半魔の勇者は第三王子を寵愛する

花房いちご

文字の大きさ
上 下
22 / 36
蜜月の日々と宴の支度

宴の支度【5】*

しおりを挟む
 ルナルシオンは護衛騎士に目配せし、立ち上がった。意を汲んだ護衛騎士がカタストロを入り口から下がらせる。

「ええい!離せ下郎が!」

 ルナルシオンは足早に東屋から出た。一刻も早くバルドレッドとスカイレッドに報告し、ギリク王国へ抗議文を送らねばならない。

「ルナルシオン殿下!殿下はなにか思い違いをされています!私は聖女クレメンディーナの末裔にしてギリク王国が王弟!私こそが貴方様に相応しいのは自明ではございませんか!それに私は!十年前のあの日からずっと貴方を想っていたのですよ!」

 ルナルシオンは無視し、去った。
 その後すぐ、ルナルシオンはバルドレッドとスカイレッドに報告した。

「あのクソガキ!ぶっ飛ばしてやる!そのままギリクにカチコミじゃ……ぶべあっ!」

 バルドレッドは怒りのままカタストロを殴りに行こうとしたが、スカイレッドの足払いでぶっ飛んで壁に埋まった。

「陛下、お気持ちはわかりますが、一人で突っ走ってはなりません。何度も諫言かんげんされているでしょう」

 第一王子スカイレッド・ローゼラント。歳は二十六歳、白金の髪と緑色の目を持つ柔和な顔立ちの王太子だ。彼は眉を下げ、ルナルシオンの手にそっと触れた。あたたかさにホッとする。この四歳上の兄を、ルナルシオンは心から信頼し敬愛している。

「ルナルシオンには苦労をかけたね。後は私に任せて欲しい」

 ルナルシオンは頷き、月花離宮げっかりきゅうに帰った。
 執事たちはあたたかく迎えてくれる。癒されたが、同時にダガンが居ない事実を突きつけられる思いだった。夕食も食べずに寝室に篭った。心はもちろん、身体が切なくて仕方なかったのだ。
 日々、ダガンへの飢餓感は抱いていた。身を慰めない日の方が少ないほどだ。しかし、今夜の衝動の激しさは筆舌に尽くし難かった。

「ダガン……早く帰って来て……」

 ルナルシオンは服を脱ぎ、首飾りだけを身につけた状態でベッドに身を横たえた。衝動のまま我が身を愛撫する。飢えた肌は、少し指で触れただけで汗ばんで快感を拾った。魔術ランプの薄明かりの中、白い身体が艶かしく浮かぶ。

「あっ……ダガン……!」

 片手で乳首を摘み、もう片手で陰茎を扱いた。乳首からは痺れるような快感が走るが、陰茎の反応は鈍い。どんなに扱いても甘勃ちのまま育たなかった。ダガンと最後に抱き合った夜から日増しに反応が鈍くなっている。たっぷり注がれた精液のためだろう。
 代わりに、窄まりがひどく疼く。

「やっぱり……こっちじゃなきゃ……」

 指に香油をたっぷりまとわせ、ダガンがそうしたように自分の尻を揉む。窄まりが物欲しそうにヒクつき、肉壁が期待でうごめく。

「んっ……きもちぃ……」

 片手で乳首をいじり、陰茎をシーツに擦りつけつつ窄まりに指を入れる。ダガンより一回り細い指が二本、あっさりと入っていく。ルナルシオンは愛しい夫の指を思い浮かべ、動かした。

「あぁっ!好きっ!ダガン好き……っ!」

 狂おしい快感が生まれる場所を抉る。瞬間、頭の中が白くなった。意識はそのまま、射精のない快楽の波にさらわれていく。ルナルシオンはしばし、荒い息を吐きながら快楽の波に浸っていた。
 突然、声がかけられるまで。

「なんと淫らな……」

 声の主はカタストロだった。ベッドの上に乗り上げ、血走った目でルナルシオンを凝視している。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

処理中です...