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第75話
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俺の体力が徐々に増え、体調のいい日が続いたそろそろ秋に入りそうな季節になった頃、ついに紫苑の両親にお会いする日が来た。
よくよく考えてみたら、紫苑は日本の裏社会でもすごい人らしいから、その両親である紫苑のお父さんたちはもっとすごい人ってことだよね。
へましたらどうしよう。マナーとかよくわからないし…。
とりあえずの手土産は買ったけど…あと必要なものはあったかな?
「そんなに思いつめなくていい。杏、こっちを見ろ。」
紫苑に見ろなんて言われたら見るに決まっている。
「俺に合わせて深呼吸しろ。」
紫苑の呼吸に合わせて呼吸を行う。
少し息がしにくかったのが嘘だったかのように息が楽になった。
無意識に息を浅くしていたらしい。
「ありがとう。紫苑。」
「ストレスを感じるな、なんて言えないからな。代わりに少しでも気を楽にさせることしか俺にはできない。」
「それでも、うれしい。」
先日紫苑に伝えた通り、やはり自分の親でなくとも親という立場の人間に会うのが相当ストレスとなってたようで少し寝れない日もあったりした。
「紫苑様、杏様。準備が整いました。」
下の階で車の準備とかをしてくれていた徹さんが呼びに来たので車に向かう。
微かに震える手は紫苑にもバレていたのか手を繋いでくれて、力強いその手にしっかりと握り返す。
大丈夫。だって紫苑がそばにいるから。
何も怖くない。
向かった先は立派な日本家屋。
本物だ…って思っちゃった。
てっきり入ったらめちゃめちゃ男の人がずらっと並んで紫苑に挨拶するのかなとか思っていたけど、そんなことはなくお庭のお掃除をしていた男の人が頭だけ下げていた。
「おかえりなさいませ。若様、杏様。旦那様がお待ちです。」
「あぁ。」
なんで言えばいいかわからなかったので、とりあえず頭を下げてこんにちはと言っておく。
どこかで見たことあるような顔の男の人が紫苑を案内する。
「旦那様、若様がお着きになられました。」
「俺だ。」
「入れ。」
襖の奥から響く低い声は紫苑に似ているけど違う声。
パンッと音を出しながら開き、見えた奥の部屋は長い和室だった。
お殿様の部屋みたいだった。
1番奥で並んで座っているのはきっと紫苑のお父さんとお母さん。
ズンズンと進んでいく紫苑の少し後ろを歩く。
置かれていた座布団の近くで止まる。
「よく来たな。座れ。」
震える声でありがとうございます。と言い座布団の上で正座する。
紫苑と繋いだ手を離そうとすると力を込められる。離すな。と言うことなんだろう。
「親父、杏だ。俺の嫁にする。つか、した。」
「おっお初にお目にかかります。水野杏と言います。紫苑…さんにはすごく良くしていただいていて…ます。」
「初めまして。二条冬夜といいます。愚息がいつもお世話になってます。こっちは妻の詩織です。」
「初めまして杏君。妻の詩織です。紫苑が悪いことしたらこっちに住んで頂戴ね。」
「そんなことしねぇよ。」
「…は!あっあのこれ。お土産です。俺あんまり美味しいものとかわからないんですけど、俺が好きなものを皆さんにも食べてもらいたくて買ってきました。」
この日のために用意したのは、いつも紫苑が買ってきてくれていて大好きなお饅頭。
「壱茶をくれ。」
「かしこまりました。」
部屋まで案内してくださった人は壱さんと言うらしい。
「杏君は、紫苑の仕事については理解しているかい?紫苑はいつか捕まるかもしれないし、死ぬかもしれない。それでも紫苑のそばにいられるかい?」
「…俺は、最近まで死にかけていたんです。でも、紫苑さんが助けてくれて俺の問題も一緒に抱えてくれて…1番欲しかった愛をずっとくれるんです。だから紫苑が死んだら俺も死ぬし、紫苑が捕まったのなら毎日会いに行きます。」
「そうか。そうか!紫苑はいい嫁をもらったなぁ!」
「あらぁ、熱いわねぇ。」
「私のことはお父さんでもパパでもなんとでも呼ぶといい。困ったときは、私の名前を出せば大丈夫だよ。」
「あら、じゃあ、私のことはお母さんでも、ママとでも呼んで。でも、野郎が多いからママって呼ばれて見たかったのに呼ばれたことないのよね。」
「…俺が呼んでもいいんですか?だって俺血のつながった家族でもないのに…。」
「あら、血が繋がってなくても家族よ。だって紫苑の嫁ですもの。」
「…ママさん。パパさん。って呼んでもいいですか?」
「もちろんよ!最高!」
「皆様、お茶が入りましたよ。こちらへどうぞ。」
「…よかったな。杏。」
耳元で小声でそう言った紫苑に頷く。
新しい家族ができた。
それがものすごく嬉しかった。
よくよく考えてみたら、紫苑は日本の裏社会でもすごい人らしいから、その両親である紫苑のお父さんたちはもっとすごい人ってことだよね。
へましたらどうしよう。マナーとかよくわからないし…。
とりあえずの手土産は買ったけど…あと必要なものはあったかな?
