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蜜月の日々と宴の支度
宴の支度【1】
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まず、ダガンは元々所属していた王立騎士団第三師団を率い、各地へ残党狩りに行く。半年で全てとはいかないが、要所にいる残党だけでも殲滅しておかなければならない。
ルナルシオンは、官僚や文官たちと共に披露宴の準備に取り掛かった。どちらも一人でやるわけではないが、ダガンもルナルシオンもお飾りの旗印になるつもりはない。甘い生活はお預けになった。
褒賞の宴の翌々日、ダガンは旅立った。
「しばらく会えないな……早く帰れるよう努力する。お前も無理をするなよ」
「うん。君が帰って来るのを待ってる。立派な披露宴にしてみせるよ。……あと、身体の方もしっかり準備しておくからね。君のが全部入るように……」
後半は、ダガンだけに聞こえるように囁く。宴の日以降、軽い口付け以外なにもしていないダガンにとっては毒であった。
「お前こんな所で煽りやがって……帰ったら覚えておけよ」
厳しい声とは裏腹に頬を優しく撫でる。ルナルシオンはされるがまま微笑んだ。
「うん。いっぱいお仕置きして欲しい。今だって君を見てるだけで疼くんだ……」
「悪い子だ。今すぐお仕置きしてやろうか?」
戯れる二人に呆れた声がかかる。
「あのー。ダガン様、そろそろ出発を……」
「ダガン殿って伴侶にベタ惚れするタイプだったのか」
「仲睦まじくてなによりっすねー」
「うああああ!忘れろ!俺が悪いが忘れろー!」
うっかり周りに騎士たちがいる事を忘れていたダガンだった。
ともかく、二人はしばし離れ離れになってしまった。
◆◆◆◆◆
ダガンたちは、残党狩りへと東西南北あらゆる場所に赴いた。かなりの強行軍だが、二ヵ月たたぬうちに千近い魔族と魔獣を討伐した。異様な士気の高さによって。
「お前ら!ダガン殿とルナルシオン殿下の披露宴と新婚生活のため!さっさと終わらすぞ!」
「「「「「応!」」」」」
第三師団師団長の号令とその答えで山が震え、魔獣たちが怯えて後ずさる。
「な、なあ、ありがたいが、これを毎回やる意味はあるのか?」
「何言ってんすかダガン様!俺たちの気持ちっすよ!受け取って下さい!」
「ヒャッハー!邪魔者は皆殺しだー!」
「殺せ殺せええー!」
団員たちは爽やかに笑いながら魔獣を屠っていく。返り血と内臓が凄い。師団長も頷く。血塗れの顔で爽やかに。
「実際、団員の気合いも入りますしね。あなたは自覚する以上に人望があるんですよ。ダガン元師団長」
「そうか……」
喜べばいいのかドン引けばいいのか。わからないダガンであった。
ルナルシオンへの手紙に書いて送ると、素直に喜んでくれた。そのルナルシオンの方も、通常の公務や研究と並行しているのもあって大変だが順調に準備は進んでいるらしい。
衣装、式進行、演出、食事、警備規模の内容の決定と手配。自他国の要人に送る招待状の作成と発送、その他諸々。官僚たちはもちろん、兄弟たちが支えてくれているという。
皆に祝福されているのを実感した。帰るのが楽しみで仕方ない。ルナルシオンからの赤裸々な恋文もダガンを急かして止まない。
『いつも君を想っているからか、夜は身体が熱くてたまらない。私の指では物足りなくて狂いそうだ』
『君の残した服と、君の目を思わせる首飾りのトパーズに慰められている。けれど私を強く抱き締める腕と、甘く見つめる眼差しには敵わない』
『後ろを弄らずにいられた頃を思い出せない。早く会いたいよ』
今すぐ月花離宮に帰って抱き合いたい。
それに、一つだけ気がかりがあった。
ルナルシオンに悪い虫が付き纏っているのだ。
ルナルシオンは、官僚や文官たちと共に披露宴の準備に取り掛かった。どちらも一人でやるわけではないが、ダガンもルナルシオンもお飾りの旗印になるつもりはない。甘い生活はお預けになった。
褒賞の宴の翌々日、ダガンは旅立った。
「しばらく会えないな……早く帰れるよう努力する。お前も無理をするなよ」
「うん。君が帰って来るのを待ってる。立派な披露宴にしてみせるよ。……あと、身体の方もしっかり準備しておくからね。君のが全部入るように……」
後半は、ダガンだけに聞こえるように囁く。宴の日以降、軽い口付け以外なにもしていないダガンにとっては毒であった。
「お前こんな所で煽りやがって……帰ったら覚えておけよ」
厳しい声とは裏腹に頬を優しく撫でる。ルナルシオンはされるがまま微笑んだ。
「うん。いっぱいお仕置きして欲しい。今だって君を見てるだけで疼くんだ……」
「悪い子だ。今すぐお仕置きしてやろうか?」
戯れる二人に呆れた声がかかる。
「あのー。ダガン様、そろそろ出発を……」
「ダガン殿って伴侶にベタ惚れするタイプだったのか」
「仲睦まじくてなによりっすねー」
「うああああ!忘れろ!俺が悪いが忘れろー!」
うっかり周りに騎士たちがいる事を忘れていたダガンだった。
ともかく、二人はしばし離れ離れになってしまった。
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ダガンたちは、残党狩りへと東西南北あらゆる場所に赴いた。かなりの強行軍だが、二ヵ月たたぬうちに千近い魔族と魔獣を討伐した。異様な士気の高さによって。
「お前ら!ダガン殿とルナルシオン殿下の披露宴と新婚生活のため!さっさと終わらすぞ!」
「「「「「応!」」」」」
第三師団師団長の号令とその答えで山が震え、魔獣たちが怯えて後ずさる。
「な、なあ、ありがたいが、これを毎回やる意味はあるのか?」
「何言ってんすかダガン様!俺たちの気持ちっすよ!受け取って下さい!」
「ヒャッハー!邪魔者は皆殺しだー!」
「殺せ殺せええー!」
団員たちは爽やかに笑いながら魔獣を屠っていく。返り血と内臓が凄い。師団長も頷く。血塗れの顔で爽やかに。
「実際、団員の気合いも入りますしね。あなたは自覚する以上に人望があるんですよ。ダガン元師団長」
「そうか……」
喜べばいいのかドン引けばいいのか。わからないダガンであった。
ルナルシオンへの手紙に書いて送ると、素直に喜んでくれた。そのルナルシオンの方も、通常の公務や研究と並行しているのもあって大変だが順調に準備は進んでいるらしい。
衣装、式進行、演出、食事、警備規模の内容の決定と手配。自他国の要人に送る招待状の作成と発送、その他諸々。官僚たちはもちろん、兄弟たちが支えてくれているという。
皆に祝福されているのを実感した。帰るのが楽しみで仕方ない。ルナルシオンからの赤裸々な恋文もダガンを急かして止まない。
『いつも君を想っているからか、夜は身体が熱くてたまらない。私の指では物足りなくて狂いそうだ』
『君の残した服と、君の目を思わせる首飾りのトパーズに慰められている。けれど私を強く抱き締める腕と、甘く見つめる眼差しには敵わない』
『後ろを弄らずにいられた頃を思い出せない。早く会いたいよ』
今すぐ月花離宮に帰って抱き合いたい。
それに、一つだけ気がかりがあった。
ルナルシオンに悪い虫が付き纏っているのだ。
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