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蜜月の日々と宴の支度
蜜月の日々【3】
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翌朝、二人は礼装に身を包み王城に向かった。ダガンは黒地に銀に近い水色の刺繍を施した騎士の礼装で、ルナルシオンは白地に金色の刺繍を施した礼装だ。互いの目の色の刺繍を施すことで、婚姻したことを示している。
まずは、うやむやになっていた褒賞の授与式だ。ダガンら勇者一行は、あの時のように壇上の下に整列して褒賞を受けた。ダガンはルナルシオンと結婚したので壇上にあがる権利があるが、仲間たちを蔑ろにしているようで嫌だったのだ。
「別に良いのにねえ」
「意外と気にしいなダガンさんらしい」
などと言いつつ、仲間たちはにっこりした。
「お前ら、私語は慎め」
ともかく、勇者ダガンは公爵の位と第三王子ルナルシオンを得た。また、今後も公爵として国防に携わる限り莫大な年金が支給される。聖女、魔術師、剣聖、拳士らもそれぞれが功績に見合った褒賞を与えられた。
なお、魔術師ザリードは伯爵の位と、研究費として多額の報奨金を得た。ステラリリスとどうなるかは、彼ら自身の努力次第だろう。と、いうか若者たちは自分たちで色々と計画や根回しをしていたらしい。
(アイツ、まだちょっと焦げてるな……)
ぶち壊したバルドレッドはあの後めちゃくちゃ怒られて、ステラリリスに物理的に燃やされたりぶっ飛ばされていたりした。そのせいで授与式の日取りとダガンたちの蜜月が微妙に伸びていたのだが、話の本筋から外れるので割愛する。
また、勇者以外にも褒賞を与えられた者たちがいた。旅の支援者たちはもちろん、魔獣と魔族の討伐に高い功績があった者たちである。ローゼラント王国では、魔王が復活してから魔獣と魔族の出現率が跳ね上がり深刻化していたのだ。
「第三王子ルナルシオンよ。汝の功績は大である」
その褒賞を与えられた一人に、第三王子ルナルシオンもいた。様々な古代および異国語の魔術書の翻訳に尽力し、数々の古代魔術と遺物の発見に貢献したからである。すでに管理していた王領を正式に譲り受け、さらにダガンとは嫁ぐ形で結ばれたが王子の位はそのままになった。反対する声は一つもない。五年前までは、武術も魔術も才がないルナルシオンを軽んじる者が少なくなかった。ルナルシオンはその頭脳と立ち回りで今の地位を盤石にしたのだ。
(流石は俺のルナルシオンだ)
ダガンは我が事のように誇らしく、嬉しかった。
「皆、楽にせよ」
全ての褒賞の授与が終わり、宴の開始までの休憩時間になっても、壇上のルナルシオンを見ていた。ルナルシオンも時折、ダガンに柔らかな眼差しを向けていた。
幸福を噛み締めていたダガンに、勇者一行の一人である拳士サンダーソニアが話しかける。
「アンタ、本当にあの王子様が好きなんだねえ」
「っ!か、顔に出てたか?参ったな……」
狼狽えるダガン。サンダーソニアは豪快に笑ってバンッ!と、背を叩いた。彼女はダガンよりずっと背は低いが、力は同じぐらい強い。攻撃してるとしか思えない衝撃が走った。
「冗談みたいな流れで結婚した時はどうなるかと思ったけど安心したよ!アタシは故郷に帰るけど元気でやんな!」
「あ、ああ。旦那さんと子供たちによろしくな」
五年間ともに過ごした仲間たちとは、今日でお別れだ。それぞれが、故郷で復興作業に従事したり、元の生活に戻ったり、新しい勤めに従事するのだ。ひょっとしたら、もう一生会う事はないかもしれない。しんみりとするダガンだが、聖女グロリオーサは安心させるように微笑む。
「私は以前のように救いをもたらすため各地を周りますが、皆様にも会いに行きますわ」
「某も里に帰るが、復興後はいつでも馳せ参じよう。戦でも酒盛りでも、気軽に呼んでくれてかまわぬ」
「ええ……フォラータさんはお酒はちょっと。いや、剣で脅しても駄目ですよ。禁酒しなさい酒乱剣士が」
「あはは!ちんちくりん魔術師ザリードも言うようになったねえ!」
「ちんちくりんは止めてくださいよ。猪拳士め。と、言いますかダガンさん。少なくとも半年後には私たち再会しますよ」
「ん?なんかあったか?」
「えっ。まさか聞いてないんですか?あなたとルナルシオン殿下の披露宴が行われるんですが?」
一切聞いてない。バルドレッドが勝手に決めたのだろう。親友と息子に対して雑すぎる。