「そんなに思いつめなくていい。杏、こっちを見ろ。」
紫苑に見ろなんて言われたら見るに決まっている。
「俺に合わせて深呼吸しろ。」
紫苑の呼吸に合わせて呼吸を行う。
少し息がしにくかったのが嘘だったかのように息が楽になった。
無意識に息を浅くしていたらしい。
「ありがとう。紫苑。」
「ストレスを感じるな、なんて言えないからな。代わりに少しでも気を楽にさせることしか俺にはできない。」
「それでも、うれしい。」
先日紫苑に伝えた通り、やはり自分の親でなくとも親という立場の人間に会うのが相当ストレスとなってたようで少し寝れない日もあったりした。
「紫苑様、杏様。準備が整いました。」
下の階で車の準備とかをしてくれていた徹さんが呼びに来たので車に向かう。
微かに震える手は紫苑にもバレていたのか手を繋いでくれて、力強いその手にしっかりと握り返す。
大丈夫。だって紫苑がそばにいるから。
何も怖くない。
向かった先は立派な日本家屋。
本物だ…って思っちゃった。
てっきり入ったらめちゃめちゃ男の人がずらっと並んで紫苑に挨拶するのかなとか思っていたけど、そんなことはなくお庭のお掃除をしていた男の人が頭だけ下げていた。
「おかえりなさいませ。若様、杏様。旦那様がお待ちです。」
「あぁ。」
なんで言えばいいかわからなかったので、とりあえず頭を下げてこんにちはと言っておく。
どこかで見たことあるような顔の男の人が紫苑を案内する。
「旦那様、若様がお着きになられました。」
「俺だ。」
「入れ。」
襖の奥から響く低い声は紫苑に似ているけど違う声。
パンッと音を出しながら開き、見えた奥の部屋は長い和室だった。
お殿様の部屋みたいだった。
1番奥で並んで座っているのはきっと紫苑のお父さんとお母さん。
ズンズンと進んでいく紫苑の少し後ろを歩く。
置かれていた座布団の近くで止まる。
「よく来たな。座れ。」
震える声でありがとうございます。と言い座布団の上で正座する。
紫苑と繋いだ手を離そうとすると力を込められる。離すな。と言うことなんだろう。
「親父、杏だ。俺の嫁にする。つか、した。」
「おっお初にお目にかかります。水野杏と言います。紫苑…さんにはすごく良くしていただいていて…ます。」
「初めまして。二条冬夜といいます。愚息がいつもお世話になってます。こっちは妻の詩織です。」
「初めまして杏君。妻の詩織です。紫苑が悪いことしたらこっちに住んで頂戴ね。」
「そんなことしねぇよ。」
「…は!あっあのこれ。お土産です。俺あんまり美味しいものとかわからないんですけど、俺が好きなものを皆さんにも食べてもらいたくて買ってきました。」
この日のために用意したのは、いつも紫苑が買ってきてくれていて大好きなお饅頭。
「壱茶をくれ。」
「かしこまりました。」
部屋まで案内してくださった人は壱さんと言うらしい。
「杏君は、紫苑の仕事については理解しているかい?紫苑はいつか捕まるかもしれないし、死ぬかもしれない。それでも紫苑のそばにいられるかい?」
「…俺は、最近まで死にかけていたんです。でも、紫苑さんが助けてくれて俺の問題も一緒に抱えてくれて…1番欲しかった愛をずっとくれるんです。だから紫苑が死んだら俺も死ぬし、紫苑が捕まったのなら毎日会いに行きます。」
「そうか。そうか!紫苑はいい嫁をもらったなぁ!」
「あらぁ、熱いわねぇ。」
「私のことはお父さんでもパパでもなんとでも呼ぶといい。困ったときは、私の名前を出せば大丈夫だよ。」
「あら、じゃあ、私のことはお母さんでも、ママとでも呼んで。でも、野郎が多いからママって呼ばれて見たかったのに呼ばれたことないのよね。」
「…俺が呼んでもいいんですか?だって俺血のつながった家族でもないのに…。」
「あら、血が繋がってなくても家族よ。だって紫苑の嫁ですもの。」
「…ママさん。パパさん。って呼んでもいいですか?」
「もちろんよ!最高!」
「皆様、お茶が入りましたよ。こちらへどうぞ。」
「…よかったな。杏。」
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新しい家族ができた。
それがものすごく嬉しかった。
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