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「ごめん。やっぱりあんたの顔が見たい」
「きゃっ!」
シーツに倒れていた身体を、肩を掴まれて強引にあお向けにされる。突然隠していたものを暴かれ、驚きながらも視線を向けた。
楔から開放されたのは一瞬で、膝裏から脚を掬われると、再び奥を突かれた。深く埋められた男のものに喘ぎ、涙が落ちる。
「いい顔。俺に愛されてるあんたの顔、たまらないっ!」
強く打ち付けられ、まじる愛液が音を立てる。
「そんな顔、俺以外に見せちゃだめだよ?」
そうなれば、嫉妬で何をするかわからない。
「貴方だけ、です」
望まれて仕方なく身体を差し出したのではない。カインとなら、そういう行為をしてもいいと思えたから頷いた。
こんな自分に愛されたいと望む目の前の人が愛おしくないはずがない。
(私はこんなにも貴方に乱されているのに)
彼は変わらず美しいままだ。
見上げると、髪を書き上げる仕草が艶やかで目を奪われる。流れる汗まで美しいのだから狡い。
「あ! ん、うっ」
無理やり押し上げられるような感覚に、自分の居場所がわからなくなっていく。
「はっ、そろそろまずいかも」
乱れるシレイネの姿に欲望が膨らむ。薄い腹を撫でると、その下に埋めた熱は解放される寸前だ。
早くこの苦しい時間が終わることを願っているのか、彼女は一生懸命快楽に耐えようとしている。搾り取るように陰茎を締め付け射精を促す。きっと本人は無自覚なのだろうけれど、しっかりとこちらを煽ってくれる。
本当はこの胎に欲を吐き出して、自分のものであることを刻みたい。けれど結局は惚れた弱みである。行為に及ぶ許可は得ているけれど、やはりそこまで冷酷になれないようだ。
「いいよ。無理しなくて」
一つになることを許されただけで満足だ。仕方がないよねとカインは無理やり自分を納得させ、出て行こうとした。
けれど腕を掴んで止めたのはシレイネだ。
「い、から」
「ん?」
もう一度教えてほしいと問いかければ、耐えられなくなった唇が震えながら紡ぐ。
「だして、ください。ここに、貴方がほしいです」
「え――」
信じられない誘いに反応が遅れる。呆けているうちに、腹に触れていた手に彼女のものが重なった。
その言葉がどれほど嬉しかったことか、きっと彼女は知らない。口元は勝手に笑みを作るが、それは決して綺麗な感情じゃない。この薄暗い欲望を、綺麗な彼女は知らなくていいことだ。
縋りつく両手を頭上に押さえつけ、カインは身を屈めて口を塞ぐ。
「んぅ――っ!」
「出すよ」
「あっ、あぁぁっ!」
腰が浮くほどの挿入にシレイネが叫ぶ。どくりと彼女の体内で脈打ち、欲望が溢れる瞬間、跳ねる身体を強く抱きしめられる。
シレイネは自らもカインを求め、腕を回すと大人しく身を任せてくれた。
「はぁ――」
熱い吐息が肌に触れ、彼の欲望が放たれたことを知る。たっぷりと注がれた胎が膨れている気がする。けれどその重みが、愛された証が愛おしい。
やがて受け止めきれなかった白濁が腿を伝い、激しい執着が内側からもシレイネを染め上げた。
「はぁっ……」
「これであんたは俺のものだね」
「貴方のものがいいです。ずっと」
「そう……」
シレイネがはっきりと答えれば、嬉しそうな呟きが聞こえた。
触れるだけのキスを交わし、疲労で動けないシレイネをつぶさないよう、二人でベットに寝転がる。けれど繋がったままの彼女をすぐには離せそうにない。
だがシレイネはそんな未練がましい男とは違って眠そうだ。初めて身体を開かれたのだから、その疲労も大きいだろう。
「いいよ、寝て。疲れたでしょう?」
肌を撫でる優しい手付きに、シレイネはつい頷いてしまいそうになる。けれどまだ眠りたくはない。
「まだ、カインといたいです」
それなのに目を開けていられない。少しでも長くこの幸せを感じていたいと抗っているところだ。
そんなシレイネを見かねてカインはとびきり優しく声をかける。
「大丈夫。ずっと一緒にいるよ」
(ありがとう。カイン)
この世界が乙女ゲームの百年前であることを知った日。取り戻した記憶の中には未来の自分の姿もある。
それは遠い未来の話――
魔王として君臨するシレイネの傍らには常に黒い鳥の姿があった。
鳥の名はカイン。魔王シレイネは、その鳥を唯一心の許せる存在だと語っていた。
(貴方はきっと、たとえ私が魔王になったとしても、寄り添おうとしてくれた)
けれど自分が望むのは破滅の道ではない。目が覚めたのなら、彼と幸せに生きるための道を選ぼう。
優しい声に誘われたシレイネはついに意識を手放した。
