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蜜月の日々と宴の支度
蜜月の日々【4】
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その後の宴の席では、サンダーソニアとフォラータが周囲に面白おかしく旅の話をし、ザリードがステラリリスとダンスし、グロリオーサが『神聖愛歌』を歌った。結果、複数の不倫が暴かれ、要人暗殺と理不尽な婚約破棄が未然に防がれ広間は一時騒然とした。グロリオーサと共に過ごしていればよくある事だ。あえてスルーしたダガンは、旧知の騎士たちと話したり、ルナルシオンを仲間たちに紹介して楽しい時間を過ごした。
「グロリオーサ殿、あの時はありがとうございました。私はダガンと結婚できて幸せです」
「お二人の真実の愛あってのこと。私はお手伝いしたまでです。お礼にはおよびませんわ」
「聖女様に認められた事も嬉しかったですが、ダガンの仲間である貴女に認められた事が、より嬉しかったのです」
「まあ……。ふふふ。ルナルシオン殿下の心根がこれほど真っ直ぐとは存じませんでした。ダガンさんが骨抜きになる訳ですわね。では私も、大切な仲間のお連れ様にお祝いをお渡ししましょう」
グロリオーサは側で控えていた神官に目配せする。神官はあらかじめ用意してたらしく、速やかにそれを渡した。絹張りの台座の上に乗っているのは、濃い金色の宝石があしらわれた首飾りである。デザインはシンプルで宝石も小粒だが、宝石が放つ輝きは神々しい。金色だけでなく桃色の光も帯びている。
「このトパーズには私の守護の祈りを吹き込んでいます。邪悪な者から貴方様を御守りするでしょう」
「こんな貴重な物を……!」
グロリオーサはにっこりと微笑んだ。常に浮かべている、聖女に相応しい控えめな笑みではない心からの笑顔である。
「どうぞ受け取って下さい。大切な友人夫夫のお力になりたいのです」
「……ありがとうございます。肌身離さず身につけますね。……ダガンの目の色だ。嬉しいな」
ルナルシオンは薄青い目を潤ませた。ダガンは照れ臭くて居た堪れなかったが、同時に嬉しかった。そんなダガンの背をバシン!と、サンダーソニアが叩く。
「アタシからは気合いだ!ダガン!ボーッとしてないで首飾りを着けてやんな!」
「わ、わかった!わかったから叩くな!おい!やめろって!」
どっと笑い声が上がる。ルナルシオンも珍しく、人前で声を上げて笑っていた。
かなりアクが強い仲間たちだが、ルナルシオンは馴染めたようだ。囃されながら首飾りを着けてやった後も、たわいの無い話で場が盛り上がった。
しかし、飲み物を取りに少し離れた時にそれは起こった。
「今思えば殿下の話ばっかりだったよ!賢くて努力家で尊いお方だってさあ、騎士の忠義って奴だと思ってたけど、初恋だったとはねえ。月を見ればため息をついてたよ。殿下はどうされているだろうかって」
「あああああ!嬉しい!もっと聞かせて欲しい!」
「では某がダガン殿の聖剣についてお話しましょう。いやはや情熱的なことになんと……」
「やめろ!人が居ない間に何言ってんだ!」
「ダガン、いいところなのに。フォラータ殿、サンダーソニア殿、教えてくれてありがとう。また頼むよ」
ダガンは喚くルナルシオンを横抱きにし、バルコニーに逃げた。
ダガンは宴の主賓であり、ルナルシオンはその伴侶だ。閉会まで帰れないが、こういった場所に行けば『取り込み中。話しかけるな』という意思表示になる。もちろん、会話を聞かれないように魔具を発動させることも忘れない。
バルコニーの端に休憩用の長椅子があるので、ダガンはルナルシオンを横抱きにしたままそこに座った。
「ダガン、怒ったのか?」
「グロリオーサ殿、あの時はありがとうございました。私はダガンと結婚できて幸せです」
「お二人の真実の愛あってのこと。私はお手伝いしたまでです。お礼にはおよびませんわ」
「聖女様に認められた事も嬉しかったですが、ダガンの仲間である貴女に認められた事が、より嬉しかったのです」
「まあ……。ふふふ。ルナルシオン殿下の心根がこれほど真っ直ぐとは存じませんでした。ダガンさんが骨抜きになる訳ですわね。では私も、大切な仲間のお連れ様にお祝いをお渡ししましょう」
グロリオーサは側で控えていた神官に目配せする。神官はあらかじめ用意してたらしく、速やかにそれを渡した。絹張りの台座の上に乗っているのは、濃い金色の宝石があしらわれた首飾りである。デザインはシンプルで宝石も小粒だが、宝石が放つ輝きは神々しい。金色だけでなく桃色の光も帯びている。
「このトパーズには私の守護の祈りを吹き込んでいます。邪悪な者から貴方様を御守りするでしょう」
「こんな貴重な物を……!」
グロリオーサはにっこりと微笑んだ。常に浮かべている、聖女に相応しい控えめな笑みではない心からの笑顔である。
「どうぞ受け取って下さい。大切な友人夫夫のお力になりたいのです」
「……ありがとうございます。肌身離さず身につけますね。……ダガンの目の色だ。嬉しいな」
ルナルシオンは薄青い目を潤ませた。ダガンは照れ臭くて居た堪れなかったが、同時に嬉しかった。そんなダガンの背をバシン!と、サンダーソニアが叩く。
「アタシからは気合いだ!ダガン!ボーッとしてないで首飾りを着けてやんな!」
「わ、わかった!わかったから叩くな!おい!やめろって!」
どっと笑い声が上がる。ルナルシオンも珍しく、人前で声を上げて笑っていた。
かなりアクが強い仲間たちだが、ルナルシオンは馴染めたようだ。囃されながら首飾りを着けてやった後も、たわいの無い話で場が盛り上がった。
しかし、飲み物を取りに少し離れた時にそれは起こった。
「今思えば殿下の話ばっかりだったよ!賢くて努力家で尊いお方だってさあ、騎士の忠義って奴だと思ってたけど、初恋だったとはねえ。月を見ればため息をついてたよ。殿下はどうされているだろうかって」
「あああああ!嬉しい!もっと聞かせて欲しい!」
「では某がダガン殿の聖剣についてお話しましょう。いやはや情熱的なことになんと……」
「やめろ!人が居ない間に何言ってんだ!」
「ダガン、いいところなのに。フォラータ殿、サンダーソニア殿、教えてくれてありがとう。また頼むよ」
ダガンは喚くルナルシオンを横抱きにし、バルコニーに逃げた。
ダガンは宴の主賓であり、ルナルシオンはその伴侶だ。閉会まで帰れないが、こういった場所に行けば『取り込み中。話しかけるな』という意思表示になる。もちろん、会話を聞かれないように魔具を発動させることも忘れない。
バルコニーの端に休憩用の長椅子があるので、ダガンはルナルシオンを横抱きにしたままそこに座った。
「ダガン、怒ったのか?」
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