5 / 5
タイラーの話
鎮魂禍(タイラー過去)
しおりを挟む
朝起きたら、隣で友人が死んでいた。
寒い冬の日のことだった。
ボロ雑巾のように捨てられていた布と段ボールをかきあつめて、調子の悪かった友人に身を寄せ、凍える自身の体に残るせめてもの体温で友を温めようとした。
ガタガタと震える友は熱にうなされ、何度もうわ言を言っていた。
その言葉すら切れた唇の隙間からは唸り声のようにしか聞こえなかった。
「大丈夫だ。大丈夫」「君は死地を乗り越えてきた。こんな現状になんて負けやしない」「こんなところで死ぬたまじゃないだろう」
そう言って励ましなのか、己への言い聞かせかもわからないことを祈るように呟いて。僕は意識を失った。
そしてあまりの早朝の寒さに目をさまし、ふと氷のように冷たい何かに体を預けていることに気がついた。
顔を横に向けると、俯いて微動だにしていない友がいた。
声をかけ、体をゆすり、顔を見て、そして ああ、これはダメだと思ったんだ。
何か決壊する音が聞こえたのはその時だ。
くるっと世界が一転したんだ。
そう、腹を決める。とでも言うんだろうか。
僕はそれまで善ってものや、神様ってやつを信じてたんだよ。一応は。戦争でボコボコにされても尚、多少の信仰心ってやつは残ってたのさ。
だけどね、流石にもう無理だった。
その友人の死が決定打だったんだよ。
僕はなんとか右手と右足だけで体を起こし、亀のような速度でその場を去った。
友の死体を葬る。もちろんできるならそうしたかった。
しかし僕には時間も体力もその時には残されていなかったし、それにその友の死を無駄にしないためにすぐさま行動を起こす必要があった。
まぁそれ以降の話は、またの機会に話すとするよ。
寒い冬の日のことだった。
ボロ雑巾のように捨てられていた布と段ボールをかきあつめて、調子の悪かった友人に身を寄せ、凍える自身の体に残るせめてもの体温で友を温めようとした。
ガタガタと震える友は熱にうなされ、何度もうわ言を言っていた。
その言葉すら切れた唇の隙間からは唸り声のようにしか聞こえなかった。
「大丈夫だ。大丈夫」「君は死地を乗り越えてきた。こんな現状になんて負けやしない」「こんなところで死ぬたまじゃないだろう」
そう言って励ましなのか、己への言い聞かせかもわからないことを祈るように呟いて。僕は意識を失った。
そしてあまりの早朝の寒さに目をさまし、ふと氷のように冷たい何かに体を預けていることに気がついた。
顔を横に向けると、俯いて微動だにしていない友がいた。
声をかけ、体をゆすり、顔を見て、そして ああ、これはダメだと思ったんだ。
何か決壊する音が聞こえたのはその時だ。
くるっと世界が一転したんだ。
そう、腹を決める。とでも言うんだろうか。
僕はそれまで善ってものや、神様ってやつを信じてたんだよ。一応は。戦争でボコボコにされても尚、多少の信仰心ってやつは残ってたのさ。
だけどね、流石にもう無理だった。
その友人の死が決定打だったんだよ。
僕はなんとか右手と右足だけで体を起こし、亀のような速度でその場を去った。
友の死体を葬る。もちろんできるならそうしたかった。
しかし僕には時間も体力もその時には残されていなかったし、それにその友の死を無駄にしないためにすぐさま行動を起こす必要があった。
まぁそれ以降の話は、またの機会に話すとするよ。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる