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【1】聖女の帰還
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カツン――
神聖な大聖堂に硬いヒールの音が響く。こちらを見ろというような力強い響きに、誰もが振り返らずにはいられなかった。
視線の先には白いドレスの女が立っている。細い身体を引き立てるような装いは、式典に相応しい上品さだ。
穏やかな表情を浮かべる瞳は冬空のように澄んでいて、銀色の髪は神秘的だ。
目撃者は驚愕と美しさに支配され、大聖堂の時が止まったような錯覚を起こさせる。
称賛を集めたこの国の英雄の名を、この場に集った者ならば、誰もが知っているだろう。
カツン――
彼女の歩みが再び時を動かした。
屋内だというのに頭上からは深紅の花びらが舞い、長い通路をゆっくりと進む彼女に彩を添える。まるで彼女こそがこの場の主役であるかのように。
当然、本当の主役は面白くないだろう。今まさに彼の頭上には、この国の最高権力者となるための王冠が授けられるところだったのだから。
本来即位式の進行を妨げるなど、罪に問われるべき行為である。それなのに護衛にあたる兵士も、見守る貴族たちも、言葉を失い立ち尽くしてしまった。
とそらく彼女の美しさがそうさせたのだろう。邪魔をするような真似をしたくないと思わせてしまった。
そして何より、決してこの場にいるはずのない人物であることから、驚愕に呑まれてしまったのだ。この光景が異様なものであることは、誰の目にも明らかだった。
異様な雰囲気の中、形の良い唇がゆっくりと音を紡ぐ。
「ごきげんよう。殿下」
優雅な微笑みから放たれた言葉だというのに、名指しされた相手は目に見えて怯んだ。
「聖女様?」
最初に呟いたのは誰だったのか。
目の前にいるのは紛れもなく、亡き聖女シレイネだった。
神聖な大聖堂に硬いヒールの音が響く。こちらを見ろというような力強い響きに、誰もが振り返らずにはいられなかった。
視線の先には白いドレスの女が立っている。細い身体を引き立てるような装いは、式典に相応しい上品さだ。
穏やかな表情を浮かべる瞳は冬空のように澄んでいて、銀色の髪は神秘的だ。
目撃者は驚愕と美しさに支配され、大聖堂の時が止まったような錯覚を起こさせる。
称賛を集めたこの国の英雄の名を、この場に集った者ならば、誰もが知っているだろう。
カツン――
彼女の歩みが再び時を動かした。
屋内だというのに頭上からは深紅の花びらが舞い、長い通路をゆっくりと進む彼女に彩を添える。まるで彼女こそがこの場の主役であるかのように。
当然、本当の主役は面白くないだろう。今まさに彼の頭上には、この国の最高権力者となるための王冠が授けられるところだったのだから。
本来即位式の進行を妨げるなど、罪に問われるべき行為である。それなのに護衛にあたる兵士も、見守る貴族たちも、言葉を失い立ち尽くしてしまった。
とそらく彼女の美しさがそうさせたのだろう。邪魔をするような真似をしたくないと思わせてしまった。
そして何より、決してこの場にいるはずのない人物であることから、驚愕に呑まれてしまったのだ。この光景が異様なものであることは、誰の目にも明らかだった。
異様な雰囲気の中、形の良い唇がゆっくりと音を紡ぐ。
「ごきげんよう。殿下」
優雅な微笑みから放たれた言葉だというのに、名指しされた相手は目に見えて怯んだ。
「聖女様?」
最初に呟いたのは誰だったのか。
目の前にいるのは紛れもなく、亡き聖女シレイネだった。
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