「いやあ、アンタたちがいちゃついてて話聞いてなかっただけじゃないか?恋愛結婚なんだから新婚なんてそんなものだけどさ」
「確かに。ダガンさんって思い込み激しいところがありますし」
否定できないのでバルドレッドをぶん殴ってから確認するのはやめにした。確認してから殴ろう。
まずは、うやむやになっていた褒賞の授与式だ。ダガンら勇者一行は、あの時のように壇上の下に整列して褒賞を受けた。ダガンはルナルシオンと結婚したので壇上にあがる権利があるが、仲間たちを蔑ろにしているようで嫌だったのだ。
「別に良いのにねえ」
「意外と気にしいなダガンさんらしい」
などと言いつつ、仲間たちはにっこりした。
「お前ら、私語は慎め」
ともかく、勇者ダガンは公爵の位と第三王子ルナルシオンを得た。また、今後も公爵として国防に携わる限り莫大な年金が支給される。聖女、魔術師、剣聖、拳士らもそれぞれが功績に見合った褒賞を与えられた。
なお、魔術師ザリードは伯爵の位と、研究費として多額の報奨金を得た。ステラリリスとどうなるかは、彼ら自身の努力次第だろう。と、いうか若者たちは自分たちで色々と計画や根回しをしていたらしい。
(アイツ、まだちょっと焦げてるな……)
ぶち壊したバルドレッドはあの後めちゃくちゃ怒られて、ステラリリスに物理的に燃やされたりぶっ飛ばされていたりした。そのせいで授与式の日取りとダガンたちの蜜月が微妙に伸びていたのだが、話の本筋から外れるので割愛する。
また、勇者以外にも褒賞を与えられた者たちがいた。旅の支援者たちはもちろん、魔獣と魔族の討伐に高い功績があった者たちである。ローゼラント王国では、魔王が復活してから魔獣と魔族の出現率が跳ね上がり深刻化していたのだ。
「第三王子ルナルシオンよ。汝の功績は大である」
その褒賞を与えられた一人に、第三王子ルナルシオンもいた。様々な古代および異国語の魔術書の翻訳に尽力し、数々の古代魔術と遺物の発見に貢献したからである。すでに管理していた王領を正式に譲り受け、さらにダガンとは嫁ぐ形で結ばれたが王子の位はそのままになった。反対する声は一つもない。五年前までは、武術も魔術も才がないルナルシオンを軽んじる者が少なくなかった。ルナルシオンはその頭脳と立ち回りで今の地位を盤石にしたのだ。
(流石は俺のルナルシオンだ)
ダガンは我が事のように誇らしく、嬉しかった。
「皆、楽にせよ」
全ての褒賞の授与が終わり、宴の開始までの休憩時間になっても、壇上のルナルシオンを見ていた。ルナルシオンも時折、ダガンに柔らかな眼差しを向けていた。
幸福を噛み締めていたダガンに、勇者一行の一人である拳士サンダーソニアが話しかける。
「アンタ、本当にあの王子様が好きなんだねえ」
「っ!か、顔に出てたか?参ったな……」
狼狽えるダガン。サンダーソニアは豪快に笑ってバンッ!と、背を叩いた。彼女はダガンよりずっと背は低いが、力は同じぐらい強い。攻撃してるとしか思えない衝撃が走った。
「冗談みたいな流れで結婚した時はどうなるかと思ったけど安心したよ!アタシは故郷に帰るけど元気でやんな!」
「あ、ああ。旦那さんと子供たちによろしくな」
五年間ともに過ごした仲間たちとは、今日でお別れだ。それぞれが、故郷で復興作業に従事したり、元の生活に戻ったり、新しい勤めに従事するのだ。ひょっとしたら、もう一生会う事はないかもしれない。しんみりとするダガンだが、聖女グロリオーサは安心させるように微笑む。
「私は以前のように救いをもたらすため各地を周りますが、皆様にも会いに行きますわ」
「某も里に帰るが、復興後はいつでも馳せ参じよう。戦でも酒盛りでも、気軽に呼んでくれてかまわぬ」
「ええ……フォラータさんはお酒はちょっと。いや、剣で脅しても駄目ですよ。禁酒しなさい酒乱剣士が」
「あはは!ちんちくりん魔術師ザリードも言うようになったねえ!」
「ちんちくりんは止めてくださいよ。猪拳士め。と、言いますかダガンさん。少なくとも半年後には私たち再会しますよ」
「ん?なんかあったか?」
「えっ。まさか聞いてないんですか?あなたとルナルシオン殿下の披露宴が行われるんですが?」
一切聞いてない。バルドレッドが勝手に決めたのだろう。親友と息子に対して雑すぎる。
「いやあ、アンタたちがいちゃついてて話聞いてなかっただけじゃないか?恋愛結婚なんだから新婚なんてそんなものだけどさ」
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