イチャついてます。これからも見守っていただければと思います」
会場があたたかな笑い声に包まれたが、ダガンとルナルシオンは互いの声だけしか聞いていなかった。
こうして、披露宴が終わった後も二人は幸せに暮らしたのだった。
おしまい
◆◆◆◆◆
お読みいただきありがとうございます。17:10分に登場人物紹介の更新があります。
また、明日からは番外編の更新もありますので、もうしばらくお付き合いくださいませ。
季節は春の盛りだ。窓の外は雲一つない青空が広がっている。窓の中、シャンデリアが輝く王城の広間は今までのどんな宴よりも飾り立てられていた。
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しかし、そのどれもがルナルシオンの美しさには敵わない。
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ダガンは、壇上で隣に立つ伴侶の美しさに感動していた。華やかな会場の様子も、バルドレッドの口上も頭に入ってない。
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本日の主役である二人は、形が違うが同じ生地と刺繍を施された礼装を着ている。ダガンが騎士の礼装に近い形なのに対し、ルナルシオンはゆったりと袖も裾も長い優美なデザインだ。生地の色は白金と黒。刺繍は水色と金色のニ色。互いの髪と目の色でそろえている。刺繍の柄は同じで、ふんだんにトパーズ、アクアマリン、ダイヤモンドなどの宝石を縫い付けている。
そして、ルナルシオンの胸元にはあのトパーズの首飾りが輝き、髪には同じ色のトパーズと金の鎖で出来た飾りが編み込まれていた。
全てがルナルシオンの美しさを引き立たせている。見た瞬間から、ダガンの視線は釘付けになっていた。
「ダガン、そんなに見られると恥ずかしいよ」
ルナルシオンが小声でたしなめる。しかしその眼差しは優しく、とても嬉しそうだ。ダガンは恥ずかしくなったが、それでも目を離せなかった。
「わ、悪い。あんまり綺麗で目が離せなくてな」
「ふふっ。ありがとう。君も素敵だよ。同じ色をまとっているのも嬉しいし。もっと色を揃えた衣装を増やそうか」
「そうだな。ああ、いや、俺が贈りたい衣装があるから、そっちを先に……」
「えー。こんな感じで、ウチの勇者と第三王子は終始イチャついてます。これからも見守っていただければと思います」
会場があたたかな笑い声に包まれたが、ダガンとルナルシオンは互いの声だけしか聞いていなかった。
こうして、披露宴が終わった後も二人は幸せに暮らしたのだった。
おしまい
◆◆◆◆◆
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また、明日からは番外編の更新もありますので、もうしばらくお付き合いくださいませ。
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