「きゃっ!」
シーツに倒れていた身体を、肩を掴まれて強引にあお向けにされる。突然隠していたものを暴かれ、驚きながらも視線を向けた。
楔から開放されたのは一瞬で、膝裏から脚を掬われると、再び奥を突かれた。深く埋められた男のものに喘ぎ、涙が落ちる。
「いい顔。俺に愛されてるあんたの顔、たまらないっ!」
強く打ち付けられ、まじる愛液が音を立てる。
「そんな顔、俺以外に見せちゃだめだよ?」
そうなれば、嫉妬で何をするかわからない。
「貴方だけ、です」
望まれて仕方なく身体を差し出したのではない。カインとなら、そういう行為をしてもいいと思えたから頷いた。
こんな自分に愛されたいと望む目の前の人が愛おしくないはずがない。
(私はこんなにも貴方に乱されているのに)
彼は変わらず美しいままだ。
見上げると、髪を書き上げる仕草が艶やかで目を奪われる。流れる汗まで美しいのだから狡い。
「あ! ん、うっ」
無理やり押し上げられるような感覚に、自分の居場所がわからなくなっていく。
「はっ、そろそろまずいかも」
乱れるシレイネの姿に欲望が膨らむ。薄い腹を撫でると、その下に埋めた熱は解放される寸前だ。
早くこの苦しい時間が終わることを願っているのか、彼女は一生懸命快楽に耐えようとしている。搾り取るように陰茎を締め付け射精を促す。きっと本人は無自覚なのだろうけれど、しっかりとこちらを煽ってくれる。
本当はこの胎に欲を吐き出して、自分のものであることを刻みたい。けれど結局は惚れた弱みである。行為に及ぶ許可は得ているけれど、やはりそこまで冷酷になれないようだ。
「いいよ。無理しなくて」
一つになることを許されただけで満足だ。仕方がないよねとカインは無理やり自分を納得させ、出て行こうとした。
けれど腕を掴んで止めたのはシレイネだ。
「い、から」
「ん?」
もう一度教えてほしいと問いかければ、耐えられなくなった唇が震えながら紡ぐ。
「だして、ください。ここに、貴方がほしいです」
「え――」
信じられない誘いに反応が遅れる。呆けているうちに、腹に触れていた手に彼女のものが重なった。
その言葉がどれほど嬉しかったことか、きっと彼女は知らない。口元は勝手に笑みを作るが、それは決して綺麗な感情じゃない。この薄暗い欲望を、綺麗な彼女は知らなくていいことだ。
縋りつく両手を頭上に押さえつけ、カインは身を屈めて口を塞ぐ。
「んぅ――っ!」
「出すよ」
「あっ、あぁぁっ!」
腰が浮くほどの挿入にシレイネが叫ぶ。どくりと彼女の体内で脈打ち、欲望が溢れる瞬間、跳ねる身体を強く抱きしめられる。
シレイネは自らもカインを求め、腕を回すと大人しく身を任せてくれた。
「はぁ――」
熱い吐息が肌に触れ、彼の欲望が放たれたことを知る。たっぷりと注がれた胎が膨れている気がする。けれどその重みが、愛された証が愛おしい。
やがて受け止めきれなかった白濁が腿を伝い、激しい執着が内側からもシレイネを染め上げた。
「はぁっ……」
「これであんたは俺のものだね」
「貴方のものがいいです。ずっと」
「そう……」
シレイネがはっきりと答えれば、嬉しそうな呟きが聞こえた。
触れるだけのキスを交わし、疲労で動けないシレイネをつぶさないよう、二人でベットに寝転がる。けれど繋がったままの彼女をすぐには離せそうにない。
だがシレイネはそんな未練がましい男とは違って眠そうだ。初めて身体を開かれたのだから、その疲労も大きいだろう。
「いいよ、寝て。疲れたでしょう?」
肌を撫でる優しい手付きに、シレイネはつい頷いてしまいそうになる。けれどまだ眠りたくはない。
「まだ、カインといたいです」
それなのに目を開けていられない。少しでも長くこの幸せを感じていたいと抗っているところだ。
そんなシレイネを見かねてカインはとびきり優しく声をかける。
「大丈夫。ずっと一緒にいるよ」
(ありがとう。カイン)
この世界が乙女ゲームの百年前であることを知った日。取り戻した記憶の中には未来の自分の姿もある。
それは遠い未来の話――
魔王として君臨するシレイネの傍らには常に黒い鳥の姿があった。
鳥の名はカイン。魔王シレイネは、その鳥を唯一心の許せる存在だと語っていた。
(貴方はきっと、たとえ私が魔王になったとしても、寄り添おうとしてくれた)
けれど自分が望むのは破滅の道ではない。目が覚めたのなら、彼と幸せに生きるための道を選ぼう。
優しい声に誘われたシレイネはついに意識を手放した。
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